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楠木ともりが思いを“吐露”したコンセプチュアルなバースデーライブ

楠木ともり(撮影:ハヤシマコ)
21日前2024年12月25日 13:03

楠木ともりの単独ライブ「TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2024 -灯路-」が、12月22日に神奈川・横浜BUNTAIで開催された。

毎年恒例となった、楠木の誕生日当日開催のバースデーライブ。25歳を迎える今年は、昨年のパシフィコ横浜 国立大ホールに続き横浜で実施され、新作EP「吐露」を軸にコンセプチュアルなステージが展開された。

楽しみ方は自由。精一杯楽しんで

会場が暗転すると、ステージ後方のスクリーンには表紙に「Keep on lighting with me」と銘打たれたノートが映し出される。そのノートが開かれると、中は白紙のまま。そこにバンドメンバーのイントロダクションが重なると、ステージ後方から楠木が登場して、ライブは「ロマンロン」からスタートする。逆光を効果的に使ったシンプルな照明演出でオーディエンスを魅了しつつ、彼女は儚さと力強さが入り混じった歌声を響かせる。曲のエンディングで、背景にライブタイトルが表示されると、会場の熱気は一気に急上昇。「楽しみ方は自由です。周りの人に迷惑をかけないように、精一杯楽しんでください」という短いメッセージを挟んで、そのままミディアムスローの「クローバー」へとつなげる。楠木らしいディープな世界観が踏襲された楽曲を前に、観客は時に拳を上げ、時にはじっくり歌に聴き入りながら体を動かしていく。

新作EP「吐露」からの1曲「DOLL」では、スクリーンいっぱいに映されたバラの映像とムーディな照明、そして肩の力を抜いた歌唱スタイルとが相まって艶やかな世界を構築。かと思えば、アップテンポの「BONE ASH」やアコースティックギターを軸にした「NoTE」と、変化に富んだナンバーを無駄な言葉を挟むことなく連発していく。特に「NoTE」では、抑えめの照明によって歌詞の世界に没頭させる演出も用意。曲が進むにつれて、楠木は歌を通して感情を発露させていき、よりエモーショナルな空気で会場を包み込んだ。

その後、シンフォニックなシンセサウンドに乗せて、スクリーンに映されたノートには「おもちゃにしてあげる 個性も努力も才能も」と「DOLL」の歌詞がつづられ、白紙だったページが文字で埋め尽くされていく。その流れから、ライブはアコースティックアレンジが施された「sketchbook」に突入し、美しいピアノの音色に楠木が繊細な歌声を重ねる。曲が進むにつれてウッドベースやパーカッション、アコースティックギターが加わり、その独創的な音世界はさらに広がりを見せることに。曲のエンディングで楠木がアリーナ中央に設置されたセンターステージに移動すると、自らアコースティックギターを抱えて「最低だ、僕は。」を弾き語りで披露。ギターをつまびきながら自身のテンポで歌う彼女は、しんと静まり返った会場でネガティブな感情を爆発させながら歌を届ける。さらに、アコースティック編成のバンドアレンジで「それを僕は強さと呼びたい」を届けると、歌詞のメッセージに沿って客席はポジティブな空気に包まれていった。

スクリーンには再びノートが映し出され、「最低だ、僕は。」の歌詞で埋められていく。続けて、文字化けした「風前の灯火」の歌詞が表示されると、リズミカルなシーケンス音に合わせてドラムビートが刻まれ、そのまま「StrangeX」へ。タイトル同様に不思議さを伴うサウンドで観客の高揚感が増していくと、楠木の動きに合わせてクラップをしたり手を左右に振ったりと一体感も急上昇。そのまま「いくぞ、横浜!」を合図に、攻撃的なアップチューン「青天の霹靂」へ突入すると、フロアの熱気もさらに高まっていく。さらに「熾火」「風前の灯火」と攻めのナンバーが連発され、ライブはクライマックスにも似た盛り上がりを見せた。

誕生日だからこそ自分と向き合う

10数曲をほぼMCなしのノンストップで披露した楠木だが、ここで初めて自身の思いをじっくりと伝える。最新EP「吐露」と同じ読み方の「灯路」をタイトルに用いた今回のライブについて、「吐露」からの楽曲を軸にしたライブを作りたいと考えたものの、「誕生日なのに暗い曲が多いなって考えたんだけど、誕生日だからこそ自分と向き合うイベントにしてもいいんじゃないか」と思ったという。続けて「私は生きるのが下手くそで、自分が思ってることとか感じたことをなかなか忘れられなくて、咀嚼するのがすごく苦手。そんな中で、そのもやもやをふと言葉にしてみると、ただ真っ暗なだけじゃなくて、ちょっとだけ明るいものもあって、それを無意識のうちに感じ取って生きているんだなと感じられたし、どこか物語っぽいかもと思った」と口にし、そこからEP「吐露」が生まれたと告げる。そして「だから、今回のバースデーライブはみんなにとっても何かを吐き出せる時間だったらいいなと思ってました。この1年をがんばって過ごしてきて、みんなにもいろんなことがあったと思う。そういった自分の人生の浮き沈みをドラマチックに変えられるような、すべてを吐き出してまた来年がんばるぞと思えるようなライブにしたくて、日記を書くみたいに曲を並べて、ずっと書き続けていくようなセットリストにしました。だから間に言葉を挟みたくなくて、思いを紡いでいくようなライブにしました」とライブのコンセプトを説明してみせた。

そして「一気にやったからみんなもいっぱいいっぱいかもしれないけど、おうちに帰ってからでも帰り道でもいいから、今年1年どうだったかな、何を大切にしてこれたかな、何を大切にしてこれなかったかな、来年はどうしようかなってことを考えて、少しでも明るく温かい気持ちで帰ってもらえたら、今日のライブは大成功だなと思います」とオーディエンスに語りかけるも、「実は……次が最後の曲なんですよ(笑)」と発言。客席から「えーっ!?」と声が上がると、「今回、何を最後の曲にしようかなと考えたときに、“灯す路”の先を私が決めていいのかなと。実は、ファンクラブサイトに心理テストみたいなコンテンツがあったんですけど、そこで皆さんが答えた結果を集計していて。その結果で最後の曲が決まりました」と伝え、「僕の見る世界、君の見る世界」にて新しい道を歩むようにライブをクライマックスに導いた。

アンコールではお祝いサプライズも

ストーリー性の強いライブ本編から一転、アンコールはライブグッズを身に付けたバンドメンバーがファッションモデルのようにステージやランウェイを歩き回る「TOMORI COLLECTION 2024 -WINTER-」からスタートする。どこかコミカルさを伴う演出に客席が笑顔に包まれると、最後に楠木がステージに登場。すると、突然バンドメンバーがパンキッシュにアレンジされた「Happy Birthday To You」を演奏し始め、楠木の誕生日をサプライズでお祝いする。これも毎年恒例とはいえ、予定にない演奏に驚いた表情の楠木は、ステージに登場したバースデーケーキに大興奮。ロウソクの火を吹き消すと、会場中から祝福の拍手が沸き起こった。

「本編はコンセプチュアルだったので、アンコールは楽しんでいってください!」の言葉に続いて、躍動感の強いアレンジが施された「シンゲツ」をプレゼント。その後のMCでは、来年3月8日に神奈川・KT Zepp Yokohamaにて開催される初の対バンイベント「TOMORI FES.」と、来年夏開催予定の東名阪Zeppツアーを発表し、オーディエンスを大いに喜ばせた。そして、「みんな今年1年、本当にありがとう」と感謝を伝えてから、ドラマチックなバラード「バニラ」とハートフルなミディアムチューン「narrow」を立て続けに歌唱。アーティストデビュー5周年を迎える2025年への期待が高まる中、25歳になった楠木の挑戦的なステージは大成功のうちに終了した。

セットリスト

楠木ともり「TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2024 -灯路-」2024年12月22日 横浜BUNTAI

01. ロマンロン
02. クローバー
03. DOLL
04. BONE ASH
05. NoTE
06. sketchbook [Acoustic ver.]
07. 最低だ、僕は。 [弾き語り ver.]
08. それを僕は強さと呼びたい [Acoustic ver.]
09. StrangeX
10. 青天の霹靂
11. 熾火
12. 風前の灯火
13. 僕の見る世界、君の見る世界
<アンコール>
14. シンゲツ
15. バニラ
16. narrow

公演情報

SMA 50th Anniversary presents「TOMORI FES.」supported by KT Zepp Yokohama 5th Anniversary

2025年3月8日(土)神奈川県 KT Zepp Yokohama

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