おいしくるメロンパンのライブツアー「おいしくるメロンパン antique tour - 貝殻の上を歩いて -」の最終公演が6月29日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で開催された。
念願の野外ワンマン
「antique tour」はおいしくるメロンパンが4月にリリースした9thミニアルバム「antique」を携え、5月から全国各地を回ってきたツアー。少年性を帯びた歌声や緻密なバンドサウンドで人気を集め、結成10周年イヤーの今年も精力的に活動している彼らは、このツアーのファイナルで初となる日比谷野音での単独公演に臨んだ。
日中は32℃まで上がり、強い日差しが照りつけていたものの、開演の17:30頃には時折風が吹き抜ける日比谷野音。ステージにナカシマ(Vo, G)、峯岸翔雪(B)、原駿太郎(Dr)がそろうと、「波打ち際のマーチ」で穏やかにライブの幕を開け、夏らしい「look at the sea」や生まれ変わり、運命をテーマにした「千年鳥」でおいしくるメロンパンらしいソリッドなアンサンブルを放った。
さまざまなフェスやイベントに出演してきた彼らだが、野外でのワンマンライブは意外にも今回が初。ナカシマは「梅雨なんで雨を覚悟してたんですけど、晴れましたね。こうしてソールドアウトで当日を迎えられてうれしいです。野外でやれたら楽しいだろうなとずっと思っていて、めっちゃ気持ちいいですね」と喜びを表現し、「原くんは野外大好きだもんね?」と話を振る。原はすかさず「日焼けすら愛おしい」と笑顔で返した。
イントロでたっぷりと轟音を鳴らした3人が人気曲「シュガーサーフ」をドロップすると、会場が一気にヒートアップ。峯岸は観客を手招きするようなジェスチャーで煽り、躍動感あふれるベースを奏でる。そのうえにナカシマの歯切れのいいカッティングギター、原のパワフルなドラミングが渾然一体となって響き、ファンの興奮を誘った。その後も、開放感に満ちた「Utopia」、ミステリアスなムードの「泡と魔女」という多彩な楽曲で三位一体のバンドサウンドを届けるおいしくるメロンパン。観客の期待を高めるようなセッション的なプレイで始めた「garuda」では祝祭感あふれる高らかなサウンドを紡ぎ、それに呼応するようにオーディエンスがハンズアップした。
原、貝になる
ライブ中盤、立ち上がった原はツアータイトルにある「貝殻の上を歩いて」について触れながら、「貝殻が転がってる砂浜を想像していただいて、その上を裸足で歩いてみたら痛かったり気持ちよかったりすると思います。今日はおいしくるメロンパンが貝になりますので、その上をしっかり踏み締めながら歩いて、最後まで楽しんでくれよ。よろしくー!」とハイテンションに話すと、その独特な世界観のMCに会場からは温かな笑みが。この流れで「貝殻の上を歩いて」という歌詞が印象的な「海馬の尻尾に小栴檀」に移ると、カントリー調の軽快なサウンドに合わせ、オーディエンスが心地よさそうに体を揺らした。そんな牧歌的なムードは「透明造花」や「空腹な動物のための」で一変。歪みのあるヘビーなロックサウンドが観客の耳を刺激する。その勢いのままなだれ込んだ「あの秋とスクールデイズ」でも狂騒的なアンサンブルが放たれ、「情けないな」と繰り返し吐露されるフレーズも相まって強烈なインパクトをもたらした。
会場の熱気が冷めやらぬ中、ナカシマは先ほどのMCの続きを始めるように「原くんはなんの貝になったんですか?」と問いかける。原は「ポワオー! ポワオー! 『もっともっと楽しむぞ』と鼓舞するために、法螺貝になりました」とアンサー。ナカシマは「おかげさまでいいライブになりそうですね」と話し、「今年の秋で活動10周年になるんですけど、純粋に音楽を楽しみながら続けてこれたのはうれしいことだなと思っていて。こうしてみんながいるから、できたことだなと思います」と感謝のメッセージを伝えた。そして、3人は「水葬」「渦巻く夏のフェルマータ」という物悲しさがにじむナンバーを畳みかけ、「旧世界より」で切ない余韻を残しながら本編を終えた。
メジャーデビューは前向きな選択
すっかり日が落ちた頃、おいしくるメロンパンはアンコールで舞台に再登場。テレビアニメ「フードコートで、また明日。」のオープニングテーマ「未完成に瞬いて」をにぎやかに演奏した。ツアーの終わりが目前となり、ナカシマは「もうツアーも終わっちゃうんだなっていうさみしい気持ちもありますけど、とってもいいツアーになりました」と名残惜しそうに語り、峯岸は「日比谷野音はバンドにとっては象徴のような会場なので、ここでやれたことがホントにうれしいです。めっちゃ楽しかったです」と晴れやかな表情に。「法螺貝としてひと言」と切り出した原は「ポワオー! 最高ー! ポーポポー! 野音大好きー!」と法螺貝になりきったまま自身の気持ちを表現した。
ここでナカシマが10月1日に10thミニアルバム「bouquet」をリリースし、トイズファクトリーよりメジャーデビューすること、10月から11月にかけてZeppツアー「おいしくるメロンパン bouquet tour - never ending blue -」を行うことをファンに報告すると、この日一番とも言える大きな拍手と歓喜の声が日比谷野音にあふれる。祝福ムード一色となった会場で、ナカシマは「インディーズにこだわって10年間活動してきたんですけど『メジャーデビューするならトイズがいいね』と結成当初に話していて。10年という節目で運命的な縁があって、メジャーデビューする運びとなりました。今まで応援してくれた方々にとっても、これから出会う方々にとっても前向きな選択ができたと思ってます」と胸を張って述べた。
ひとしきり話し終えたメンバーは「look at the sea」とのつながりを想起させるサマーチューン「群青逃避行」を初披露。ファンに長く愛されてきた代表曲「色水」も届け、ツアーに幕を下ろした。
セットリスト
「おいしくるメロンパン antique tour - 貝殻の上を歩いて - 」2025年6月29日 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)
01. 波打ち際のマーチ
02. look at the sea
03. 千年鳥
04. 灰羽
05. シュガーサーフ
06. Utopia
07. 泡と魔女
08. 沈丁花
09. 額縁の中で
10. garuda
11. 海馬の尻尾に小栴檀
12. 透明造花
13. 夜顔
14. 空腹な動物のための
15. あの秋とスクールデイズ
16. 水葬
17. 渦巻く夏のフェルマータ
18. 旧世界より
<アンコール>
19. 未完成に瞬いて
20. 群青逃避行
21. 色水
公演情報
おいしくるメロンパン bouquet tour - never ending blue -
2025年10月24日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
2025年10月25日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
2025年10月31日(金)愛知県 Zepp Nagoya
2025年11月16日(日)北海道 Zepp Sapporo
2025年11月28日(金)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
