PIZZA OF DEATH RECORDS主催のライブイベント「SATANIC CARNIVAL'18」が6月16、17日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールにて開催された。
5年目の開催となった今年は2日間で総勢38組が出演。「SATAN STAGE」「EVIL STAGE」の2ステージを舞台に熱演を繰り広げた。また「BOOTH」エリアで毎年恒例の高円寺華純連による阿波踊りや、Monster EnergyによるBMX SHOW、ベッド・インのパフォーマンスなどが行われた。この記事ではSATAN STAGEの模様を中心にレポートする。
6月16日
1日目の幕を開けたのはSATAN STAGEのFear, and Loathing in Las Vegas。彼らは体調不良のSxun(G)の欠席によって5人でのライブとなったが、So(Vo)は「5人で思いっきりサタニックを盛り上げてやるって気持ちで来てるし、5人でいつも以上にラスベガスの色を出せたらと思ってますのでお前らついてこいよ!!」と力強く宣言した。そのままバンドはMinami(Vo, Key)のラップパートが光る新曲「Greedy」をドロップ。その後も多様な展開のナンバーをパワフルに届け、トップバッターとしてフロアを大いに盛り上げた。初のSATAN STAGE出演となったG-FREAK FACTORYは茂木洋晃(Vo)が「俺たちはずっとサブステージのスペシャリストでした。メインステージに上げてくれたSATANIC CARNIVALに感謝と敬意しかありません」と感謝を述べ、エモーショナルにライブを進行。「SOMATO」や「日はまだ高く」で場内のテンションを引き上げ、「Too oLD To KNoW」では茂木がフロアに下り、観客に支えられるように同曲を歌唱。まくし立てるように戦争や自然災害の被災者へのいたわりの言葉や、社会へのメッセージを続け、最後に穏やかな顔で「EVEN」を届けた。
庵原将平(Vo, B)が「バンドができなくなったらピザに就職してお茶汲みから始めたい」と独特の言葉選びで「SATANIC CARNIVAL」出演の喜びを口にしたSHANK。終盤には庵原が時間が余っていることを明かし、ファンから声の上がったリスエスト曲「MONKEY FUCK」を急遽織り交ぜる。「BASIC」では松崎兵太(G, Cho)のシールドが抜けてしまうアクシデントに見舞われるも、庵原が「踊れ!」と声をかけ、松崎がその言葉通り体を揺らしてファンを楽しませるなど、ライブバンドならではの機転を効かせたライブを見せた。2年ぶりの「SATANIC CARNIVAL」出演となったMAN WITH A MISSIONは「マタココニ立テテ、非常ニ光栄デス」と言い、最新アルバム「Chasing the Horizon」収録曲「2045」でバンドの最新モードを見せつける。かと思えばキラーチューン「Emotions」「FLY AGAIN」を続け、会場いっぱいにつめかけたオーディエンスを踊らせた。「Winding Road」をエモーショナルに届けたのち、最後に人気曲「Get Off of My Way」で再び観客のテンションを引き上げ、彼らも楽しみにしているというSCAFULL KINGへとバトンを渡した。
ひさしぶりのライブとなったSCAFULL KINGは「僕ら普段活動してないのにこんなに観にきてくれちゃって。日本のラウドシーンの最前線のバンドが集まってるのに……僕らは……最年長です!」と恐縮しつつも、「THE SIMPLE ANGER」や2011年に発売した“最新シングル”収録曲「searching for」などを貫禄のある演奏で届け、オーディエンスを踊らせていく。SYUTA-LOW "TGMX" TAGAMI(Vo, Trumpet)は「少しは若者と仲良くなれたかな?」と心配そうにフロアの様子を伺っていたが、メンバー同士が体当たりしながら歌ったり、NARI(Sax, Vo)がラップで今後の活動予定を告知したりと、ユーモラスなパフォーマンスで場内の笑いを誘っていった。
この日のEVIL STAGEではGOOD4NOTHINGやジャパハリネットといった常連組のほか、初出演のPALM、THE CHERRY COKE$、Castaway、ASPARAGUSが個性あふれるライブを展開。CastawayはSota(Vo)の「ここまで来るのに悔しいこと、いろいろありました。今日出るにあたって『あのバンドを潰したい』『あのバンドに見てもらいたい』とか思ってたけど……違いましたね。ここにいる皆さんへの感謝しかないです」という言葉から「Over And Over Again」を投下し、原曲に参加しているOtusのMakimura(Vo)と共にフロアの熱気を引き上げた。開放感のある「BE TOGETHER」、ダンサブルな「SHALL WE DANCE?」といったナンバーを巧みな演奏で届けたのはASPARAGUS。“初カーニバル”で浮かれているという渡邊忍(Vo, G)は軽妙なトークでフロアに笑いを起こしつつ、「今日は楽しいけどさ、たまに寂しいときあるだろ? そういうときはさ、早く寝ちまえよ! 明日の朝起きればけっこう忘れてることもあるから。俺が言うと深みあるだろ(笑)」とキッズたちにメッセージを送っていた。
SATAN STAGEの終盤には04 Limited Sazabys、マキシマム ザ ホルモン、HEY-SMITHと3組のヘッドライナーが登場。初年度から「SATANIC CARNIVAL」皆勤賞の04 Limited Sazabysはエッジィな「escape」「fiction」「discord」を連投し、アグレッシブにライブの幕を開ける。火柱が上がったり、レーザーが場内を飛び交ったりと、4人はヘッドライナーらしいド派手なステージングでもファンを引きつけていった。初年度はEVIL STAGEのトップバッター、3年目にEVIL STAGEのトリを務め、昨年SATAN STAGE進出と、年々託される役目が大きくなっていく彼ら。RYU-TA(G, Cho)は「midnight cruising」のアウトロで「やっぱりSATANICは格別ですなあ!」と喜びを炸裂させ、GEN(B, Vo)はMCで「毎年このフェスに必要とされること、誇りに思います。このフェスが始まったあたりから僕らの人生が転がり始めた。すごく恩を感じているので、このイベントを支えて守って行く存在になりたいと思っています」と真摯な思いを口にした。
マキシマム ザ ホルモンは「シミ」でライブを開始し、場内にヘッドバンギングの嵐を巻き起こす。この日、1歳9カ月の娘を連れてきたというナヲ(ドラムと女声と姉)は「会場に入った瞬間にラスベガスの爆音で爆泣きだから! ちょっとやめて。ちょっと落ち着いたと思ったら四星球は白塗りだし、また落ち着いたと思ったらオオカミが出てきて……」と話しつつ、「というわけで、娘を本日一番泣かせてやろうと思ってます!!」と意気込んだ。フロアに巨大サークルが発生した「絶望ビリー」ではマキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)のメロディアスなギターサウンドとナヲの美しい歌声がオーディエンスを魅了する。その後4人は「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」「皆殺しのメロディ」「生理痛は神無月を凍らす気温。」といった古くからのナンバーでフロアを熱狂させ、ラストは「恋のスペルマ」で踊りまくるオーディエンスの頭上に“白いスペルマ泡”を発射した。
NOISEMAKERが来年のSATAN STAGE進出を約束してEVIL STAGEを締めくくったあとSATAN STAGEに登場したこの日のトリ、HEY-SMITH。彼らは「お待たせー!」とうれしそうにステージに登場すると、マイナーコードのスカナンバーを連投して、オーディエンスを踊らせていった。「Don't Worry My Friend」では前回のツアーのゲストバンドのロゴをステージ後方のスクリーンに掲げ、ミディアムチューン「Before We Leave」では薄暗い照明の中で情感たっぷりに演奏するなど、ライブは徐々にエモーショナルになっていく。最後には猪狩秀平(G, Vo)が「俺らのことは、探さないと見つけられない存在やと思うねんな。マジで見つけてくれてありがとう。大人になったら感動しなくなるとか言うけど、めちゃめちゃ感動するやんかー!」と思いの丈をぶつけ、PIZZA OF DEATH RECORDSに「Goodbye To Say Hello」を贈った。「自分たちがもうちょっとやりたいから」という理由でアンコールを行うことにしたHEY-SMITHメンバー。猪狩は感激が収まらない様子で「最高!」と何度も口にし、バンドは「Come back my dog」で大盛り上がりのうちに1日目の幕を下ろした。
6月17日
2日目のSATAN STAGEの幕を開けたのはPIZZA OF DEATH RECORDS所属のWANIMA。彼らはステージいっぱいに駆け回ったり、カメラに向かっておどけたりとエネルギッシュにステージに登場する。そして「今は立派な君のパパも 1度は聴いてたんだHi-STANDARD」とレーベルの先輩へのリスペクトを込めた歌詞が印象的な「Japanese Pride」を1曲目に投下。「BIG UP」「リベンジ」と勢いよく前半を駆け抜けたあと、情感たっぷりに「ヒューマン」を歌い上げ、最後に「シグナル」で場内いっぱいに盛大なシンガロングを響かせた。続いて登場したのは昨年EVIL STAGEのトリを務め、今回初めてのSATAN STAGE出演となるCrystal Lake。Ryo(Vo)は「今日は去年の『お前らをここに連れて来る』という約束を果たしに来たぜ! 俺らが今ここに立ってる意味をお前らにわからせてやるぞ!」と意気込み、ブルータルなサウンドで場内の空気を一変させる。「Matrix」では先ほどEVIL STAGEに登場したばかりのHER NAME IN BLOODのIkepy(Vo)とのコラボで場内を沸かせた。終盤にはRyoが「いつか必ずこのSATAN STAGEのトリに、お前らを連れて戻って来るぞ!」と新たな約束をし、ステージをあとにした。
MONOEYESのライブでは、リハーサルの時点からファンがクラウドサーフを行うという異例の盛り上がりに。そんなファンについて細美武士(Vo, G)は「日曜の昼間から大騒ぎですね。セキュリティの皆さん、うちの馬鹿どもがすみませんでした」とうれしそうに語る。「俺は大人になるまで友達もいなくて。悪気はねえのに嫌われる。そんなもんだなと思ってたけど、バンド始めて、友達も仲間も親友もでき、お前らみたいな居場所ができ……一緒に年を取ろう」と声をかけてから始まった「Two Little Fishes」では、まるで彼の言葉に賛同の意を示すようにフロアから盛大なシンガロングが起こった。ROTTENGRAFFTYは、スケール感あふれる「PLAYBACK」「SHRED」といったナンバーを序盤から披露し、観客たちを圧倒。「So...Start」からはフロアの所どころでサークルモッシュやヘッドバンキングが発生し、混沌としたムードが漂った。「THIS WORLD」演奏後のMCでは、N∀OKI(Vo)が「帰ってきた家みたいやーーーーー!!」とこのイベントに対する思いを絶叫。最後にはN∀OKI、NOBUYA(Vo)が熱い掛け合いを繰り広げる「『70cm四方の窓辺』」「金色グラフティー」を届け、抜群の一体感を生み出して出番を終えた。
Ken Yokoyamaは「I Won't Turn Off My Radio」でライブの口火を切る。「Punk Rock Dream」ではマイクを客席に投げ入れファンのシンガロングを煽り、続く「Maybe Maybe」では「歌ってるの聞こえてるぜ」とうれしそうに笑顔を見せた。MCでは「まだまだいいバンド出てくるからたくさん音……じゃねえな、気持ちの入ったパンクロック、ロックンロールを浴びて帰ってな」とファンに呼びかける。自らが日本国旗を背負ってライブを行う意味を丁寧に語ったあと「好きなもん振ってくれよ。俺はこの日の丸を振りたい。こういうこと、学校では教えてくれないから、ライブの場でこういうことを知ったんだ」と言い「We Are Fuckin' One」「Ricky Punks III」といったメッセージ性の強いナンバーを続けた。そして最後に「Ken Bandが進んでるという証」として新曲「Helpless Romantic」を披露して、大好きだというザ・クロマニヨンズへとつないだ。
HER NAME IN BLOODがさわやかな朝のフロアに“愛とメタルと筋肉”をたっぷりと届けて幕を開けたこの日のEVIL STAGEにもTrack'sやハルカミライ、バックドロップシンデレラと初登場のアーティストが続々登場。PIZZA OF DEATH RECORDS所属ながら今年が初出演となったDRADNATSはヤマケン(B, Cho)が「ピザオブデスありがとうございます。出会えてよかったと思ってます」とレーベルへ感謝を伝え、同レーベルからリリースした作品「ONE HiT TO THE BODY」「MY MIND IS MADE UP」収録曲を丁寧に演奏した。この日異彩を放ったのは「BOOTH」エリア内の特設ステージに登場したベッド・イン。彼女たちはリハの時点で絶え間なく喘ぎ声を飛ばして会場を“クンピ”色に。「♂×♀×ポーカーゲーム」「男はアイツだけじゃない」の2曲を披露したライブでは幾度も「フワフワ」コールを催促し、悪魔ならぬ“アクメ”的パフォーマンスでキッズたちをモッコシモコモコ奮い勃たせた。
「健さんのあと、ザ・クロマニヨンズの前、怒髪天と難波さん(NAMBA69)の裏。新手のいじめのようなこのプレッシャー、気持ちいいです!(笑)」と自らの出番について語ったのはcoldrain。彼らはステージ後方のスクリーンにメンバー紹介のオープニングムービーを流したり、「FIRE IN THE SKY」で火柱を上げたりと、ダイナミックなステージングで観客を魅了していく。中盤のMCではMasato(Vo)が「ヘッドライナーの3バンドに選んでもらいました。しかしcoldrainはまだまだ本当はヘッドライナーに当たるバンドではないと自分たちでもわかっています。でもピザオブデスに、coldrainが11年『パンクロック』ではなく『ラウドロック』を唱え続けたことに期待をされて、この場所を与えられたのだと思っています」と胸の内を明かす。そして「と言うことは、俺たちはまだまだあなたたちを暴れさせないといけないと思うんですよ。幕張、揺らしちゃってもいいですか?」と煽り「No Escape」ではオーディエンスのジャンプで、その言葉通り会場を揺らした。
ジャングルの中を彷彿とさせるSEをバックに登場したザ・クロマニヨンズは「ナンバーワン野郎!」で演奏をスタート。甲本ヒロト(Vo)はブルースハープの音色をフロア中に響かせ、待ち望んだ観客たちを一気にヒートアップさせた。この日ザ・クロマニヨンズは「どん底」「タリホー」「炎」など、新旧さまざまな楽曲を組み合わせたセットリストでライブを進行。甲本のステージパフォーマンスのキレが増していく中、真島昌利(G)も盛んにステージ前方へと移動してオーディエンスを沸かせた。後半の「紙飛行機」で甲本が手をゆらめかせると、観客たちも彼の動きに合わせて手を振る。そしてラストナンバー「クロマニヨン・ストンプ」では「人間!」コールがそこかしこに飛び交い、終始シンプルかつパワフルなパフォーマンスを見せた。
あやぺた(Vo, G)が「こんなときに全力を出しきれない女になりたくない! みんな拳を貸してくれ、その声を貸してくれ!」と叫び、渾身のライブでDizzy SunfistがEVIL STAGEを締めくくると、SATAN STAGEにはいよいよ大トリの10-FEETが登場。例年、特殊効果の空砲の使いどころをめぐってファンを笑わせている彼ら。「RIVER」や「STONE COLD BREAK」をタイトにプレイしたあとの最初のMCでさっそくTAKUMA(Vo, G)は特殊効果について言及。「今年こそは必ず『ここや』っていうところで使うから」とファンに約束し、空砲の発射を担うボタンがKOUICHI(Dr, Cho)の手元にあることを説明していると、突然KOUICHIは「オッケー!」と言ってボタンを押してしまう。思わぬタイミングで空砲が飛び出し「今年これで終わり?」と呆然とするTAKUMAが、くしゃみをするとステージのセットが崩れ落ち、メンバーとファンを驚かせる。さらにTAKUMAが再びくしゃみをすると次はタライが落ち、NAOKI(B, Vo)は「俺らロックバンドやねんけど」とこぼすという、10-FEETらしいパフォーマンスで場内の笑いを誘った。その後、彼らはTAKUMAの熱く優しいMCから「太陽4号」「夢の泥舟」を届ける。さらに曲順を間違えてしまったと告白して「1sec.」を2回連続でプレイするなど、等身大のライブを見せた。TAKUMAは「カツカツまでやらせてもらいます」と言い、彼らはアンコールは行わず、ラストナンバー「VIBES BY VIBES」まで一気に駆け抜ける。最後に銀テープが噴射され、5年目の「SATANIC CARNIVAL」は大団円を迎えた。