YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで11月22日から11月28日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、THE FIRST TAKEのパフォーマンス動画から2本が初登場。15位にモーニング娘。'24がTHE FIRST TAKEだけの特別なフォーメーションで披露した「恋愛レボリューション21」、36位に中島健人とキタニタツヤによるユニット・GEMNの「ファタール」がランキング入りしている。
そのほか23位の「ライラック」をはじめとして、Mrs. GREEN APPLEのスタジオライブ「Studio Session Live #3」の映像が6本もトップ100にランクインを果たした。
25位には大阪・京セラドーム大阪「MAMA AWARDS」の会場で上映された、BLACKPINKのロゼとブルーノ・マーズが「APT.」を世界初パフォーマンスした映像が登場。映像がアップされてからこの記事を公開するまでに、13日間で2590万回再生を突破している。
33位にはヨルシカの「太陽」がランクインした。こちらは公開中の映画「正体」の主題歌として書き下ろされた楽曲。MVには映画本編の映像がふんだんに使用されており、優しい歌声とともにエモーショナルな人間模様を堪能できる。
39位に登場したのは乃木坂46の「歩道橋」だ。センターを務めたのは、今回が3度目の表題曲のセンターとなる四期生・遠藤さくら。YouTubeのコメント欄では「乃木坂史上一番メンバーを綺麗に撮れてるMV」「このMVもっと伸びて欲しい 色んな方が言ってるけど、本当にここ数年の中で1番いい!!! MVも曲も大好き」と絶賛する声が多く上がっている。
ライブ映像やパフォーマンス動画が多くランクインした今週は、下記の3曲をピックアップ。
DECO*27「モニタリング」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場16位
DECO*27の新曲「モニタリング」は、ダブステップとハウスを融合させたベースハウスを基調にしつつ、昭和歌謡をミクスチャーした独特のグルーヴが魅力の楽曲。日本人に聴き馴染みのあるメロディラインに、あえて縦ノリのビートを合わせたことによって中毒性が増幅している。アレンジを手がけたのはDECO*27と、前作「サッドガール・セックス」でもタッグを組んだサウンドクリエイターのHayato Yamamoto。今年3月にリリースされた「ルーキー」以降、2人は“変化”をテーマに楽曲制作を続けており、今回もほかにない実験的なサウンドに仕上がっている。
MVのディレクション、アニメーション・キャラクターデザインを務めたのは、DECO*27の9thアルバム「TRANSFORM」のキービジュアル、ジャケットイラストも手がけているアニメーターのkee。MVの内容についてさまざまな考察が上がっており、その中でも説得力が高いと思った説を紹介しよう。
まず、このMVは女性がドアスコープを覗き込むシーンから始まる。一見すると部屋の外にいる女性はその異様な雰囲気からストーカーのようにも見えるが、「きみが病めるときも あたし側にいるわ」というフレーズがあるように、本当は病んでしまった“きみ”を心配して様子を見にきた優しい人物なのかもしれない。だとすると、彼女の背景や目の周りにサイケデリックな模様が浮かんでいるシーンは実はすべて主人公が見ている幻覚で、ラストの2分52秒のような模様がない映像が現実。「舐め取って 飲み干したいんだってば」などの性的な歌詞は、自分の家を訪ねた女性の目的を主人公が妄想で勝手にそう解釈しているだけ、という考察だ。
ちなみにDECO*27は、2021年に公開した自身の曲「シンデレラ」のMVに絡めて、X(Twitter)で「シンデレラミクとモニタリングミクの通う学校が近めで、通学の時にふたりがすれ違ってたらいいなと思っています」とポストした。2曲を並べて聴いてみると、より楽曲の奥深さを味わえるかも。
ロゼ「number one girl」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場59位
BLACKPINKのロゼが10月にリリースしたブルーノ・マーズとのコラボ曲「APT.」は、韓国の音楽ランキングで1位を総なめして、アメリカ・Billboardのメインチャート「HOT 100」を席巻するなど、世界的なブームを巻き起こしている。そんな話題沸騰の「APT.」も収録される12月11日リリースの1stソロアルバム「rosie」から、新たな先行シングル「number one girl」が到着した。
この曲は「APT.」に続いてブルーノ・マーズがロゼとともに制作に参加。さらにエイミー・アレン、D・マイル、オメル・フェンディ、カーター・ラング、ディラン・ウィギンスというそうそうたる面々が共作やプロデュースを手がけている。ロゼがInstagramで「この曲は私の“ナンバー・ワンズ”(ROSEファンの呼称)のための曲」と投稿しているように、この曲で彼女は「I'd give it all up if you told me / The number one girl in your eyes(すべてを投げ出してもいい / あなたの目に映るNo.1の女の子になれるなら)」と、自分がファンにとって唯一の存在でありたいという強い求愛を歌っている。
この曲が作られたのは、BLACKPINKのツアーを終えた彼女が、これから何をすべきかを模索していた頃だったという。11月29日、KBS 2TVの番組「THE SEASONS~イ・ヨンジのレインボー」に出演した際、ロゼは同曲を作詞したきっかけについて「明け方まで夜通しエゴサして自分の悪口を探し、自分自身を苦しめていたことが動機になった」と説明。ほかにもこの歌詞について「うんざりするほどあけすけで正直な歌を書きたかった」「これを聴いた誰かが不愉快に思っても構わないから赤裸々に書いてみようと思った」と明かしている。ストレートな言葉でつづった歌詞が美しいバラードに乗ることで、彼女の思いがよりダイレクトに伝わってくる。
iLiFE!「アイドルライフエクストラパック」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場90位
iLiFE!が2022年に発表した「アイドルライフスターターパック」、および2023年発表の「アイドルライフブースターパック」。この「アイドルライフ」シリーズは、メンバーが今歌っている曲の展開、観客がするべきコールや振りコピがそのまま歌詞になっている、岡崎体育「MUSIC VIDEO」やアニメ「てさぐれ!部活もの」オープニングテーマにも近いメタ構造の曲で、歌自体が観客の盛り上がり方のチュートリアルになっているのが特徴だ。そんなシリーズ第3弾となる新曲「アイドルライフエクストラパック」が登場した。
過去の2曲と同様に、今回の歌詞も「やめられん止められん(Fufu!)ずっと振りコピ(Fufu!)やっぱこれじゃん生涯オタク(FuwaFuwa)」のようにコールのパターンが丁寧に書き込まれている。このMVを観れば、初めてiLiFE!のライブに行った人でも簡単に声出しができるはずだ。
「アイドルライフエクストラパック」は、11月22日にMVが公開されてわずか6日で100万回再生を達成。これを祝して11月30日にはこの曲のライブ映像も公開された。ちなみに、第1弾「アイドルライフスターターパック」は11月に1000万再生を突破しており、iLiFE!独自の楽曲スタイルが世間に認知されつつあることを証明した。この勢いで第4弾、第5弾とシリーズの続編に期待したい。