楽曲のリズムやノリを作り出すうえでの屋台骨として非常に重要なドラムだけど、ひと叩きで楽曲の世界観に引き込むイントロや、サビ前にアクセントを付けるフィルインも聴きどころの1つ。そこで、この連載ではドラマーとして活躍するミュージシャンに、「この部分のドラムをぜひ聴いてほしい!」と思う曲を教えてもらいます。第11回はOGRE YOU ASSHOLEの勝浦隆嗣さんの登場です。2005年のデビュー以降、流行りに流されることなく、独自かつ確固たるスタイルで多くのフォロワーを生み出すオウガ。その土台を支え続ける勝浦さんが憧れ、理想とする曲とは。
撮影 / kokoro 構成 / 丸澤嘉明
ドラムフレーズが好きな曲とその理由
The Battered Ornaments「Sunshades」
特にどのフィルというのではなく、1曲を通してすべてのフレーズが完璧です。ガタピシとした壊れそうな機械のような、止まりそうで止まらない感じを出しつつ、グルーヴは一切引っかかっていない、という相反する要素を高次元で実現しているところに憧れます。
Kraftwerk「The Robots」
「The Man-Machine」までのクラフトワークの人間臭い感じが好きです。フレーズもけっこう手弾きしてそうですし、この曲とかはドラムが微妙に揺れていて、リズムマシンではなくて人間が叩いていると思います。というよりはむしろ、どのフレーズが人間でどのフレーズが機械なのかわからないところが、「不気味の谷」の底で人間と機械が戯れているような感じで、この世とあの世の狭間から聴こえてくる音楽のようです。
これほどまで人間と機械の境界を超えている音楽は聴いたことがないです。
ニール・ヤング「Out on the weekend」
36秒あたりで、それまでずっと一定だったバスドラムのフレーズが一瞬変わりその先の変化を予想させますが、そのまま何も起こらずに歌に突入するところが好きです。普通だったら歌が入る前にタッドンジャーンとかのフィルを叩いてしまうと思うのですが。
The Red Krayola「Bad Medicine」
リズムマシンの拍と歌の拍がずれているようでずれてないと思います、たぶん。よくわかりません。何回聴いてもつかみどころのないリズムが面白いです。
自身でドラムフレーズをプレイする際に意識していること
失敗はあっても野生的で生き生きとしたドラムを叩きたいです。レコーディングでもそういうテイクを選びます。
1曲、さらにはライブ全体を通して大きなうねりが出せるようになりたいです。
自身のプレイスタイルに影響を与えたドラマーや最近気になるドラマー
Kraftwerk、CAN、ムーンドッグ。
影響を受けたというよりは理想です。
勝浦隆嗣
メロウなサイケデリアで多くのフォロワーを生むライブバンド・OGRE YOU ASSHOLEのドラマー。2000年代のUSインディーとシンクロしたギターサウンドを経て、石原洋のプロデュースのもとサイケデリックロックやクラウトロックなどの要素を取り入れた「homely」「100年後」「ペーパークラフト」のコンセプチュアルな三部作で評価を決定づける。2023年3月には東京と大阪で開催されたワンマンライブ「OGRE YOU ASSHOLE LIVE 2023 TOKYO/OSAKA」の会場で新作EP「家の外 e.p.」のCDを先行販売。「家の外 e.p.」は6月に配信リリースされ、9月に12inchアナログおよびCDで一般発売された。12月1日に大阪・Shangri-La、12月16日に東京・LIQUIDROOMにてワンマンライブを行う。
OGRE YOU ASSHOLE
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