THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのボーカル・RIKUさんの連載「音楽大陸」。RIKUさんが出演中の2人芝居のミュージカル「『天使について』~堕落天使編~」を特集するVol.13の前編では共演者やスタッフからRIKUさんの印象を聞くアンケート企画「RIKUさんってどんな人?」を実施しました。後編では、堕落天使ヴァレンティノとジャコモを演じるRIKUさんと古谷大和さん、天使ルカとレオナルド・ダ・ヴィンチを演じる中村太郎さんへのインタビューを掲載します。稽古を通して親交を深めた3人は、お互いの魅力や刺激的な稽古の内容についてトーク。このインタビューを通して3人が「天使について」に懸ける思いを感じてください。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / 曽我美芽
リーダーっぽさは天性のもの
──この舞台への出演オファーを受けたときの印象を聞かせていただけますか?
RIKU LDHのスタッフから熱烈なオファーを受けたんですけど、「なんで僕なんだろう?」というのが正直な印象でした。
古谷大和 なんでそう思ったの?
RIKU 去年初めて「ETERNAL」という舞台で、お芝居を経験させてもらったけど、共演者の皆さんと比べたらまだ芝居の「し」の字もわからないような状態なんですよ。それなのになんでそんなことを僕に言ってくれるんだろうみたいな。でも「ETERNAL」を観たうえで、熱いオファーをくれたと知って、それならばがんばってみようと思ったんです。ミュージカルへの挑戦はきっと本業の歌手活動にとってプラスになることしかないし、稽古を通して共演者の皆さんと一緒にミュージカルを学べるなんて、表現者としても貴重な機会だと思ったので腹をくくりました。芝居でメシを食っているお二人は、この舞台への出演が決まったときはどんな印象でしたか?
古谷 じゃあまず太郎はどう思ったの?
中村太郎 俺は「古谷大和がいるぞ」って感じで(笑)。僕らはもともと交友があったので。
古谷 ははは。
中村 失礼ながらRIKUさんのことも、THE RAMPAGEさんのことも、お名前を聞いたことがある程度だったんです。僕にとっては畑違いな作品かもと思いながら、共演者を見たら古谷大和がいてびっくり。お笑いコントの舞台かと思った。
古谷 俺はお笑い芸人じゃねえぞ(笑)。
中村 それでよくよく確認したらミュージカル作品だったので、「え、俺がミュージカル!?」っていう感じでしたね。大和くんと一緒にミュージカルをやるとは考えたこともなかったし、俺も歌をやったことがないわけではないけれど、ミュージカル俳優ではないので歌で芝居をすることはこれまであまりなかった。しかも2人きりで上演時間約100分のミュージカルをやるなんて、さすがにおののきましたよ。RIKUくんと同じで「これ、俺でいいのか?」と思いましたね。
古谷 「天使について」は、本当に内容がすごいよね。
中村 うん。RIKUくんは、俺らのことを“そっち側の人”って思ってくれてるかも知れないけれど、舞台役者の中にもいろんなジャンルの人がいて、俺らはミュージカル俳優ではないんです。音楽にもポップス、ヒップホップ、ジャズとかいろいろあるのと同じで。最初は2人芝居の約100分のミュージカル、天使たちの話、そしてキャストしかわからず、台本もない状態でのオファーだったけど、挑戦してみようと思いました。
古谷 俺も歌がメインのお仕事はそんなにしたことがなかったし、2人で20曲以上歌うミュージカルなんて、この先何十年芝居をしていても来ないかもしれない。そんなお仕事がこのタイミングでいただけてめちゃくちゃ幸せでした。超えるハードルが高すぎて見えないとも思ったんですけど、ここで断るのはとてももったいないし、期待を込めてオファーしてくれているのでそれに応えられるようにがんばろうと。実際現場はとても楽しいですし、普段はなかなかご一緒できないような人たちとの稽古は本当に勉強の日々です。最近はずっと作品のことばかりを考えていて、家でお菓子を食べる時間すらないんですよ。毎日どこかでこの作品に携わる何かをしていないと心が落ち着かない。でもそれってとても幸せなことだと思うんです。しっかりと作品と向き合う時間と環境があることは、役者冥利に尽きますね。
RIKU 家でお菓子を食べる暇もないと言っているけど、現場ではお菓子食べてるじゃん。甘いコーヒー牛乳と一緒に(笑)。
古谷 RIKUくんがくれるからでしょ(笑)。普通の稽古だと共演者がお菓子をくれるとかあんまりなくて、自分で買ってきたお菓子を隙間の時間で食べるような感じなんですよ。でも、RIKUくんはお菓子もコーヒーも差し入れしてくれる。
中村 ありがたいよねー。パンもくれるし。
RIKU めちゃくちゃ稽古のスケジュールが詰め込まれている日はゆっくりごはんも食べられないなと思って、お気に入りのパン屋さんのパンを稽古場に差し入れしたんです。
古谷 この現場でみんなが元気でいられるのは、RIKUくんのおかげですね。
──RIKUさんのホスピタリティがすごいんですね。
中村 すごいですよ。リーダーだなって思います。
RIKU えー!
中村 RIKUくんのリーダーっぽさは、天性のものだと思います。周りが勝手にこの人がリーダーなんだろうなって思っちゃうんですよ。それは今回がLDHさんの舞台だからとか、歳上だからとか、そういうことではなく。戦隊モノの赤っぽい感じというか。本人はその自覚がないかもしれないんですけど、自然な行動から「この人はリーダーだ」と思わせるものがあるんです。
絶対にコケられない
──RIKUさんは責任感が強くて、任されたからには絶対にやり遂げるという強い意志がどんなときでもありますよね。今回もそうでしたか?
RIKU LDHでミュージカルの部署が立ち上がって、昨年は「チャミ」っていう作品を上演したんですけど、今回僕が出演する「天使について」がEXILE TRIBEメンバーが参加する初めての作品なんです。HIROさんから「LDHとしてミュージカルに力を入れていきたい」という思いを聞いているので、HIROさんの顔に泥を塗らないためにもがんばりたくて。プライドは捨ててわからないことはわからないと言うようにして、プロからのアドバイスをもらいながら全力で準備をしているところなんです。
古谷 すごいね。
RIKU 共演していただく皆さんの名前を汚せないですから。皆さんのファンの方に「あの作品に出たのは失敗だったね」なんて言わせたくない。LDHやEXILE TRIBEを代表して出させていただいているわけだから、絶対にコケられないんですよ。ここで僕がコケちゃったら、きっと後輩たちの道を閉ざしてしまう。だから言い訳なんてしてらんねえぞって感じで、必死こいてやってます。
中村 大和くんは事務所の後輩のこと考えて芝居をやってます?
古谷 自分のことで精一杯だよ(笑)。そういうことを考えて臨んでくれるRIKUくんがいるだけで、この作品で失敗することはないと思える安心材料になりますよね。ここからどれだけクオリティを上げて、本番でしっかり輝けるかは僕ら次第ですけど、「全然輝けなかったね」みたいなことは断じてないと思います。そういう気持ちでRIKUくんが臨んでくれているだけで、心強いですよ。いてくれて本当によかったです。
これがある意味本当の芝居
古谷 RIKUくんはまずパフォーマンスがすごいじゃないですか。それに普段からドームのような大きな会場で歌って踊っているから度胸がある。芝居に対して不安を感じるのって、肝が据わってない人なんですよ。だからRIKUくんにそんな心配は一切してないし、「こうしたらもっと素敵じゃない?」ってみんなが声をかけるだけ。まあ僕はRIKUくんと同じ役なので一緒に舞台に立つことはないんですけど、一緒に芝居をする中村くんはRIKUくんに文句があるみたいですよ。
RIKU そうなんです(笑)。
中村 あのね、上半身がデカすぎ。
一同 ははは(笑)。
中村 先輩だけど……RIKUくん、ちょっと体がデカすぎるし、パワーがありすぎ!(笑) 今日なんか振り向かされたときにそのまま1周するかと思ったもん。勢いすごいし、鍛えすぎて力加減がバカになってるよ(笑)。
RIKU マジで!? 軽くやってるつもりだった(笑)。
中村 パワーというか、なんか重いんですよ。でもそれが変に……
古谷 気を遣うお芝居じゃない。
中村 なんで今俺が言おうとしたことを言うの?
古谷 遅いから! 俺が、太郎くんが言おうとしたことを横取りしたことも書いておいてください(笑)。
中村 うわー(笑)。まあいいや。で、話を戻すと、俺らが当たり前にやっていた部分をRIKUくんが全力でやってくれて、「これがある意味本当の芝居だ」とも思うんですよ。そりゃ「おい!」って相手を引っ張るときはそうやってつかむよな、とか。やってる風じゃなくてちゃんとやることの大事さに気付きますよね。あっくん(鍵本輝)もまだRIKUくんみたいな素材のきれいさがあって、2人にはそういう大事なことに気付かされますね。この現場では役者としてキャリアが長いから偉いとかないんですよ。
古谷 歌やダンスはかなり支えてもらってます。RIKUくんの場合、間違えても修正がうまいから振りが飛んだことに気付かないもんね。
中村 これ新しい振りなのかなって思う。適当にカッコよく踊っちゃうんです。だからRIKUくんが間違った振り付けで踊ったあとに、ほかの人がRIKUくんと同じヴァレンティノを演じているのを観たら全然ちゃうやんってなる(笑)。そういうごまかし方があるのかーって勉強になりますよ。
RIKU (笑)。みんなで補い合ってますよね。本当に。
この経験をランペに持ち帰れるのが楽しみ
──古谷さんと中村さんはRIKUさんとのお芝居で気付いたことをいろいろお話してくれましたが、RIKUさんが稽古を通して特に刺激を受けたことはありますか?
RIKU 演技の引き出しの多さですかね。例えば「机と椅子があります。この場で好きなことをしてください」という指示があったとして、僕だったら椅子に座ることくらいしかしないと思うんです。でも大和くんや太郎ちゃんだったら、きっと服を脱いで椅子にかけて携帯を触ってる演技をする、みたいな。僕はその指示に対する正解を探しているのに、2人の場合は毎回少しずつ変化を付けていて同じ演技がないんですよ。だから僕は必ず大和くんに先にやってもらって、それを観てから演技をしてます(笑)。ほかの演者さんもきっといろいろすごいところがあるんですけど、今は2人との稽古が多いので、そういうところに魅力を感じていますね。
古谷 お! 台本通り言えたね。約束通りお金振り込んどくねー。
RIKU えー! やったー! 肉食いにいきましょうよ(笑)。
中村 台本なんてないでしょうに(笑)。
古谷 ないけど(笑)。でもRIKUくんやあっくんは役者としてのキャリア以前に、性格的な部分でまっすぐな芝居が得意なんでしょうね。嘘をついている役者さんって、やっぱりわかるんですよ。“添加物”がまったくない芝居は観ていて気持ちがいいし、心に直接届く感じがするんです。技術云々ではなく。RIKUくんは共演者たちと比べて経験の浅さを心配しているけど、そんな必要はまったくないし、むしろこの現場でミュージカルで第一線で活躍している(鈴木)勝吾さんや石井(一彰)さんとご一緒できることを幸運だと思ったほうがいい。この作品での経験はきっとこの先でまたお芝居をすることになったときの自信になるはずだから。
──「RIKUさんの芝居は正直だ」という話がありましたが、ご自身ではそういう自覚がありますか?
RIKU 「ETERNAL」のときは実在しない人物を演じたので、僕=レンブラントだと思って、主観的に演じられたんです。でも今回演じるヴァレンティノはキャラクターだとしても、ジャコモは実在する人物なので、いろいろ史実に基づいたキャラ作りを話し合いながらしています。“実在するけど、お手本がないキャラクター”を演じるので、すごく不思議な感覚です。自分と役とのギャップを感じてますね。だから芝居を生業にしている人たちは、新しい作品に入るたびにこういう感覚になるわけじゃないですか。本当にすごいなと尊敬します。役を演じることについてはまだまだ模索中です。
古谷 1人2役で台本も難しいし、曲も多いから本当にみんな頭がパンクする寸前だよね(笑)。
RIKU エグいですよ! 役が変わったら声の質感やテンションを変えているし、仕草とかも変わってくる。難しいどころの騒ぎじゃないです。でもこの経験をランペに持ち帰れると思うとがんばれますね。この経験があればきっとどんなジャンルの曲が来ても背伸びをしないで歌えるようになると思うんです。それにきっとランペでの歌い方も変わる気がするんですよ。これを乗り越えた先にいる新しい自分との出会いが楽しみです。
牛を1頭買ってもらわないと割に合わない
──お二人はRIKUさんの歌を聴いてどう思いましたか?
古谷 何を聞いておる? めちゃくちゃいいに決まっとろう!
RIKU ははは(笑)。
古谷 いいに決まっとろうよ! 「これは何色ですか?」「緑じゃ!」こんな質問と変わらないですよ。RIKUの歌はいいに決まっとろうよ!
──失礼しました(笑)。では質問を変えて、RIKUさんの歌唱で感じるすごさは?
古谷 RIKUくんは本当に喉の使い方が上手なんですよ。音楽をいつでも奏でられる体になってる。これは相当すごいことですよ。僕のほうがいろいろ教えてもらってますから。だから僕も惜しむことなくお芝居のことを教えてあげようと思いますし。
中村 なかなかこんなに間近でアーティストの歌を聴ける機会なんてないし、本当にRIKUくんの歌には感動しましたね。歌を生業にしている人たちの歌にはこんな魅力があるんだと初めて気付きました。本当に知らないものを知った感じがしたんですよ。口ずさんでいるだけでもうまいってわかるし、ハモっているときも役者さんとやるのとでは全然違う。
古谷 でもRIKUくんにとっては当然のことなんだろうね。RIKUくんが僕らにすごいって言ってくれていることが僕らにとっては普通だったりもするし。
RIKU 普段は相方と3人でいつもハーモニーを作ってそれでメシ食ってますからね! 今回も天使役の役者さんたちとハーモニーを作りますが、ランペで歌うときとはちょっと感覚が違って。普通のおしゃべりにリズムと歌が付いたみたいな感じなんですよ。だから同じメロディなのに相手によってテンションが変わってくるんですよね。だからきっとキャストの組み合わせが違うだけで、違う作品を観ている感覚になると思います。むしろそういうふうに観てほしい。本当に毎日みんな大変な思いをしてやってるんですよ。これが終わったら牛を1頭買ってもらわないと割に合わない。
古谷 食用?
RIKU はい。牛肉が食いたいです。
古谷 お肉が好きなんだね
中村 状況が落ち着いたらみんなでごはんに行きたいね。
──では最後にRIKUさん、この舞台を楽しみにしている人へメッセージをお願いします。
RIKU キャストの組み合わせが9パターンあって、同じ監督の指導のもと、同じ台本で演劇を作っていますが、それぞれ全然違うものだと思っていただきたいです。話が難しいからこそ、全然関係ないような感想を抱いてもらっても問題ないと思っているので、身構えずに観に来てほしいですね。僕個人としてはミュージカルの世界に初めて足を踏み入れて挑戦する姿を皆さんにお見せするので、それを観て何か新しいことに挑戦したり、一歩踏み出す勇気になったりしたらいいなと思っています。ルカの邪魔ばかりしていたヴァレンティノの心が少しずつ変わっていくのを見て、自分は周りの人に対してどうだったかなと考えるきっかけになるとか、そういうことでもいいんです。あとはたくさん歌って踊るので、そこは期待してもらって大丈夫です!
ミュージカル「『天使について』~堕落天使編~』」
2022年2月24日(木)~3月6日(日)東京都 自由劇場
<出演者>
堕落天使ヴァレンティノ:RIKU(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)、古谷大和、鈴木勝吾
天使ルカ:鍵本輝(Lead)、中村太郎、石井一彰
ticketbook ONLINE / Hulu ミュージカル「『天使について』~堕落天使編~」生配信
2022年3月5日(土)13:00~
<出演者>
古谷大和 / 石井一彰
2022年3月5日(土)17:30~
<出演者>
鈴木勝吾 / 鍵本輝(Lead)
2022年3月6日(日)13:00~
<出演者>
古谷大和 / 中村太郎
2022年3月6日(日)17:30~
<出演者>
RIKU / 石井一彰
※大千秋楽カーテンコールあり
ticketbook ONLINE 購入・視聴URL:https://e-ticketbook.com/aboutangels/2112-tb_online/
Hulu 購入・視聴URL:https://www.hulu.jp/store/musical-about-angels-fallen-angel-edition
RIKU
1994年8月10日生まれ。THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのボーカル。2017年1月にシングル「Lightning」でメジャーデビューを果たした。2021年7月から東京・東京ドーム2DAYS公演を含むアリーナツアー「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2021 "REBOOT" ~WAY TO THE GLORY~」を開催した。9月に初の舞台「ETERNAL」で座長を務め、12月には1st写真集「Life is Beautiful」を刊行した。2月24日より東京・自由劇場で開催されている2人芝居のミュージカル「『天使について』~堕落天使編~」に出演中。
RIKU(@_riku_r.m.p.g_ldh)・Instagram photos and videos
古谷大和
1991年5月4日生まれ。舞台を中心に活躍し、ミュージカル「『黒執事』~寄宿学校の秘密~」や「KING OF PRISM」「A3!」シリーズなどに出演している。「『天使について』~堕落天使編~」では、RIKUと同じ堕落天使・ヴァレンティノを演じる。
中村太郎
1996年10月5日生まれ。舞台を中心に活躍し、ミュージカル「テニスの王子様」や「A3!」シリーズ、「ハイキュー!!」などに出演している。「『天使について』~堕落天使編~」では、天使・ルカを演じる。
「音楽大陸」からのお知らせ
RIKUさんが「天使について」の稽古に専念していたため、3月は休載します。次回更新をお楽しみに!