YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月2日から10月8日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングでは、1位にMrs. GREEN APPLEの「共犯」が登場した。今作は9月30日にリリースされた6thオリジナルフルアルバム「POPS」の収録曲。10月3日のMV公開からわずか10日で1400万再生を突破し、破竹の勢いを見せている。
5位にはAyumu Imazuの「結び」のリリックビデオがランクインした。8月末に自身のTikTokでワンコーラスのデモ音源を投稿したところ大きな反響を呼び、リスナーからの「結婚式で流したい」という声に応えるため約1カ月で完成させたというこの曲。10月2日の配信リリース直後には、Apple MusicやSpotifyをはじめ、各種音楽配信サービスのランキングで軒並み1位を獲得し、9冠を達成した。なお10月14日にはMVも公開されている。
18位に登場したのはONE N' ONLYの「Golden Sun」。これは12月2日にリリースされるメジャー2ndアルバム「MEGA GOLDEN」のリード曲で、底抜けの明るさと遊び心が詰まった、祝祭感あふれる楽曲になっている。
バンド、ソロアーティスト、ボーイズグループなど、多種多様な新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
KAITO「swim?」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場16位
人生という大海原を渡るのに、羅針盤は必要ない。King & Princeの髙橋海人が、KAITO名義でソロ活動を始動し、10月5日に第1弾となる配信シングル「swim?」をリリースした。
今作は正しさや常識に縛られず、自分の心地よいリズムで生きることを謳歌する楽曲。作詞作曲からMV制作まで本人が携わり、肩の力が抜けた歌声と軽妙な言葉遊びからは、自由を声高に叫ぶのではなく、自由であることを当たり前に楽しむ美学がにじむ。
とりわけ興味深いのは、荒波を乗り越える勇敢さよりも、波そのものを面白がる身軽さに価値を置いている点だ。マレーシアで撮影されたMVも、南国の開放感と茶目っ気が溶け合い、遊び場を見つけた少年のような無邪気さが弾ける。
そもそも泳ぎ方に唯一の正解などない。速く進むことも、誰かと競うことも、ましてや目的地を決めることさえ自分次第なのだ。タイトルの末尾に添えられた疑問符は、そんな生き方への軽やかな誘いにも思える。ソロ活動開始という新たな船出を大仰な決意表明にしない、その洒脱さが実に彼らしい。
Kroi「SPIN」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場19位
アニメ「スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険」のオープニングテーマとして書き下ろされたKroiの「SPIN」。西部劇の土煙を感じさせるギターに、馬蹄のようなビート、ファンクの粘り、ヒップホップの鋭さが絡み合う。乾いた荒野に突如として巨大なダンスフロアが出現したかのような、時代も風土も異なる音の奇妙な共存。さらにホーンや電子音が加わり、開拓時代の空気をかき乱していく。新保拓人監督のMVでは、荒野の街で銃撃戦ならぬダンスバトルが勃発する。決闘の作法までグルーヴで書き換える悪戯心が痛快だ。
一方、歌詞が目を向けるのは外の地平線だけではない。遠くへ行くほど、自分の内側にある未踏の領域が浮かび上がる。そもそも回転とは、同じ場所を巡る運動のはずだ。しかし、「SPIN」はその円を引き延ばし、果てしない道に変えてみせる。遠心力で世界を広げ、求心力で自己へと戻る。その2つの力が拮抗するところに、独特のめまいが生まれる。走り続けることと、自分を問い直すことは、同じ回転の表と裏なのだ。
Eve「AIYOU」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場22位
どんな謎よりも、たった1人の心を解き明かすことは難しい。アニメ「薬屋のひとりごと」第3期(第1クール)のエンディングテーマとしてEveが書き下ろした「AIYOU」は、すぐそばにいる相手の心さえ簡単には理解できないもどかしさを描いた1曲だ。
「アイ」と「ユー」。互いに惹かれ合っていても、2人の間には簡単に埋められない距離がある。歌詞に登場する方程式や宇宙のイメージは、どれほど知識を積み重ねても、人の心という難問には答えを出せないという皮肉を浮かび上がらせている。そんな切実な感情を包み込むのは、軽快なビートと躍動感のあるメロディだ。胸の内に渦巻く葛藤とは裏腹に、音楽は驚くほど軽やかに駆け抜けていく。歌詞の終盤には別れの予感も漂うが、たとえ2人の未来が交わらなくても、出会いによって生まれた感情まで無意味になるわけではない。正解がないのなら、わからないまま誰かを思い続けることも、1つの愛のかたちなのだろう。
まりやすが手がけたMVでは、アニメーションにEve本人の実写映像が織り交ぜられ、虚構と現実が交錯する映像表現も印象的だ。楽曲と合わせてチェックしていただきたい。


