ヤバイTシャツ屋さんのベース&ボーカル・ありぼぼさんの連載「ありぼぼの音楽おしごと探検隊」。この連載は「音楽に関する仕事をしたいけど、どういう仕事があるのかわからない」という声をよく耳にするというありぼぼさんが、読者の皆さんに代わって音楽業界で働くさまざまな職種の人にインタビューし、仕事内容やその職業に向いている人をリサーチする企画です。
産休・育休を経て、さらにはコショージメグミさんとの新音楽ユニット・POYACOROの始動と、私生活にも音楽活動にも新たな動きがある中で今回ありぼぼさんが訪問したのは、ノベルティやアーティストグッズなどを製作する会社・トランス。この取材依頼をきっかけに、POYACOROの1stライブのグッズも手がけることとなったエンタメグッズ製作チームの小泉さんと森本さんに、アーティストグッズのトレンドや企画・製作の仕事などについて話を聞きました。「推しビジネス研究所(仮)」と銘打ち、推し活をより楽しめるグッズを製作するトランスではどんな人が働いているのか、ありぼぼさんがリサーチします。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / はぎひさこ
今の流行りは身に着けられるグッズ
ありぼぼ トランスさんはクライアントから依頼を受けていろいろなグッズを製作されています。先ほどいろんな商品や作例が展示されたお部屋を見させてもらったのですが、本当にいろんなものがあって驚きました。今、人気のアイテムってどういうものなんですか?
小泉 人気なのはアーティストさんの写真を使ったアイテムですね。中でもアクリル素材のものが、ほかの商材と比べるとかなり売上がよくて、アクリルスタンドなんかはとても人気です。
ありぼぼ バンドの感覚になりますけど、昔はTシャツが一番売れていたイメージで。アクリルを使ったグッズの登場によって人気アイテムは変わってきましたか?
小泉 そうですね。今は推し活がすごく流行っているので、持ち歩けるアイテムに人気が集中しています。その中でもやっぱりアクスタが人気。とはいえ、アクリルのグッズもマンネリ化してきているので、私たちはキューブ型のものを開発したりだとか、いろいろと工夫を凝らして新しいグッズを作っています。
ありぼぼ かわいい! これはなんというグッズなんですか?
小泉 「アクリルきゅ~び~」といって、板状のアクリルパーツを組み立てると、アクリルスタンド入りのボックスが完成するアイテムです。お部屋でコレクションして楽しめるほか、販売時は板状なので、持ち帰るときにもかさばらないところがポイントですね。あとは、こういったプレートを差し替えできるアクリルスタンドも人気です。
森本 CDジャケットや写真などがデザインされたプレートを差し替えられる仕様でかわいいんですよ。
ありぼぼ ジャケットだけじゃなくて、MVの好きなシーンのスクショとかを入れてもかわいいですよね。アニメなら好きなシーンを入れたり。
小泉 最近は自分でカスタムできるものに需要がありますね。
ありぼぼ 確かに自分好みにできるというのはいいですよね。あと気になったのが、アイドルやバンド、アニメなど分野によって人気のグッズは違うんですか?
小泉 全然違いますね。アーティストやアイドルのファンには、シリコンバンドやTシャツなど、身に着けられるグッズがけっこう人気です。アニメ系はアクリルのグッズが人気ですね。
人気はぬい! リングやリバーシブル仕様のタイプも
ありぼぼ 今までに作ったグッズの中で製作が大変だったのはどんなものですか?
森本 ぬいぐるみですね。目の位置とかが1mmずれるだけで雰囲気がけっこう変わるので、イラスト通りに作っても立体化したら違ったなということもあるんです。その調整がすごく大変ですね。ぬいぐるみは試作を何回も重ねて完成することが多いです。
ありぼぼ そうですよね。「ここにちょっと綿が少ない」とかでも変わりそう。
森本 そうなんです。毎回ぬいぐるみは難産です。でも立体モノってすごくニーズがあって、お客さんに喜んでもらえるんです。
ありぼぼ いろいろサンプルを見せてもらって、すごいと思ったのがこのリバーシブルのぬいぐるみでした。作るのが大変だという顔が、裏返してもぬいのお顔になっているんですよ。本当にすごい。ぬいぐるみ系の中で人気の商品はどんなものなんですか?
小泉 最近はぬいリングですね。
ありぼぼ 指輪になってるんですね!
森本 はい。ぬいリングは、ぬいぐるみにゴムが付いているものと、指輪のようなパーツが付いているものがあって、ゴムが付いているほうはペンライトにも取り付けられたり、指輪以外にもいろんな使い道があります。
小泉 指の太さが関係ないので、性別問わず着けられるところも人気の理由ですね。
ありぼぼ あと私、金属アレルギーなんですけど、そういう人でもゴムなら気にせず着けられますよね。ぬいリングとかはなかなか思いつくような商品じゃないと思うんですけど、こういうアイデアってどうやって思いつくんですか?
小泉 市場調査をして、流行っているものをリサーチして考えています。あとコンサートにも足を運ぶようにしていて、グッズを作るアーティストの雰囲気や、ライブの世界観に合うものを探して提案することも多いです。
「ぽや」と「ころ」をいつか立体に
ありぼぼ ほかにも作るのが大変だったグッズってありますか?
小泉 スノードームを作ったことがあるんですけど、作るのが本当に大変でした。球体なので、中に入れたフィギュアの見た目や大きさがドーム越しに見ると違うものに見えてしまって、とにかく“入れてみないとわからない”状態だったから、何度も試行錯誤しました。
ありぼぼ 個人的にスノードームを作ったことがあるんですけど、作るだけでも大変なのに、中身のクオリティや見え方まで考えるとなると本当に苦労しそうですね。
森本 私が担当した中で大変だったのはシリコンのルームライトです。キャラクターやロゴを再現したんですが、平面のものを立体化して、金型を作って完成させる必要がありました。納期にあまり余裕がなくて、試作が1回しかできないまま、本製品を作ったので大変でした。
ありぼぼ 3Dにしていく作業は大変そうです。何かソフトを使って作り込んでいくんですか?
小泉 そうですね。平面のものを立体のグッズにするときはまず三面図と呼ばれるものを作って、それを3Dデータに起こして金型を作って、という流れです。金型を作ってそこに流して出してみないと、実際にどんなものになるかがわからないので、すごくドキドキ感があります。
ありぼぼ あとトランスさん的にオススメだけど、まだあまり発注がないアイテムってありますか?
森本 ぬいぐるみパッチンです。パッチンバンドにぬいぐるみが付いたものなんですけど、ライブ中に腕に着けることができるので、ライブを観ながらグッズも目に入るところがいいんですよね。
ありぼぼ 確かに。ライブ中に自分の腕も見えますもんね。自分たちはシリコンバンドしか作ったことないんですけど、もこもこしたバンドはPOYACOROのイメージに合うので作ってみたいです。POYACOROには「ぽや」と「ころ」というキャラクターがいるんですが、まだ平面でしかこのキャラクターを見たことがないので、いつか立体でグッズを作ってみたいです。
グッズ製作においてやりがいを感じるとき
ありぼぼ 基本的にグッズ製作会社はアーティストやアニメの製作会社などから発注を受けて作るB to Bのお仕事だと思うんですけど、実際にそのアイテムを手にするファンの方の反響もチェックしていますか?
小泉 見ます! 感想はすごくモチベーションにつながりますね。さっきもちょっと話に出ましたけど、実際にライブ会場にも行くので、そこでグッズを身に着けている人を見たり、グッズ売り場で売れ行きを見てみたり、リサーチも兼ねてチェックしていますね。SNSでの反響も見ていて……というか、オススメのタイムラインに流れてくるので、無事に納品して販売されているんだなと安心したりもして。
ありぼぼ あと商品不良とかもSNSで報告されていることがあったりしますよね。
小泉 そうなんです。不良がないかもチェックしますね。もし見つけたらそのポストをスクショして、クライアントから報告が来る前に工場に連絡して予備品を送ってもらう手配をすることもあります。
ありぼぼ さすが仕事が速い……。今、一緒にグッズを作らせてもらっていますけど、トランスの方たちって本当にレスポンスが速いんですよ。トランスの皆さんがこれから作ってみたいグッズってあるんですか?
小泉 世の中で流行っているものはやっぱり作ってみたいので、今ならスクイーズですね。ただ、スクイーズは作るのにかなり時間がかかるので、なかなか実現しないんです。いつか作ってみたいですね。
森本 私もスクイーズは作ってみたいです。あと「アクリルきゅ~び~」も商品としてはあるんですけど、自分が提案してグッズ化に至ったケースがまだないので、ぜひ作ってみたいと思っています。
ありぼぼ 「アクリルきゅ~び~」かわいいですよね。この空間をステージに見立てて、ツアーでステージの後ろに掲げるドロップを箱の中にプリントしたら、再現できそう。いいですね。ちなみに、この仕事のやりがいってどんなときに感じますか?
小泉 SNSでの反響を見るのもそうなんですけど、実際に使っている人を目にしたときはやりがいを感じますね。例えば街中で私が製作したグッズを身に着けている方を見ると、ライブ会場じゃないところでも使ってくれているんだとうれしくなりますし、すごく達成感があります。
グッズ製作会社に向いている人
ありぼぼ あと、トランスさんはちょっと変わったグッズもありますよね。さっきサンプルが置かれている部屋ですごいなと思ったのが、手のひらがプリントされたカバーにカイロを入れるグッズ。すごい発想です。
森本 弊社のマーケティング部が面白いものをどんどん開発してるんです。
小泉 うちの会社は「ファン視点・プロ企画」をタグラインとしていて、何かのオタク、何かのファンだった経験のある社員がいっぱいいます。だからどれもオタク目線で考えてグッズが生まれていますね。
ありぼぼ なるほど。例えばグッズを製作する中で、新たなアーティストや作品を好きになることもあるんですか?
小泉 ありますよ。今、私はある音楽事務所さんを担当させていただいているんですが、その中で1つのグループが気になっていて、ファンクラブに入ろうかなというところまで来ています。
森本 私はもともと音楽が好きで、あるロックバンドのライブに行ったりしていて。そこでヤバTさんのライブも観させてもらったことがあります。最近はあるサッカーチームにハマってますね。これまでまったくスポーツに関心がなかったんですけど、この会社に入って、いろんなファングッズを作ったり、目にしたりする中で、新しく何かを好きになる機会が増えました。
ありぼぼ 好きが増える仕事っていいですね。このお仕事にはどんな人が向いていると思いますか?
森本 これまで何かに夢中になったことがある人に向いていると思います。そういった経験のすべてが生かせる仕事だと思うので。
小泉 あと流行に敏感な人も向いていると思いますね。新しいものを発信する仕事なので、かわいいと思ったものを形にして発信する楽しさがあります。
ありぼぼ とはいえ、楽しいことだけじゃなくて、納期との戦いもありますし、大変なお仕事ですよね。
小泉 そうですね。短い納期の中でクオリティを担保しないといけないので、工場といろいろ調整しながらいいアイテムを作る難しさもあります。
ありぼぼ グッズ製作会社さんっていろいろありますけど、トランスさんの強みってどんなところだとお考えですか?
森本 弊社としては3つあるんですけど、まず1つが、幅広くいろんなモノを作れること。国内外にたくさんのパートナー企業があるのでジャンル問わずいろんなモノを作れます。ファンの皆さんが安心して、楽しく使える商品づくりにもこだわっています。2つ目がモノを企画する力。流行っているものはもちろん、「こんな商品があったらうれしい!」「こんな商品をこんな時に使いたい!」というアイデアが実際にグッズになっているケースがたくさんあります。3つ目が新たな趣味の楽しみ方や新しい価値を創造するために必要なネットワークがそろっているところ。エンタメ業界だけでなく、ファッション、化粧品、飲料など、さまざまな業界の企業とのつながりがあります。これまでに接点のなかったブランド同士をつなげて新しいコラボを生み出すことにも長けていると思っています。
POYACOROのグッズもトランスが製作
10月25日に京都・LIVE HOUSE GATTACA、11月に東京・下北沢BASEMENTBARにて行われるPOYACOROの1stライブ「POYACORO 1st Live “We are POYACORO” Supported byライブナタリー」のグッズをトランスが製作。取材タイミングでTシャツのサンプルが上がり、ありぼぼさんがその仕上がりをチェックしました。
POYACORO 1st Live “We are POYACORO” Supported byライブナタリー
2026年10月25日(日)京都府 LIVE HOUSE GATTACA
<出演者>
POYACORO / 山﨑夢羽
2026年11月14日(土)東京都 下北沢BASEMENTBAR
<出演者>
POYACORO / Wienners
トランス
オリジナルグッズの商品企画・製造、企業のセールスプロモーション支援を主力事業としている企業。「ファン視点・プロ企画」をタグラインとして掲げ、ブランドや作品、そのファンの期待を超えるグッズと体験価値を企画し、製作している。推し活市場やファンカルチャーを研究し、新しいグッズ企画を提案する「推しビジネス研究所(仮)」というプロジェクトでは、ファン心理をとらえたオリジナル推し活グッズの企画・開発・提案をはじめ、推し活市場のトレンドやグッズ製作のヒントなどの情報発信も行っている。
ありぼぼ
ヤバイTシャツ屋さんのベース&ボーカル。バンドとしては、2016年11月にフルアルバム「We love Tank-top」でユニバーサルミュージック内のレーベルUNIVERSAL SIGMAよりメジャーデビューし、2020年9月発売の4thフルアルバム「You need the Tank-top」で初のオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得した。道重さゆみや岸本ゆめの、CUTIE STREETらに楽曲提供も行い、2026年9月よりコショージメグミと音楽ユニット・POYACOROとしての活動も開始した。また多趣味なところやトークスキルの高さから、さまざまなトークイベントにも出演。2020年12月より自身の出身地・大阪府高槻市の「たかつき観光大使」を務めている。2024年2月にはアパレルブランド・neüronを立ち上げるなど、その活動は多岐にわたる。


