2年前のハロウィンシーズンにSNSをにぎわせたある写真のことを覚えている人はいるだろうか?
当時テレビアニメも放送され、実写映画も話題となっていたマンガ「東京卍リベンジャーズ」のキャラクターであり、絶大な人気を誇るマイキーこと東京卍會総長の佐野万次郎。彼に仮装したHYDEが、自身が企画するハロウィンライブ「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」でパフォーマンスをしている写真だ。
それまでもHYDEは、ソロ及びVAMPS名義で開催したハロウィンライブでさまざまなキャラクターに扮してきた。ホラー映画「バタリアン リターンズ」のヒロイン・ジュリー、映画「スーサイド・スクワッド」のハーレイ・クイン、マンガ「黒執事」の主人公シエル・ファントムハイヴ、マンガ「HUNTER×HUNTER」に登場するクロロ=ルシルフル……いずれも作品へのリスペクトを最大限に込めた麗しい仮装は毎回反響を呼んだ。
当然のことながらマイキーに扮したHYDEの姿はマンガからそのまま抜け出てきたかのようなクオリティで、瞬く間にHYDEのファンだけでなく「東リべ」ファンの間でも大きな話題に。そして、そのことは作者である和久井健の耳にも届いた。
あれから2年──四半世紀にわたって音楽シーンを牽引し、数々のヒット曲を世に放ってきたHYDEと、「ヤンキー」と「タイムリープ」という異色のジャンルを掛け合わせた作品によって社会現象を巻き起こした和久井。それぞれ異なる分野において第一線を走る2人のコラボレーション、その名も「HYDE VS マイキーfrom東京卍リベンジャーズ」が実現した。
HYDEがライブのクライマックスにおいて高くジャンプする姿、ファンの間では「えいやっ」で知られるこのポーズを決めるマイキーのイラストを和久井が描き下ろしたのだ。そして、そのイラストを用いたさまざまなグッズが8月に発売されることが決定した。奇跡とも言えるこのコラボレーションは、どのような経緯で実現したのだろうか──。
取材・文 / 中野明子 撮影 / 田中和子[CAPS]
「マンガ家冥利に尽きるね」
かねてからマンガ好きを公言するだけでなく、自身でグッズのデザインを手がけ、ミュージックビデオの絵コンテを描くなど、歌だけでなくアート方面でも才能を発揮しているHYDE。彼はどんなきっかけで大人気マンガ「東京卍リベンジャーズ」と出会ったのだろう。
HYDE ある日、友達からいきなり「総長!」ってLINEが来たんですよ。「総長って何?」って返したら、「HYDEに似てるんだよ」というメッセージがきて。「似てるかな?」と思いながらマンガを手に取ったら、めちゃくちゃ面白くてハマったのがきっかけですね。ハロウィンライブで仮装した年だったから2021年かな?
和久井健 そう言っていただけて光栄です。僕もHYDEさんの大ファンで。
HYDE うれしい!
和久井 16、7歳くらいのときにL'Arc-en-Cielを聴き始めて。初めて買ったシングルが、確かモノクロのジャケットで女の人が写ってる……。
HYDE 「Vivid Colors」ですね。
和久井 そこから20代はずっとラルクばかり聴いてました。1998年に「HONEY」「花葬」「浸食 ~lose control~」とシングルを3作同時にリリースされたときは「全部いい曲だな」と思ったし、「好きな曲は?」と聞かれても選べないです。当時カラオケに行くとみんなラルクの曲を歌ってましたね。
HYDE (笑)。
和久井 とにかくHYDEさんは声もそうですけど、ファッションも含めてすべてがカッコよくて。憧れでした。だからHYDEさんがマイキーの仮装をしていると聞いたときは、本当にびっくりして。ある日いきなり中学時代の友達から「お前、マンガ家冥利に尽きるね」みたいなLINEが入ってきたんです。「どういうこと?」って返したら、HYDEさんがマイキーに扮してると。見たらクオリティもハンパなくて……。
HYDE 僕なんかが仮装して怒られないかなと思いましたけど。
和久井 いやいや! それを聞いて担当編集とはしゃいでました。でも、HYDEさんは何もしなくてもマイキーになれちゃう気がします。
HYDE 仮装するときに確かにあまりメイクはしなかったかな。そのままナチュラルメイクでもつまらないのでちょっとくらいヴァンパイアっぽくしないと、と思って牙を付けたんです。ファンにはマイキーじゃなくて“ハイキー”とか呼ばれてました(笑)。
和久井 このイラストを描いているときも、嫁さんから「それ、マイキーじゃなくてHYDEさんだよね。ちょっと目がいつもより垂れてない?」と言われたんですよ。自分ではマイキーを描いているつもりだったのに(笑)。なかなか僕の絵に似てる人って聞いたことないんですけど、HYDEさんはそのものというか。
HYDE ありがとうございます(笑)。ちなみにマイキーにはモデルはいるんですか?
和久井 いないんです。
HYDE へえ! 「東京卍リベンジャーズ」は出てくるキャラクターすべてが魅力的じゃないですか。普段からキャラクターの設定とかは全部1人で考えてるんですか?
和久井 そうですね。キャラクターに関しては人とあまり相談することもなく。ファッションも好きなので、生地の質感などもイメージしながら服の設定まで自分で考えてます。
HYDE 「東京卍リベンジャーズ」を全巻読んだんですけど、ストーリーがすごく複雑ですよね。現在、過去、未来でいろんな布石がちりばめられていて。それをまとめるのは大変だったんじゃないですか?
和久井 終わり方は考えていたんですけど、途中のストーリーは毎週毎週編集と打ち合わせで詰めていきました。
HYDE 読んでて、途中からタケミっち(「東京卍リベンジャーズ」の主人公・花垣武道。恋人の橘日向を救うためにタイムリープを繰り返す)が、無敵のマイキーに勝てるわけないやん!と思って。どうやってタケミっちがマイキーに勝つんだろう、ラストはどうなるんだろう?ってドキドキしてたら、見事な終わり方で感動しました。
和久井 ありがとうございます。
HYDE まだ読んでない人がいたらネタバレになっちゃうんですけど、ドラケン(「東京卍リベンジャーズ」の主要キャラクター・龍宮寺堅。マイキーの相棒)が死ぬあたりから胸が痛くなってきて。読むのがつらかったなあ。
和久井 自分の中では、このマンガはハッピーエンドで終わらせると決めていたんですよ。ただ、そうするために途中でハッピーな要素は出せないなと思って、あえてダークな展開にしていったんです。
HYDE そうしないとハッピーエンドが際立たないですもんね。
和久井 そうなんです。
HYDE 人気絶頂で連載を終了させるのは嫌じゃなかったですか?
和久井 いや、むしろこれでも引き延ばしたくらいですね。
HYDE せっかく人気があるから続けたいとはならなかった?
和久井 全然ならなかったんです。終わるタイミングは初期の段階でしっかり決めてましたし、週7で描いていたので一度休みたいなと(笑)。
HYDE 週7! それは休みたくなりますね。
和久井 スピンオフ作品があるので今でも打ち合わせをしたりするんですけど、本編の続きをこれ以上描く気はなくて。
HYDE じゃあ、今は新しい作品の構想中?
和久井 そうですね。いろいろ思いついたアイデアはあるんですが、まだ形にはしてない感じです。
「無敵のマイキー」が弱さを見せる「助けてくれ」
2022年11月に完結し、全31巻からなる「東京卍リベンジャーズ」には数多くの魅力的なキャラクターと、読む者の心を揺さぶる名シーンやセリフが登場する。例えば物語の序盤で、マイキーが仲間の仇を討つべく敵対するチーム“愛美愛主”に殴り込みをかける際に叫んだ「日和ってる奴いる?」というセリフは、TikTokなどを通して若者の間で流行したことも記憶に新しい。では、「東京卍リベンジャーズ」を愛読するHYDEが印象に残っている場面とは?
HYDE マイキーが「助けてくれ」と泣きながらタケミっちの手をつかむシーン。あの場面がパッと浮かびましたね。「無敵のマイキー」と言われるマイキーが初めて人に弱さを見せるところはグッときた。
和久井 あそこは泣きながら描きましたね。原稿を描くときが一番キャラクターに感情移入しているので、ああいうシーンは自分も一緒に泣いちゃいます。
HYDE じゃあ、怒っているシーンは自分も怒りながら描いてる?
和久井 怒ることはないんですけど(笑)、アドレナリンが出てテンションは上がりますね。
HYDEとマイキーが似ていることは多くの人が認めるところだろうが、HYDE自身が「東京卍リベンジャーズ」の中でほかに親近感を覚えたり、似ていると感じたりするキャラクターはいるのだろうか?
HYDE うーん、それは考えもしなかったな。似てるキャラ、いるかな?
和久井 やっぱり僕の中でHYDEさんはマイキーとイコールなんですよね。HYDEという名前からしても、二面性がありつつ、カリスマ性もあって……マイキーもまさにそうだし。
HYDE でも僕、ケンカは強くないですよ?
和久井 これで強かったらヤバいですよ(笑)。
HYDE あはは。自分に似てるわけじゃないけど、好きなキャラクターは(松野)千冬ですね。かわいいけど、熱い性格で。
和久井 千冬はけっこう読者に人気なんですよね。描くときはピクミン(任天堂のアクションゲーム「ピクミンシリーズ」のキャラクター)をイメージしてました(笑)。とにかくボスに尽くし続けるという。
HYDE そうなんだ(笑)。でもわかる気がします。
10代の頃にL'Arc-en-Cielに出会い、25年以上にわたりHYDEが歌う楽曲を聴いてきたという和久井。「マイキーに似合う楽曲はなんだと思いますか?」という質問をぶつけてみると、熟考の末にこんな答えが返ってきた。
和久井 激しい感じの曲かな。
HYDE そうですね……激しくて、悲しい感じ。「浸食 ~lose control~」とか? マイキーは静と激しさが同居してるキャラクターだから、二面性のある曲が合いそう。
和久井 確かに「浸食」は闇落ちしたマイキーのイメージに合いますね。そう言えば「浸食」をリリースした頃のHYDEさんは、黒髪でセンター分けにされてましたよね。
HYDE ああ、そうでしたね。
和久井 当時のHYDEさんのビジュアルが自分の頭に刷り込まれていて、それが闇落ちしたマイキーのビジュアルにつながったのかもしれないと今思いました。
僕、マンガ家になりたかったんです
この日が初対面だったにもかかわらず、対談が進むにつれて距離感が縮まっていったHYDEと和久井。和やかにトークが進む中で、HYDEは自身がかつてマンガ家を目指していたことを語り出した。
HYDE 僕、昔はマンガ家になりたくて。高校くらいまでずっとマンガを描いていたんです。
和久井 マジですか?
HYDE ホントホント! 「サンデー」とかに原稿を送ってましたよ。
和久井 えー! 自分も最初少年誌に持ち込みをしてました。でも作風が合わなくて採用されず。でも、そのときに「もっと自分に近いものを描いたほうがいいよ」とアドバイスを受けて、ホストを主人公にしたマンガ(「新宿ホスト」)を描いたら「面白いね」と言ってもらえたんです。
HYDE それがいくつのとき?
和久井 26歳くらいかな?
HYDE マンガ家のデビューとしては遅いほうですよね。それまでは何を?
和久井 スカウトマンとか「新宿ホスト」や「新宿スワン」の世界に近い仕事をしてました。
HYDE 昔からマンガを描いていたんですか?
和久井 いや、仕事を辞めて、突然描き始めた感じです。
HYDE すごい! 何かきっかけはあったんですか?
和久井 安野モヨコさんの「働きマン」を読んだことですね。当時は精神的にも肉体的にも疲れる仕事をしていて、「もう嫌だ」と思いながら毎日働いてたんです。そんなときにラーメン屋に入って、「モーニング」(講談社のマンガ誌)を開いたら「働きマン」が載ってて。確かマンガ誌の編集長が出てくるエピソードで、その編集長がすごくカッコよかったんですよ。それに感動して、僕は頭悪いし編集長になんてなれないけど、マンガでだったら人の心を動かすことはできるんじゃないかって。
HYDE ラーメン屋で「モーニング」を手に取ってよかったですね……。
和久井 本当にそう思います(笑)。絵はもともと得意ではあったんですが、仕事を辞めて1年くらい家にこもって描く練習をしたんです。マンガ家になるつもりで、背景も含めて1人で仕上げた作品を毎週「ヤングマガジン」編集部に持ち込んで。
HYDE 26歳で描き始めて、ここまで描けるようになるんだ……。そう言えば、和久井先生の絵はアナログですよね。デジタルへの移行は考えてないんですか?
和久井 考えてないですね。手で描くのが好きなんで。
HYDE 手描きだからこその味がありますよね。デジタルだと出ない絶妙なニュアンスがある。
和久井 デジタルだと間違った線を直したくなっちゃうと思うんですよ。
HYDE 直せないのがいい?
和久井 そうですね。それも含めてのライブ感がいいんです。
HYDE (和久井が描いた原画を見ながら)すごくリアリティがありますよね。
和久井 ポージングについてはHYDEさんがジャンプしている写真を参考にしながら、どれだけ絵でもカッコよくできるか意識して描いてみました。お腹を出してほしいというリクエストもいただいて。
HYDE え!? それは僕は言ってない。そういう趣味のスタッフがいるのかな(笑)。
和久井 でも気持ちはわかりますよ(笑)。HYDEさんはセクシーに描きたくなるんで。
HYDE この絵は何回ペン入れをしてるんですか?
和久井 1回ですね。
HYDE (緩急がついたラインを指しながら)ここの太い線と細い線も1回で?
和久井 はい。途中で止めてから、太さを変えてます。
HYDE へえ……勉強になるなあ。
和久井 HYDEさんは絵を描いているだけあって、見るところが違いますね。うちの担当編集にそんなこと言われたことないですよ(笑)。
HYDE このイラストを使ったコラボグッズは僕自身も欲しいな。海外の読者にも響きそうですよね。
和久井 担当編集者によると、コミックがフランスやスペインで売れているみたいで。ヤンキーの世界ってギャング文化に近いものがありそうだし、例えばフランスだと騎士道文化と通じる部分もあるのかもしれないです。
音楽に魅入られた
和久井が20代後半からマンガを描き始めたというエピソードにHYDEは興味津々。なぜそんなにも彼はマンガというエンタテインメントに惹かれるのだろう。
HYDE 例えば、映画を作るとしたら人手が必要ですよね。マンガはアシスタントの力があって完成するところもありますけど、たった1人で宇宙を作ることができる。それが1冊の本に凝縮されているところ……そういう魅力に惹かれてマンガ家になりたかったんです。
和久井 そういう意味では音楽も1曲の中に宇宙が詰め込まれているわけで、手法は近いと思うんですが、なんでHYDEさんはマンガではなく音楽の道を選んだんですか?
HYDE 生まれつき目が色弱なので、マンガやアートの道に進むうえで将来が不安だったんですよ。マンガは基本モノクロだから描けるかもしれないけど、カラーのイラストはどうしても描けないなとか。そうやって悩んでいたときに音楽と出会って。音楽であれば僕が見ている景色、思い描いていることを表現できそうだなと思ったんです。自分では絵を描いているほうが楽しいし、絵描きの才能も少しはあるとは思うけど、音楽に魅入られた感じ。向いているのは絵だけど、天職は音楽っていう。
和久井 僕ら世代に限らず、音楽の道に憧れる人の多くがHYDEさんみたいなボーカリストになりたいと思うんですよ。でも、その中で実際になれる人なんてひと握りで。HYDEさんが音楽に向いてないなんて、そんなわけないでしょ!?と思っちゃいますけど。
HYDE (笑)。でも僕としては絵を描いたり、手を動かして何かを作ったりしているほうが好きなんですよ。描いてるときはごはんを食べることも忘れちゃうし。これが音楽だったら、僕はどれだけいい作品を作れるんだろうとか考えちゃう。
和久井 いやいや、これまで十分すぎるほどいい音楽を作っていらっしゃいますよ!
HYDEさんはモテますよ!
多くの人たちを楽しませ、ときには人生を変えるほどのエンタテインメントを生み出してきたHYDEと和久井。彼らが世に放ってきた作品には、人の心を動かす力が確かに宿る。では2人がもの作りにおいて心がけていることはなんなのか?
HYDE 基本的にはポップであること。作品の完成度を上げていくときに何が基準になっているかというと、ポップであるかどうか。ポップと言っても歌謡曲的な要素ではなくて、自分の心がつかまれるようなキャッチーな部分があるかどうかというのがけっこう重要で。自分が作った曲や歌にそれがあると感じられたら成功だし、そうじゃなかったら永遠に完成しない。
和久井 HYDEさんに少し引っ張られるような意見ではあるんですが、僕の場合は共感性があるかどうかですね。それがないと読み手には届かないので大事にしているところです。その点を踏まえてすごく暗いストーリーとか、明るすぎる展開になりすぎないようにバランスを考えてマンガを描いているところはあります。
HYDE そのバランスはどうやって保ってるんですか?
和久井 担当編集者に意見をもらって、もし極端なところがあったら調整していくようにしてます。自分の世界観をそのまま世の中に出しても売れないという自覚があるんですよ。
HYDE 編集者の方と意見がぶつかったりは?
和久井 デビュー作の「新宿スワン」を描いていた頃はありましたね。ケンカもしたし。大人げなかったなと思います(笑)。今はもう何を言われても怒らないようにしています。言うことを素直に聞いて。
HYDE ははは(笑)。
和久井 自分の作品がいろんな人に届いたのは編集のおかげですし、もう頭が上がらないですね。
HYDE 和久井先生はマンガが売れて、アニメ化もされて、実写映画も公開されて……マンガ家の夢を叶えまくってますよね。ぶっちゃけ通帳の0の桁が増えていってるのでは?
和久井 (笑)。0が増えるというのは大袈裟ですけど、お金を使う機会があまりないんですよ。ほとんど遊びにも行かないですし。
HYDE そうなの?
和久井 買い物ではないんですが、お金を使ったことと言えば、最近事務所を引っ越したくらいですね。あとは服が好きなので嫁と買いに行ったり……ところでHYDEさんは普段どんなところで服を買ってるんですか?
HYDE 原宿のお店とか普通に行きますよ。
和久井 お店の空気が「HYDEさんが来た!」ってなりません?
HYDE なっちゃうんですよね(笑)。マスクもして、メガネもあんまり似合わないタイプのものをかけて、髪も帽子で隠して僕的には完璧な変装をしてるつもりなのに、店員さんには気付かれちゃう。これでバレるなら週刊誌に撮られてもしょうがないなあって(笑)。
和久井 アーティストの方は本当に大変ですよね。常に見られるし、完璧な姿を求められるし。
HYDE コロナ禍のときはちょっと気が楽だったんですよ。帽子をかぶってマスクをしてても、みんなそうだから不自然がられずに済んで。和久井先生は世間に顔出ししてないですよね。今さらだけど、僕も顔出さないほうがよかったかな、なんて。僕はタイムリープできないんで、もう過去には戻れないですけど。
和久井 (笑)。
HYDE その代わり、顔が知られているんで飲み屋に行ったらモテますよ!
和久井 飲み屋に限らず、HYDEさんはどこにいても性別問わずモテますよ!
HYDE そう言ってもらえるとうれしいなあ。男性のファンはあんまりいないんじゃないかと思ってたけどね。
和久井 誰だってカッコいい人には憧れますし、HYDEさんはその最たる存在なわけで。ラルクはデビューした頃から曲もメンバーの皆さんも立ち振る舞いも、アートワークもすべてがカッコよくて……そのカッコよさや表現には自分がマンガを描くうえで確実に影響を受けてますね。
HYDE こっちは和久井先生の描くカッコいいキャラクターに魅せられてますよ。特に女の子はメロメロになってるんじゃないかな。今回のことをきっかけに、また違う形でもコラボしてもらえたらうれしいな。
和久井 ぜひよろしくお願いします。
HYDE その前に「東京卍リベンジャーズ」を読み返さないと! 何回も読み返したくなるマンガって、いいマンガですよね。
対談時間は45分。決して長い時間ではなかったが、すっかり意気投合し、別れ際に再会を約束するように力強く握手を交わしたした2人。HYDEと和久井健が再びタッグを組むのは、そう遠い日ではないのかもしれない。
HYDE
L'Arc-en-Ciel、VAMPSのボーカリスト。2001年からソロ活動をスタートし、日本のみならずワールドワイドに活動している。ツアーの一環でアメリカ・Madison Square Gardenや東京・国立競技場などで単独ライブを行い成功を収めている。2022年6月より対バン形式のライブハウスツアー「HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH」を開催。ソロ活動20周年を迎えた2021年に開催した「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」の模様を収めた映像作品を2022年7月にリリースした。2023年6月に新曲「TAKING THEM DOWN」を配信リリース。同月よりワンマンツアー「HYDE LIVE 2023」を開催中。
和久井健
2004年9月期の「ヤングマガジン月間新人漫画賞」にて「新宿ホスト」で佳作を受賞。2005年に同作が「別冊ヤングマガジン」に掲載され、マンガ家デビューを果たす。同年より歌舞伎町で生きるスカウトたちを描いた「新宿スワン」の連載を開始。2013年10月に完結し、2015年春には綾野剛主演で実写映画化される。2013年12月より連載第2作目となる「セキセイインコ」をスタートさせる。2015年には「週刊少年マガジン」に活動の場を移し、「デザートイーグル」を連載。2017年に「東京卍リベンジャーズ」の連載を開始する。同作は2020年に「第44回講談社漫画賞」の少年部門を受賞。2021年にテレビアニメ化、実写映画化、舞台化され話題に。2022年11月に完結したあとも幅広い世代の読者に支持され続けている。
(c) 和久井健/講談社