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作った楽曲を配信リリースするには、どうすればいい?

キニナル君が行く!
14分前2026年04月01日 9:03

ヤッホーみんな! 僕、キニナル君。音楽愛する大学生♪ 将来の夢は音楽でごはんを食べていくことだよ。でも、正直わからないことばかり。だからこの連載を通して、僕が気になった音楽にまつわるさまざまな疑問を専門家の人たちに聞きに行くよ。

この間、すっごくいい曲ができたんだ! その名も「キニナル☆ランデヴー」。みんなにもサブスクで聴いてもらいたいなぁ。でもどうやったら楽曲の配信ってできるんだろう? 気になって調べたらデジタルディストリビューションサービスというのがあるみたい。そこで今回はTuneCore Japanの山本祐哉さんにお話を伺ってきたよ!

取材・文 / キニナル君 撮影 / 池村隆司 イラスト / 柘植文

ディストリビューターとは

──はじめまして! 僕、こないだ「キニナル☆ランデヴー」っていうすっごくいい曲を作ったんです!

へえ、それは聴いてみたいね(笑)。

──でしょ? ぜひみんなにもサブスクで聴いてほしいんですけど、TuneCoreさんにお願いすれば配信してもらえるって本当?

本当だよ。TuneCore Japanはいわゆるデジタルディストリビューターと呼ばれる会社で、日本で初めて誰にでも開かれた仕組みとして2012年にスタートしたんだ。デジタルディストリビューターというのは、Apple MusicやSpotify、TikTokなどに楽曲を配信して、その収益を利用者に分配するサービスのことだよ。

──それまでは誰でも配信できるわけじゃなかった?

TuneCore Japanがローンチした頃はまだ日本でストリーミングサービスが始まっていない時代で、配信はiTunes StoreやAmazonでのダウンロード販売しかなかったんだけど、それでもレコード会社さんやレーベルさんと契約する必要があった。そういうコネクションがないと、作品を多くの人に届けることができなかったんだ。それに課題を感じたTuneCore Japanの立ち上げメンバーがニューヨークに飛んで、TuneCore本社に直談判しに行ったんだよ。そうして、日本にローカライズしたジョイントベンチャーという形でTuneCore Japanは始まったんだ。

──すごい行動力! そのおかげで、僕みたいな普通の大学生が作った音楽でも配信できるようになったんですね。

そう、本当に誰でも配信できるよ。鼻歌だって配信できる(笑)。実際にTuneCoreを使っていただいてるユーザーの方々の層はすごく幅広くて、小学生から80代までいるんだ。新しいことにチャレンジしようという思いに、年齢は関係ないんだよね。

ほかのディストリビューションサービスとの違い

──調べたらほかにもBIG UP!やFRIENDSHIP.といったディストリューターがあるみたいですけど、TuneCoreさんはほかのサービスとどういう違いがあるんですか?

まずは、さっき話した誰でも審査なく使える点。もう1つは利用料の形態だね。配信で得た収益をミュージシャンに還元する割合はいろんなパターンがあるんだけど、TuneCoreは特に還元額にこだわっていて。年間利用料を払っていただければ100%ミュージシャンに還元するから、例えばストリーミングで1億円稼いだなら、その1億円は全部ミュージシャンのものになるよ。

──すごい! 聴かれれば聴かれるほど儲かるんですね......! ほかのディストリビューターは違うの?

利用料金が無料の代わりに、還元率が80%だったり70%だったりする場合もあるね。初期費用はかからないけど、リターンは低くなってしまう。自分にあった条件のディストリビューターを選ぶのがいいんじゃないかな。あとTuneCore Japanは2025年2月に「Unlimitedプラン」という年間定額料金で何曲でもリリースできるサービスも開始したよ。駆け出しのアーティストはコンスタントに楽曲をリリースすることが多いと思うけど、そのたびに利用料がかかっていてはコストだけが膨らんでしまうリスクがあって、リリースを躊躇してしまう人も多かった。それでは本末転倒だから、思い切って「Unlimitedプラン」をスタートさせたんだ。配信される楽曲数は毎月増えていて、どんどん活発になっているよ(参考:TuneCore Japan野田威一郎インタビュー)。

──僕も友達と食べ放題チェーンのすたみな太郎に行くと、元を取ろうとしてついつい食べすぎちゃうから、定額だとたくさんリリースしたくなる気持ちはわかります!

同じ気持ちなのかもしれないね(笑)。正直、ローンチ前は売上が下がると思ってた。でも、我々は「All for Independence」というミッションを掲げているから、スタートさせたい気持ちが強くて。配信楽曲が増えるということは会社のシステム的にも負担が大きくて、対応してくれたエンジニアのみんなにも感謝です。

──曲を預けると、どういうところで聴けるようになるんですか?

Apple Music、Spotify、Amazon Music Unlimitedのようなグローバルなプラットフォームに加えて、各国のローカルなプラットフォームでも配信できるよ。現在は185カ国以上の、55を超えるプラットフォームに配信されていて、年々増えているんだ。

配信する際に必要なもの

──TuneCoreさんで配信してもらうときに必要なものを教えてください!

非常にシンプルで、まずは音源。次にカバーアートで、最後にその曲のタイトルやクレジット、ジャンルなどのメタデータ(テキスト情報)だね。

──僕、曲は作れたけど、カメラマンの知り合いもいないしデザインもできないから、カバーアートが用意できるか不安です……。

インスタにアップしている写真をそのまま使う人もいるし、最近はAIで生成した画像を使う人もいるから、そこまで気にしなくてもいいと思う。個人的にはクオリティよりも初期衝動というか、そのときのその人にしか出せないものを重視したほうがいい気がするな。

──なるほど! カバーアートにアーティスト名や曲タイトルも入れたほうがいい?

入れる人も多いけど、なくても大丈夫。逆に企業のロゴなんかはカバーに使っちゃダメなんだ。

──NGもあるのか。ちゃんとクリアできるかな……。

事前にこちらで審査するから心配いらないよ。今まで200万曲くらい配信してきたけど、全部人の手で審査してきたんだ。審査といっても、楽曲やデザインのクオリティを判定するんじゃなくて、DSP(デジタル音楽配信事業者)のレギュレーションに準じているかどうかを見るものだから安心して。もし不備があっても、そこを修正して改めて送ってもらえたら問題なく配信できるよ。

──わかりました! さっそくAIを使って作ってみました!

お、いい感じだね(笑)。

──なんか、いつもの僕よりキラキラしてます(笑)。アーティスト写真やプロフィール文はあったほうがいいですか?

必須ではないけど、自分のことも知ってもらうためにはあったほうがいいね。リスナーとのコミュニケーションにもなるので。最近は顔出ししてないアーティストも多いから、アー写じゃなくてキービジュアルでもいいと思うよ。音楽業界の人もプロフィールを参考にすることもあるから、自分の音楽の世界観がわかるような文章が1行でも書いてあるほうが業界の人の目に留まる可能性が上がるんじゃないかな。

あのアーティストもTuneCoreを使っていた

──TuneCoreさんに申し込んでから、何日で配信されるんですか?

最短2日だね。今日登録してくれたら、次の日に審査して、問題なければ翌日には世界中で聴けるようになるよ。

──早い! でも、YouTubeやSoundCloudなら、もっと手軽に配信できますよね? ズバリ、TuneCoreさんにお願いするメリットって?

やっぱり、できるだけ多くの人の目に触れる場所に自分の楽曲を置いておくのが重要だと思うんだ。そのためにはYouTubeにもSoundCloudにもアップしたほうがいいし、ストリーミングサービスでも配信したほうがいいと思う。ストリーミングはしっかりお金が返ってくるし、何よりも今はストリーミングで聴けないとその曲は世の中に存在していないのとほぼ同義になっているからね。収益云々は置いておいても、そこで配信することがスタートラインになるんじゃないかな。

──TuneCoreさんを使って配信して、有名になったアーティストにはどんな人たちがいます?

最近だと、こっちのけんとさん。2024年の「NHK紅白歌合戦」にも出演して、すごく活躍されているよね。あと、Tani Yuukiさんの「W/X/Y」はBillboard JAPANのSteraming Song Year Endチャートで1位を獲得したし、そういう楽曲がTuneCoreから配信されているというのは、時代が変わってきたなという感じ。もうちょっとさかのぼると、なんといっても瑛人さんの「香水」は象徴的だった。あの曲は2019年に配信リリースされたんだけど、1年経った2020年に突如として爆発したんだ。

──配信してすぐバズるわけじゃないんですね。バズった日が発売日ということか……!

配信しておかないと当然誰にも聴かれないから、やっぱり見つかりやすい状況にしておくことが大事なんだと、僕らも再認識したよ。

ストリーミングの再生単価は

現在、TuneCoreからアーティストに毎月10数億円が還元されているんだけど、こんな経済的な規模は歴史的にもなかったと思うんだ。その中でも、ヒップホップのアーティストが占める割合が一番多いんだよね。

──ヒップホップは配信の世界でも盛り上がってるんですね。

個人的な感覚だと、ヒップホップのアーティストは変化に対応するスピードが早いんだと思う。SNSの使い方にしてもそうだし。あと、チームを組んでクリエイションしていったり、アーティスト同士がお互いフィーチャリングしていったりするのも、ストリーミングのフォーマットに合っているんじゃないかな。

──確かに、ヒップホップアーティストはリリースのペースが早いですもんね。

とはいえ、TuneCore Japanとしては多種多様なアーティストをバックアップしているので、どんなジャンルでも利用してほしいですね。

──ストリーミングで1回再生されるとどれくらいのお金が入ってくるのか、やっぱりとても気になります……!

プラットフォームによってまちまちなんだよね。基本的には、それぞれのプラットフォームのユーザーが毎月支払ってる利用料を、その月に再生されたすべての楽曲で按分しているイメージで、現状は1再生につき0.2~1円くらいかな。毎月微妙に改変しているので、あくまでもイメージだけど。

──日に日に配信されている曲は増えるから、分配の対象も増えていきますもんね。

そう。今は全世界で約2.5億曲が配信されてるみたい。

──桁がすごすぎて、多いのかどうかもよくわからない!

楽曲も増えるけど、プラットフォームの利用料も値上げされているから、そこでバランスをとっていくことになると思うよ。

配信以外のTuneCoreのサービス

──TuneCoreさんにお願いしたら、配信以外のサービスも受けられるんですか?

TuneCore Japanは配信から事業をスタートして、今は配信の前段階である制作、そして配信後のプロモーションという両サイドにもサービスを広げているんだ。プロモーション面だと「Spotify Discovery Mode」という機能があって、これを利用した楽曲はSpotifyの自動再生やパーソナライズされたプレイリストに入りやすくなる。広告に近い効果があるんだけど、事前に料金を支払うんじゃなくて、成果報酬型だからこのモードを使うことで再生数が増えたら、Spotifyの手数料を除いたロイヤリティの20%を手数料としていただく仕組み。Spotifyのアルゴリズムも進化していて、楽曲とリスナーがマッチしやすくなっていることもあって、海外に広がったり再生数が倍になるようなアーティストも出てきたりしているから、ワンクリックで手軽にできるプロモーションになっていると思う。

──増えた収益から手数料が引かれるなら、アーティスト側にデメリットがなくてうれしいです!

制作の領域だと、マスタリングサービスが目玉だね。海外だと、ほとんどのディストリビューターがオンラインマスタリングサービスを搭載しているんだ。TuneCore Japanでは1曲600円から利用できて、2、3分でマスタリング結果が返ってくるよ。

──安いし早い! 正直、マスタリングのことはよくわからないので、とても助かります。

SOUNDRAWさんというAIトラック生成サービスを展開している会社と業務提携させていただいて、一緒に機能提供しているんだ。海外のマスタリングサービスはドンシャリ感が強いから、日本向けにローカライズする必要があったんだよね。ジャンルごとに適切な音像があって、それもチューニングできるようになってる。特にマスタリングのことがよくわからない、初めて配信するミュージシャンにとってはうってつけなんだ。無料で30秒のプレビューができるようになってるので、とりあえず試してみてほしいね。

──あと、TuneCoreさんを通して、いろいろなオーディションに参加できると聞きました。

うん、何かしらのきっかけになればという思いで、フェス出演などのオーディションの機会を提供している。「FUJI ROCK FESTIVAL」さんには僕からお声がけさせていただいて、ありがたいことに「一緒にやりましょう」という話になって、「ROOKIE A GO-GO」への出演を懸けたオーディションを2022年から開催しているよ。TuneCore Japanと一緒に開催する以前と比べたら過去最高の応募数になったみたい。とても相性がよかったということだね。僕らは50人規模の会社なので、そこまで広範囲にはできないんだけど、できる限りこういったオーディションは提供していきたいと思ってます。

──可能性が増えるのはありがたいです! 最後に、僕みたいにこれから自分の曲を配信したいアーティストにアドバイスをお願いします!

楽曲を配信してもフィードバックがまったく返ってこないこともあるし、世界がいきなり変わることもほとんどないんだけど、そこで一歩踏み出すことで開けてくるものはあるはず。いろいろなテクノロジーが進歩して、ベテランでも新人でもできることは大差なくなってきてるし、わからないことがあればなんでもChatGTPに質問すればいい。そうやって行動を起こしたら仲間もできるかもしれないから、どんどん楽しくなっていくと思う。ペースは人それぞれだから、楽しみながら続けていくことが大切なんじゃないかな。

──まずは第一歩を踏み出すのが大事ということですね! 今日はありがとうございました!

プロフィール

山本祐哉

TuneCore Japanのゼネラルマネージャーとしてサービス開発・運営の統括を担う。
TuneCore Japan