BRAHMANが全国ツアー「BRAHMAN tour viraha」の最終公演を、5月15日に東京・東京ガーデンシアターで開催した。
ロングツアーの締めくくり、その始まりは
昨年結成30周年を迎えたBRAHMANだが、その1年前の2024年11月に神奈川・横浜BUNTAIで過去にリリースした6枚のフルアルバム全収録曲を軸に全75曲を演奏する前代未聞のライブ「六梵全書 Six full albums of all songs」を敢行。この公演を機に、オリジナルアルバム「viraha」のリリース、主催ライブイベント「尽未来祭 2025」および全国ツアー「BRAHMAN tour viraha」の開催と周年プロジェクトを展開していた。2025年3月にスタートした「BRAHMAN tour viraha」は、足かけ1年2カ月に及ぶロングツアーに。その最後を飾る東京ガーデンシアターは満員御礼。アリーナエリアはオールスタンディング形式となり、ライブハウスさながらの緊密さと熱気が渦巻く空間が構築された。
オープニングSEの「Molih ta, majcho i molih」が荘厳な空気を醸成する中、メンバーの胸から口元をフィーチャーしたモノクロの映像や、30年間の場面の数々が巨大なスクリーンを彩った後、KOHKI(G)の弾く清涼感のある旋律が場内に響いた。これを合図にTOSHI-LOW(Vo)はマイクを握り締め、チバユウスケ(The Birthday)をはじめ道半ばでこの世を去った多くの仲間たちへの思いを曲に込めた「charon」を絶唱。するとアリーナエリアに続々とクラウドサーファーが生まれ、メンバーの背に映る波打ち際の景色さながらにステージ前に押し寄せた。
会場を飲み込む一枚岩のアンサンブル
「1年2カ月にわたる、全国3万kmにわたる、3万7000人の前にわたる、『tour viraha』。全箇所満員御礼。俺は、俺たちはこれしかできない……全力でBRAHMAN始めます」。TOSHI-LOWはツアーファイナルにふさわしい言葉をいつもの口上に織り交ぜると、4つの髑髏を背に「賽の河原」を歌い上げた。この曲を口火に4人は、「viraha」の収録曲や「雷同」「BASIS」「SEE OFF」といったライブを通して鍛え上げられた楽曲を、怒涛のように繰り出していく。MAKOTO(B)はハイキックを繰り出し、鼓膜を震わせる強烈な低音を鳴らし、RONZI(Dr)は一心不乱にビートを刻み続ける。KOHKIはTOSHI-LOWとともに咆哮を繰り返し、時に激しく歪んだ音色を、時に空間を切り裂くような旋律を奏で、オーディエンスの感情を揺さぶる。TOSHI-LOWの歌を含め、一枚岩のように鳴るアンサンブルはオーディエンスを飲み込み、会場内の一体感をより強固なものにした。
ライブの転換となったのは「最終章」。メンバーの背後に設置されたスクリーンに震災直後の東北地方の景色が浮かび、当時のことを風化させまいとする意思を伝える。そこから「静粛の世界に声を殺して 静かに踊れ激しく」というフレーズが耳に残る「Slow Dance」へ。今でこそライブで思うままに体を動かし、声を上げることができる状況ではあるが、この曲が作られたコロナ禍ではさまざまなことが制限されており、その中でBRAHMANはライブにおける“静”の表現を追求。時代に合わせて表現を変えていったバンドのありようが、続け様に明示された。
視覚演出を交え普遍のメッセージを伝えた中盤戦
その後も、メンバーは休憩を挟むことなく、ひたすら演奏に没頭していく。自分たちのルーツであるハードコアパンクと向き合って作られたという「知らぬ存ぜぬ」では、「言うものは知らず 知るものは言わず」という歌詞を背に熱演。曲のラストではミュージックビデオ同様にTOSHI-LOWの顔が大写しになり、視覚的にも強烈な印象を刻み付けた。Motörhead「Ace Of Spades」の豪快なカバーと「笛吹かぬとも踊る」という「viraha」の収録曲を挟み、奏でられたのは2013年リリースのアルバム「超克」から「空谷の跫音」「鼎の問」の2曲。「鼎の問」では過去のライブ同様に、フォトジャーナリストの小原一真が撮影した福島第一原子力発電所の事故当時の様子や福島の風景、復旧作業にあたる作業員たちの写真やメッセージとともに、4人が全身全霊のパフォーマンスを展開した。
TOSHI-LOWがマイクにしがみつき、崩れ落ちるように歌った「ARRIVAL TIME」を経て、「ANSWER FOR...」が始まると雄叫びのような歓声があちこちから発生。クラウドサーファーもすさまじい勢いでステージへとなだれ込み、東京ガーデンシアター内に狂騒が広がっていく。TOSHI-LOWが歌詞の一部を「有明に行こう」と変え、「ああ今夜 終わらないで」というフレーズを噛み締めるように歌い上げた「今夜」に続いたのは、チバユウスケのソロプロジェクトSNAKE ON THE BEACHの「星の少年」のカバー。チバが遺したさわやかでみずみずしい旋律や、「俺はまだまだ ここでやること ありすぎるから 生きるしかない」という一節が、BRAHMANとオーディエンスへのメッセージのように響いた。
30周年の最後にTOSHI-LOWが口にした決意
コーラスにも参加している“群馬の少年”ことG-FREAK FACTORYの茂木洋晃(Vo)を招聘しての「最後の少年」、共作者である細美武士(ELLEGARDEN、the HIATUS、MONOEYES、the LOW-ATUS)とのコラボレーションによる「WASTE」という、ツアーファイナルにふさわしい特別なパフォーマンスが光ったライブ終盤。TOSHI-LOWはKOHKIが奏でる柔らかなメロディに乗せて、この日最初で最後のMCを始める。
「BRAHMAN tour viraha final」のチケットが売り切れたのが前日の真夜中であったことを報告し、「最後をこんなに美しく飾れるなんて……本当にうれしいんで、今から憲法第9条を朗読します」と時事ネタ混じりのトークを展開。「まあ、こういうこと言うから『MCしないほうが、好きだったよ』みたいなこと言われるんだけど、今までMCしなかっただけだよ。俺はバンドを始めたガキの頃からずっと反戦、反核です。それは、今からも変わることはない」ときっぱり。「なぜなら俺たちは、そういう先輩たちのバンドを見て、『パンク、カッケー!』ってなったから。そういうバンドに憧れて、今ここに立ってる」「黙ってるとよくないんだな、声を上げないと意見っていうのは叩き潰されていくんだな。そんなふうに思った、今回のツアーの中で」と自分たちの音楽のバックボーンとともに、混迷を極める社会情勢に対する複雑な思いを吐露した。
「30年やってきて初めてツアーが終わらなければいい、ツアーがまだまだ続けばいい。みんなでまだ旅をしていたい。一緒にお酒を飲んで、笑っていたいと思った」と、ツアーの終わりを前に素直な心境を明かしたTOSHI-LOW。「これだけバンドを続けてこれたのは自分が努力したからなのかなって、30周年を迎えたときに一瞬思ったこともあったけど、別にそんなことなくて。才能なんてないから、曲が1曲できたら、その曲をこするくらいやって。ライブが決まれば、それを全力でやる。それぐらいしかできることはなくて。それが気付いたら30年を超える、このバンドをやっていたっていうだけ」「30周年続けてこれた理由は、ただ俺が、とてもとても恵まれてるから。この光景を見て確信してる。俺は誰よりも恵まれてる」と目を細め、愚直に進んできたそのキャリアを回顧する。
その後もTOSHI-LOWは瞳を潤ませ、時折声を枯らしながら言葉を紡ぎ、「これからも俺は歌うでしょう。世の中への怒りを、そして愛する人を失う悲しみを。病気のつらさを。そして、逃れられない死というそのことを。これからも、これからも歌い続けるでしょう」「1つのゴールが終わったらまた、次のゴールがぼんやり見えてくる。永遠に終わらない旅だというのもわかってる。それでも俺たちは最期までゴールを目指す。立ち止まることはない。休むこともない。ただ最期の日までゴールを目指すだけ」とBRAHMANとしてこれからも歩みを進めていく決意を表明。「俺の人生の最期、ゴールを切る本当の本当の最期の日。たぶん、そのゴールテープの向こう側に、先に逝ったあの人もあの人も、あいつもこいつも、全員並んでいてくれる。俺がテープを切ったあとに、そいつらが寄ってくる。『TOSHI-LOW、俺たちがいなくなったあとの人生は、どうだった? つらかったか? 苦しかったか? 悲しかったか?』って聞かれる。そのとき俺は、こう言うよ『順風満帆』!」とラストナンバーを高らかにタイトルコール。万感の表情で音を鳴らし、歌う4人の前には、晴れやかな顔のオーディエンスの姿が。時間にして2時間弱、全28曲。BRAHMANの30年のキャリアを煮詰めたライブは、メンバーの背後に「順風満帆」の文字が大きく躍る中で幕を下ろした。
セットリスト
「BRAHMAN tour viraha final」 2026年5月15日 東京ガーデンシアター
01. charon
02. 賽の河原
03. 恒星天
04. 雷同
05. BASIS
06. 春を待つ人
07. SURVIVOR'S GUILT
08. SEE OFF
09. GOIN' DOWN
10. 最終章
11. Slow Dance
12. A WHITE DEEP MORNING
13. PLASTIC SMILE
14. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
15. BOX
16. BEYOND THE MOUNTAIN
17. 知らぬ存ぜぬ
18. Ace Of Spades
19. 笛吹かぬとも踊る
20. 空谷の跫音
21. 鼎の問
22. ARRIVAL TIME
23. ANSWER FOR...
24. 今夜
25. 星の少年
26. 最後の少年
27. WASTE
28. 順風満帆


