吉田山田が10月18日に東京・品川インターシティホールにてワンマンライブ「吉田山田16周年記念ライブ~16祭~」を開催した。
吉田山田のデビュー記念日である10月21日を記念して、毎年10月の第3週に周年ライブを開催している吉田山田。今年の周年ライブは幡宮航太(Key)を迎えた3人編成で、デビューから現在までを振り返るようなライブが展開された。
ミュージシャンをやっててよかった
ライブ冒頭、山田義孝(Vo)のささやくような語り出しから始まったのは「午前0時」。山田の生まれ育った新宿の街を舞台に山田がエールを贈るこの曲が力強く歌われ、その迫力から会場内は少しの緊張感が走る。そのシリアスな空気感を幡宮の流麗なピアノの調べが緩和すると「もしもの話」がスタート。そのままピアノ伴奏で演奏が始まり、吉田山田の真骨頂とも言える“家族”をテーマにしたミドルテンポのナンバーに、オーディエンスはじっと聴き入った。
MCに入ると山田は「胸いっぱい。ああどうしよう」と声を漏らす。吉田結威(G, Vo)は「誕生日以外にも皆さんにこうやってお祝いしてもらえる日があるなんて。ミュージシャンをやっててよかったなあと実感する日です。まだ2曲しか歌ってないのに感慨深い」と、周年ライブを毎年開催できていることの喜びを表した。さらに2人はサポートメンバーの幡宮を「第3のメンバー」と紹介。幡宮の好物や苦手なものを暴露するトークで場を和ませた2人は、昨年発表した「恋」、10年以上前にリリースされた「メリーゴーランド」を続けて披露し、新旧織り交ぜたセットリストで16年の歩みを振り返った。
20年前、ニューヨークの地下鉄で
ライブ中盤、「ここ最近はリリースができていないけど、制作を続けている」と吉田が話し始め、「今しか感じられないことが曲になっている」と近況を報告。山田は「いろんな出会いを経ていろんな家族の話を聞ききながら、自分の家族と向き合う時間も増えて。そんな中でできた『けむり』という名前の家族の曲です」と曲紹介をし、未発表の新曲「けむり」を歌い始める。吉田山田の武器の1つであるギターサウンドが用いられないこの曲では、ピアノとストリングスを軸とした浮遊感のあるサウンドをバックに山田の繊細なファルセットに吉田の深みのある低音が重なり、吉田山田の新たな表現の一端が示された。この曲を皮切りに昨年リリースされたEPの表題曲である「家族写真」、吉田山田の代表曲の1つ「日々」が立て続けに披露され、ゆったりとした時間がしばし流れた。
「いつもなかなかやらないことを」という前置きから、2人はカバー曲をそれぞれソロで披露することをアナウンス。じゃんけんで順番を決め、先に歌うことになった吉田は約20年前の“何者でもなかった頃”に2人でニューヨークに滞在したときのことを回想し始める。2人で初めてケンカをしたこと、地下鉄の駅で歌い1ドルを受け取ったこと、まだお金がなく1カ月で2人とも激痩せしたことなどを笑いながら振り返った。彼がニューヨークで歌った「上を向いて歩こう」を歌うと宣言すると客席からは温かい手拍子が上がり、そのリズムに体を揺らしながら吉田は深みのある歌声を会場内に響かせた。
山田は「FUJIROCK FESTIVAL'25」で観た、サンボマスターのステージに甲本ヒロトと真島昌利がサプライズで登場した今夏の出来事に胸を踊らせ、初めてCDを買ったアーティストであるTHE HIGH-LOWSの楽曲「胸がドキドキ」をソロ歌唱の楽曲にチョイス。幡宮の横に立った山田は鍵盤の上に指を置き、幡宮とともにキーボードを鳴らしながらミドルテンポにアレンジした「胸がドキドキ」を歌い上げた。
普段は出せない顔を見せられる場所
ライブ終盤、盛大なシンガロングが響いた「魔法のような」、山田が手拍子を煽って一体感を演出した「未来」と、吉田山田のライブの鉄板曲が矢継ぎ早に披露された。アップテンポの曲が続く流れの中で演奏された「YES!!!」では、山田がステージを走り回りながら、シャウトあり、ロングトーンあり、コール&レスポンスありとやりたいことを詰め込んだパフォーマンスを繰り広げた。
最後のMCでは吉田山田の次に向けた動きとして、2026年1月10、11日に東京・飛行船シアターにてライブイベント「吉田山田シアター2026」を開催することを発表。さらに会場付近にある東京・上野マルイにて展示イベント「吉田山田展2026上野」が開催されることもアナウンスされ、会場内は祝福ムード一色に。山田は「泣ける場所ってそんなにないよね、きっと。職場でも泣けないし、できれば家族の前でも我慢して。だからこういう場所、普段は出せないような顔を見せられるような場所って、なんか素敵かもなあって思っています。そんな場所でこれからもあり続けられたらいいな」とオーディエンスにメッセージを送り、最後のナンバー「音楽」を歌唱。自身の人生観や音楽観、そしてファンへの思いが詰められたこの曲を歌い終えた山田は、マイクから口を話して直接「ありがとう」の言葉を伝えてステージをあとにした。
誰とも比べず、自分たちの役割を
客席からアンコールの代わりに「約束のマーチ」の歌声が上がると、その声に導かれるように吉田山田の2人がステージに再登場。吉田がこの日初めてエレキギターを手にすると、未発表の楽曲「爆弾」を弾き始める。幡宮の速弾きと吉田のギターサウンドが絡み合うアップテンポなナンバーで観客の度肝を抜いた彼らは、そのまま「イッパツ」で盛大なシンガロングを促して会場内をひとつにまとめ上げた。
最後に吉田は「僕らは誰とも比べず、自分たちの信念、自分たちの役割を一生懸命まっとうします。だからあなたも、あなたが生まれてきた意味、その役割を一生懸命まっとうすれば、それで大丈夫。僕らは自分たちなりに、自分たちの歩幅で歩み続けます」と語る。彼らがこの日のラストナンバーに選んだのは、1stアルバム「と」の収録曲「ハローグッバイ」。活動初期に発表した楽曲に今の思いを乗せて歌い上げた2人は笑顔でオーディエンスと再会の約束を交わし、この日のライブを大団円に導いた。
セットリスト
吉田山田「吉田山田16周年記念ライブ~16祭~」2025年10月18日 品川インターシティホール
01. 午前0時
02. もしもの話
03. 恋
04. メリーゴーランド
05. けむり
06. 家族写真
07. 母のうた
08. 日々
09. 上を向いて歩こう
10. 胸がドキドキ
11. 魔法のような
12. 未来
13. YES!!!
14. 音楽
<アンコール>
15. 爆弾
16. イッパツ
17. ハローグッバイ
