楽曲のリズムやノリを作り出すうえでの屋台骨として非常に重要なドラムだけど、ひと叩きで楽曲の世界観に引き込むイントロや、サビ前にアクセントを付けるフィルインも聴きどころの1つ。そこで、この連載ではドラマーとして活躍するミュージシャンに、「この部分のドラムをぜひ聴いてほしい!」と思う曲を教えてもらいます。第24回は、マリンバをはじめとする打楽器、自身の声、言葉、さまざまな身の回りのものを用いた自由な表現活動を展開している角銅真実さんが登場です。
構成 / 丸澤嘉明
ドラムフレーズが好きな曲とその理由
ミシェル・ンデゲオチェロ「I Wonder If I Take You Home」(ドラム:エイブ・ラウンズ)
最初に思い浮かんだのがこの曲です。リサ・リサ&カルト・ジャム「I Wonder If I Take You Home」のミシェル・ンデゲオチェロカバー。原曲の打ち込みをドラム演奏で身体化している感じが初めて聴くリズムのようで、思わずどういうふうに組み上がっているのだろう、とスタジオに入って自分でドラムで叩いてみたりしました。
ヤプーズ「赤い戦車」(ドラム:泉水敏郎)
スネアの音色を聴けばその曲の時代やシーンがわかる、と昔知り合いに言われて「ヘェ~!」と思ったものです。
それを聞いてからスネアドラムの音色に興味を持つようになったのですが、このイントロのスネアドラムのスカーンとした音は、私にとって、時代やジャンルを超えて心の真ん中に響く、思わず顔をキュッとして噛み締めてしまう音です。
YouTubeにあるライブバージョンも思い返しては聴いています。
Hi-STANDARD「Turning Back」(ドラム:恒岡章)
私が初めて「ドラムってカッコいい!やってみたい!」と思った曲です。最初の1小節、16分音符のスネアドラムの中に、私のドラムへの憧れが詰まっています。
ポール・モチアン「Osmosis Part III」
一番好きなドラマー、間合いやシンバルの響きが大好きです。
最初に耳が止まったのはビル・エヴァンスのトリオで、今特によく聴いているのはこのアルバム(「I Have The Room Above Her」)です。
ポールの演奏でドラムという楽器の魅力を改めて知りました。
すべての音がそれぞれ波紋のように広がって重なり合うときの美しい模様を聴く、この音楽を聴く時間が本当に好きです。
ドラムがメロディやハーモニーのようでもあり、絵画のようでもあり、
空間や環境に対してもアンサンブルしているようなそんな発見があります。
自身でドラムフレーズをプレイする際に意識していること
私はドラマーではないのでドラムではなく、パーカッションとして演奏することが多いのですが、その時その空間や音楽に耳を澄まして頭の中に鳴ったまま音にして投げかけてみる、という心持ちでいることが多いです。音を鳴らすのと同じくらい、一緒に演奏している人たちの音や空間の音を聴くこと、音と音の関係性や会話を楽しみたいともいつも思っています。
自身のプレイスタイルに影響を与えたドラマー
打楽器の演奏という枠でもいいなら高田みどりさんです。物を鳴らすということそれ自体と、一音がその空間に生まれることの神秘を教わったように思います。
角銅真実
打楽器奏者、シンガーソングライター。マリンバをはじめとする打楽器、自身の声、言葉、さまざまな身の回りのものを用いた自由な表現活動を展開している。2020年1月にメジャー1stアルバム「oar」、2024年1月に2ndアルバム「Contact」をリリース。またcero、原田知世、満島ひかり、dip in the poolなどのライブサポートやレコーディングに携わっているほか、映画や舞台、ダンスやインスタレーション作品への楽曲提供・音楽制作も行っている。2024年7月に滞空時間のメンバーとなることを発表。12月20日に神奈川・神奈川県立音楽堂にて滞空時間と角銅真実Band Setでのツーマンライブを行う。また12月29日には東京・キチムにて年末恒例のワンマンライブを開催する。
角銅真実 - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
角銅真実 Manami Kakudo Info (@Cat_typingg) / X