JOYSOUND 音楽ニュース
powered by ナタリー
「JOYSOUND X1」公式サイト「ジョイオンプー」LINEスタンプ販売中

愛する楽器 第1回 古市コータローと20年連れ添うGIBSON ES-335

6年近く前2019年03月08日 4:05

アーティストが持っている楽器の中で、特にお気に入りの逸品を紹介してもらうこの企画。第1回は古市コータロー(THE COLLECTORS)が、長年連れ添うメインギターについて語ってくれた。RICKENBACKERのギターを弾いているイメージが強い古市だが、今回紹介してくれたのはGIBSON ES-335。本機は彼にとってどういう存在なのだろうか。

RICKENBACKERはルックスが魅力的だった

今日持って来たのはメインギターのGIBSON ES-335。RICKENBACKERは僕の代名詞みたいに言われてるってことは知ってるけど、1本選ぶとしたらコイツなんです。

THE COLLECTORSの前のバンドではRICKENBACKERを、THE COLLECTORSの初期の頃はFENDER Jazzmasterを使ってました。当時僕らの周りはみんなちょっと特殊な楽器を使ってたから、何を弾いてもなかなか目立たない中、Jazzmasterを使ってる人はあんまりいなかったんですよね。それでJazzmasterに手を出してみたらけっこう気に入っちゃって。2ndアルバム「虹色サーカス団」まではJazzmasterで、3rdアルバム「ぼくを苦悩させるさまざまな怪物たち」からまたRICKENBACKERかな。ホント単純にルックスが魅力ですね。RICKENBACKERってコード弾きに向いたギターだと思うんですけど、THE COLLECTORSはギタリストが1人ですから、コードだけ弾いているわけにもいかなくて、GIBSON Les PaulやFENDER Stratocasterと同じような弾き方で使ってて、バッキングだけでなく単音もバリバリ弾きまくってた。そういう人はあんまりいなかったと思うから、同業者のギタリスト友達もみんな驚いていました。ハイポジションでのチョーキングをする人もあんまりいなかったし、ちょっと使い方が特殊だったと思う。見る人が見たら、邪道って思ったかもしれない。でも僕はリッケンのルックスが好きで「これを弾きたい!」と思ったから、普通のギターとして弾いてました。

ただ、超絶扱いづらいですよ。現行品はわかりませんけど、THE COLLECTORSの初期の頃のモデルはチューニングが合うのは奇跡で、オクターブも合わなくて。でも使ってるうちに「ここは普通の倍くらい強く押さえると合う」とか「ここは伸びないから手前で粘ろう」とか、そういうのがわかってくると、どんどん面白くなっちゃって。手が掛かる分かわいくなっちゃう、みたいなね。それによって自分だけのサウンドを出せてる気もしたし。

これはもう、買わなきゃダメだ

RICKENBACKERは1989年から、ざっくり10年間ずっと使ってました。ライブの途中でギターを変えるのはあんまり好きじゃないから、レコーディングもライブもずっと同じのを使った。でも99年に「BEAT SYMPHONIC」ってアルバムを作ったときに「これはRICKENBACKERでライブをやるのは厳しいんじゃないか」って、感覚的に思ったのね。今振り返ると、「厳しい」と感じたのはまだ俺自身がダメだからだったね。生意気だけど、今の俺なら行ける(笑)。

それで何を使おうか考えたときに、ちょうど「ギター・マガジン」でES-335特集をやってて、これがいいかもって。そう思ったら行動が早いから、すぐに池袋のイシバシ楽器に行きました。店員さんに「ES-335見たいんですけどありますか?」って聞いたら「注文しないと入ってこない」って言うから、「悪いけど5、6本入れてくれない?」って頼んで、その中から選んだのがこれです。「Historic Collection」っていうシリーズなんですけど、当時はすべて手作業で作っていたから個体差があって、当然塗装も1本1本違う。その中から好みのものを選びました。もちろん見た目は重要。見た目を100%気に入ってなかったら、その時点で弾かないですよ。逆に見た目が気に入っていたら、最初はどんなに弾きにくくても、どんなにダメだと思ってもよくなるまで弾く。そういうものなんだよね。

ES-335を使ってるギタリストでかっこいいと思ったのは、Cream時代のエリック・クラプトン。弾いてるルックスがいいね。ちょうどES-335が欲しいなって思い始めたときに、ヴァージンカフェジャパンのでっかいスクリーンでThe Rolling Stonesの映像作品「The Rolling Stones Rock and Roll Circus」が流れていて、参加していたクラプトンが「Yer Blues」をES-335で弾いていたんですよ。あれはカッコよかった。「ギター・マガジン」の特集にしてもヴァージンカフェで流れてた映像にしても、買うように仕組まれてた感じだよね(笑)。「これはもう、買わなきゃダメだ」っていうときがあるんだよ。

ES-335をES-335らしく使おうと思ったらいくらでも使えると思うんですけど、僕の場合ES-335で音を作ってても、RICKENBACKERっぽくなってきちゃう。自分の中の音の基準がRICKENBACKERみたいな音なんだろうね。いや、もしかしたらそれはRICKENBACKERの音ですらないのかもしれない。僕には自分の理想の音っていうのがあって、いつもそれを探してる。だからどのギターを使っても、結局「またこれ?」っていう似た音になる。ただ、聴いてもらえるとわかると思うけど、2018年に出した「YOUNG MAN ROCK」は僕の最新型ES-335サウンドになってますよ。いつも同じ音を探してるようでも、日々の生活や耳にした音楽、いろんな影響によって、自分でも気付かないうちにバージョンアップされてるんじゃないかな。ジーンズで例えれば、LEVI'Sの501だって、ずっと同じ形って言われてるけど、微妙なシルエットの変化があって今日まで来てるわけですよ。僕の音もそれと一緒なんじゃないかな。

別のアンプを使っても自分の音になる

レコーディングのときに、どのギターを使っても「うーん、違うな」って思うとき、ES-335で弾いてみると「なるほど、オッケー」ってなることが多いかな。自分を一番表現しやすいのがコイツだってことなのかも。RICKENBACKERは特殊ですから、VOXだったり、MARSHALLだったり、自分の中で相性バッチリのアンプがあってこそだったんですよ。でもES-335だったら別のアンプでも自分の音になるね。ES-335はいつもと音色のカラーが違っても「これはこれで俺の音だな」って思えるんですよ。

ライブは基本ES-335だけで完結させるようにしてます。さっきも言ったけど、ちょこまかギターを変えるのはあんまり好きじゃないです。なるべくCDの音を再現してあげないといけないバンドもあるだろうけど、僕らの場合は「レコードとまったく違ってもいいじゃん、ライブなんだから」っていうバンドだから。ギターを変えるより大事なことがあるって思ってる。

「YOUNG MAN ROCK」を出したあとソリッドギターが弾きたくなって、今回のツアーではLes Paulを使ってます。アルバムができあがって、さて今回のツアーは何を使おうかって考えたときに、Les Paulがパッて浮かんで頭から離れなかったんだよね。実際に探して手に入れて、去年の「THE COLLECTORS CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE "LAZY SUNDAY AFTERNOON"」で実験的にやってみたんだけど、バッチリだったから今回もこれだなって。ES-335はセミアコースティックギターだから音が広がり、Les Paulはソリッドギターだからタイトな感じ。印象はかなり違うよね。「今日はバンドの調子があんまりよくないな」ってときでも、ES-335だと悪く言えばごまかしが効く。ソリッドだと歌もより抜けるし粗も目立つけど、今のTHE COLLECTORSの演奏のポテンシャルだったら、Les Paulでも行ける気がした。だから今はES-335はお休み中だけど毎回ステージの袖にはいます。

構えていると安心する

3月にリリースされるソロアルバム「東京」はES-335とFENDER Telecaster、半々で使ってるかな。以前のソロライブではTelecasterだったんですけど、次のライブは……まだわかんないですね。でもやっぱりこうやって構えてると、ES-335が一番安心します。ライブで使わないときも20年間毎年一緒にツアー回ってますからね……仲良しですよ(笑)。

トラブルやアクシデントはないに越したことないんですけど……あるんですよ、20年間使ってきた中で1回だけ。機材運搬中、ES-335のヘッドの部分が折れまして……至急直しましたけどね。幸い大事には至らず、音もそんなに変わらなかったんですけど、ちょっと傷が残ってて……ここを見るとキュンとしますね。

例えるならば、“相棒”だと男になっちゃうから……ES-335は女性なんだよなあ。まあ、いわゆる良妻賢母ですよね。茶髪とかではないな。RICKENBACKERはとんでもない不良ですけど……でもそういう子もかわいい、みたいなさ。ギタリストはよく一夫多妻制って言われて、僕も多妻ではありますけど、ES-335は連れ添って20年。本命を大事にしてるほうだと思います。楽器って普段倉庫とか楽器車にあるでしょ? でも何年か前に修理に出したとき、年の暮れにコイツが家に帰ってきて、正月を一緒に過ごしたことがあるんですよ。あのときはすごくうれしかったなあ(笑)。

ES-335を弾く古市コータロー

古市コータロー

THE COLLECTORSのギタリストとして1987年「僕はコレクター」でメジャーデビュー。音楽活動以外に俳優としてドラマにも出演している。3月27日には4thソロアルバム「東京」を発売する。

取材・文 / 金子厚武 編集・構成 / 中村佳子(音楽ナタリー編集部) 写真 / 阪本勇

関連記事

THE COLLECTORS

アルバムツアー中のTHE COLLECTORS、2025年の新ツアー早くも決定

約1か月
THE COLLECTORS

THE COLLECTORSの「スティーヴン・キングは殺人鬼じゃない」がMVに、加藤ひさし自伝も刊行

2か月
奥田民生

奥田民生が登場!古市コータロー、ウエノコウジ、松本素生、古市健太のSPEAKEASY BAND梅田公演に

3か月
THE COLLECTORS

THE COLLECTORSが26枚目のオリジナルアルバム発売、レコ発ツアーで8都市巡る

5か月
フラワーカンパニーズ

結成35年のフラワーカンパニーズが秋に四星球、ピーズ、怒髪天、SCOOBIE DOと対バンライブ

8か月
スピッツ

スピッツ恒例3イベント一挙開催決定!ホムカミ、サバシスター、羊文学、家主、離婚伝説ら出演

8か月
フラワーカンパニーズ

フラワーカンパニーズ恒例主催イベントにTHE COLLECTORS出演

8か月
古市コータローwithウエノコウジ

古市コータローwithウエノコウジ、12会場巡る全国ツアー開催

8か月
古市コータロー

古市コータローのソロツアーに會田茂一 、井ノ原快彦、西寺郷太、YO-KING

8か月
THE COLLECTORS「THE COLLECTORS QUATTRO MONTHLY LIVE 2023“日曜日が待ち遠しい!SUNDAY ON MY MIND”2023.10.15」配信ジャケット

THE COLLECTORSマンスリーライブ10月公演の音源配信

12か月