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小袋成彬はなぜ出馬するのか?ロンドン帰りの彼が語った地元・さいたまの課題と可能性

小袋成彬
約1か月前2025年03月25日 8:02

5月11日に告示されるさいたま市長選挙に立候補した小袋成彬が、本日3月25日に埼玉・ヘリテイジ浦和 別所沼会館中庭で決意表明の記者会見を行った。

ツアー真っ只中の出馬表明

1991年生まれ、埼玉県さいたま市出身の小袋。2014年に立教大学経営学部を卒業後、音楽レコード会社のTOKAを創業した彼は、国内外のアーティストの楽曲プロデュースを行いつつ、自らもアーティストとして活動し、2018年には宇多田ヒカルをフィーチャーしたシングル「Lonely One」でメジャーデビューを果たした。

2019年からはロンドンを拠点に活動。今年1月に4作目のアルバム「Zatto」を発表した小袋は、3月から全国5都市で6000人を動員するツアーを行っている。彼の立候補は、このツアーの真っ只中、東京公演の翌日3月23日に発表された。2月に刊行された初のエッセイ集「消息」などにも生まれ故郷・さいたまへの思いをつづっていた小袋だが、あまりに突然の出馬表明に音楽ファンは騒然。一体なぜ彼は出馬を決めたのか。

トップが変わらなきゃ我々の大切しているものが反映されることはない

記者会見に友人たちを引き連れて現れた小袋は、自己紹介に続けて出馬の理由を説明。「きっかけはコロナです」と切り出した彼は、「2020年の春、私たちの生活は一変したと思います。自粛という名のもとに休業を迫られて、特に我々の文化芸術に関わる活動が真っ先に不要不急とされたんです。でも、この不要不急なものこそがかけがえのない存在だと皆さんが再認識したはず」と続ける。そんな中で「この10数年間、さいたま市がどうだったかと言うと、おかしいなと思うことがたくさんある」と語る小袋は、緑地面積の減少や観光・企業誘致のPR不足など、市の問題点を次々に挙げ、「いつのまにか昔ながらの街並みや文化が失われて、なんだか窮屈で無機質なさいたま市になってしまった気がするんです」と述べた。

実は5年前の2020年には旧大宮図書館のリノベーション事業に応募するなど、市出身のアーティストとして地元に貢献する方法を模索していたという小袋は、「そのときにあんまりさいたま市にビジョンがないということを知ったんです」と述懐。「さいたま国際芸術祭2023」のディレクターに応募したことも挙げつつ、「私が大切にしていることと、この街のやり方があまり合ってないなと思ったんです。これはトップが変わらなきゃ、生きている間に我々の大切しているものが街に反映されることはないなと思って、アイデアと自信があったので思い切って手を挙げることにしました」と出馬の理由を言葉にした。

柔軟なアイデアと明確なビジョンで自分の街をカッコよくしたい

小袋は「さいたま市のリニューアル」をスローガンに掲げ、「市民が誇りに思う街」「自然と共に生きる街」「国際的な新都心」というビジョンを提示。これを実現するための公約として、一番取り組みたいことだという公共空間の規制緩和をはじめ、スポーツ施設の改良、デザインチームの一新、市役所の組織改革、再開発計画の見直し、水路の整備、自転車道路の拡充、グリーン投資の促進、隠れ待機児童ゼロ、教育改革、パスポート取得助成金、姉妹都市制度の活用など、具体的な政策を列挙していく。

「市民が誇りに思う街」というビジョンを語る中で、小袋は「そもそも自分たちで新都心って名乗ってんのに、ダ埼玉って言われるのが俺は耐えらんないんですよ」と苦笑。公約の説明後、2030年までのロードマップを発表した彼は「音楽活動も政治活動も小袋成彬という1人の人間から生まれた活動の一部です。私は一生涯アーティストで、誰も見たことがない新しい世界を作ること、それにやりがいを感じる人間です。そういう人間だからこそ、政治を中から変えていくことができると思っています」とアピールする。

さらに小袋は「新しいことにチャレンジすると時々いわれのない批判を受けるんです。音楽で起業なんてうまくいくわけねえだろ。サビのない歌なんて売れるはずがないだろ。ロンドンに移住なんて物価が高くてできるわけないだろ。でも自分の言葉と信念で新しい世界を切り開いてきました。それに心が動かされていろんな人たちが観に来てくれています。これが私のパワーです」と友人たちを紹介。「ルールや規制でがんじがらめの社会をゆっくり解いて、みんながチャレンジしやすい環境を作りたいんです。しがらみだらけの政治の世界の中で、自分らしさを貫く大切さを社会に発信したいんです。柔軟なアイデアと明確なビジョンで自分の街をカッコよくしたいんです」と熱弁し、「それを実現したくてこうしてリスクを取って人前に出てきました。さいたま市役所には問題解決のプロフェッショナルがいます。皆さんもプレイヤーの1人ひとりです。この私の行動がいつしか大きなムーブメントになって、1人ひとりがこの街について考えるきっかけになればいいと思っております」と意気込んだ。

音楽は私の生活の一部であり、それをただ続けていく

小袋は立候補に向けた決意を語ったあと、記者からの質問に回答。音楽ファンとして気になるのは、音楽活動への影響だ。音楽活動と政治活動の兼ね合いについて問われた小袋は、自分は毎年ツアーを行うような人間ではないと述べつつ、仮に当選したとしても「現職も埼玉政財界人チャリティ歌謡祭でライブをやっていますし、年に1回くらいはライブをやる余裕があると思います」と主張。「もちろん今よりも活動は減ると思いますが、今日上がったPRビデオも自分で音楽を作っていますし、音楽は私の生活の一部なんです。それをただ続けていく。いつも通りの自分の心の落ち着かせ方、奮い立たせ方として音楽があると思います」と続け、「年に1回はライブをしたいなと思っています。それで僕は自由を得ているので」と強調した。

アーティストとしての経験があるからこそできることを聞かれると、小袋は「大きく言うと、私は自分らしくあることが得意だと思います。自分の意見を発することや何かにチャレンジする姿勢は私の培ってきたスキル・強みですし、そういうところでリスペクトされてきました。それを伝えられたらいいと思います」とコメント。「リアルな話で言うと、私はツアー中なんですけど、さいたまでライブができないんですよ。なぜかと言うと1000人規模程度の自己表現できる場所がないんです」と課題を挙げ、優先順位の高い政策目標ではないものの、「もし1000人規模のライブハウスがあったら、さいたまのカルチャーはもっと盛り上がるような気はしています」とアーティストならではのアイデアを語った。

若者が盛り上がれば、さいたまのみならず、日本を元気にする活力になる

2019年にロンドンに拠点を移した小袋だが、去年の12月に親に出馬の意思を伝え、今年1月から埼玉に住んでいるという。彼はさいたま市で本屋を営む友人に再会して立候補の意思を伝えた際、「8年前も同じこと言ってたよ」と指摘されたことを明かし、「その頃から心の中に沸々とあったのかもしれません」と語った。

今後どんな選挙活動を展開するかという質問に対して、小袋は「チームと相談しているところではありますが、若者の政治への関心、特にさいたま市は低いというのは問題ですし、キーになると思っています。そういう人たちが関心を持つムーブメントになればいいと思っています」と回答。最後に出馬の意気込みを問われた際も「長らくこの国では、若者の力が政治になかなか反映されないというジレンマがありました。いろんな世代の人を巻き込むことも重要ですが、若い人たちが盛り上がること、それがさいたまのみならず、この日本を元気にする活力になると私は信じています」と語り、「私はこうやってリスクを取って手を上げて先頭に立って、さいたま市、あるいは日本をもっと元気にしたいと思って立ち上がった人間です。そのビジョンに少しでも心が動いたのであれば、一緒にこのムーブメントに乗ってくれたらと思います」と呼びかけた。

完全無所属で出馬する小袋は選挙活動に当たって、ボランティアスタッフを募集。4月12、13日に埼玉教育会館、4月19日に大宮ソニックシティ、20日に大宮DOM PART2にボランティア説明会を行う。詳細は小袋のオフィシャルサイトで確認しよう。

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