Mrs. GREEN APPLEが11月20日に神奈川・Kアリーナ横浜で定期公演「Mrs. GREEN APPLE on "Harmony"」に幕を下ろした。この記事では最終公演の模様をレポートする。
華やかに開幕したショー
Mrs. GREEN APPLEは10月5日から11月20日にかけてKアリーナ横浜にて計10公演の定期公演を行い、約20万人を動員。ブロードウェイのような華やかな劇場を舞台にパーカッション、バイオリン、ビオラ、チェロ、トランペット、トロンボーン、サックスを交えた計15人の編成で豊かに音楽を紡ぎ上げた。また定期公演では全曲において動画、写真ともに撮影OKという、国内アーティストの公演ではあまり例を見ない画期的な試みを実施。公演後にはファンが動画と撮影を共有し合い、SNSがにぎわうこととなった。
開演前にはこれまでのミセスの経歴を紹介する英語のアナウンスが劇場に流れた。「It's time to start the show! JAM'S! Are you Ready for 『Mrs. GREEN APPLE on "Harmony"』?」と告げられると、場内は大きく沸き立ち、ランプに彩られたステージで管弦楽団が芳醇な音色を奏でる。そして劇場の奥の扉から若井滉斗(G)と藤澤涼架(Key)が大歓声を浴びながら元気いっぱいに姿を現した。ケルト音楽を彷彿とさせる「Magic」のイントロが大編成で奏でられると、大森元貴(Vo, G)の歌声がどこかから降り注ぐ。場内を見渡すと、スポットライトの光が照らす先は2階のバルコニー。そこには黒のフォーマルなジャケットを身にまとい、ひょうひょうとした表情で伸び伸びと歌う大森の姿があった。思いもよらないところから登場して会場を沸かせた大森は、ゴンドラでステージに降りてメンバーと合流。数々の花火が打ち上がる映像とキラキラと揺れるスティックライトの光が相まって、まるでパレードのような華やかな光景とともにショーは開幕した。
さらに藤澤がしっとりとフルートの音色を奏で、「Hug」の演奏がスタート。星空が広がる中、美しいストリングスと繊細な歌声が重なり、静寂な夜の物語がゆるやかに紡ぎ上げられた。今年自身最速でストリーミング再生回数が3億回を突破した新たな代表曲「ライラック」は、爽快なストリングスの音色を大胆に加えたアレンジに。花畑のように紫の光が埋め尽くす客席に盛大なシンガロングが沸き起こり、ライブ序盤から会場はひとつになった。「嘘じゃないよ」では胸を締め付けるような大森の切ない歌声が響き渡り、寂寞感がたゆたうように会場に満ちていく。「ANTENNA」では開放感のあるアンサンブルが風のように心地よく広がった。
“光の海”と不穏な雷鳴
会場の照明が落ち、一筋のスポットライトを浴びながら藤澤が「光のうた」を演奏し始めると、ステージは瞬く間に光の粒で埋め尽くされた。まるで“光の海”のような神秘的な光景の中、大森はソファに座り、本を開いてページに視線を落とす。大森は時折ページをめくりながら、優美なストリングスに乗せて1つのひとつの言葉をそっと紡いだ。その本を片手に、大森がスタンドマイクに立って歌い始めたのは「soFt-dRink」。大森は失われていく青春の日々を惜しむように儚い歌声を響かせて情緒的な世界観を生み出した。そして弦楽器の不穏な音色から「ア・プリオリ」に突入。ビビットなピンク色と赤色のライトに染まったステージに重厚なサウンドが雷鳴のように轟く。低くドスの効いた声で怒りもやるせなさもぶち撒け、目を覆ってもがき苦しむ大森の姿は、観る者にすさまじいインパクトを与えた。「まだまだいけますか、『Harmony』!」と大森が告げ、壮大なストリングスとピアノで始まったのは「Dear」。心臓の鼓動のような雄々しいビートをバックに演奏する3人の姿は凛とした強さを放っていた。
ここで大森が「りょうちゃんと若井がここからすごい盛り上げます。たぶん、地球上で一番ホットな場所になるんじゃないかな」と宣言。少し動揺した表情を浮かべながらも「任せろ!」と頼もしい言葉を口にした若井は豪快にギターを鳴らし、スポットライトを浴びながら速弾きを交えたソロプレイを披露。若井のギターソロを皮切りにセッションコーナーが始まり、それぞれのプレイヤーのテクニックが炸裂するソロ回しが繰り広げられた。即興の歌で加わりながらもその様子を楽しげに見ていた大森は「カッコいいな。盛り上がったなあ。盛り上がったからバラード歌うわ」と笑い、弾き語りから「クダリ」を演奏。心の内をそっと吐き出すように、飾り気のないメロディに言葉を乗せて届けた。「クダリ」の終盤では途中で演奏をストップし、メンバーが掛け合いを見せる場面も。若井にちょっかいをかけられて肩を押された大森は「痛い!」と大袈裟に痛がって泣く素振りを見せる。「ごめんね、ごめんね」と謝る若井を横目に、今度は大森が若井の体をつねると、筋肉痛だという若井は「いってー!」と悶絶した。そんな大森と若井の仲睦まじいやりとりを眺めていた藤澤に、大森は「特等席に来なよ」と声をかける。3人が1つのソファにギュッと集まって「クダリ」の演奏を楽しげに続けるさまはオーディエンスを笑顔にさせた。デビュー曲「StaRt」も管弦楽を取り入れたクラシカルなアレンジに。ステージの端から端まで歩き、「ありがとう!」と観客に手を振りながらこの曲を届けた大森は、「12月2日の18時空いてる? 記者発表するからよろしくね」と突然告げてオーディエンスを驚かせた。
劇場に響き渡る合唱と大喝采
思わぬ告知に興奮が冷めやらぬ中、ミセスは「ケセラセラ」で愛と希望に満ちたファンファーレを鳴らして観客の心に光を灯した。その後、藤澤が繊細なタッチで弾き始めたのは「They are」。ソファーに腰掛けた大森は、満月が浮かぶ夜空の下で孤独と苦しみを感傷的に歌い上げる。そしてパーカッションとドラムの軽快なサウンドから「コロンブス」がスタート。ラテンのリズムに乗ってにぎやかなステージが繰り広げられ、まだ見ぬ景色に向かって進んでいく大きなエネルギーと高揚感に会場が満たされた。その後フルートと弦楽器の音色で始まったのは「Part of me」。声を振り絞るように寂しげに歌い始めた大森は、「誰かに愛されたい」と剥き出しの歌声で叫び、自身の内面に深く潜り込んでいくようにこの曲を届けた。
全編スウェーデン語の牧歌的なナンバー「norn」で温かみのある情景を生み出したミセス。「Soranji」ではスモークが雲のように漂うステージで、荘厳なストリングスに乗せて生きることの尊さと希望を歌い上げた。「familie」ではリラックスしたムードに雰囲気が一変。大森はバケツを手にして、まるでステージに花を咲かせるように紙吹雪を散らした。ライブのエンディングを飾ったのはジャジーな要素を持つナンバー「Feeling」。豊潤なアンサンブルとオーディエンスの楽しげな合唱が響き渡り、大喝采の中で全10公演にわたる定期公演は幕を閉じた。
なおミセスは昨日12月2日に記者発表会を行い、デビュー10周年企画を発表。7月8日にベストアルバム「10」をリリースすることや、7月26、27日に神奈川・横浜市の山下ふ頭にてアニバーサリーライブ「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE」を行うことなどをアナウンスした。
セットリスト
Mrs. GREEN APPLE「Mrs. GREEN APPLE on "Harmony"」2024年11月20日 Kアリーナ横浜
01. Magic
02. Hug
03. ライラック
04. 嘘じゃないよ
05. ANTENNA
06. 光のうた
07. soFt-dRink
08. ア・プリオリ
09. Dear
10. クダリ
11. StaRt
12. ケセラセラ
13. They are
14. コロンブス
15. Part of me
16. norn
17. Soranji
18. familie
19. Feeling