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私と音楽 第27回 プロレスラー高橋ヒロムが語るマキシマム ザ ホルモン

高橋ヒロム
1年以上前2022年07月01日 10:05

各界の著名人に愛してやまないアーティストについて話を聞くこの連載。第27回は新日本プロレスに所属するプロレスラー、高橋ヒロムをゲストに招いた。

100kg以下のジュニアヘビー級の猛者が世界中から集う、新日本プロレスの毎年恒例の大会「BEST OF THE SUPER Jr.」で前人未到の3連覇、4度目の優勝を達成したヒロム選手。首の骨折という大怪我を乗り越えて新日ジュニア戦線のトップをひた走る彼に、多大な影響を受けたというマキシマム ザ ホルモンへの愛を存分に語ってもらった。また取材後にヒロム選手から突如編集部に送られてきた「マキシマム ザ ホルモン夢の妄想セットリスト」も合わせて掲載する。

取材・文 / 望月哲 撮影 / 西槇太一

カルチャーショックだった初ホルモン

マキシマム ザ ホルモンの存在を知ったのは中学時代です。タワレコに行ったら「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」ってジャケットに書いてあるCDが大量に陳列されていて、「とんでもないタイトルだな!」って(笑)。その後、高校に入学して仲よくなった友達が学校にCDを持ってきていて、それが「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」だったんです。で、「あのバンドだ!」となって(笑)。その友達が僕をホルモンのライブに誘ってくれたんです。八王子にある工学院大学の学祭だったんですけど、実はそれまで自分、ホルモンの曲を聴いたことなかったんですよ。「とんでもないタイトルを付けるバンド」という認識で止まっていて。なので、その日のライブで初めてホルモンの曲を聴いたんです。マジでブッ飛びましたね。「こんな世界があるんだ!」って。楽曲のインパクトはもちろん、会場の盛り上がりがとんでもないことになっていて。当時はモッシュなんて言葉も知らないですし、「なんだこの空間は! すげえ! 楽しい!」って。一発でホルモンにハマりました。カルチャーショックでしたね。速攻で次の日にアルバム「ロッキンポ殺し」を買いに行きました。

「ロッキンポ殺し」を買ったときのことはよく覚えてます。ジャケのインパクトが強烈じゃないですか。あのCDをレジで店員さんに差し出したとき、なんとも言えない気持ちよさを感じたんです。“普通”じゃないものを好きな自分というか。「俺、こんなヤバいバンドを知ってるんだぜ!」って10代特有の優越感に浸ってました(笑)。地元の八王子でホルモンが結成されたというのも大きなポイントでしたね。それまで僕は八王子にそれほど深い思い入れがなかったんです。でも、ホルモンに出会ったことで八王子市民であることに初めて誇りを持つことができました。

「便所サンダルダンス」で入場していたメキシコ修業時代

自分は子供の頃からプロレスラーになることを目指していて、高校卒業後に新日本プロレスの入門テストを受けたんです。でも1回目のテストに落ちてしまって。そこで一念発起して、自分が好きなものを全部絶ったんです。バイトもせず、友達と遊ぶこともせず、ひたすら練習に没頭して絶対レスラーになってやるんだと。それでホルモンを聴くこともやめたんです。でも全然ダメでしたね。1週間持ちませんでした(笑)。せめて好きな音楽くらい聴かないと息が詰まりそうで。そこからホルモンの音楽に力をもらいながら練習に励んで、高校卒業翌年の2009年に新日本の入門テストに無事合格することができました。

新弟子時代は練習もさることながら、とにかく雑用が多くて、寝る前にホルモンを聴くのが唯一の楽しみでした。とはいえ疲れ果ててるから、曲を聴きながら一瞬で眠りに落ちちゃうんですけど(笑)。新弟子仲間にもホルモンを好きな奴が1人だけいたんですよ。唯一盛り上がるのがホルモンの話題でした。とはいえ一緒にライブに行ったりはしませんでしたけどね。

その後、僕は2013年から海外武者修行に出て、イギリスを経て翌年メキシコに渡って「カマイタチ」という名前のマスクマンになったんです。そこで入場曲を決めることになったんですけど、好きな曲にしていいと言われたから、これはホルモン一択だろうと。で、「便所サンダルダンス」に決めました。「この曲で入場したら絶対にテンションが上がるだろうな」と思って。自分が好きな曲で入場するのって本当に最高ですよ。メキシコのファンに「この曲ヤバくね?」ってアピールする感じもあって。勝手にホルモンの音楽を普及してましたね。現地のレスラーから「お前の入場曲、めちゃくちゃカッコいいな」って言われたこともありましたよ。タイトルを教えてくれって言われたんですけど、「便所サンダル」をなんて訳したらいいかわからなかったんで、仕方なく「BENJYO SANDAL DANCE」ってメモを書いて渡しました(笑)。

ダイスケはんがサプライズで…⁉

2016年の凱旋帰国後は新日本のジュニアヘビー級戦線に加わり、東京ドームで行われている新年恒例のイッテンヨン(1月4日)大会でIWGPジュニアヘビーのチャンピオンベルトを巻くこともできました。その後もいい感じでキャリアを重ねていたんですけど、2018年7月、アメリカでの試合で首を骨折してしまって。お医者さんにプロレス復帰はおろか、日常生活も普通に送れなくなる可能性があると言われて……あのときは目の前が真っ暗になりましたね。その後の検査で、神経に傷が付いてないことがわかったので最悪の事態は免れたんですけど、ハローベストという器具で3カ月間ガチガチに首を固定することになって。まったく動けないので大変でした。でも、動けないけど音楽は聴けるんです。そのときもホルモンの曲をリピートして聴いていました。本当にずっとです。永遠に聴き続けるんじゃないかと思うくらい、ずっと聴いていました。

そんな地獄のような日々を送っていた自分に、ある日ビックリするようなことが起こったんですよ。病室にダイスケはんがお見舞いに来てくれたんです。ダイスケはんと共通の知り合いがいて、熱狂的な腹ペコ(マキシマム ザ ホルモンファンの呼称)である僕を励まそうと思って声をかけてくれたんです。サプライズにもほどがありますよね(笑)。当時ダイスケはんも首を怪我して音楽活動を休止されていて、そこからはお互いの症状について情報交換をしたり、励まし合うようになりました。僕はダイスケはんの復帰ライブを観に行きましたし、ダイスケはんも僕の復帰戦を観に来てくださって。どちらも実現したのはうれしかったですね。

復帰後には、以前から持っていた夢を叶える大きなチャンスを手に入れることができました。僕はジュニアヘビーという100kg以下の階級の選手なんですけど、この階級のままでヘビー級の王座に挑戦できることになって。しかも対戦相手は若手時代にしのぎを削ったEVILで、自分にとっての大一番。この大事な試合をぜひとも尊敬するダイスケはんに見届けてほしいと思ってダメ元で会社を通してオファーしたら、「喜んで!」とご快諾いただけて。当日、ゲストとして放送席に来ていただけたんです。ダイスケはんは「由緒あるタイトル戦だし、あくまでも公平な立場で話します」とおっしゃっていたんですけど、興奮して途中から100%高橋ヒロム寄りになってましたね。「ヒロム立ってくれー!」って(笑)。残念ながら試合には負けてしまったんですけど、あの声援は本当に力になりました。

プロレスラーにも中二病マインドが必要

ホルモンの最大の魅力は、聴き手を非現実的な世界に連れて行ってくれるところ。プロレスラーになってから特に思うことなんですけど、人前に立って何かを表現する人間って普通じゃダメだと思うんです。自分だけの世界観を徹底的に作り上げて、お客さんを引き込んでいく。セルフプロデュースという部分でも、めちゃくちゃ影響を受けています。ホルモンの世界観を説明するときに、マキシマムザ亮君がよく「中二病」というキーワードを出されていますけど、僕はプロレスラーにも中二病的な部分が必要だと思うんです。自分がカッコいいと思うものにとことん浸れる感性というか。

僕は新しい技や、技の名前を考えている時間がとにかく楽しいんです。真夜中に1人でニヤニヤして。10代の頃って髪型を変えるときとか、すごく勇気が要ったじゃないですか? 「みんなどんな反応するんだろう?」って。新しい技やコスチュームを披露するときって、僕の中では、10代の頃に新しい髪型で登校するときの気持ちにすごく近いんです。完全な中二病ですよね(笑)。プロレスについて考えるのが楽しくて仕方ないんです。それはファンの時代からずっと変わりません。よく言えば「少年の心を忘れていない」というか(笑)。でもホルモンのメンバーの皆さんも、きっと同じ気持ちなんじゃないかなと思うんです。音楽について考えることが楽しくて仕方ない。そういう気持ちが作品やライブから強烈に伝わってきますよね。しかも自分たちが作り上げた世界観をメンバーが一番楽しんでいるというか。なので僕も試合はもちろん、マイクアピールをするときも全力で自分の世界に浸りきるようにしています。少しでも恥ずかしいなと思ったら、そこでおしまいなんです。中途半端なレスラーが一番カッコ悪いですし、お客さんも一瞬で冷めてしまうので。自分には中二病的なマインドがあるからこそプロレスを誰よりも楽しめるんです。たとえ辞めて消えても、死んでも、高橋ヒロムがいたというシミを新日本プロレスに残したいと思っています。

ホルモンのライブで得た新たな気付き

アルバムにすさまじく分厚いブックレットが付いていたり、DVDを観るためにゲームをクリアしなきゃいけなかったり、ファンをとことん楽しませる姿勢にも影響を受けています。普通の人が考えつかないようなアイデアを実行してしまうところも毎回すごいなと思います。先日、運よくチケットが当たって八王子でやったホルモンのライブを観に行ったんですけど、そこでも、改めてすごいなと痛感させられることがあって。そのライブは、声を出せない代わりにお客さんが自家製のペットボトルの鳴り物(エモートシャウト)を持ち寄って、みんなで音を出して盛り上がるという内容だったんです。ライブに行く前は「ペットボトルを振って盛り上がれるのかな?」とか思っていたんですけど、2000人が一斉に鳴らすペットボトルの音ってめちゃくちゃすごいんですよ!(笑) 音量としては声を出すよりもデカいんじゃないですかね。あの衝撃はライブでしか味わえないと思いました。しかもペットボトルなんで誰でも簡単に作れるじゃないですか。これは発明だなと思いましたね。

コロナ禍以降、お客さんが歓声を上げることができなくなって、プロレス界も大ピンチだと感じています。プロレスは選手に声援を送ったりコールをしながらお客さんに楽しんでもらうことも醍醐味の1つなので。自分なりに精一杯試合をしてるんですけど、この状況の中で以前のようにお客さんに楽しんでもらうのは、どうしても限界があるのかなって。それが先日のホルモンのライブで見事に覆されました。「こういうやり方があったのか!」って。声を出せないんだったら、その状況を逆手にとって何か面白いことができるんじゃないか? 自分にはそういう発想がなかったですし、本当に勉強になりました。

これ完全にホルモン宛てのラブレターになってしまっていますね(笑)。ご本人方に届くことをビビリながら祈っております。リング上での“なんでもこいや精神”と違い、ホルモン公式TwitterやナヲさんのTwitterをフォローするのにもなかなかの勇気と時間が必要でした。「いいね」やRTもすぐにはできないし、迷いに迷って実行したときには、もう違う話題が盛り上がっていたり(笑)。自分の好きなことに関しては「ヒロム」ではなく「広夢」になってしまいます。

僕の夢はいつか、なんらかの形でマキシマム ザ ホルモンとコラボすること。例えばオリジナルのテーマ曲を作っていただいたり、MVに出させていただいたり、あとは「便所サンダルダンス」を生で演奏してもらう中、入場したり。そのときは1日限定でカマイタチを復活させます(笑)。……なんて言い出したらキリのないことを日々、耳心地のよすぎる楽曲とともに妄想してるんですけど、これはあくまでも究極の夢の話なので。ホルモンの皆さんには、とことんやりたいことをやり続けてほしいですね。今まで通りメンバーの皆さんが楽しいと思うことを表現していただければ、僕はそれだけで満足です。自分は永遠の腹ペコなんで、どんなものも喰らう用意はできてますんで。

高橋ヒロム(タカハシヒロム)

新日本プロレス所属。2010年8月にデビュー。2013年6月から海外武者修行に出発する。凱旋帰国後は内藤哲也率いるユニット「LOS INGOBERNABLES de JAPON」に加入。2017年1月4日、東京ドーム大会でKUSHIDAの持つIWGPジュニアヘビー級王座に挑戦し勝利を収め、第76代チャンピオンとなる。2018年6月に行われた大会「BEST OF THE SUPER Jr. 25」で初優勝を飾るも7月に首を骨折し1年半に及ぶ長期休養を余儀なくされる。その後、復活を遂げ2019年12月開催の「BEST OF THE SUPER Jr. 27」で2年ぶり2度目の優勝を果たすと、以降同大会で2年連続優勝。前人未到の3連覇を成し遂げた。

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