Adoプロデュースの5人組アイドルグループ・ファントムシータの1stライブ「ハイネ」が昨日11月1日に東京・日本武道館で行われた。
「ハイネ」に込められた思い
ファントムシータは昨年11月より行われたオーディションで約4000人の中から選ばれた、もな、美雨(みう)、凛花(りんか)、灯翠(ひすい)、百花(もか)からなる女性アイドルグループ。Adoが高校時代から抱いていた「アーティストのプロデュースに携われるようになりたい」という夢を叶え、“レトロホラーアイドル”という新たなコンセプトのグループ・ファントムシータを誕生させた。
今年6月26日、ファントムシータは小春(チャラン・ポ・ランタン)が書き下ろした1stシングル「おともだち」でデビュー。10月30日には1stアルバム「少女の日の思い出」をリリースし、本作のリリースからわずか2日後に日本武道館という大舞台で初のワンマンライブに臨んだ。
公演タイトル「ハイネ」は蛾の一種であるアゲハモドキの学名で、フランス語で憎しみという意味。主に苦しみや痛みを音楽活動で表現しているファントムシータにとって憎しみは大切な感情であり、そんな意味も込められた“ハイネ”はファンネームにもなっている。
ようこそ、恐怖の世界へ
うちわやペンライトを持った幅広い年齢層のハイネは、記念すべき単独公演の開演を待ちわびる。メインステージのスクリーンには、虫かごから羽ばたく5匹の蛾のイラストが映し出されている。場内が暗転すると、真っ赤な蛾が羽を広げるオープニング映像がスタート。ステージ上部に設置された5分割のスクリーンには、ファントムシータのさまざまなミュージックビデオが流れる。その後、ステージ中央の扉が音を立てながら開き、制服風の衣装を身にまとったもな、美雨、凛花、灯翠、百花が姿を現した。初ワンマンの幕開けを飾ったのはデビュー曲「おともだち」。5人は不気味な笑みを浮かべながら、こっくりさんを彷彿とさせるダンスを繰り広げて、オーディエンスを恐怖の世界へ誘う。「花喰み」でもその世界観を強く打ち出すように、毒々しい花のアニメーションをバックに、目をひん剥きながら気迫あふれる歌声を放った。
続いて、“レトロホラー”というファントムシータのコンセプトにぴったりの戸川純「好き好き大好き」をカバー。頭を振り乱しながらのパフォーマンスで過剰な愛情を表現したかと思えば、王道アイドル然としたキュートな声も聴かせ、そのギャップで観客を惹きつける。灯翠の「恐ろしく美しい世界を存分に楽しんでください!」という言葉のあとには、ジャジーなサウンドの「乙女心中」、ノスタルジックな雰囲気漂う「魔性少女」が畳みかけられ、シャボン玉の舞うステージで松谷祐子「ラムのラブソング」が届けられると、ラブリーな5人の魅力があふれ出した。
ソロパートで5人がカバーしたのは
ライブ中盤には5人の個性が光るソロパートも展開された。ハンドマイクを手にしたもなは、松田聖子の不朽のバラード「SWEET MEMORIES」を歌唱。失恋の痛みを切なげなボーカルで表現する。歌い終えたもなが微笑みながら背を向けると、会場から大きな歓声が上がった。凛花がカバーしたのは中森明菜「少女A」。ポニーテールを指に絡めながら、クールかつパワフルな歌声でオーディエンスを魅了する。スタンドマイクの前に立った百花は、Adoもリスペクトする椎名林檎の人気曲「歌舞伎町の女王」を貫禄たっぷりに歌い上げた。美雨はsyudou feat. 初音ミク「ジャックポットサッドガール」で鋭い眼光を向けながらシャウト混じりのボーカルを響かせ、強いインパクトを残した。「皆さん、楽しんでますか? 一緒に歌ってください!」と観客に呼びかけたのは灯翠で、ano「ちゅ、多様性。」をチャーミングに歌い踊った。
深々と座礼して本編終了
Cö shu Nie「asphyxia」をのたうち回りながら歌ったあと、ファントムシータ初のバラードソング「HANAGATAMI」へ。スモークに包まれるステージで可憐にパフォーマンスし、はかなげな表情を浮かべる。赤や白のレーザー光が駆け抜ける中、欅坂46「サイレントマジョリティー」で一糸乱れぬアグレッシブなステージを見せた彼女たちは、“レトロホラー”を全面に打ち出した「キミと××××したいだけ」を本編最後に披露。スクリーンには血しぶきや有刺鉄線のイラストとともに「死刑 死刑 死刑」「あなたのチッチッチッ 血が見たい」といった過激な歌詞が流れた。この曲のラストには、5人が人差し指で×を作り、深々と座礼した。
あの課題曲も披露
ハイネの熱烈なアンコールに応えてステージに再登場したファントムシータは、アイドルソングの定番と言える小泉今日子の楽曲「なんてったってアイドル」をフレッシュに歌唱。舞台の上手下手を移動しながら何度も手を振り、コール&レスポンスで会場の一体感を高めた。そんな温かなムードは、Ado「Tot Musica」で一変。オーディションの課題曲でもあり、Ado自身も難度が高いと言うこの曲を、喉がちぎれんばかりに力強く歌い、激しく踊る。曲が終わった同時に、5人はステージに倒れ込んだ。
語られる苦悩、メンバー愛、決意
最後の挨拶では、5人がメンバー愛を確かめ合いながらハイネへの感謝を述べる。以前からアイドルを志していたというもなは、「こうしてデビューワンマンを迎えられたことがホントにホントにうれしいです。今が人生で一番楽しいけど、これからも更新していきます」と涙ながらにコメント。女優やアイドルになることを目指していたが、「自分なんてできるわけがない」とあきらめかけていた美雨は「この景色を見て、ちゃんと生きてるなと思えるし、これからも素敵なメンバーと一緒に夢を叶えていきたいです」と力強い決意を示した。凛花は「MCとか苦手なんですけど……」と言いながらも、「関わってくれた方々にパフォーマンスを通して感謝を伝えたいと思っていました。他人と比べて落ち込んでいた時期もあったけど、それを乗り越えて堂々とステージに立って、胸がいっぱいです。ぜひこれからも私たちに期待してくれたらうれしいです」と落ち着いた様子で語る。
灯翠は「自分の家以外に信じられる場所がなかったんですけど、こんな素敵な子たちに恵まれて、応援してくれる人たちがいて、居場所がようやく見つかったと思いました」と涙を流しながら胸の内を明かす。百花も涙で声を詰まらせつつ「小さい頃から歌やダンスを練習してきたので、友達と遊ぶ時間よりレッスンに行く時間のほうが多くて。練習してきたことは無駄じゃなかったんだと思えました。武道館をスタートに、常に進化し続けるアイドルになります」と宣言した。
ラストソングはファントムシータが10月にリリースした最新シングル曲「ゾクゾク」。火花が吹き上がるステージで、彼女たちはダンサブルなビートに乗せて艶っぽく伸びやかな歌声を響かせ、ステージから姿を消した。
初単独公演を成功させたファントムシータの次なるワンマンの舞台は海外。2015年1月から2月にかけて1stツアーであり、初の海外ツアー「Phantom Siita 1st WORLD TOUR "Moth to a flame"」が開催される。
セットリスト
ファントムシータ 1st LIVE 2024「ハイネ」2024年11月1日 日本武道館
01. おともだち
02. 花喰み
03. 好き好き大好き(オリジナル:戸川純)
04. 乙女心中
05. 魔性少女
06. ラムのラブソング(オリジナル:松谷祐子)
07. SWEET MEMORIES / もな(オリジナル:松田聖子)
08. 少女A / 凛花(オリジナル:中森明菜)
09. 歌舞伎町の女王 / 百花(オリジナル:椎名林檎)
10. ジャックポットサッドガール / 美雨(オリジナル:syudou feat. 初音ミク)
11. ちゅ、多様性。 / 灯翠(オリジナル:ano)
12. asphyxia(オリジナル: Cö shu Nie)
13. HANAGATAMI
14. サイレントマジョリティー(オリジナル:欅坂46)
15. キミと××××したいだけ
16. なんてったってアイドル(オリジナル:小泉今日子)
17. Tot Musica(オリジナル:Ado)
18. ゾクゾク
公演情報
Phantom Siita 1st WORLD TOUR "Moth to a flame"
2025年1月16日(木)台北 Legacy Taipei
2025年1月18日(土)フィリピン マニラ Samsung Hall
2025年1月21日(火)シンガポール Capitol Theatre
2025年1月23日(木)マレーシア クアラルンプール Zepp Kuala Lumpur
2025年1月28日(火)アメリカ サンノゼ San Jose Civic
2025年1月30日(木)アメリカ アナハイム House of Blues
2025年2月2日(日)アメリカ ダラス The Factory in Deep Ellum
2025年2月3日(月)アメリカ ヒューストン Smart Financial Center
2025年2月6日(木)アメリカ シカゴ The Vic
2025年2月8日(土)アメリカ ニューヨーク Palladium Times Square
2025年2月10日(月)カナダ トロント Rebel
2025年2月13日(木)オランダ ユトレヒト Tivoli
2025年2月15日(土)フランス パリ Bataclan
2025年2月17日(月)ドイツ ベルリン Metropol
2025年2月19日(水)イギリス ロンドン Electric Ballroom