YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで7月31日から8月6日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、1位にMrs. GREEN APPLEの「Brand New」が登場した。今作は公開中の映画「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」日本版主題歌として書き下ろされた楽曲。MVは7月31日の公開から2週間で1500万再生を突破し、日の出の勢いを見せている。
3位にはBE:FIRSTの「BRUCE WAYNE feat. Flo Milli, ATL Jacob」がランクインした。アメコミ映画を彷彿とさせる緻密な世界観と、クオリティの高い映像に魅了される。
23位に登場したのは、米津玄師の「夜鷹」と映画「キングダム 魂の決戦」のコラボプロモーションビデオだ。「キングダム 魂の決戦」の公開を記念して制作されたこのPVは、信(山﨑賢人)と万極(山田裕貴)が歩んできた軌跡が描かれている。YouTubeのコメント欄には「アカン、また観に行きたい」「世界観にも合いすぎてるし、米津さんの選んだ一つ一つの言葉が素晴らしい」など、映画と楽曲の親和性の高さを絶賛する声が数多く寄せられた。
今、話題の映画主題歌が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
佐野勇斗&吉田仁人「罪と罰と雨とキス」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場2位
今年4月に始動したM!LKの5カ月連続リリース企画「モー烈モー進!リリースプロジェクト2026」のラストを飾る第5弾シングルとして、佐野勇斗&吉田仁人のユニット曲「罪と罰と雨とキス」が8月3日に配信された。今作は、愛し合いながらも素直には結ばれない2人の関係を描いたラブソングだ。哀愁を帯びたメロディに佐野と吉田の艶っぽい歌声が重なり、愛しさと危うさが交錯する楽曲の雰囲気を形作っている。
MVは、霧雨が降る中、「君を 君を愛してる」というサビのフレーズに合わせて2人が指を差す振付を披露するなど、歌詞とリンクした演出とダンスが見どころ。両者の絶妙な表情や距離感を捉えた映像が、多くの人がアイドルソングと聞いてイメージするようなさわやかさとは異なる、大人びた恋愛の陰影を映し出している。佐野と吉田という組み合わせも、この曲の魅力を引き立てる要素であることは間違いない。2人の色気を前面に押し出したユニット曲として、M!LKの新たな一面を感じさせる1曲だ。
King Gnu「GO GHOST」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場31位
King Gnuの「GO GHOST」は、テレビアニメ「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。今作は民族音楽を思わせるコーラスが印象的で、反復するリズムとともに独特の緊張感を生み出している。勢いを押し出すだけではなく、どこか異質な雰囲気も漂わせることで「攻殻機動隊」の持つ近未来的な世界観とも呼応する音楽になっている。
また、歌詞には「五感を研ぎ澄まして」「errorの海泳ぐの」「人生は合成だ」といった言葉が登場し、肉体や感覚、記憶、自己のあり方をめぐるモチーフが描かれている。こうした言葉の連なりも、現実と仮想の境界が揺らぐ「攻殻機動隊」と重なって聞こえる。
MVは本編映像を楽曲に合わせて編集した内容で、これはKing Gnuとしては初の試み。メインキャラクターの草薙素子をはじめとする“公安9課”のメンバーが登場し、曲に合わせて場面が目まぐるしく切り替わっていくこのMV。音楽と映像が一体となって作品の世界を描き出し、楽曲のスピード感を視覚的にも際立たせている。
r-906 feat. 初音ミク「ワンダー」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場90位
r-906は「パノプティコン」「まにまに」など、ダンスミュージックを軸とした楽曲を多く発表しているボカロPだ。DJのほか小説やアニメーション、イラストなどにも表現の幅を広げている。サカナクションから影響を受けていることを公言しており、ロックとエレクトロミュージックを横断する音楽性も特徴だ。これまでボカロシーンを中心に支持を集めてきた中、今年6月には「匙ノ咒」が「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」の最優秀ボーカロイドカルチャー楽曲賞を受賞し、ボカロ界隈のリスナー以外にも注目されている。
新曲「ワンダー」は軽快なビートと細かな電子音を緻密に組み合わせ、断片的な言葉を重ねながら、初音ミクの透明感を帯びた歌声を乗せた幻想的なダンスナンバー。歌詞では、具体的な出来事や感情をすべて説明するのではなく、短いフレーズを重ねながら情景を断定しないことで、その間を聴き手が想像できる余白が残されている。だからこそ、聴く人によって異なる情景や物語が浮かんでくる。
MVでは、夢の中に迷い込んだような不思議な空間や、どこか懐かしさを感じさせる風景を描く表現手法「ドリームコア」が採用され、本来なら人がいるはずの場所に誰もいない、なんとなく異様な空間「リミナルスペース」的な映像も登場。現実と非現実の境界を行き来するような映像が、楽曲の浮遊感や幻想的な世界観を引き立てている。


