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令和のアーティストとSNS 第3回 りりあ。が実践する、新しい音楽活動のカタチ

3年以上前2020年09月28日 9:01

アーティストとファンのコミュニケーションの形を、SNSの観点から探るこの連載。第3回ではTikTokを中心に若者から絶大な人気を誇るシンガーソングライター・りりあ。のインタビューを掲載する。

りりあ。は昨年秋にTikTokやYouTubeなどで弾き語りのカバー動画を公開し始めると、すぐさま“天使の歌声”と話題に。TikTokのフォロワーは毎月10万人単位で増えていき、現在は100万人を突破している。また5月に配信リリースした初のオリジナルソング「浮気されたけどまだ好きって曲。」は、事務所もレコード会社にも所属していないインディペンデントなアーティストながらLINE MUSICでウイークリーランキング1位を獲得。YouTubeでも750万回以上再生されるなど大きな反響を集めた。その後もテレビの情報番組に登場したり、配信フェス「a-nation online 2020」に出演したりと活躍の場を広げている彼女だが、「メジャーデビューは考えていない」という。彼女がどういうスタンスで音楽やSNSに向き合っているのか話を聞いた。

取材・文 / 柴那典 撮影 / 今津聡子

自己満足で始めた動画投稿

──まず、りりあ。さんが音楽を始めたのはどういうきっかけでしたか?

コレサワさんの弾き語りを見て始めました。4、5年前です。

──コレサワさんのどういうところが好きになったんでしょう?

顔出ししてないというのもあるんですけど、恋愛ソングが多くて、等身大でやられているところに憧れました。

──楽器もそこから始めたんでしょうか。

そうですね。演奏できる楽器はギターだけです。独学で、誰にも教わらずに、YouTubeとかを観たりして練習しました。いまだに弾けないコードもあるんですけど、ほぼYouTubeに助けられています。

──動画の投稿を始めたのはいつ頃ですか?

弾き語りを始めたのは4年半くらい前で、TikTokには去年の10月、YouTubeには11月に投稿を始めました。

──きっかけとしてはどんな思いがあったんでしょうか? 「やってみようかな」くらいの軽い感じだった?

ただの自己満足で上げ始めました。本当に何も考えてなかったです(笑)。

──最初はカバー曲を投稿していたんですよね。弾き語りを聴いてくれる人、動画を観てくれる人が増えたきっかけになった動画はありましたか?

何の動画がきっかけという感じでもないんですけれど、最初から観てくれる人はいて。でもTikTokでバズったのは、12月に投稿したうじたまいさんの「独りうた ~September調子はどうだい~」のカバーがきっかけだったと思います。それからほかの動画もたくさん聴いてもらったり、アカウントをフォローしてもらったりするようになりました。

──なぜバズったのか、ご自身で理由は何か思い当たることはありますか?

何も(笑)。TikTokの中で流行っている曲を弾き語りするようにしていたんですけど、それも関係ないだろうし。わからないです。

──弾き語りでカバーしているほかの方の動画を観たりして研究しました?

してないです。私が始めた頃は、そもそもTikTokで弾き語りしている人があまりいなくて。踊ったりしている人のほうが多かったので、そういう動画で使われている曲を弾き語りしていました。

オリジナル曲のきっかけはファンの声

──去年の12月からTikTokのフォロワーが増えていったとのことですが、その頃の感覚ってどんな感じだったんでしょうか?

うれしかったですね。「すごい! ママ見て!」みたいな感じで大騒ぎでした。そもそもTikTokには「デールと間違えられたチップ」という動画を最初に投稿したんです。それがけっこうバズって1万人くらいフォロワーさんがついてくれて、その流れで弾き語り動画の投稿も始めました。そしたら毎日フォロワーが増えていって、うじたまいさんのカバーをきっかけに急激に増えて。もとはと言えばチップとデールのおかげです(笑)。

──オリジナルの曲を作ろうしたきっかけは?

ずっとカバーをやっていたら、オリジナル曲を聴きたいと言ってくださる方が多くなってきて、それがきっかけで作りました。

──「浮気されたけどまだ好きって曲。」はどのようにしてできた曲でしょうか?

曲は友達との会話から作りました。浮気というテーマに関しては、それで悩んでいる人が多かったり、いろんな方から相談されたりすることが多くて。タイトルに関してはインパクトのある名前にしようと思って付けました。

──友達とのLINEの会話をもとに曲を作るような感じ?

そうですね。恋愛相談というよりただ愚痴を聞いている感じですけど(笑)。

──自分が何か歌いたいメッセージを書くというよりも、ほかの人との会話からアイデアが生まれることのほうが多いのでしょうか。

本当にそこからしかなくて。あとはたまにInstagramでどんな曲を聴きたいかを募集して、そこから作ることも多いです。「蛙化現象に悩んでる女の子の話。」もそうやって書きました。「こんな曲が聴きたい」と言ってくれるということは、共感してもらいやすいということなので、それを聴いて喜んでもらえることがうれしくて。自分の気持ちよりは、皆さんの意見をいっぱいもらって作っています。

「浮気」の曲の反響

──「浮気されたけどまだ好きって曲。」をサブスクリプションサービスで配信リリースしたのはどういうきっかけだったんでしょうか?

YouTubeに上げていたらファンの方に「サブスクでも聴きたい」と言っていただくことが多くて、それが一番大きな理由です。配信する予定はなかったし、そもそも個人で出せると思ってなかったので。TuneCore Japanというサービスを使えば個人でも配信できると知って、それで出すことにしました。

──TuneCore Japanはどうやって知ったんですか?

あれくんという男の子に教えてもらいました。去年の12月にあれくんの「ばーか。」という曲を遊びで一緒に録ったんです。

──あれくんとの出会いが大きかったんですね。

大きいです。あれくんとはTikTokを始める前にTwitterでつながっていて、そこから「『ばーか。』を一緒に歌いませんか」って言ってもらって。うれしかったです。

──「浮気されたけどまだ好きって曲。」の反響はどういう感じでした? ランキングに入るとか、予測してました?

聴きたいと言ってくれた数人に向けて軽い気持ちで上げたので。予測も何もないです(笑)。今もびっくりしています。自分のことじゃないみたいな感じです。

今もまだ趣味だと思っている

──メディアで大きく騒がれるようになったことで何か変わったりしましたか?

変わってないです。ありがたいことに、こうやってメディアに出ることは増えたんですけど、顔出しもしてないので、日常はずっと何も変わらない。もともと趣味で音楽をやっていたし、今も私はまだ趣味だと思っているので。TikTokをきっかけに「浮気」の曲を出して、そこから仕事になってきている部分もあるにはあるんですけれど。

──りりあ。さんにとっての音楽って、今は趣味と仕事の境界線上みたいな感じなんでしょうか?

うーん、仕事って思いたくないんです。音楽で食べていきたい気持ちは全然ないので。生きていられればいいし、楽しく音楽をやれたら一番いいと思うので。

──音楽で食べていきたいという気持ちがない?

締め切りが苦手なので。仕事となるとそれが多くなるじゃないですか。好きなことなのに、期限があると「これ、仕事なんだ」って思っちゃうから。今はそこが悩みです。

──SNSで活動している人の中には、例えばテレビには一切出ないという方針の方もいらっしゃいますが、りりあ。さんの場合はどうなんでしょう?

そもそも私、お母さんに全部管理してもらっているので、自分が何をやるのか全然把握してなくて。「明日は◯◯だ」って前日とかに急に言われるんですよ。前もって言ってくれないと困る!って思ってます(笑)。

──メジャーデビューやCDリリースの声もあるんじゃないかと思うんですが、そのあたりはどう考えていますか?

ありがたいことに、いろんなところからお声がけいただいているんですけど、メジャーデビューは考えていなくて。そもそもメジャーデビューがなんなのかわかってないので、今のところ考えていないです。CDをリリースしたいとも特に思わないし、今までと同じようにSNSで活動していければいいかなと思っています。

──りりあ。さんのような形で、顔出しもせず、自分のペースでフラットに活動をやっていけるというのは、同世代や下の世代からしたら「いいな」と思う人も多いかもしれないですね。

でも、私の周りは私と同じように活動している方が多いと思います。TikTokで弾き語りする方も多くなってきたし、SNSから始まるのが普通で、そこでやっていくのが当たり前というか。

もしもTikTokがなくなったら……

──TikTokで弾き語りのカバーをする人が多くなっている理由って、客観的に見てなぜだと思いますか?

なんでだろう? バンドの曲はもちろん、シンガーソングライターの方の曲でもカバーでしか表せない音源になるからですかね。私もほぼアレンジしちゃってますし。原曲と全然違うという意見もあるんですけど、「それがいい」というコメントもあるので、そういう理由で増えてきてるのかな。私が知りたいです(笑)。

──SNSでネガティブな体験はありましたか?

ここまでたくさん聴いてもらうとアンチというのも増えてくると思うんですけど、私の場合はアンチコメントも本当になくて。メディアで私を新しく知ってくださった方はいろんな意見があるとは思うんですけど、特にTikTokでは応援してくださる方のほうが多いです。

──TikTokはSNSの中でも好意的な人が多いんですね。

ありがたいことにそういう人たちばかりで。コメントを見て嫌な気持ちになることはないです。TikTokは10代がメインだからかな。Twitterだと年齢が上の方が多くて、Twitterのほうが怖いです。TikTokはみんな優しい。

──もしTikTokがなくなったらどうします?

ええ!? とりあえず病みます(笑)。TikTokがなくなったら、1年くらいは病んでる気がします。音楽もせずにずっと病んでて、全然違うことを始めるかもしれない。

──YouTubeやInstagramをメインに活動していこうとは思わないですか?

いや、今はメインがTikTokなので。本当になくなったらどうするんだろうって思います。「やってらんない」ってなって、精神崩壊しそう(笑)。それくらいの気持ちです。

──りりあ。さんにとって、SNSはどういう存在ですか?

うーん、なんだろう……SNSだけでやってきたので、なくてはならない存在です。ファンの方とやりとりするのもそうだし、ないと本当に困りますね。

りりあ。

女性シンガーソングライター。2019年秋にTikTokやYouTubeで顔出しなしで弾き語りのカバー動画を投稿し始めると、エモーショナルな歌声と豊かな表現力が瞬く間に話題に。5月に各配信サイトでリリースした初のオリジナル曲「浮気されたけどまだ好きって曲。」はLINE MUSICウイークリーランキング1位を獲得した。その後も配信フェス「a-nation online 2020」などのライブに出演するなど、活躍の場を広げている。2020年9月現在、TikTokのフォロワー数は100万人。

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