タイトル未定のワンマンライブ「タイトル未定 ワンマンライブ 東京 『 TETRAPOD 』」が5月20日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で開催された。
紗幕に映し出される決意の言葉
「何者かになろうとしなくていい。 何者でもない今を大切に。」というコンセプトを掲げ、北海道札幌市を拠点に活動しているアイドルグループ・タイトル未定は、今年2月に通算3度目の北海道・Zepp Sapporo公演を成功させると、満を持して東京のZepp会場へ。彼女たちは2022年8月に行われたアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL 2022」内の企画「メインステージ争奪LIVE」で優勝し、メインステージであるZepp DiverCity(TOKYO)でパフォーマンスを披露した経験を持つ。それ以来、この会場は4人にとって思い入れの強いステージであり、さらに川本空が本公演をもってグループを卒業するという事実が今回のライブに特別な意味合いをもたらした。公演当日、会場には大勢のファンが集結し、タイトル未定の歴史における大切な節目を目撃した。
ライブが開演時刻を迎えると、別れを描いた楽曲「春霞」とともにステージ前の巨大な紗幕にオープニングムービーが映し出される。はかなく刹那的なムードに観客が一気に引き込まれる中、ステージに姿を現したタイトル未定は1曲目に「水流」を披露した。パフォーマンスが始まってもステージと客席の間には紗幕が張られたまま。もがきながらも前に進もうとする決意を描いた歌詞が幕の上に映し出され、その奥には情感たっぷりに歌い上げる4人のシルエットが幻想的に浮かび上がった。そして2曲目「黎明」のアウトロで幕が落ち、ここでようやくメンバーと観客が対面。序盤の2曲ではエモーショナルなムードが会場を支配したが、「桜味」など季節感の強いナンバーが畳みかけられるとフロアの空気はさわやかなものに一変した。
曲中に思わずあふれた涙
MCに入ると、川本は「2年間積み重ねてきたすべてを今日は出し切って、皆さんを幸せにしてから灰になって帰ろうと思います!」と無邪気な笑顔を浮かべる。続くブロックではステージ後方に設置されたセットに川本と冨樫優花の2人が上り、「春霞」をデュエットした。曲中、冨樫は胸の奥にしまっていた感情が涙とともにあふれ出し、感極まって「ありがとう それじゃあね 背中合わせで歩き出そう」という歌詞を歌えなくなる。川本の卒業が急速に現実味を帯びていくかのように、会場内のムードがセンチメンタルなものに変わり、再びステージに4人そろったタイトル未定が「薄明光線」を披露すると、その歌声もいつも以上にエモーショナルに響いた。
5月10日に配信リリースされたばかりの新曲「壊せ」では、メンバーが観客を巻き込みながらタオルを振り回し、さらに楽曲の後半でシンガロングを繰り広げる。会場全体に大きな一体感が広がる中、今度は阿部葉菜と谷乃愛がステージセットの上に立ち、「ガンバレワタシ」をデュエット。朗らかな歌声とピールフルな空気がフロアを包み込んだ。
「タイトル未定は私の誇りです」
ここで彼女たちは1人ずつ挨拶を述べ、胸の内をマイクに乗せる。阿部は「デビューライブから今日ここまで風邪などを引いてステージに穴をあけたことがまだなくて。体力おばけにみたいに言われることもあるんですけど、私も人間なので、心がしんどいなと思っちゃうことが何回かあって、そんなときにすぐに助けてくれたのが、ここにいるメンバーでした」とメンバー愛を言葉にし、冨樫は2022年の「TIF」を振り返りながら「そのときここから見た景色はすごく大きくて……このステージに立つこともちょっと恥じらいもあって。でも今はこのステージが2年前より小さく感じます。堂々と立てている気がします」と自身の成長を噛み締めた。
谷は「今の4人が大好きです。体制が変わってしまうことを聞いたとき……(心が)折れちゃってもうダメかもって思ってました」と瞳に涙をたたえつつも、「空ちゃんの言葉を聞いて、今ここにいる皆さんの顔を見て、メンバーの言葉を聞いてもうちょっとがんばろうと思いました」と前を向く。そして川本は「アイドルになった日から今日まですべてが夢のようで幸せな時間でした」と話し、「出会ってくださったすべての皆さんに感謝します。ありがとうございました。これからのタイトル未定も変わらずずっと愛してください。タイトル未定は私の誇りです」と晴れやかな表情でフロアを見つめた。
その後、4人はピアノの伴奏に合わせてバラードナンバー「にたものどうし」をしっとりと歌唱。歌を通して互いの絆を確かめ合った。続く「青春群像」の曲中には「Zepp Diver、ただいま!」という叫びが場内にこだまし、今年3月に発表された2ndシングルの表題曲「群青」では入場時に配られた腕時計型のサイリウムがまばゆい光を放ちながらフロアで一斉に揺れた。
アンコールに突入すると、タイトル未定は生バンド編成によるアコースティックライブを披露。デビュー曲「踏切」、夏のポップチューン「蜃気楼」を連続でパフォーマンスし、アコースティックギター、パーカッション、キーボード、バイオリンの音色とともに柔らかな歌声を届けた。観客は4人のライブがいよいよ終わりに近付いていることを感じながら、ステージ上の光景と歌詞の1つひとつをじっくりと心に刻む。川本の「振り返ったら、いつでも私たちがいます。私たちが皆さんの心の灯火です」という言葉を合図に、公演のラストに披露されたのは「灯火」。開演からここまでいつも通りの天真爛漫な笑顔を貫いていた川本だが、友情をつづった歌詞やフロアの光景をきっかけに万感の思いが一気にこみ上げてきたのか、涙をあふれさせながら自身の顔を手で覆った。そして彼女は「灯火 導いてくれる 君」という楽曲のフレーズに絡めて「導いてくれてありがとう」とひと言。心の底から湧き上がる感謝の思いを伝えつつ、タイトル未定と川本はそれぞれ新たな道を歩み出した。
セットリスト
「タイトル未定 ワンマンライブ 東京 『 TETRAPOD 』」2024年5月20日 Zepp DiverCity(TOKYO)
01. 水流
02. 黎明
03. 桜味
04. 夏のオレンジ
05. 主題歌
06. 栞
07. 春霞
08. 薄明光線
09. 壊せ
10. 花
11. ガンバレワタシ
12. 溺れる
13. 僕ら
14. にたものどうし
15. 青春群像
16. 鼓動
17. 群青
<アンコール>
18. 踏切
19. 蜃気楼
20. 灯火