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アーティストを作った名著 Vol.1 水野良樹(いきものがかり)

5年以上前2018年10月31日 4:03

日々創作と向き合い、音楽を生み出し、世の中に感動やムーブメントをもたらすアーティストたち。この企画はそんなアーティストたちに、自身の創作や生き方に影響を与え、心を揺さぶった本について感じたままを記してもらうもの。初回には水野良樹(いきものがかり)が登場。彼のクリエイティブに影響を与えた3冊を紹介をしてもらった。


01. 「無理難題『プロデュース』します――小谷正一伝説」(岩波書店)
著者:早瀬圭一

「クリエイティブって、なんぞや?」と問いかけてくる

プロデューサーとして戦後日本のメディアの創造に尽力した小谷正一。彼は冷戦中の旧ソ連から世界的バイオリニストを日本に招聘、プロ野球パシフィック・リーグ構想の実現、民間初のラジオ放送局の設立に関与するなど、幅広い分野の広告販売システムを構築した名プロデューサーだ。「年越しの名刺は持たない」と言い放ち、会社に奉公するのが当然だった昭和の時代において、自分の能力1つで複数の会社を渡り歩き、放送、広告、エンタメ分野において根本となるルールブックを作りまくった。

顔を出してモノを作って“アーティスト”などという名前で神輿に担がれている自分たちのような人間は、簡単に「世界を変える」などと言ってしまいがちですが、本当に世界を変えてしまう人は、しのごの言わず、ルールから変える、システムから変える、世界そのものに手を下してしまう。自分の名など、売らずに。そのすごみと、通底するダンディズムに憧れます。モノを作るだけがクリエイティブじゃない。彼の姿を知ると「クリエイティブってつまるところ、なんぞや?」を問いかけられます。残した言葉は多くないですが、どれも、品が良くドラマチックで、ちょっと悔しいくらいカッコいいんですよね。

「きみ、いつだって時代は過渡期だし、キャンバスは白いんだぜ」

02. 「故郷の喪失と再生」(青弓社ライブラリー)
著者:成田龍一、藤井淑禎、安井眞奈美、内田隆三、岩田重則

歌を届けることは、可能性と危険性に満ちている

母校の大学受験の科目に小論文があって、この本の中の文章が課題文として採用されていたんです。要は自分が受けた入試問題。入試問題が歌作りに影響を与えたというのも、なかなかないパターンだと思うのですが。

この本は“故郷”という概念について論じたものなんですが、それが日本では最近できた概念だということ。百数十年前に近代化して人の往来が自由になって、交通網も発展し、それまでは生まれた土地で死ぬのが当然だった人々が生地を離れることが増えてきて、そこでやっと“故郷”という概念が出てきた、と。その話の中で「兎追いし彼の山」で始まるあの唱歌「ふるさと」が取り上げられるんです。現代では兎を追った経験のある人なんてほとんどいないと思うんですけれど、なぜかノスタルジーを感じますよね、あの歌。その不思議さも示唆に富んでいるんですが、実はこの歌が生まれたとき(100年くらい前です)も、もうその景色は失われ始めていたそうなんです。つまり、ある種の理想像を描いたフィクションだったんですね、最初から。極端なことをいえばプロパガンダにもなり得るものだった、と。不特定多数の人に向けた歌というものが、どういう可能性と危険性に満ちているか、そこにロマンを感じるのかリスクを感じるのか。今でも考えていますが、そのきっかけになりました。

03. 「知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ」(講談社+α文庫)
著者:苅谷剛彦

いろいろな角度からモノを見ろ、でも自分からは逃れられない

これも学生時代に出会った本。自分は社会学部だったんですが、「考える対象となる物事に対して複数の視座を持ちなさい。そのうえで神の視点のような完全な客観はないと自覚しなさい」と、言われていた(気がする)んです。要は、いろいろな角度からモノを見ろ、でもお前は自分の立ち位置からは逃れられないよ、ってことですね。それが歌を作るうえでも、大事な心がけになりました。モノを作る立場に慣れてきて、それに甘え始めると、野球で言えばピッチャーの視点しか持たなくなりがちです。ボールを投げる人の気持ちしか考えなくなる。でも実際にはそのボールを受け取るキャッチャーがいたり、打とうとしているバッターがいる。それのよし悪しを判断しようとしている審判の視点もある。その戦いを俯瞰で観ている観客の視点もある。もっと言えば球場そのものを遠くから俯瞰で見る視点だって考えられる。“ボールを投げる=曲を作り、届ける”というアクションに対してはさまざまな場所から、さまざまな視線があって、自分のような不特定多数に向けた歌を志向する人間は、その一連を意識した歌作りを考える必要もあるんじゃないか。頭でっかちですけれど、そういう面倒なことにいつも悩みながら、歌を書いています。

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