京都出身の女優・クリエイターの愛わなびが、カセット付き写真集「愛になる」の制作を発表。制作にあたってクラウドファンディングを実施している。
かつてアイドルとして上京した愛わなびがこれまでの活動の集大成として発表した本企画は、1年を通して「春」「夏」「秋」「冬」の4つのテーマに沿った写真集を1冊ずつ、楽曲をそれぞれ1曲ずつ制作するというDIYなプロジェクト。楽曲制作はザ・おめでたズのDJ / トラックメイカーのやじまたくま、作詞は群馬を拠点に活動するバンド・こいするおんなのこ、Magic, Drums & Loveの°C-want you!、女優の國嶌りょうが担当し、写真集の制作には東京・文喫 六本木で個展開催中の写真家・武井宏員、中国出身の気鋭のカメラマン・zeto wangが参加している。楽曲はSoundCloudで試聴できる。
本作の制作にあたって、制作陣や永原真夏、映画監督の本広克行、ミスiD主宰・小林司の応援コメントも発表された。また愛わなびのTwitterアカウントでは、浪漫革命の藤澤信次郎(Vo)、in the blue shirtの有村崚、TREKKIE TRAXのisagenらから寄せられたコメントも公開されている。
本広克行 コメント
次に何をしでかすかわからない役者でありクリエーターの愛 わなび その集大成の作品を創っていると聞いて全力でやり遂げて欲しい
全部出しきって進化した彼女はまた面白くなるだろう
永原真夏 コメント
わなちゃんへ
完成おめでとう~~~!!!! 久しぶり、元気にしてる?? 曲いいね!爽やかでわなちゃんにぴったり。 あとかわいい。声がかわいい。存在がかわいい。
写真もかわいい。白が似合う。歯がかわいい。 楽曲提供というポジションでオーディションから関わらせて もらっていたけれど、その時はじめて作った曲の歌詞は、いつかみんながアイドルを辞めて、先に進んだ未来で聴き返したときに、あの日々を振り返ってがんばろうと思えるように書いたんだよ。
光より速く君は走れる、理由よりも理屈よりもつきぬけて!
セルフタイトルは名盤と決まっているので、完成したものを
手に取るのが楽しみです。
愛を与えるわなちゃんが、愛の中にいますように。
小林司(ミスiD実行委員長/講談社編集)コメント
いま僕はもう完全なおっさんなので、トトロや猫バスはとっくに見えなくなってしまった。それでも時々、目を凝らすと、見えなくなってしまったものが見えることもある。ミスiDというある意味痛いほど自分に正直すぎる女の子たちのオーディションをやってて、そういうものが見える人というのはやっぱりおもしろいし、それが面倒くさいなと思ったら、もう人生はほぼ終点だな、と思っている。トトロと猫バスの話をしてるわけじゃなく、この受験勉強や就活に意味はあるの、とか、なんで人は生きるのだろう、とか、そういうこと。大人になるとそういうことはだんだん「面倒臭いこと」になり、やがては考えなくなってしまうから。それは別に「人生ってなに」の正解がわかったからというわけじゃなくて、ただただ忙しく、時間と余裕がなくなって頭の中にその場所がなくなってしまうだけなのだ。でもほんとはどう考えても、大人になってスルーしてしまうものの、こぼれてしまうものの中に正解はある。
だんだん感じなくなってしまう「違和感」のほうに真実はある。だからそれが見えたりそこに忠実でいる人たちと話をしたり悩みを聞いたり何かを作って行ったりするのはどんなことよりもエキサイティングで楽しいことだ。幾つになっても。
愛わなびという女の子は、そういう大人になるにつれなくしてしまう違和感や「?」や「!」をずっと大事に抱えてて、大人になるにつれ見えなくなってしまうものに細やかな愛を注げる子で、自分だけのトトロが見える子。
そんな気がする。二、三年前に買った彼女のZINEがあって、それは今でも時々見返すくらい好きなのだけど、それはみんなが見るものじゃなく、彼女にだけ見えるものが詰め込まれているから。全身センスの塊のような女の子が、それを繊細に大胆に、写真家やデザイナーの力を借りて、自分にだけ見える世界を自分のやり方で上手に閉じ込める。今回も写真を見ただけだけど、それでもうほとんど天才的なのがわかる。
そして今回、あんまり得意じゃないと言ってた歌をやる、というのでちょっとびっくりしたけど(一曲だけ聴いた「春の日」、さっそくずっと聴けそうな名曲)、カセットとZINEと聞いて、なるほどと思った。1982年、ムーンライダースという僕の青春のバンドの「マニア・マニエラ」というアルバムが出たのだけど、あまりに難解という評判で売れず(いやわかりにくくないし最高傑作と言っていいくらい何もかも素晴らしいんだけど!)レコード会社の判断でお蔵入りとなったことがあって、そのあとムーンライダーズはその音源を「カセットブック」にして小さな出版社から発売した。大人がわからないと匙を投げたものをこっそり出す形が「カセットブック」だったのだ。僕はその「カセットブック」を今でも宝物として持ってる。
この愛わなびの「カセットブック」は、きっといつか大人になったあなたと、まだトトロが時々見えてたあなたを繋ぐパスポートになるはず。定期的に聴き返したり、見返せるような宝物になるんじゃないか、と楽しみにしてる。そこには大人には見えなくなったものだけが詰まってるはず。