THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのボーカル・RIKUさんの連載「音楽大陸」。4月に展開している「春の特別編」では、RIKUさんが母校の日本大学豊山高等学校・中学校を訪問する様子をお届けしています(前編はこちら)。後編では、恩師の田中正勝先生とRIKUさんの対談を公開。思い出話に花を咲かせながら、日大豊山の魅力について語りました。
またYouTubeではRIKUさんと田中先生が、Twitterで事前に募集した読者からの新生活にちなんだお悩み相談に答える動画を公開中。こちらも併せてご覧ください。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / マスダレンゾ
RIKUくんはずっと人懐っこい
田中正勝先生 RIKU、今日は校舎を回ってみてどうだった?
RIKU 当時通ってた校舎とは違うんですけど、在学時に食べていたお弁当やお世話になった先生との会話、生徒たちの雰囲気でその頃の記憶がフラッシュバックしましたね。本当に懐かしかったです。
田中先生 うちはいつも中学の説明会で「6年間の付き合いだけじゃないから」とよく話しているんだけど、RIKUみたいに母校を大事に思ってくれる子たちが多くて本当にうれしいよ。卒業しても生徒たちの成長を楽しみにしているし、こうやって帰ってきてくれたときには自分の成長を生徒たちが振り返れたらいいなと思ってるから。RIKUは卒業して何年になるんだっけ?
RIKU 10年目ですね。
田中先生 もう10年も経つのか。RIKUは在学時の自分はどんな感じだったと思う?
RIKU それはもう真面目で真面目で……(笑)。
田中先生 中1のときの担任・真利久ファルハン先生がそこで笑ってるけど。
真利久ファルハン先生 RIKUくんはずっと人懐っこいですね。今も変わらないなと思いました。
田中先生 そうだね。あと甘えん坊。授業が始まる前は文句をたらたら言ってるんだけど、授業が終わったあとはいろいろ話を聞きに来てくれたことを覚えてる。
RIKU 高校の授業が本当に難しくて、芸術の選択授業で取っていた田中先生の書道の時間が本当に救いだったんですよ。一度書いたら先生が朱入れしてくれて、それをなぞる……その繰り返しだったから無心になれたし、もともと字を書くことが好きだったので楽しかったです。書道ってちょっとお堅い雰囲気があるけど、僕にとっては楽しむ授業でした。
田中先生 私からこうしなきゃいけないよということは言わなかったよね。好きに表現したらいいよといつも話して。書道も音楽と同じような芸術だと私は思っているから、自由に表現することを薦めていたんです。今思い返せば、その頃からRIKUは芸術的な面で秀でていたところがあったのかなと思いますね。さっき真面目だと話していましたけど、実際真面目だったと思う。授業もちゃんと聞くし、お願いしたことは期待した以上の形で返してくれた。真面目じゃなかったら今のような活動はできないと思いますよ。今日だって集合の15分前には到着してたでしょ。
RIKU 今日は道が空いていたんですよ。でも時間を守るのは豊山の影響が大きいと思います。慌てて行動したくないというもともとの性格もありますけど、常に5分前行動をするように言われていたので。今日生徒さんたちとたくさん会いましたけど、挨拶をしっかりしてくれて豊山生だなと思いました。在学時は挨拶の大切さをすごく言われてきたので。礼儀の部分では親よりも学校生活で培われたものが多いです。特に1人でどこかに出させてもらうときはTHE RAMPAGEを代表しているわけなので、より一層挨拶に気合いが入りますね。
楽しすぎてほぼ皆勤賞
田中先生 RIKUは本当にいいことを言うね(笑)。そういう基本的な部分もありつつ、豊山は個性も忘れないところがいいと私は思っていて。社会も学校もダイバーシティなので、RIKUは在学中にそういうところも学んでいってくれたと思います。RIKUはさっき生徒たちに「男子校だとなかなか彼女ができないぞ」とか言ってたけど、6年間しっかり楽しんだんでしょ?
RIKU めちゃくちゃ楽しかったです。楽しみ尽くしたので後悔はまったくない! 友達と過ごす毎日が楽しくて、みんなでお小遣いを出し合って少女マンガを買って女の子のことを勉強したり、しょうもないことをしゃべって笑ったり……もちろんイベント事も楽しかったですけど、やっぱり日々の学校生活が一番の思い出です。
田中先生 RIKUの場合はきっとそうだよね。文化祭で歌ったり、体育祭で走ったり、修学旅行に行ったり、いろいろあったと思うけど、日常が楽しかったというのはRIKUらしいと思います。皆勤賞だったんじゃないか?
RIKU 手術したときに休んだんですよ。でもそれ以外は全部出席していました。特に高校時代が楽しかったです。高1でサッカーを辞めたし、中学で俺をいじめてたやつともクラスが別になったし。
田中先生 いじめられてたなんて初めて聞いたよ。
RIKU なんかいろいろ面倒くさかったし、それでも一緒にいてくれる友達がいたからいいやって感じだったんですよね。言いつけたところでいじめをしている張本人が変わらないと根本的に解決しないし、だったらもう相手にしなければいいんだと割り切っていました。
田中先生 社会に出たら嫌なやつに会うこともあると思うけど、RIKUは学生の頃にもうそういう相手に対して工夫して生活できていたんだろうね。RIKUは日常生活が楽しかったと言ってくれたけれど、我々教師も印象に残っているのは、勉強の内容よりも日々の生徒たちとのやり取りなんです。おこがましいかもしれませんが、RIKUの人格形成においてすごく重要な時期に関わらせていただいたので、褒めるところは褒めて、叱るところは叱るということはちゃんとしてきたと思いますね。本人が学校生活でそういったことを学んだと言ってくれるのは、自分自身が成長した証。振り返ったときに自分にとって大切な場所で、懐かしいと思えるからこそ今日も仕事の中でここを選んで来てくれたんだと思うし。嫌なことやつまらないこともたくさんあったかもしれないけど、毎日が楽しかったと言ってくれて本当にうれしいです。
RIKU 365日あって280日くらいは学校に来るわけじゃないですか。それが6年も! 楽しくないわけがないですよ。そこにイベントも加わって、最高な毎日でした。
田中先生 今日行ったお弁当屋さんも卒業生が毎日のように来てくれるって言ってましたよ。車を停めてパッと買いに来る子もいるって。青春時代を過ごした学校という1つの舞台をいつまでも心のどこかに留めておいてくれるのはうれしいですね。
応援してくれる後輩たちがいるだけで存在意義がある
RIKU 今日は後輩の子たちとも会えて本当に楽しかったんですよ。まさか自分のことを応援してくれている人が後輩にいるなんて! 僕と同じような道を進めとは思わないですけど、僕に対して少しでもいいなと憧れを持ってくれたのであれば、参考にできるところは参考にして夢を追いかけてほしいですね。彼らなりの豊山生活を楽しく送って、好きなものを増やしていってほしいです。いやあ、でもEXPG STUDIOに通っている子がいるとは……。
田中先生 中学の佐藤くんね(前編記事に登場するRIKUさんをリスペクトする生徒)。
RIKU 僕に近付けるようにって、EXPGにまで通ってくれていて本当にうれしかったです。それだけで僕がLDHやTHE RAMPAGEである存在意義になる。そうやって思ってくれる彼に恥ずかしい姿を見せられないなと思いましたし、より身が引き締まりました。
田中先生 合格発表の日に親子で「RIKUさんのファンなんです」って言ってきてくれた生徒で。高校の教室で会った長原くんは中1の頃に卒業生にRIKUがいることを伝えたら「僕、大ファンなんです!」って震えていたんだよ。だからきっと今晩眠れないんじゃないかな(笑)。
RIKU 豊山の星になれるようにがんばりますよ。
友達の大切さを体を張って伝えてくれた同級生
田中先生 竹村先生とのやり取りも懐かしかったよな。頭髪検査(笑)。
RIKU 本当に(笑)。毎回ギリギリを攻めてましたから。
田中先生 そういう日々のやりとりがさっきの楽しかったという印象につながっていくんでしょうね。今日は後輩たちが「頭髪検査がうざい」ってRIKUに相談してたけど、彼らも振り返ったら懐かしむんでしょう(笑)。仲間たちと過ごした日々も、これから先も続いていく同級生との関係も財産になるもんね。でもやっぱりRIKUたちの代は卒業式が一番印象に残ってるよ。
RIKU そうですね。
田中先生 RIKUともすごく仲良しだった安井の話は、やっぱり切っても切り離せない。クラスの中心にいつもいる子だったよね。
RIKU ずっと僕のEXILEになるという夢を応援してくれてたんですよ。
田中先生 そうそう。途中でがんになってしまって、卒業式も来れるかどうかわからなかった。結局卒業式の頃にはもう意識もなくて、安井に対して何ができるかをクラスメイトと先生たちとで考えて、卒業式が終わったあとに安井の病室で安井のための卒業式をやろうってことになって。卒業式では親に対して歌で感謝を伝えるという伝統があって、流行歌を歌うことが多かったんです。安井にみんなが何を歌うか、我々は聞かされてなかったんですけど、彼らが歌ったのは「仰げば尊し」だった。歌詞の内容が生徒たちにとっても教師たちにとってもぴったりで……。いろんなことがあった学年だから、それが全部思い出されて病室でみんな号泣だった。
RIKU その日、俺はすぐにレッスンがあって行けなかったんですよ。何日か遅れて1人で病室に行って再会して。僕が話しかけると、目の焦点が合わない中で、一生懸命僕を見ようとしてくれて、唇をなんとか動かそうとして、聞こえてるってリアクションをしてくれたことを覚えています。柔道部で体も大きくて、クラスの中心の盛り上げ役だった安井がまさかこんな状態になるとは思わなかったし、きっと安井ならこの状況にも打ち勝って戻ってきてくれると信じていたから、「また来るわ。負けんなよ」って言ってバイバイしたのが安井との最後の会話でした。
田中先生 その数日後だったね、亡くなったのは。葬儀には我々も伺ったんだけど、ほかの学校からもたくさん友達が来ていて、交流の幅がすごく広かったんだなと思いました。そこで彼は友達の大切さを体を張って伝えてくれたなと。
RIKU そうですね。あいつが生きてるときから常にそういう感じだったんですよ。パワープレイみたいなところもあったんですけど、「本気で夢を語るやつをバカになんてしない。俺は応援する!」って言ってくれて……ああ、安井の話をすると泣いちゃうなあ。本当に愛されてるやつだと思います。亡くなって9年が経つのにこうして話題に挙がって涙を流させるんだから。今も生きていたら絶対スーパースターか超金持ちです。本当に人望が厚いやつだから。思い返せばあいつのひと言ひと言に学べることがあったなと思うくらい、今でも鮮明に覚えていることがたくさんあるんです。あいつは本当にすごいですよ。
田中先生 今でも仲よくしてくれている仲間もいれば、心の中で支えてくれている仲間もいるってことだよね。学校っていろんな出会いがある場所なんですけど、別れもあって、安井のこともあって特にRIKUの代は忘れられない学年です。そんな学年からRIKUが飛び出していって、今こうやってTHE RAMPAGEの一員として活躍していることは、安井にとって1つの供養とは言いたくないけど、そういうものになったんじゃないかなと思います。
RIKU そうだといいなあと思います。
田中先生 豊山生の絆って、そんじょそこらの仲間じゃないんですよね。
RIKU 男子諸君には日大豊山を本気でおすすめしたいです。もちろん試験があるから誰もが来れるわけじゃないけど、本気で勉強すれば東大よりは簡単に合格できるし(笑)。試験を乗り越えた先にこんないい先生がそろっていて、最高の仲間たちがいる。勉強以外で学べるものが特に多い学校だと思います。
田中先生 卒業生1人ひとりががんばっているから評判もいいんだよ。いろんなところで豊山の卒業生は素敵だって話を聞くし。
RIKU もし学校で僕のことを紹介するときは、最新のアーティスト写真を使ってくださいね。カッコいいやつ!
田中先生 いつ見てもかっこいいから大丈夫だよ(笑)。
RIKUの「新生活のお悩み相談室」with田中正勝先生
フォトギャラリー
RIKU
1994年8月10日生まれ。THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのボーカル。2017年1月にシングル「Lightning」でメジャーデビューを果たした。2021年7月から東京・東京ドーム2DAYS公演を含むアリーナツアー「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2021 "REBOOT" ~WAY TO THE GLORY~」を開催した。9月に初の舞台「ETERNAL」で座長を務め、12月には1st写真集「Life is Beautiful」を刊行した。2022年2月から3月にかけて東京・自由劇場で2人芝居のミュージカル「『天使について』~堕落天使編~」に出演。現在アリーナツアー「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2022 "RAY OF LIGHT"」を開催中。
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毎月、毎週金曜日に更新してきた「音楽大陸」ですが、次回より不定期更新となります。次回もお楽しみに!