アーティストを作った名著 Vol.19 岡本真夜

日々創作と向き合い、音楽を生み出し、世の中に感動やムーブメントをもたらすアーティストたち。この企画は、そんなアーティストたちに、自身の創作や生き方に影響を与え、心を揺さぶった本について紹介してもらうものだ。今回は岡本真夜が登場。

01. LOVE & FREE（サンクチュアリ出版）
著者：高橋歩

思い切ってゼロになるのもいい

今、何かにつまづいて思い悩んでいる方がいたら
この本を読んでみるのもいいのかもしれない。
この本に出会ったのは十数年前。
岡本真夜でデビューして5年が過ぎた頃、しがらみや理不尽な出来事に疲れてしまい
音楽だけに集中できる環境ではなかったので、一番忙しく、アーティストとしては
これからという時期に
活動休止を選んだ。そして偶然、結婚&出産も重なり
環境がガラっと変わった。いや、変えた。
ここで休めばアーティストとしては低速してしまうことは解っていたが
そんなものより、ここで休まないと人間壊れてしまうと思ったからだ。
その先は自分のペースで大好きな音楽ができる環境で
信頼できる人たちとゆっくりできればいいと。

社会に出れば
どんな仕事も一番大変なのは人間関係なのかもしれない。
この高橋歩さんの「LOVE&FREE」は
勤めていた会社を辞め、フリーになり、気の向くまま約1年8カ月、
世界中旅をし、そこで出会った人たち、風景の写真と一緒に
人生、心を豊かにしてくれるヒントがいっぱい書かれている。
そして世界は、今、自分の目の前にある目の前に見えている世界よりも
遥かに広い！ ということも教えてくれる。
もし今の場所に少しでも違和感があるなら、思い切ってゼロになるのもいい、と思えた。
ゼロになるにはそれなりの覚悟がいる。
でも、自分にとって本当に必要な人、必要な物、必要な場所は
ちゃんと残る。

本の中で好きな言葉は
「夢があろうとなかろうと 楽しく生きてる奴が最強」
世間体とか年齢とか、誰かの意見を気にしながら生きるのではなく
限られている時間の中で、ハングリー精神は忘れず
自分が笑っていられる場所にいられることが
一番の幸せなんじゃないかな、と。

02. いつでも会える（学研）
作・絵：菊田まりこ

最後には心に灯がともる

高校3年生のときに親友からプレゼントされた絵本です。
大好きな飼い主、ミキちゃんを亡くした犬のシロが
悲しみを乗り越えていく感動のお話。
この絵本を読んだときは18歳。
菊田さんのイラストには「ぬくもり」がある。
見ていてほっこりする。
きっと心の綺麗な人なんだろうと思った。
シンプルな言葉で子供にも大人にもわかりやすく
「別れ」という悲しいテーマではあるけれど
最後には心に灯がともる、切なあたたかストーリーです。

18歳のときより、大人になった今、読んだ方が感じる物がある。

年齢を重ねれば重ねるほど
別れを経験します。

別れなんて経験したくないけれど
別れの数が増えるたびに
「今」を楽しもう！ と思うし
個人的な話ですが、私には息子がいるので
私がいなくなったあとに、目を閉じれば思い出して心が温かくなるような
そんな思い出をたくさん作ってあげたいと思う。

菊田まりこさん。
実は親友がこの絵本をプレゼントしてくれたことがきっかけで
2003年に「ハピハピバースディ」という曲でCD付き絵本を作らせていただきました！

お会いして、
ああ、やっぱり心のきれいな方だな、
だからこういう温かい絵とストーリーを生み出せるんだなあと
思ったのでした。

菊田さんシリーズ、全部集めてます！

岡本真夜

1974年生まれ、高知県出身の女性シンガーソングライター。1995年にシングル｢TOMORROW」で歌手デビューを果たす。この曲が連続ドラマ ｢セカンド・チャンス」の主題歌に起用され、新人ながらいきなり200万枚の大ヒットを記録。女性としての葛藤や喜びが込めれた歌詞、耳なじみの良いポップチューンでリスナーから共感を得る。また、ベテラン歌手からアイドルに至るまで、幅広いアーティストへ作品を提供しているほか、エッセイを執筆するなど、さまざまな分野で活躍している。2015 年8 月にデビュー20 年周年を記念して「岡本真夜20th anniversary ALL TIME BEST ～みんなの頑張るを応援する～」を発売。 2016 年3 月2 日にはmayo としてピアノインストアルバム「always love you」を発売し、念願のピアニストデビューを果たす。現在はシンガーソングライター岡本真夜とピアニストmayo として活動を展開している。2019年7月31日には自身初のEPである「笑顔のおまじない」をリリースした。