ブリーフ&トランクスが6月12日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで2人体制ラストライブ「『ブリトラファイナルハーモニー2022』~泣きどころが全くない細根卒業コンサート~」を開催した。
ブリトラは伊藤多賀之(Vo, G)、細根誠(Vo, Harp)からなるフォークデュオ。細根が生花店業に専念するため、このライブをもってグループを脱退することになった。ニコニコ生放送では多数のカメラを駆使して、ライブの模様が生中継された。前説は2015年発表のアルバム「ブリトラ道中膝栗毛」の音声コンテンツ「オダギリ的人生ラジオ」でDJを務めた、伊藤の声にそっくりのオダギリジョージなる人物が担当。「いつもより長めの拍手、大きめの拍手をよろしくお願いします! ブリトラをスタンディングオベーションでお迎えください!」と厚かましいお願いを観客にして、開演時間を迎えた。
幕が開くとフォークデュオのブリトラを支えるバンドメンバーが登場。ブリトラバンドの演奏に乗せて、サングラスをかけた伊藤と細根がステージに現れ、2人は真っ赤なライトを浴びながら「ケチャップマン」を披露した。観客はペンライトを振り、楽曲が終わると大きく長い拍手を送った。ブリトラは2曲目に1999年リリースの6thシングル「コンビニ」を演奏。夜中のコンビニエンスストアで起きた観客と店員のやり取りを、歌の掛け合いによって再現した。MCでは伊藤だけがすでに汗だくという状況に、細根が「もう終盤かってくらいの汗じゃん!」と驚く。汗を流す伊藤は「以前ある渋谷のおっきな公会堂でね、ライブ後の関係者挨拶のときに『空調が効きすぎて寒かった』ってみんなに言われて、ライブの感想がそれだけだったの。だから今日は万全にしてます」と空調の加減にこだわったことをアピール。伊藤は続けて、「今日は3年ぶりのライブにして、デビューして24年の集大成を見せたいと思います。皆さんよろしくお願いします!」と観客に呼びかけた。
ブリトラは「ひとりのうた」「さなだ虫」と1990年代に発表した人気曲を次々に演奏。弾き語り曲「さなだ虫」で2人は、1番で「さなだ虫」という歌詞をハモり、2番ではバンドメンバーも交えて「もらいゲロー」とハモる。そして3番でバンドの演奏が加わるという展開でフロアを盛り上げた。さわやかな曲調の「発砲スチロール」を歌ったあと、伊藤は「いいねえ、長めの拍手! 頼んでないのにねえ。アメリカのライブとかだとずっと拍手してるのよ。そういうのを求めてるのよ。グラミー賞とかこんな感じですよ」とコメント。また「発砲スチロール」のイントロについては、「僕はイントロに命をかけてるんですけど、この曲は5本の指に入るイントロで弾いてて泣けてきちゃう。もともとは『パインパン』のサビ候補のメロディをイントロにしたからすごく豪華なの」と語った。広島・小豆島でのライブ後、ある家族連れの子供に「夢をあきらめるな」とアドバイスをしたが、帰りの飛行機が同じになったというブリトラ。このとき伊藤と細根はエコノミー、その家族はビジネスクラスに搭乗しており、恥ずかしい思いをしたというエピソードを披露して観客を笑わせた。「いい意味で」「蚊」に続き、2人は定食屋を舞台にしたストーリーの「定食屋」や、2000年発表のサマーソング「権力ハニー」を歌唱し、伸びやかなハーモニーを場内に響き渡らせた。
11曲を終えたところで、メンバーが一旦退場すると、前説で登場したオダギリのナレーションへ。オダギリは「実はこの時間、伊藤くんのおしっこタイムなんですよね。トイレタイムを組み込まないと絶対に漏らしちゃうとお願いされまして」とアナウンス。さらにオダギリはブリトラの下積み時代に車1台で全国を巡った際、伊藤が尿意に耐えられず、2リットルのペットボトルを加工して車中で排尿したことなどを明かした。その後、細根が1人でステージに登場。オダギリによる細根へのインタビューが行われた。質問内容がざっくりとしていたため、細根は時折困っていたが、好きな食べ物は「ラーメン」、タイムマシンで戻れるなら「高校時代がいいかな。伊藤くんとも出会ったし、大人と子供の境目で自由だった」、日本で一番好きな場所は「熊本。花屋を始めたときに行ったのが熊本で、居候させてもらったことがあって、第二のふるさとくらいには思ってるかな」、好きな女性のタイプは「好きになった人がタイプです」、フェチは「鼻?」、好きな男性のタイプは「率先して話せるタイプじゃないから、会話を回してくれる友達。伊藤くんはステージだといっぱいしゃべって回してくれるけど、普段だと黙ってるからね」などと質問に答えていった。
続いての曲「ティッシュ配り」の曲中では、細根に肩車された伊藤がリコーダーを吹くというパフォーマンスを披露。45、6歳の2人が見せる肩車や組体操に、観客は思わず笑い声を上げた。MCでは伊藤の中学時代のエピソードとして、ベルリンフィルのライブを観たかった伊藤少年が母親に置き手紙を残して地元の静岡から東京・渋谷まで遠征した際の話を展開。「勉強を10倍がんばる」という母への置き手紙の内容を信じた母が、突然渋谷へと向かった息子を叱らなかったからこそ、伊藤は本当に努力を重ねて成績が学内で10番から1番になり、偏差値の高い高校に入学できたという。そして伊藤は、進学した高校で細根と知り合ったことで、ブリトラとしての今があるということを説明した。
ブリトラは、現体制ラストアルバム「ブリトラ埋蔵金ファイナル」のリード曲「かかとスケスケ」、「男の子、負けるなよ」と男性にエールを送る「メンズ差別」、ドラマチックなバラード「セミ」を続けて披露。そしてMCは控えめにすると宣言していた伊藤が、細根にスニーカーをプレゼントした話、DA PUMPのライブ映像を観ながらマネして踊ろうとしたら腕が逆に曲がった話、20年以上前の横浜で音痴な歌を歌ってしまい笑われた話、細根の営む「しろくま生花店」に坂崎幸之助からお祝いの花の注文があった話などをとめどなく話した。ライブ終盤に向け、「ペチャパイ」「ズッキーニ」と親子リスナーのキッズ層にも人気の楽曲を連続で届けたブリトラ。ラストスパートとばかりに彼らは「クラブ」「パインパン」、さらにキラーチューン「青のり」を畳みかけ、ライブを締めくくった。
アンコールで伊藤はチューニングをしながら「細根があと少しで卒業しちゃうじゃないですか。どう? でも死ぬわけじゃないしさ。いつまでもいると思うな細根」と雑に会話しつつ、昨年6月頃に細根のグループ脱退が決まったことを明かす。「細根の野望を感じて、僕は僕でがんばると決めた。友情が途絶えるわけじゃないから。発表してからこの半年間は皆さんのおかげですごく楽しく活動できました。細根もこの勢いで花屋がんばってね。ハカランダ(高級楽器などに使われるブラジル原産の木)育ててね!」と細根にメッセージを送る。細根は「日本じゃ育たないよ」とハカランダの話題を拾い、笑っていた。
伊藤は「ブリーフ&トランクスはこれから1人になります。バンド編成ではこれからもやりますし、方向性は変わりません。ずっと変わりませんので安心してください」「細根の新しい旅立ちとブリトラのこれからにぴったりの曲があったので、聞いてください」と話してから、「コバエ」とタイトルコール。ブリトラはコバエの動きと自分の人生を重ねた内容の同曲をエモーショナルに歌い上げた。最後のMCで細根は「皆さん、今日は僕の卒業を見届けに来てくれてありがとうございました。高校のときに伊藤くんと学園祭で歌い始めて30年。デビュー24年、再結成10年。いろいろ楽しいこととか大変なこともありましたけど、今日で僕は卒業となります。アルバムとかDVDのリリース、ライブ、イベント、テレビ、ラジオ、単純に花屋だけでは経験できないことをたくさんしました。活動を通して、皆さんと会えたことは本当にうれしかったです。今日で僕やブリトラが消えるわけではないので、引き続き2人をよろしくお願いします。お互い進む道は違うけど、それぞれの活動を通して、皆さんに笑顔や感動を届けられたら。みんな! 愛してるよ! 叫ぶようなキャラじゃないけど、今の僕の率直な気持ちです。マニアの皆さん、関係者の皆さん、スタッフの皆さん、バンドのメンバーの皆さん、最高に楽しかったです。今まで本当に本当にありがとうございました」と思いを語り、深く頭を下げた。そして細根が作詞作曲を務めた真面目な初期ナンバー「風のとらえかた」ではブリトラの“ハモり担当”である細根がメインボーカルを担当。伊藤は「僕の永遠の友達、細根誠!」と相方を紹介した。ブリトラがラストに用意した楽曲は、2012年の再結成時に発表されたシングル曲「ゴールデンボール」。伊藤と細根は身を寄せ合い、1本のマイクで「ゴールデンボールよー」と最後のハモりを響かせ、長年にわたる2人体制でのブリトラの活動に終止符を打った。
なおニコニコ生放送では6月30日までライブの模様およびアフタートークのアーカイブ映像が6月30日まで閲覧できる。視聴には配信チケットの購入が必要となる。ニコ生の映像とは別に、13台のカメラで撮影したライブ映像は、後日DVD化される。
「『ブリトラファイナルハーモニー2022』~泣きどころが全くない細根卒業コンサート~」2022年6月12日 KT Zepp Yokohama セットリスト
01. ケチャップマン
02. コンビニ
03. ブルマン
04. ひとりのうた
05. さなだ虫
06. セレブの法則
07. 発砲スチロール
08. いい意味で
09. 蚊
10. 定食屋
11. 権力ハニー
12. ティッシュ配り
13. かかとスケスケ
14. メンズ差別
15. セミ
16. ペチャパイ
17. ズッキーニ
18. クラブ
19. パインパン
20. 青のり
<アンコール>
21. コバエ
22. 風のとらえかた
23. ゴールデンボール