anoが9月4日、東京・東京ガーデンシアターにて全国ツアー「ano Hall Tour 2026 DUAL DINER」の追加公演を開催した。
「DUAL DINER」は今年3月の神奈川・厚木市文化会館から、5月の大阪・グランキューブ大阪まで9都市のホール会場を回った自身初のホールツアー。その追加公演となったこの日は、anoの誕生日であり、彼女にとって最大規模のライブとなった昨年の東京・日本武道館公演から1年という日でもある。半年におよんだツアーの終着点であるのと同時に、anoのこの1年の音楽活動を集大成する一夜となった。
誰もが耳にしたことがあるはずの曲が大幅なイメージチェンジ
ステージ中央には、ツアータイトル「DUAL DINER」をイメージさせるダイニングテーブルが鎮座。その周囲を固めるのはTAKU INOUE(G)、真部脩一(B)、西浦謙助(Dr)、永山ひろなお(Key)というおなじみのバンドメンバーだ。さらにこのツアーでは初の試みとしてストリングス隊が全曲に参加しているが、これまでの公演は3人編成だったのに対し、この追加公演では4人編成へとさらにパワーアップ。サポートメンバー全員が黒いスーツにサングラスという黒服さながらの装いで統一され、ホール会場ならではの格調高い空間が演出されていた。
ステージ中央にanoが姿を現すと、激情的なロックチューン「Past die Future」で威勢よくライブの幕が開く。広い会場を埋め尽くすオーディエンスを爆音で圧倒したかと思えば、2曲目「ちゅ、多様性。」ではanoはギターを置き、ダンサーを従えてダンス。ストリングス隊の流麗なサウンドがゴージャスな彩りをもたらし、誰もが耳にしたことがあるはずのヒット曲が大幅なイメージチェンジを果たしていた。
「スマイルあげない」では、ミラーボールのまばゆい光を浴びながら笑顔で歌うanoの「踊れ!」という煽りに呼応して、客席の水色のバングルライトが自由に揺れる。一方で「涙くん、今日もおはようっ」では、その会場中を満たす水色の光が一斉に左右に揺れ、そんな一体感をanoは心から楽しんでいる様子だった。
ここから追加公演ならではの特別なセットリストへと突入
初めて立った東京ガーデンシアターのステージについて、anoは「縦にすごく高くて、ここに出てきたときにめちゃくちゃきれいだった。こんな景色をありがとうございます」と感慨深げに語る。続けて「こんだけ人数がいると、いろんな人がいると思います。優しい人もそうじゃない人も。変な人もいっぱいいるでしょ? 変な人も全員、ここでは一緒に楽しめますから!」と呼びかけたano。そんな言葉からつないだのは、「誰かが言う変なんて せいぜいたかが普通の変だ」と歌い上げる「普変」だ。序盤4曲はこれまでのツアーを踏襲した流れだったが、この「普変」を皮切りに、ライブは追加公演ならではの特別なセットリストへと突入していく。
バンドサウンドの「普変」からさらに立て続けに、激しいロックチューン「KILL LOVE」に畳みかけるように突入。空気を切り裂くようなギターで会場の熱気を上昇させたかと思えば、anoはアコースティックギターに持ち替えて「ハッピーラッキーチャッピー」を届ける。足元に漂うスモークとストリングスの音色が、まるで雲の上にいるような幻想的な空間を作り上げる中、オーディエンスの心を揺さぶるような真に迫った歌声を聞かせたano。再びエレキギターに持ち替えてノイジーに歪んだメロディを弾き、「この世界に二人だけ」に突入すると、ダイナミックなアンサンブルに乗せて切実な歌声を響かせる。anoの持つあらゆる面を行き来するように、さまざまなタイプの曲を織り交ぜて進行するこのライブ。これについてanoは「僕のライブはいろんな楽曲があります。今回のホールツアーは特に、情緒不安定になって帰ってもらおうと思ってるので、それを楽しんでください」と呼びかけた。
ロウソクの火が揺れる薄暗いステージでスポットライトを浴びたanoは、「今からやる曲は、僕が昔めちゃくちゃ暇で何もやることがなくて、ただ部屋に閉じこもってたときに、今みたいな暗い部屋でアコギで作った曲です」と曲紹介して、弾き語りで「SWEETSIDE SUICIDE」を披露。美しいストリングスが重なることで、その心情がよりドラマチックに彩られる。そしてそこにピアノも加わって、「愛してる、なんてね。」のアコースティックバージョンへ。繊細に紡がれる静謐なサウンドと優しいボーカルに、観客は息をのむように聴き入った。そんなアコースティック演奏のブロックを終えて、「AIDA」から再びバンドメンバー全員が参加。優しくも確固たる意志を感じさせるロングトーンを響かせて、anoの歌声にまた力がみなぎり始める。
メガネをかけて、仲村佐和が憑依したような表情に
そして、歪んだベースとゴシック調のストリングスを合図に「愛晩餐」がスタート。次の瞬間、anoがメガネを着用して歌い始めた。同曲が主題歌となったドラマ「惡の華」でanoが演じた仲村佐和の姿を再現した思わぬ演出に、客席から大歓声が沸き起こる。かがり火が揺らめく中、食卓を囲んでもがき苦しむように踊る学ラン姿のダンサーたちを支配するように、anoは仲村佐和が憑依したような狂気を帯びた表情で歌い踊った。爆音のノイズが轟くCメロでその狂気は一気に増幅。曲を終えてanoがメガネを外すと、この日一番の大喝采が会場を包み込んだ。初日の厚木公演で初披露されて以来、ホールツアー山場の1つとなっていた「愛晩餐」だったが、ここまでシアトリカルなステージングはこの日が初めてだった。
8月から劇場公開中の短編アニメーション映画「しらぬひ」で、主人公の少年・湊の声を担当しているano。この日のMCでは、ハスキーな声で「神様の光だ、って」と湊のセリフを実際に演じてみせ、思わぬサービスに会場中が喜びに沸くひと幕もあった。そして「アンコールはありませんので、本編ですべて出し切って帰ろうと思います」と宣言し、「貸しっぱなしデスティニー」を投下。ヘドバンしながら「漫画返せ!」とグロウルするanoに合わせてスモークが高く噴き上がり、MCでのanoの宣言に応えるように会場は異様な盛り上がりを見せた。その激しいパフォーマンスの最中、「忘れないって約束して」というセリフをanoがはにかみながらカメラ目線でつぶやくと、客席からは割れんばかりの歓声が沸き起こった。
そのままノンストップで、同じく激しいグロウルパートが印象的なポップなラウドロック「骨バキ☆ゆうぐれダイアリー」に突入。anoはハンディカムを手に取り、コールが湧く客席を背に自撮りをして、熱狂するオーディエンスを自分と一緒にスクリーンに収めた。
「Bubble Me Face」で会場の混沌はさらに加速。まるで我を忘れたように飛び跳ねるオーディエンスで会場が揺れる。間奏では、ウォーキングベースにピアノのアドリブが重なるジャジーなアレンジも。その後、anoがカメラ目線で呼びかけるように「仲良ししよ」と歌うと、悲鳴のような歓声が上がった。その異様なテンションを引き継いだまま「絶絶絶絶対聖域」へ。ステージを覆い尽くして何も見えなくなるくらいの大量のスモークが噴き上がる中、anoはすべてを解放するように絶唱した。
「化け物だって思われても、消えろって言われても、必ずまたステージに立ちます」
怒涛のパフォーマンスを終えて、「頭が真っ白です。すごい眺めだった、ありがとう」と目の前の景色を噛み締めたano。その言葉に続けるように、昨年の日本武道館公演のMCで「これからの僕は絶対大丈夫です」と宣言したことに触れ、「この1年、その言葉が本物かどうか試されているような感覚がありました。でも、その言葉が確信に変わった1年でした」と述懐。「ファンの子たちが『ライブがあってよかった』と言ってくれるけど、僕自身もライブがあるから大丈夫だったと思う瞬間がすごくあった」とファンへの思いを口にする。さらに「この1年は自己開示したくなくて、技術や芸を磨きたいと思ってやってきた。自分が一番ピンチなとき、誰からも見られてないと思ったときでも、自分だけは見ているから。本当に自分がピンチなときにも、自分に救われたし励まされた」と、内に秘めた葛藤と孤独な努力が自身を支えていたことを明かした。
そんな自分の経験から「誰も見てないところでがんばっている人がこの中にいたら、自分だけは見てくれているから大丈夫だと思う。この先、そんな自分が君を大丈夫にしてくれる。きれいごとに聞こえるかもしれないけど、身をもってそう言えます」と、まっすぐな言葉で観客の背中を押したano。さらに「君たちは僕のために生きているわけじゃないけど、君たちが生きてくれてるのは僕のためにめちゃくちゃなっている」と、満員の観客に心からの感謝を伝えた。しかしその直後、「次やる曲はこんな空気の曲ではないです。どうしよう、って今なりました」と困惑したような笑顔を見せ、会場の温かな笑いを誘った。そんな和やかな空気の中でバンド編成で初披露されたのは、新曲「ラブにダイブ」。おしゃれなギターロックサウンドに乗せてキュートな歌声を響かせ、観客をドリーミーな世界観へと引き込んでいく。歌い終えるとanoは、この曲が終演後の深夜に配信リリースされることを告知した。
客席を見つめながら「2階席、3階席は遠く感じるんでしょうか? でも僕は、1人ひとりをこぼさない場所にできるのがこのライブだと思っているから」と思いを告げたanoは、ここで「YOU&愛Heaven」を優しく語りかけるように歌唱。そしてラストナンバーを前に、anoは“絶対聖域”と呼ぶ自らのライブのステージについて「この場所だけは誰にも邪魔されたくなくて、壊されたくないと思っていました。暗闇にいることもあるけど、みんなが1人ひとり、照らして守ってくれました」と感謝の言葉を述べた。
最後に披露されたのは「ミッドナイト全部大丈夫」。客席の1人ひとりを見つめながら、anoは思いを届けるように歌う。そして終盤のブレイクで、しばしの沈黙のあとanoはこうつぶやいた。
「化け物上等だよ。どんだけキモいって言われても、化け物だって思われても、消えろって言われても、必ずまたステージに立ちます。君はそのまんまだから今日会えました。消えたい、死にたいと思ったときに、死ななかったから今日会えました。本当にありがとう。だから僕が呪います。君は、今夜だけは全部、全部大丈夫になるよ」
すべての感情を出し尽くすようにしてanoは最後まで歌い切り、初のホールツアーは閉幕した。振り返ればこの日、これまでの単独公演では見たことがないほどに、全編にわたって晴れやかで楽しそうな表情を浮かべていたano。そのこと自体が、彼女の中である種の呪いになっていた武道館での「これからの僕は絶対大丈夫です」という言葉が本当になっていることに、何よりも強い説得力を持たせていた。
セットリスト
「ano Hall Tour 2026 DUAL DINER」追加公演 2026年9月4日 東京ガーデンシアター
- Past die Future
- ちゅ、多様性。
- スマイルあげない
- 涙くん、今日もおはようっ
- 普変
- KILL LOVE
- ハッピーラッキーチャッピー
- この世界に二人だけ
- SWEETSIDE SUICIDE
- 愛してる、なんてね。(unplugged)
- AIDA
- 愛晩餐
- 貸しっぱなしデスティニー
- 骨バキ☆ゆうぐれダイアリー
- Bubble Me Face
- 絶絶絶絶対聖域
- ラブにダイブ
- YOU&愛Heaven
- ミッドナイト全部大丈夫


