Mrs. GREEN APPLEのスタジアムツアー「ゼンジン未到とイ/ミュータブル~間奏編~」が7月5日に東京・MUFGスタジアム(国立競技場)で閉幕した。
「イミュータブル」と「ミュータブル」
今年の1月1日にフェーズ3に突入したミセスは「ゼンジン未到とイ/ミュータブル~間奏編~」をMUFGスタジアム(国立競技場)で4公演、大阪・ヤンマースタジアム長居で2公演の計6公演行い、約39万人を動員。そのうち7月5日のファイナルを含む4公演はファンクラブ限定ライブとなった。ファイナルの模様は各プラットフォームで配信され、全国360館以上の映画館やカラオケ、韓国、香港、台湾、タイの計22カ所の海外劇場ではライブビューイングが行われ、ツアートータルで57万人を動員する規模となった。
「ゼンジン未到」はミセスがバンドを結成して間もない頃の2014年から行ってきたライブシリーズ。ミセスといえば、1つのコンセプトに沿って壮大な演出や規格外のステージセットを取り入れた“アトラクション型”のストーリーラインの公演や、楽曲を軸に物語を描く音楽劇的な公演など、さまざまな形でライブを行っているが、「ゼンジン未到」はバンドの内面性や本質にフォーカスを当て、その時々の等身大の彼らの姿を見せるようなシリーズだ。かつて「ゼンジン未到」シリーズはライブハウスで行われていたが、2024年には兵庫・ノエビアスタジアム神戸と神奈川・横浜スタジアムを舞台に「ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~」が開催された。フェーズ2以降のミセスが等身大のライブを行うのに相応な場所というと、スタジアム規模の会場になってくるのは必然的だと言ってもいいだろう。今回の「ゼンジン未到」のタイトルで掲げられたのは「イ/ミュータブル」というキーワード。「イミュータブル」とは「不変の」、「ミュータブル」とは「変更可能な」を意味する言葉だ。ミセスにとってフェーズ3初ライブとなったこのツアーには、新たな章をどのように進めていくかというミセスの等身大の思いが通底していた。
純度100%の愛情に満ちた国立競技場
約7万人のJAM'S(ミセスファンの呼称)で埋め尽くされた国立競技場に、きらびやかな新衣装に身を包んだ大森元貴(Vo, G)、若井滉斗(G)、藤澤涼架(Key)がリフトに乗ってステージ下から登場。若井が奏でるケルティックなギターリフで「Magic」がスタートし、会場は一瞬できらめくようなサウンドで満たされた。7万人の掛け声で会場はみるみるひとつになっていく。大森はその声を聞きながら「もっともっと!」とアクセル全開で煽り、オレンジスパークルのギターを携えると鮮やかなストロークとともに「私は最強」を歌い始めた。パワフルかつみずみずしいサウンドでスタジアムに巨大なエネルギーを巻き起こし、彼らはその勢いのまま「スターダム」に突入。2014年に自主盤としてリリースした1stミニアルバム「Introduction」収録の初期ナンバーで「すべてのものはいつか消える」という変わらない真理と無常観を歌い上げた。
「ファイナルですよ! 6公演やってきました。ファンクラブ限定で国立競技場ですよ。来てくれてありがとう!」と大森は声を弾ませ、「正真正銘のJAM'Sしかいないはずなんですよ。純度100%の愛情と今日は勝負ですよ!」と気合いを入れる。高揚感あふれるドラムロールを合図にメジャーデビュー曲「StaRt」が放たれると、JAM'Sは掛け声やクラップを通してあふれんばかりの大きな愛を3人に伝えた。「1、2、3、4!」の掛け声で始まった「アボイドノート」では、どこまでも伸びやかに広がっていくように爽快なバンドサウンドが響き渡る。そして藤澤の繊細なタッチによるドラマチックな鍵盤の音色から「アポロドロス」がスタート。オリンピックの応援ソングとしても使われたこの曲が国立競技場で雄大に演奏され、JAM'Sの盛大なシンガロングも息ぴったりに重なった。
「そっち行っていいですか?」と大森は会場後方を指差すと、「familie」を軽やかに歌いながらアリーナの外周の花道を歩き始めた。LEDビジョンの映像は朝を思わせる花畑から始まり、夕焼けの浜辺、そして都会の夜の風景へと移り変わっていく。そんな“1日”を経て彼はステージ後方にたどり着くと、今回のスタジアムツアーでライブ初披露となった「Carrying Happiness」をパフォーマンス。東京ディズニーリゾートの夏季イベント「サマー・クールオフ」テーマソングとして書き下ろされたこの曲は、ウォーターキャノンの演出とともに高揚感たっぷりに届けられた。
雨すらもしのぐようなミセスとJAM'Sのエネルギー
ここで一度メンバーがステージを去ると、若井のみが舞台に立ち、ギター1本で7万人のJAM'Sを魅了していく。高速タッピングを繰り広げ、SGを高く掲げる若井のロックスター然とした輝かしい所作の1つひとつにスタジアムは大きく沸き立った。若井と入れ替わって姿を現した藤澤はフルートで魅せる。絵本の世界のようなメルヘンな森を背景にフルートを吹く藤澤の姿は、大きなリボンが付いたピンク色の衣装も相まってまるでフェアリーのよう。彼から生まれる優美な音色にオーディエンスはうっとりと聴き入った。続いて登場した大森がギターを携え、弾き語りでそっと歌い始めたのは「BFF」。自身にとってかけがえのない存在である若井と藤澤への思いが詰まったこの曲を穏やかな表情で紡いだあと、ミセスの10年の軌跡が刻まれた大切な1曲「Variety」へとつないでJAM'Sの涙腺をゆるませた。
その後ミセスは火柱やファイアーボールなどのスタジアムらしい豪快な演出を取り入れながら、新旧問わずさまざまな楽曲を届けていく。彼らはモールス信号を合図に「ANTENNA」をスケール感たっぷりに演奏したあと、魔法陣が浮かび上がる舞台でオリエンタルな楽曲「クスシキ」をプレイ。フェーズ2に生まれたダークサイドを象徴するナンバー「Loneliness」では、爆発音とともに激しい炎がステージ上で燃え盛った。
命の尊さを感じさせる「Dear」、そしてすべての人々を肯定する「僕のこと」という壮大なミディアムナンバーをスタジアムいっぱいに響かせた3人。天気予報では雨が降るはずだったところ、ここまで国立競技場周辺の雨雲は薄まっていたが、次第に雨粒が降り始め、大森も「パラパラと降ってきたんじゃないか?」と空を仰いだ。しかし、3人は徐々に強まっていく雨すらもしのぐような爆発的なエネルギーを「ナニヲナニヲ」で放っていくと、JAM'Sの地鳴りのような熱いコールが轟く。バンドの根底にある信念や哲学は不変でありながらも、彼らの精神やバンドサウンドは強靭なものへと確実に進化を遂げており、JAM'Sとの絆も10年の時を経てより強く結ばれていた。そんな“ミュータブル”な一面は、先日オリコン史上最速でストリーミング総再生数10億回を突破した代表曲「ライラック」からも感じ取れる。過ぎ去った青春時代の痛みや苦味を肯定するという、大人になっていくさまを想起させるこの曲。空から降り注ぐ雨粒を浴びながら、大森はまっすぐな眼差しで「雨が降るその後に緑が育つように 意味のない事は無いと信じて進もうか」と力強く歌い上げた。大森と若井が向かい合ってギターの音色を紡ぎ、柔らかな空気の中でスタートしたのはフェーズ3の幕開けを飾った楽曲「lulu.」。どこか切なくも温かみのあるアンサンブルと優しい歌声がじんわりとオーディエンスの心を満たしていった。
どこまでも一緒に行こうぜ! “永遠”にね!
ここで大森は「届いてますか?」とスタジアムを見渡し、「今日で『ゼンジン未到』を開催してから丸12年らしいです。泣いちゃうよ」と2014年7月5日に東京・渋谷LUSHで「ゼンジン未到とコンフリクト~前奏編~」を初開催した記念日であることにしみじみと触れた。彼は「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」日本版主題歌を担当するというホットな話題にも言及。「『Brand New』という楽曲ね。今日……やりません!」と言いながらも、茶目っ気たっぷりにイントロのギターをわずかに弾いてみせてJAM'Sの心を弄ぶ。さらに「アルバムもめちゃくちゃ作ってますから。もう我々の中ではアルバムのタイトルも決めまして。『こういうことか。なるほど』というアルバム名がつきますからぜひ楽しみにしていてほしいです。もうあと歌を1曲録ったら終わりという佳境です」と9月30日にリリースするフルアルバムの制作状況も明かした。
藤澤はステージの前方に進み出ると、「今日楽しんでる?」とJAM'Sに向かって手を大きくブンブンと振り、「幸せだね。やっぱ『ゼンジン』最高だわ。こうやってJAM'Sのみんなと集まって、ライブして一緒に声出して泣いて。『私は最強』で泣いてる子がいてさ、なんかすごいグッときちゃって。めちゃくちゃうれしい。みんな心の底からライブを楽しんでくれて本当にありがとう!」と弾けるような笑顔を見せる。若井は「皆さんどうですか? 僕たちもめちゃくちゃ楽しいからね。でも、暑いよね? ちなみに俺は暑いんだけど、体調だけは気をつけて」とJAM'Sを気遣った。「曲にいきますか、若井さん」と大森に声をかけられた若井は「じゃあ行きますか!」と意気込み、「右手に青! 左手に夏!」と両手で拳を掲げて次の曲をほのめかす。「もうほぼ(タイトル)言ってんのよ」とメンバーからツッコミが入りつつ、日本の夏を代表する曲の1つである「青と夏」の演奏がスタート。すっかり雨もやんだ夏の夜空に7万人のJAM'Sの大合唱が鳴り響いた。
水色のファーコートを羽織った大森が「まだまだいけますか!」と観客を煽り、「コロンブス」をにぎやかに歌い始めると、若井はギター、藤澤はショルダーキーボードを弾きながらそれぞれステージの両サイドから外周へと歩き出す。そして大きな花々がステージに咲き、ポップな雰囲気の中で「GOOD DAY」へ。「永遠なんてない」ということを歌い続けてきた大森がここで伝えた「どこまでも一緒に行こうぜ! “永遠”にね!」という言葉も、以前なら出てこなかったミュータブルなものだったかもしれない。最後に大森がスタンドマイクの前に立ち、メロディアスな鍵盤の音色に乗せてそっと歌い始めたのは、人々の心に寄り添うバラードナンバー「ダーリン」。終盤に向けて歌声と演奏はダイナミックなものになっていき、夜空に盛大な花火が打ち上げられた。
みんなと一緒に作っていきたい
アンコールを求める声に呼ばれて再びステージに姿を現した3人が演奏したのは、「ゼンジン未到」シリーズには欠かせない楽曲「CONFLICT」。大森元貴が17歳のときに書き記した「未だ成されて無い事を実らせて見せたいな」という思いは、不変なものとして国立競技場に力強く響き渡った。その後、披露されたのは連続テレビ小説「風、薫る」の主題歌「風と町」。どこか懐かしい風景を彷彿とさせるカントリー調の音色が会場に心地のいい空気をもたらした。最後の1曲を残し、大森は「今年から我々はフェーズ3として活動しているわけですけれども、フェーズ3は目的地じゃなくて、現在地を大切にしようと掲げて始めたものでした。フェーズ2がいろいろ目標を立ててやっていたものですから」と今年幕を開けたフェーズ3について話を切り出す。そして彼は「でも、フェーズ3が始まって半年以上経ちまして、こういう素敵な景色を見させてもらったり、日々いろんなエネルギーをもらったりして、届ける先があるということは本当に幸せなことだと感じています。『次に叶えたいことはなんですか?』という贅沢な質問をしていただけることが最近増えたんですけども、そんなものはたくさんあるわけですよね。なのに、なんでそれが僕の中で答えるのが難しい質問なのかなと思ったら、我々よがりではなくて、こうして日々寄り添ってくれてるみんなと一緒に何かを作っていきたいんだなって。僕がバンって言うとか、そういうことがしっくりこないタームになってきて、そういうフェーズなんだなって、半年経ってすごく思います。何かを掲げるというよりも、みんなと一緒にミセスにしかできないことを作っていきたいです。どうぞよろしく!」とありのままの思いと変化を伝えた。
大森は会場を見渡し、「すごいことだ。国立競技場で4日間できるとか。スタジアムツアーができること、ましてやファンクラブだけでここが埋まってること。ありえない。でも、ありえた。本当に報われます。励みになります。明日そう思えてるかわからないけど、今日、僕はそう思っています。素晴らしい。本当にありがとう」と思いを噛み締めた。「愛してるという言葉は、こういうときのためにあるんだなと深く思います。知ってたら一緒に歌ってください」と大森が告げると、まさにみんなで一緒に歌を作り上げていくように「ケセラセラ」をJAM'Sが歌唱し、3人は幸せそうな表情でその歌声にじっくりと浸る。そのかけがえのない景色を彩るように、国立競技場の夜空には赤と緑を中心としたカラフルな花火が打ち上げられた。
大森は温かな眼差しで最後にもう一度「愛してるよ!」とJAM'Sに伝える。若井は「最高に楽しかったです! みんなありがとう! 今年で『Ringo Jam』は10周年ですけど、これからもっとたくさん素敵な思い出を作りましょう!」とファンクラブ開設10周年に触れて呼びかけた。藤澤は感極まって涙を流しながら「みんなJAM'Sでいてくれて本当にありがとう。みんなが好きでいてくれるミセスであれるようにがんばりたいし、みんながJAM'Sでよかったと思えるミセスにもっとしていきたいです」とまっすぐ言葉にする。涙する藤澤のもとに大森と若井が駆け寄り、藤澤の体をさすりながら優しくハグをした。
「最高です!」という言葉を大森は何度も繰り返し、「これからもっともっと楽しいこと作っていきましょう。約束です。僕と若井が16歳、りょうちゃんが19歳のときにミセスを組みまして。そこから13年でこういう景色を見させてもらってること、すごく幸せです。これからもどうぞよろしく。本当にありがとうございました」とあふれそうな涙をこらえながら話す。「以上、Mrs. GREEN APPLEでした!」と3人は手をつないで声を合わせ、7万人のJAM'Sの大きな歓声に包まれながらステージ下へ。国立競技場の夜空には、ドローンアートでリンゴのマークと「Ringo Jam 10th」という文字が浮かび上がっていた。
セットリスト
Mrs. GREEN APPLE「ゼンジン未到とイ/ミュータブル~間奏編~」2026年7月5日 MUFGスタジアム(国立競技場)
01. Magic
02. 私は最強
03. スターダム
04. StaRt
05. アボイドノート
06. アポロドロス
07. familie
08. Carrying Happiness
~若井滉斗ソロ
~藤澤涼架ソロ
~大森元貴ソロ(BFF ~ Variety)
09. ANTENNA
10. クスシキ
11. Loneliness
12. Dear
13. 僕のこと
14. ナニヲナニヲ
15. ライラック
16. lulu.
17. 青と夏
18. コロンブス
19. GOOD DAY
20. ダーリン
<アンコール>
21. CONFLICT
22. 風と町
23. ケセラセラ


