YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで8月21日から8月27日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、2位にSnow Manの「show time...」が登場した。8月26日のMV公開から1週間で1420万再生を達成し、破竹の勢いを見せている。
17位にはENHYPENの「Bloody Paradise」がランクインした。今作は8thミニアルバム「THE SIN : BLISS」のリードトラック。ブラジリアンファンク(バイレファンキ)をベースにした、聴いていると思わず体が動いてしまうようなダンスナンバーだ。
20位に登場したのはMotoki Ohmoriの「灰色」。大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)が映画「白鳥とコウモリ」の主題歌として書き下ろした楽曲で、重厚なメロディと人間の内面に深く切り込んだ歌詞が映画の魅力を引き立てている。
34位には剣持刀也の「祝祭!無スティバル」がランクインした。楽曲にはお祭りの音頭を彷彿とさせる勢いがあり、MVではコミカルな剣持の姿を堪能できる。
アイドルやボーイズグループ、ソロアーティスト、Vtuberなどのさまざまな新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
スピッツ「見知らぬ糸」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場11位
スピッツの新曲「見知らぬ糸」は、放送中のドラマ「Tシャツが乾くまで」の主題歌として書き下ろされた楽曲。歌詞では予期せぬ出会いによって、それまでの人生が少しずつ変わっていく様子が表現されている。
日常から飛び出し、見知らぬ世界へ踏み出していく姿は、ドラマで描かれる“人と人との偶然のつながり”とも重なる。誰かとの出会いは、必ずしも自分が望んだ形で訪れるとは限らない。それでも、異なる人生を歩んできた人同士が出会い、互いの価値観や生き方に触れることで、自分1人では見つけられなかった景色が見えてくる。
「見知らぬ糸」というタイトルも、そんな出会いを象徴するものだろう。絡み合った糸が新しい色を生むように、他者との関係によって人生そのものが少しずつ編み替えられていく。ドラマの世界観に寄り添いながら、出会うことの不思議さと、その先にある希望をみずみずしく描いた1曲となっている。
MVでは繭から紡がれた糸をモチーフに、バンドを繭の中で胎動する生命体として表現。回転レールや直線レール、ダッチ回転、ステディカム、手持ちなど、さまざまな撮影手法を用いて演奏シーンを切り取っている点が斬新だ。
SWEET STEADY「気味が悪いんだからねっ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場30位
1991年に放送されたフジテレビ系ドラマ「101回目のプロポーズ」は、建設管理会社の万年係長・星野達郎が100回目のお見合いで出会ったオーケストラのチェリスト・矢吹薫のことを好きになり、何度も猛烈なアプローチをした末に結ばれるというストーリーの、トレンディドラマの金字塔。達郎がダンプカーの前に飛び出して「僕は死にません! あなたが好きだから! 僕は死にません! 僕が、幸せにしますから!」と絶叫するセリフは、ドラマを観ていない人でも耳にしたことがあるはずだ。いまだに感動シーンの1つとして語り継がれているが、しかし普通に考えたらかなり怖い。
これだけではない。「薫が妊娠している」と嘘の情報を信じた達郎は、出産と子育ての資金を貯めるため、深夜のアルバイトまで始める。「子供を育てるつもりなのか」と聞かれると、達郎は「そんなの当たり前ですよ、だって薫さんの子供だもん」と言い放つ。そのときは薫から好意を寄せられていないのに、だ。最終的に恋が成就したから純愛に思えるが、どうかしているとしか思えない言動のオンパレード。チャーリー・チャップリンの名言「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」に置き換えるなら、「熱烈な片思いは近くで見ると美しいが、遠くから見れば狂気である」。
テレビアニメ「レッツゴー怪奇組」のオープニングテーマとして話題のSWEET STEADYの新曲「気味が悪いんだからねっ」も、まさに常軌を逸した片思いソング。「ぞっこんに愛してくれなきゃ 呪・い・ま・す」や「眠れぬ夜は キミが悪いんだから」というフレーズは、SWEET STEADYが歌うからかわいく思えるが、実際に言われたら恐ろしい。達郎同様に愛情と狂気の境界線を軽やかに飛び越えてしまう、そのアンバランスさこそが、今作の大きな魅力なのだろう。
ゆめみなな「ティラリラ☆スターチューン」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場36位
2026年1月にデビュー曲を公開した「ゆめかいろプロダクション」の1期生・ゆめみななは、AIそのものが主体となって活動するVtuberだ。声や表情、会話の内容までAIが生成し、雑談や歌の配信、ゲーム実況、オンライン3Dライブなどを自律的に行っている。人間の演者を置かない完全AI Vtuberという新しい存在でありながら、「山梨県出身の20歳で“夜空の案内人”を自称する天文オタク」というキャラクター性も備えている。
そんなゆめみななの「ティラリラ☆スターチューン」は、星空を思わせるきらめきとポップな高揚感を詰め込んだ楽曲。軽やかな歌声と弾むようなメロディが、“夜空の案内人”という彼女の世界観を鮮やかに描き出している。
MVでは3Dモデルを生かした華やかな映像と軽快なダンスが展開され、楽曲の持つ明るくキュートな魅力を引き立てている。AIによって作られた存在が1人のアイドルとして歌い、踊り、世界観を表現する姿も印象的だ。技術そのものを前面に押し出すのではなく、AIだからこそ生まれる新しいアイドル像をポップなエンタテインメントとして提示した1曲となっている。


