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アーティストの音楽履歴書 第36回 粗品(霜降り明星)のルーツをたどる

2年以上前2021年10月29日 3:05

アーティストの音楽遍歴を紐解くことで、音楽を探求することの面白さや、アーティストの新たな魅力を浮き彫りにするこの企画。今回はお笑い芸人でありながら自身の音楽レーベル「soshina」を立ち上げ、音楽活動を本格始動した粗品のルーツに迫った。

取材 / 倉嶌孝彦 文 / 鈴木身和

母ちゃんが喜んだオリジナルソング

僕ね、昔の記憶があまりないんですよ(笑)。だから幼稚園の頃は覚えてないんですけど、小学生時代に聴いていた音楽の記憶というと「とっとこハム太郎」の歌とかかなあ。エンディングテーマの「200%のジュモン」とか。母ちゃんがめっちゃ音楽好きで、2歳からピアノを習っていました。小学校低学年の頃にはゴスペルも習いに行ったり。めんどいなと思う側面もありつつ、習い事自体は楽しかったです。歌手とか音楽家になりたいと思っていたのはうっすら記憶していますね。小学生の頃からオリジナルソングを作って、アカペラで母ちゃんの前で歌うみたいなことをやっていました。それを母ちゃんがめっちゃ喜ぶんですよ。今思えば僕を音楽家に育てたかったのかもしれないです。

中学生の頃に友達からTHE BLUE HEARTSとマキシマム ザ ホルモンを薦められまして、これはモテるなと思ってギターを始めました。ピアノは教科書に載っているような曲ばかり弾いていたんですけど、ギターってJ-POPがメインだからコピーしていてもめちゃくちゃ楽しくて。バンドを組んで、当時の文化祭で初めて披露した曲がTHE BLUE HEARTSの「青空」でした。学校にアンプがないから家から持っていったり……みんな下手なんですけど、それもよかったですね。

三味線も採譜した草オーケストラ時代

高校生の頃に「オーケストラ!」という映画を観て「クラシック音楽すげえ!」ってなったんです。オーケストラがチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を演奏して、最後に譜面台から映した指揮者のカットで終わるんですけど、めちゃくちゃカッコよくて鳥肌が立ちました。シンプルに振り付けとしてカッコいいと思って、憧れから指揮者になりたいと思ったんです。それからサックス、バイオリン、三味線、オカリナとか楽器ができるやつを12人くらい集めて楽団を作って文化祭に乗り込んで。草野球みたいな感じで“草オーケストラ”って呼んでるんですけど、僕が全員分の採譜をして、練習も僕が立ち会ってまとめたりしていました。実際に楽譜にするまではあまりピンと来ていなかったんですけど、オーケストラってそれぞれの楽器のパートは短かったり、ちょっとしか出てこなかったりするんですよ。それがオールトラック流れたときにこんな曲に聞こえるんやっていう魅力にハマっていきました。そのときは葉加瀬太郎さん作曲の「情熱大陸」をやったんですよ。面白かったなあ。

当時は草オーケストラをやりながら、年に1回の文化祭に向けてベースが2人おる変なバンドもやっていました。DTMを始めたのも、お笑いと出会ったのもこの頃ですね。部活をやっていなくてとにかく時間があったので、ニコニコ動画にハマったんです。ニコ動ってボーカロイドとかアニソンのイメージが強いですけど、海外の面白バンドがバズっている動画とかもあったんですよ。アカペラでデスメタルやってるドイツのバンドとか、そういうのを漁りだしたら止まらんくて。ニコ動を通じていろんな音楽に出会った経験がデカいですね。あとはランキングによく入っていた田中秀和(MONACA)さん、ヒャダインさんの曲とか、人気曲をメドレーでつなげた「組曲『ニコニコ動画』」や「ニコニコ動画流星群」に入っているアニソンが全部よすぎて。アニメ作品はもちろんですけど、「どんなやつが作ったんや!?」って作曲者に目を向けるようになってアニソンにもハマっていきました。ただのニコ厨ですね(笑)。今でも自分のボーカロイド曲をニコ動に上げてコメントと一緒に聴くのは感動します。めっちゃおもろいので、今こそみんなでニコニコ動画を盛り上げたいと思いますけどね。

「俺、お笑いめっちゃ向いてるんちゃう?」

その頃にDTMをやり始めた友達がいて、俺も!って感じで曲作りを始めました。初めて作ったのは、今YouTubeにも上げている「ビームが打てたらいいのに」というボカロ曲の原型になった曲です。歌詞は今のとは違う、青臭くてイタい感じでした(笑)。音楽もお笑いもめっちゃ好きでしたけど、だからと言って仕事にするとかはまだなんにも考えていなかったです。音楽でもお笑いでも「これで飯を食うぞ!」と思ったことがないまま、「閃光ライオット」にデモテープを送ったり、「ハイスクールマンザイ」にエントリーしたりして、どちらも趣味として熱を注いでいました。ただ、同時進行していたお笑いのほうが先に結果が出たんです。高校在学中にアマチュアで出た「R-1グランプリ」で準決勝まで行ったり、当時多発していた高校生大会みたいなので優勝したり。そして大学1年生のときに吉本興業のオーディションを受けたんです。オーディションと言っても普通のライブなんですよ。ネタをやったら合格して、劇場の出演メンバーになって、翌月には吉本から給料が振り込まれたんです。これで「俺、お笑いめっちゃ向いてるんちゃう?」と思って、そのままぬるっとお笑い芸人になっていった感じです。

初めて行ったライブはASIAN KUNG-FU GENERATIONの大阪城ホール公演かな。芸人になってから初めて行ったのは[Alexandros]。磯部(寛之)さんと吉本の先輩の学天即の奥田(修二)さんが仲よくなって、僕もつなげてくれたんです。あと、清竜人さんは共通の知り合いがいて仲よくなって、飲みに行ったりさせてもらってます。初めはDVDを観て「めっちゃおもろいな、この人」ってファンになったんですけど、次第にアニソンも手がけるようになっていって。堀江由衣さんに楽曲提供するんですけど、その曲も最高で。「一緒に面白いことやりたいね」って話はしていたんですけど、2019年の「清 竜人ハーレム♡フェスタ2019 10th ANNIVERSARY & 30th BIRTHDAY」に呼んでいただいて(参照:清竜人を盛大に祝福「ハーレムフェスタ」で堀江由衣、上坂すみれ、でんぱ組、あーりん競演)。初めてああいう舞台に立たせてもらいました。僕、このシリーズが好きやったので、「出れんの? ラッキー!」という感じでした。

ずっと音楽をやりたかった

芸人をやりだしてからも、実はずっと音楽をやりたかったんです。ただ、軽い気持ちで音楽に手を出しているやつはキショいと思っていて。真剣に音楽をやっている人たちに失礼やろって。だからホンマは絶対音感あるとか、ピアノ弾ける、ギター弾けるということを明かしていなかったんです。だってミュージシャンの人が「ちょっとネタ作ってみたんです」って漫才したら腹立つと思うんですよ。ナメてんのかって。それと一緒のことだと思って、音楽への気持ちをずっと抑えていたんです。でも2018年に「M-1グランプリ」で優勝してから「やっぱり自分のやりたいことはしたい」と、音楽への思いをちょっとずつ開放していって。やるならしょうもない芸人の片手間の音楽じゃなくて真剣に向き合いたいなと思って、一発目の曲から作詞作曲はもちろん、編曲、打ち込み、マスタリング、ミックスまで全部自分でやったんです。ここまで誠意を持ってやったら大丈夫かなと思ったのが去年の5月でした。あと、5月3日が死んだ父ちゃんの誕生日なので、その日に出せたらうれしいなっていうのもありましたね。音楽活動を始めて、母ちゃんがホンマに喜んでくれて、もうその話ばっかりしてくるぐらい(笑)。昔からなんとなく感じていた「音楽家になってほしい」という感情が今爆発しているんでしょうね。

尋常じゃないレベルの共感を呼ぶ歌詞を書いてみたい

記念すべき1作目「乱数調整のリバースシンデレラ feat. 彩宮すう(CV:竹達彩奈)」をやっとリリースできて(参照:粗品「乱数調整のリバースシンデレラ」特集 粗品×syudou対談)、今は2曲目を作り出してるところです。やっぱり面白い音楽がやれたらいいなというのと、誰も聴いたことがない音楽は無理でも“誰も見たことがない音楽”を作れたら最高やなって。それに加えて、尋常じゃないレベルで人のためになる音楽を作ってみたいんですよね。人を救う音楽。全員に響く歌じゃなくて、ある特定の方にだけ向けた歌というか。実は「みどりの唄」がそれに近かったんです。ある特定の人物のために作ったこの曲を、別のとある方が聴いて「救われました。ありがとうございます」って言ってくれたんです。この体験がめっちゃ貴重やったなと思っていて。名曲の中には誰もが「私のことを歌ってるんちゃうか?」と錯覚するくらい万人に響く歌詞が存在しますけど、誰にでも当てはまるレベルじゃなくて、一部の人の尋常じゃないレベルの共感を呼ぶ歌詞とか書いてみたいですね。

粗品(ソシナ)

吉本興業所属のお笑い芸人・霜降り明星のツッコミ。2020年5月からYouTubeにオリジナルのボカロ曲を公開し始め、2021年1月に過去8作品を配信リリース。同時に自身のレーベル「soshina」を立ち上げ、3月に第1弾作品「乱数調整のリバースシンデレラ feat. 彩宮すう(CV:竹達彩奈)」を発表した。

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