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中村正人、水野良樹、本間昭光がこの10年の音楽業界の変化を大放談

「『10年の音楽地図』~Supported by JASRAC~」の様子。
約1か月前2025年03月13日 10:04

JASRACによるトークイベント「『10年の音楽地図』~Supported by JASRAC~」が3月6日に都内で開催され、DREAMS COME TRUEの中村正人、いきものがかりの水野良樹、音楽プロデューサーの本間昭光がこの10年間の音楽業界の変化について語り合った。

10年の音楽トレンドの変化

イベントの進行は水野が担当。「2014年から2024年はどういう10年でした?」と話を振ると、中村は「業態が100%変わった。ひっくり返ったというよりも、気が付けば違うところで我々は仕事をしていた」、本間は「僕はライブも作曲も編曲もやるし、プロデュースもやる。いろいろなところに権利が発生するものとしないものがあるけれど、そういうものの収益構造がテクノロジーの進化とともにガラッと変わった」と実感を語った。

その後、ステージ後方に2014年から2024年までの音楽業界の動向やJASRAC賞、Billboard JAPANの年間チャートトップ5、そして3人の活動をまとめた年表が映し出され、それを見ながらトークが展開された。2015年のJASRAC賞金賞がAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」だったことに対して、本間は「震災ショックが落ち着いてライブが再開できる時代になった。ライブの盛り上がりとともに楽曲もハッピーなものが増えていった」と考察。2010年代後半にOfficial髭男dism、King Gnu、あいみょんといった今でもシーンの第一線で活躍するアーティストが登場したことについては「メロディがまた強くなってきた。楽曲のタイトルとアーティストとメロディが合致していた時代に戻ってきた」と音楽トレンドの変化について述べた。

ストリーミングサービスの登場

過去10年の特に大きな変化といえば、楽曲のリスニング方法がCDからストリーミングサービス中心に移行したことだろう。JASRAC広報部の佐野雅彦氏の説明によると、2013年度のインタラクティブ配信(サブスクや動画配信など)の徴収額は87.2億円だったのに対し、2023年度は487.2億円と約5.6倍に増加。一方でオーディオディスクとビデオグラム(CDやDVDなど)の徴収額は335.3億円から177.4億円に減少した。ただ全体の分配額は10年間で200億円程度増え、2023年度は1300億円超だったという。

水野が「音楽でビジネスするのは厳しくなるとずっと言われていたけれど、全体としては成立してる?」と疑問を口にすると、中村は「制作者が増えているので分散はしていると思う。僕らの実感は下がっている。なぜかと言うと収益率が悪くなったから。CDで100万枚売れるのと、サブスクで100万回聴かれるのでは(収益の)桁が3つも4つも違う」と発言し、本間も「全体の制作費はかなり落ちている。昔のようにスタジオを1日押さえて優秀なスタジオミュージシャンを呼べるのは本当に限られた現場だけ。その代わりにテクノロジーが進化して、モニタ環境だけしっかりしていれば家でソフト音源を使ってPro Toolsで録れてしまう。逆に言うと、そうしないと予算内に収まらないことが増えている」と同調した。

一方でサブスクの登場はポジティブに捉えていて、「昔の曲のリバイバルヒットが起きている。“音楽の図書館”的なストリーミングサービスがないとそれは生まれない」と水野が言えば、本間も「AI技術で自分の好みの音楽をオススメしてくれる。それによって自分の知識が深まっていく」と語り、中村も「今の音楽と35年前に出した音楽が同じところに並んでいることが幸せ」と相槌を打った。

これから音楽活動を始めるアーティストへ

もう1つ、この10年での大きなトピックがコロナ禍で、JASRACの徴収額にもその影響は如実に表れた。演奏等のうち演奏会等での徴収額が2019年度は78.8億円だったのに対し、2020年度は24.2億円に激減。しかしその後回復していき、2023年度はコロナ禍前を凌ぐ99.9億円と希望が見える結果となっている。

水野が「DREAMS COME TRUEの皆さんにとって、ライブエンタテインメントはビジネスの中でどのくらいの分量になっているんですか?」と問いかけると、中村は自身が社長を務める音楽出版社の資料を見ながら「2024年は配信と演奏が全体の7割。CDやBlu-rayなどの収益は3割にも満たないです。これを見てもライブをやらなければ即潰れます」と明かし、ドリカムのCDバブルの時代を知っている水野を驚かせた。

イベントではこのほか、欧米と比べて特別だという日本の編曲という文化、フェスの活況による曲作りの変化、配信ライブでの振る舞い、インターネットが音楽に与える影響など多岐にわたる話題でトークが繰り広げられた。最後に「これから音楽活動を始めるアーティストへ」というテーマでは、中村が「好きなようにやってください。逆に僕らはボカロPなど今のクリエイターから学んでいますので」と笑みを浮かべ、本間は「僕が若い頃を振り返ってみても何も教えられてないんですよ。好きにやれと言われて。ただ一生懸命、人が満足するところを、乾いた雑巾からさらに絞り出すように作業してきました。若いクリエイターには手を抜かずにがんばってほしいです」とエールを贈った。

このイベントの模様は音楽ナタリーのYouTubeチャンネルにて3月31日23:59までアーカイブ配信されているので、全編観たい人はチェックしよう。

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