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アーティストの音楽履歴書 第6回 ASKAのルーツをたどる

4年以上前2019年08月22日 8:04

毎回1名のアーティストの音楽遍歴を紐解くことで、音楽を探求することの面白さや、アーティストの新たな魅力を浮き彫りにする本企画。第6回は、7月にライブCD「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館」を、8月21日に同作のライブDVD / Blu-rayをリリースしたASKAに話を聞いた。

音楽に触れたきっかけ

こういう企画だと普通ミュージシャンはまず“初めて買ったレコード”を挙げるのかもしれませんが、「忘れているものがありませんか?」と言いたいんです。それはNHK教育(現Eテレ)の「おかあさんといっしょ」。僕はいつも楽しみにしていました。お兄さんとお姉さんの歌を聴いて、子供ながらにリズムをとって体を揺らしていましたね。最初に買ったレコードは当時テレビ放送していた「ターザン」のドラマ版テーマ曲。お年玉でレコードプレーヤーを手に入れたので、とにかく何かレコードをかけてみたかったんです。

坂本九さんも大好きでした。まだ、僕が4歳になりたての頃、九電記念体育館にダニー飯田とパラダイス・キングが坂本さんと一緒に来たことがあって。九ちゃんって当時はいじられキャラだった。子供なりに正義感が芽生えていたのでしょう。ステージ上でみんなにいじめられる九ちゃんを救おうと、最前列の柵の前まで走って「九ちゃんをいじめるな!」と叫びました。それがRKB毎日放送テレビで映ったんです。しかもドアップで(笑)。のちのちその話を聞いた局の方々が、何度も探してくれたのですが、当時は全てフィルムの時代で“バックアップ”なんて言葉もありません。すべて廃棄されたとのことでした。観てみたかったですね。

グループサウンズに熱狂

小学4年生くらいだったと思いますが、ザ・タイガースをはじめとしたGSが本当に好きでした。僕より年上の人たちはみんな熱狂していたんですが、そういう大人の世代と一緒のものが好きというのが子供心にうれしかったですね。

同じ頃、僕が住んでいた福岡県の我が町にピンキーとキラーズがラジオの公開録音でやってきました。それを目の前で観たんです。そしてすぐ手に入れたレコードが、後に僕自身がカバーすることになる「七色のしあわせ」のシングル盤。当時から歌を歌うのは大好きで、親戚の前で歌を披露しては、おひねりをねだったりしてました(笑)。

井上陽水との出会い

小学2年生の頃から剣道をやっていたんですが、部活動としてやるようになってからはもう剣道一直線。父親の仕事の都合で北海道に引っ越してからも夜までくたくたになるまでやっていましたね。だからその時期は音楽を聴くどころじゃなかった。そうこうするうちに高2の夏にインター杯個人代表になったことがきっかけで福岡に戻りましたが、しばらくして部活を辞めたので急に時間ができて。その頃友達の家で初めて聴いたのが井上陽水さん。衝撃でした。あの声が自分に飛び込んできたときは、「この人のように歌ってみたい!」と思いました。当時よく聴いたアルバムというと「陽水II センチメンタル」「氷の世界」「もどり道」といった初期作品ですね。

バンドを結成しコンテストへ

部活を辞めてからは妙に焦燥感もあって。高3で初めてバンドを組んで、KBCラジオのオーディションを受けようと思ったんです。学校の授業が終わってから参加するには間に合わない時間帯だったんですけど、ダメ元で先生に相談したんです。そうしたらその先生が「お前は本気で自分の将来を考えてそれに出ようと思うのか? だったら公欠にしてやるから行って来い」って。今考えると本当にいい先生に恵まれたんだなと思います。

その後大学に進学し音楽部に入って「ポプコン」(「ヤマハポピュラーソングコンテスト」)にも出場するようになるんですが、当時はとにかく審査員にウケる曲をやってグランプリを取るんだと必死でしたね。そして運よくデビューをすることになりました。

コンピュータで楽曲制作を始める

1980年代を振り返ると、とにかく世の中が貪欲に音楽を求めている時代でした。大きな転機だったのは80年代前半に音楽制作の現場にコンピュータが現れたことですね。ROLANDのMicroComposer MC-4というシーケンサーを友人のS.E.N.S.が使いこなしているのを見て、「俺もこれからはこれだ!」と。すごく早い段階でコンピュータによる制作を開始しました。デスクトップ型パソコンを手に入れてからはデモテープ作りにすごくのめり込んで。当時はまだ自宅録音なんて一般的じゃないから、レコード会社の人に「どこで録ったの!?」と驚かれたりしました。

映画音楽と洋楽

昔からとにかく往年の映画音楽が大好きで。「シェルブールの雨傘」「追憶」……ほかにもたくさん。本当に美しいメロディの宝庫で、アレンジもものすごくよくできている。若い頃からSimon & GarfunkelやCarpentersなど洋楽ポップスも聴いていたけど、実はThe Beatlesを聴いたのはデビューして数年経ってからなんです。その前にポール・マッカートニーのWingsを先に聴いていた。以前ポールにお会いしたとき、その話をしたら彼がとても喜んでくれました。

デヴィッド・フォスターに惚れ込む

1980年代の終わり頃に、初めてこの人の音楽で全身を満たしたいという人が現れたんです。それがデヴィッド・フォスター。誰にも影響されなかった自分が、初めて「この人のような音楽を作ってみたい」と素直に思えた。それくらいショックでした。ソロアルバムももちろんすべて持っていますけど、提供曲も素晴らしい。そういえば、セリーヌ・ディオンは彼の「The Power Of Love」でブレイクしましたけど、その前に実は僕の「WALK」をカバーして録音しているはずなんです。でも、マネージャーの交代などがあってお蔵入りしてしまった。それ、ずっと聴いてみたいんだよなあ(笑)。

やっと世界に通用するバンドが現れた

ありがたいことに、若いアーティストと話してみると、僕の音楽を熱心に聴いていたと言ってくれる方が多く、すごく光栄なことです。一方で若者が洋楽をあまり聴かなくなってしまっている気もしていて。“身近なすごさ”じゃなくて、海外の桁外れにすごい音楽にもぜひ触れて欲しいと思います。

もちろん、すごいと思う若いアーティストはたくさんいます。最近ではサカナクションが素晴らしいと思いますね。それと、実際に会ってTakaくん(Vo)に伝えたこともあるんですが、ONE OK ROCKの楽曲を聴いたとき、ようやく世界に通用する歌声を聴かせる日本のバンドが現れたと思った。それと、BUMP OF CHICKENも素晴らしいですよね。

若い世代をサポートしたい

40年音楽をやらせてもらったので、今度は次の世代のサポートをしていければいいなと考えていて、一昨年に音楽配信サイトの「Weare」を始めました。僕はこれからのアーティストは個人商店を持つべきだと思っているんです。今、定額制で聴き放題の時代になってCDが売れなくなってしまったのは、我々が世間に迎合し過ぎたからだと思うんです。CDが売れないと新しい音楽を作れず音楽を諦める若手が増えて、どんどん音楽産業がダメになってしまう。今、音楽がどんどん値段を下げ続けている時代だからこそ、サブスクのいい面を利用しつつ、きちんと音楽の本当の価値を提示していかなければならない。僕は今そうするためにいろいろと動き出しているところなので、これからに期待してください。

ASKA

1979年に「ひとり咲き」を発表し、チャゲ&飛鳥としてデビュー(のちに「CHAGE and ASKA」に改名)。約300万枚のセールスを記録した「SAY YES」をはじめ、ヒットナンバーを数多く世の中に送り出す。1988年にソロアルバム「SCENE」をリリースし、ソロデビューを果たした。1991年に発表した3rdシングル「はじまりはいつも雨」がミリオンヒットを記録し、ソロアーティストとしての知名度も高める。2017年には自主レーベルを設立。同年10月には配信サイト「Weare」を立ち上げた。2019年8月21日にはライブDVD / Blu-ray「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館」をリリースし、8月25日にはライブDVD / Blu-ray「CHAGE&ASKA LIVE IN KOREA 韓日親善コンサート Aug. 2000」をリリースする。11月20日には約10年ぶりとなるシングルCD「歌になりたい」を発表することが決定しており、12月からは「billboard classics ASKA premium ensemble concert -higher ground-」を開催する。

※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。

取材・文 / 柴崎祐二

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