原因は自分にある。の全国ツアー「LIVE TOUR 2025 嘲笑倫理学のすゝめ」が、本日4月20日に大阪・オリックス劇場でファイナルを迎えた。
開かれた“げんじぶの教科書”
3月15日の愛知・愛知県芸術劇場 大ホール公演を皮切りに、4カ所の会場で全11公演が行われた「LIVE TOUR 2025 嘲笑倫理学のすゝめ」。ユニバーサルミュージックとのパートナーシップ締結を発表し、その第1弾作品となるニューアルバム「核心触発イノベーション」のリリースを4月23日に控える中で行われた今回のツアーは、新たな1歩を踏み出し活躍の場をさらに広げる7人が、活動6年の中で培ってきた自身のアイデンティティや美学を改めて知らしめるような内容に。長野凌大いわく「チームげんじぶで考えた造語」だという「嘲笑倫理学のすゝめ」というタイトルのもと、7人に出会ったばかりの人にとってはげんじぶの“指南書”を開くような、長年7人を“観測”してきた観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)にとっては思い出のアルバムをたどるようなひとときが届けられた。この記事では、4月13日に行われた東京・東京国際フォーラム ホールA公演第2部の模様をレポートする。
「嘲笑倫理学のすゝめ」と表紙に記された重厚な書物が開かれ始まったライブ。ステージと客席を隔てる紗幕の向こう側、7人が次々にスポットライトを浴びると、その周囲には誕生日やメンバーカラーといったパーソナルデータが表示される。集合した7人のシルエットが浮かび上がったところで1曲目に投下されたのは、BPM200で疾走するハイエナジーなナンバーの「Operation Ego」。広いステージを覆う紗幕には歌詞がめまぐるしく飛び交い、圧倒的情報量の言葉の雨と7人による扇情的なマイクリレーが洪水のように聴衆を飲み込んでいった。
メタファーたっぷりに世情を嘆く「柘榴」に、“消費される世の中で”自身の存在意義を問う「Mr. Android (feat.izki)」、“げんじぶらしさ”を曲に投影した「余白のための瘡蓋狂想曲」。げんじぶの7人は、自身のスタンスを示すような楽曲を次々に投げかけてオープニングブロックを駆け抜ける。「Mr. Android (feat.izki)」ではメンバーの歌割りが変わるごとにムービングライトの色もメンバーカラーに切り替わり、7人の“色”を視覚的にも訴えかけていった。「Museum:0」まで5曲を披露し自己紹介を済ませると、げんじぶのダンスリーダー・長野は今回のツアーについて「僕らの世界観、作りたいものを存分に知ってもらいたいなと思って。“げんじぶの教科書”的なライブになってほしいという思いから、このタイトルになりました。このライブを見れば、げんじぶとはこういうグループだと知ってもらえると思います」と告げた。
あの“奥義”に見たげんじぶの深淵
その「げんじぶの教科書」は、“ページ”が切り替わるごとに異なる7人の表情、魅力、そして進化をオーディエンスに提示していった。「今日は僕たちと忘れられない思い出を作っていきましょう!」という長野の言葉とともに進んだ次のシーンで示されたのは、等身大なメンバーの姿。飾らない美しさや清涼感といったテーマが通底する2022年リリースの3部作「青、その他」「結末は次のトラフィックライト」「545」をユニットに分かれて歌いつなぐ7人の歌声には純朴さがにじみ、「545」の曲頭で小泉光咲が聞かせた涼やかなロングトーンも聴衆の耳を奪う。新曲「多分、僕のソネット」をポップな映像演出に合わせ朗らかに歌い届けてからは、「チョコループ」「推論的に宇宙人」と、メンバーが持ち前のキュートさを全開にする人気曲が続けて披露され、空間全体に華やいだムードを醸成。ステージの縁に腰掛けて歌う7人は自由に音に乗り、杢代和人が桜木雅哉の頬にキスしたり、大倉空人が小泉の頬でハートを作ったりと遊び心全開に観測者を翻弄していく。そんな7人の自由な振る舞いが最高潮に達したのは「GOD 釈迦にHip-Hop」で、メンバーは曲中、歌詞を無視して「大好き!」を伝え合う、大倉命名「大好き旋風」を巻き起こす。素顔で観測者と向き合い、遊び心全開に曲を楽しんだブロックを終えるなり、大倉は「今までのげんじぶのライブではなかったことだね。MC以外で笑い転げることないもん!」とひと言。珍しく自身のパートを飛ばした武藤潤も「ダンスが楽しくなっちゃって、マイク忘れちゃったよね(笑)」と続けた。
ライブ中盤に用意されていたMCコーナーでは、来場者が思いがけずげんじぶの魅力の“深淵”を覗くシーンも。今回のツアーでは、普段MCを担当している大倉以外のメンバーが持ち回りでMCを担当するルールが設けられており、そのMCが日替わり披露曲をくじ引きすることになっていた。東京公演でMCを担当することになった吉澤が引き当てたのは「ジュン手笛」と書かれた用紙。これは武藤が特技の手笛でげんじぶの曲を演奏するという趣向で、手笛が大好きなメンバーと観測者はくじ引きの結果に大盛り上がり。普段は自身のインスタライブなどで手笛を吹いている武藤は「僕さ、好きな図形があるんだ。皆さんの日常でも見かけることがある図形だよ。全部の角度を足して合わせると180になるんだ。そして、たまに関数になって現れるんだ。“ホー(サ)”イン、“ホー(コサ)”イン、“ホー(タン)”ジェント。それでは聴いてください。『夏の二等辺大三角形』」と口上を述べ、長野のマイクフォローを受けながら「夏の二等辺大三角形」の一節を吹き鳴らす。武藤の奥義が東京国際フォーラム ホールAの大空間で炸裂するという稀有なひとときを経て、7人は改めて引かれたくじによって「ケイカクドヲリ」も披露。スモークと風が吹き上がる演出の中で「盛り上がんないでどうすんの!」とアグレッシブなボーカルリレーを聴かせ、ライブを次のシーンへと進めた。
「絶対絶対置いていかないし、絶対絶対大切にするから」
リーダー・吉澤による「僕らからの愛を受け取ってください」という宣言とともに届けられた、.ENDRECHERI.提供によるファンクナンバー「LLL」で7人の立つステージがダンスフロアに変貌してからは、「Foxy Grape」「In the Nude」とジャジーな雰囲気をまとう2曲を続け、スタイリッシュな振る舞いで観測者を魅了していったげんじぶ。「In the Nude」のパフォーマンスをステージに上がったライブカメラが追う映像演出は、彼らが2020年8月に行った配信ライブの演出のオマージュのようにも受け止められるもので、涼やかにスーツを翻しフィンガースナップを決める7人に注がれる観測者の視線も、曲を重ねるごとに熱いものになっていく。再び紗幕が引かれたステージで披露された「灼けゆく青」では、スクリーンに投影されたリリックが雨のように降り注ぎ、ひんやりと色のない声色でポエトリーリーディングをし、無機質な表情でステージ上を行き交う7人の巧みな表現を際立たせていた。
レーザー光線を操りながらパワフルに舞う長野を筆頭に、7人がテクニカルなダンスパフォーマンスでオーディエンスを圧倒すると、そのレーザー光線は彼らの背後に「原因は自分にある。」のグループロゴを刻む。ライブ後半のハイライトとなったのは、デビュー曲「原因は自分にある。」から、昨年10月にリリースされた「原因は自分にある。【別解】」まで7曲を一気に駆け抜けるメドレーだ。「二択、二択」のコールで盛り上がる「嗜好に関する世論調査」、桜木の先導によって客席にウェーブが発生した「マルチバース・アドベンチャー」、タオル回しとシンガロングで熱狂を加速させる「Go to the Moon」。7人と観測者の熱い絆を確かめ合うようなキラーチューンの連発によって、大きな一体感が生まれた国際フォーラム。観測者の熱を受け取ったメンバーは「原因は君にもある。」で次々に観測者への思いを吐露していく。「今日はよくしゃべるぜ!」と笑った吉澤は「思ったことがあって。俺、しゃべるのが好きになりました。それってメンバーと観測者のおかげで。自分を間違いなく変えてくれるのも、人生の道を作ってくれるのも、目の前の大切な皆さん。これからも絶対絶対置いていかないし、絶対絶対大切にするから。ずっとずっと付いてきてください」とまっすぐに訴え、長野は「俺は絶対に、このライブという場所をいつまでも守ります」と約束。大倉は「あーホント、みんなに会えてよかったよ!」と喜びを爆発させた。
“狂愛”とともに引かれた幕
「僕たちメンバーが、この会場の誰よりも楽しんでやろう、みたいな気持ちで臨んでる」とライブ冒頭に語っていたのは大倉。原因は自分にある。のライブは、これまで独自の世界観をパッケージングして提示する、作り込まれた演出が特徴的だったが、「嘲笑倫理学のすゝめ」ではメンバー個々の自由なボーカルアレンジやその場その場で生まれる偶発的な“化学反応”を楽しむ空気感によって過去にないほど強いライブ感がもたらされ、それは7人のパフォーマンスの新たな魅力となって観測者たちの心を躍らせていた。「遊戯的反逆ノススメ」で7人が見せた生々しい感情の爆発はその最たるもので、思いのままにがなり、歌に力を込めるメンバー渾身のパフォーマンスによって会場のボルテージはぐんぐんと上昇。ファイヤーボールが吹き上がる中、大倉が「俺たちに出会ったからには一生離してやんねえよ?」と告げると、吉澤も「離れられないっつーか、離さねえから」と言葉を重ね、観測者の悲鳴のような歓声を誘った。加速度的に高まっていく熱量のままなだれ込んだラストナンバーは「Mania」。狂愛を歌うこの曲を「げんじぶの教科書」の最後に置いた7人は、楽曲の世界観に没入した表情、仕草、声色で“行き過ぎた愛”を表現し、観測者を釘付けに。甘く危険な世界へと聴衆を引き入れたままパフォーマンスを終えると、楽曲を象徴する無数の“青い蝶”が書物「嘲笑倫理学のすゝめ」の中へと吸い込まれていき、そのまま本は閉じられた。
なお、この日のライブの模様は、6月14日にCSテレ朝チャンネル1で完全版としてオンエアされる。
セットリスト
原因は自分にある。「LIVE TOUR 2025 嘲笑倫理学のすゝめ」2025年4月13日 東京国際フォーラム ホールA
01. Operation Ego
02. 柘榴
03. Mr. Android (feat.izki)
04. 余白のための瘡蓋狂想曲
05. Museum:0
06. 青、その他~結末は次のトラフィックライト~545
07. 多分、僕のソネット
08. チョコループ
09. 推論的に宇宙人
10. GOD 釈迦にHip-Hop
11. 日替わり曲
・ジュトゥブ(第1部)
・ジュン手笛→ケイカクドヲリ(第2部)
12. LLL
13. Foxy Grape
14. In the Nude
15. 灼けゆく青
16. 原因は自分にある。~嗜好に関する世論調査~シェイクスピアに学ぶ恋愛定理~マルチバース・アドベンチャー~Go to the Moon~原因は君にもある。~原因は自分にある。【別解】
17. 無限シニシズム
18. 遊戯的反逆ノススメ
19. Mania
撮影:Hanna TAKAHASHI、松本いづみ
