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店長たちに聞くライブハウスの魅力 第9回 愛知・HUCK FINN

約5年前2019年03月18日 8:01

全国のライブハウスの店長の話を通して、それぞれの店の特徴や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。第9回は愛知・HUCK FINNの店長・黒崎栄介氏に登場してもらった。

HUCK FINNがある今池には、2000年代より“今池ハードコア”という特有の音楽シーンや食文化などを表す言葉が定着している。そんな今池で今年設立38年目を迎える同店には、営業当初から現在に至るまで、ハードコアやパンクバンドをはじめとした多くのアーティストが出演している。学生時代はHUCK FINNにアーティストとして出演することが夢だったと言う黒崎氏に、店長に就任した経緯やブッキングのこだわりについて聞いた。

怖い噂も聞いた憧れの店

「この店は1981年にオープンして今年で38年目になります。自分は店長としては7代目。実家がここから30kmほど離れた岐阜県多治見市で、高校生のときからパンクバンドをやっていたので店の噂は聞いていたんです。『週末はヤバい』みたいな怖い噂もたくさん聞きました(笑)。でもパンクやハードコア全盛期だったこともあって、いつかこの店でライブをするのが夢でした。念願叶って出演するようになってからは、自然と先代の店長と話すようになりました。働き始めたきっかけは自分が20歳のとき、先代の店長に『今人が足りてないんだけど、働かない?』と誘ってもらったことです。なんの野心もなく完全にノリで働き始めましたけど、気付けば25年も地下の穴蔵で働いているんですね」

ブッキングは固定電話で22時までに

「勤務初日が週末で、ビビりながら出勤したらやっぱり噂通りのことが起きて、『軽々しく働くとか言わなきゃよかったな』と思いました(笑)。スタッフとしてはステージ周り、受付、ドリンク担当と全部経験しましたが最終的にはステージ周りやブッキングの仕事が多くなっていきました。当時は固定電話の時代だったので、ブッキングは自宅に連絡するのが普通でした。大体最初にアーティストの親が出るんですが、22時を越えると『こんな時間になんですか?』って怒られる。だからとにかく早くライブを終えて、電話をかけまくっていました。うちはパンクやハードコアのイメージが強いとよく言われますが、出演者のジャンルは昔も今もオールジャンルです。ただちょっとパンクやハードコアバンドの割合が多いだけで、特定のジャンルに特化したイメージを作ろうとは思っていなかったですね」

辞めようと思ったら店長に就任

「最初の時給は絶望的な金額だったので別の仕事と掛け持ちしていたのですが、徐々に仕事を覚えて働く頻度も増えていきました。そんなときに先代の社長から『店の近くに借りているアパートが1部屋空いたけど住む?』と言われて引っ越し、本格的にこの店で働き出すようになったんです。店長になったのは2001年、26歳のとき。僕がやっていたバンドの活動が忙しくなってきて、メンバーに「明日店長に辞めるって言うよ」と言ったその日に先代の店長から「実は俺、辞めたいと思ってるんだよね」と先を越されて……なぜか僕が店長を務めることになりました(笑)。あのとき僕が先に辞めたいと言っていたら、今とはまったく違う道を歩んでいたと思います」

2DAYSイベントと大晦日の解散ライブ

「最近だと今年の1月12、13日に行った『新春ドンドン祭り』というイベントが印象に残っています。去年開催した2DAYSイベント『春のLOSTAGEまつり』の打ち上げで、この日の出演者だったドンドン(Kazuya Hirabayashi / HUSKING BEE、The Firewood Project)と『2DAYSって楽しいね』『じゃあドンドンもやろうよ!』と話が盛り上がったところから実施に至りました。ブッキングはドンドンと僕でやったんですが、ほぼ全バンドが一発OKをくれて。ライブ当日はバンドもお客さんも楽しそうだったし、企画してよかったなと思いました」

「あともう1つ記憶に残っているのが、1999年の大晦日に開催したS.D.S.という岐阜のハードコアバンドの解散ライブですね。チケットは完売、お客さんが身動き取れないほどぎゅうぎゅう詰めでした。ライブもとにかくすごかった。対バン形式でトリはもちろんS.D.S.だったのですが、年をまたぐ瞬間ぴったりに最後の曲が終わって、ボーカリストがフロアにダイブしていた光景を今でもしっかり覚えています」

高校生の頃から出演してくれているバンド

「愛知県内にどんどん新しいライブハウスができてきて、若いアーティストはそっちに出るようになって、うちに出てくれる若手が少ないんですよね。そんな中でも高校生の頃からうちに出てくれているONIONRINGはがんばっていると思います。ドラムの正式メンバーがなかなか見つからなかったんですが、今のドラマー(Yudai)が決まったときはうれしかった。いつかの打ち上げでボーカリスト(Takeshi)と『SPREADが全国各地で開催している[魂疾走]みたいに、イベント名を見たらアーティスト名が思い浮かぶような企画を打ったほうがいい』と話したことが印象に残っています。その影響かはわからないですが、最近彼らは自分たちでイベントを企画しています。売れる売れないではなくて、バンド活動の地盤を固めてきているなと感じますね」

味のある床

「実はTwitterでエゴサーチ、めちゃめちゃしています(笑)。『やっぱりこのバンドをハックで観るの最高!』とか書いてあるのを見るとうれしいですね。あと『床が汚い』という言葉もよく見かけますが、汚そうに見えてちゃんと磨いてますからね! と言うのも、最初は真っ黒の床で、剥がれたら定期的にペンキで塗り直していたんです。でもどうしてもお酒や汗で塗装が剥がれてきてしまって。『HUCK FINNに行くときは新品の靴を履いてったらあかん。真っ黒になるから』というツイートを見てからは、塗り直すのをやめました。今ではペンキが剥がれたままのこの床が、店の味になっているのではないかと思っています」

アーティストの息遣いを感じられるのが“本当のライブハウス”

「ライブハウスの魅力は、その場の空気感を周りのお客さんと共有できることですかね。自分が『おおっ』と思ったときに周りの人も同じテンションだとうれしいし、意識の共有ができる。今の若い子たちからしたら大きいキャパの箱もライブハウスなのかもしれない。でも僕の中ではアーティストの息遣いまで感じられるこの店くらいの規模の箱が“本当のライブハウス”だし、それが魅力なんじゃないかなと思っています」

店舗情報

住所:〒464-0850 愛知県名古屋市千種区今池5丁目19-7 石井ビル
アクセス:地下鉄東山線・桜通線今池駅8番出口から徒歩5分
営業時間:公演により異なる
定休日:なし
ロッカー:なし ※クロークあり
駐車場:なし
再入場:あり
キャパシティ:200人
ドリンク代:500円
フリーWi-Fi:あり
貸切:可
※情報は2019年3月18日時点のもの。

取材・文 / 酒匂里奈(音楽ナタリー編集部) 撮影 / ヤオタケシ

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