YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで9月5日から9月11日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。文 / 真貝聡<h2 id="NA_article_main_h2_1">まずはこの週の初登場曲の振り返りから</h2>今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、2位にHANAの「BAD LOVE」が登場した。作詞にはちゃんみなだけでなくメンバーのJISOOとMOMOKAも参加し、振付はNAOKOが中心となって制作。“許したいけど許せない”という純粋な葛藤をストレートに描いた楽曲となっている。3位には藤井風の「Prema」がランクインした。これは9月5日にリリースされた3rdアルバムの表題曲。同日にMVが公開されてから２週間で500万再生を突破し、日の出の勢いを見せている。8位にはaespaの「Rich Man」が登場。サビの印象的なフレーズ「Rich Man」は従来の“富を所有する人物”を意味するものではなく、aespaが新たに定義する“エネルギーとパワーで満ちた存在”として描かれている。MVではカーチェイスやラグビーの試合風景など、躍動感と映像美を堪能できる。54位にランクインしたのはGRe4N BOYZの「愛唄」だ。2007年にリリースされた大ヒット曲を、女優の高梨優佳をメインキャストに迎えて、令和らしい新たな視点で映像化。YouTubeのコメント欄ではリリース当時に聴いていた人だけでなく、「高一です！ この曲なんで好きなのかわかんないし、いつ知ったのかわかんないんですけど、めっちゃ好きです！」といった、現役中高生による絶賛の声も多く上がっている。人気ダンスグループの新曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。<h2 id="NA_article_main_h2_2">DECO*27「モニタリング（Best Friend Remix）」</h2>※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場1位さまざまな話題曲を押さえて今週の1位に輝いたのは、DECO*27の「モニタリング（Best Friend Remix）」。これはTikTokでの関連動画が4万2000本を超え、Billboard JAPANのTop User Generated Songsで2025年上半期の首位を獲得するなど、UGCを中心に一大ムーブメントを巻き起こした「モニタリング」を、DECO*27本人とHayato Yamamotoがセルフリミックスした楽曲だ。9月5日のMV公開から、8日間4時間40分でボカロ曲史上最速の1000万再生を達成。今も加速度的に再生数を伸ばしている。このリミックスはオリジナルとどこが変わったのか？ まずはサウンドについて触れていこう。ダブステップとハウスを融合させたベースハウスと歌謡曲のテイストを組み合わせたところは原曲と同じだが、今作はそこにマンドリンやカッティングギター、ストリングスなどを追加したことで、さわやかさと開放感が生まれている。そしてそれ以上に変化が印象的に感じられるのが歌詞だ。「モニタリング」の設定は、「ストーカーにモニタリング（監視）されている」という被害妄想を抱えた主人公が想像する、玄関扉の向こう側にいるミクの心情を描いていたと考えられる。一方リミックスは、序盤に「もしもーし。ねえ…大丈夫？…んー、心配だから今からそっち行くね」というメッセージアプリの言葉が流れることからわかるように、ミクは実は主人公を心配して家に訪れていたBest Friend（親友）であり、そんな彼女の心情を表している曲なのだろう。例えばサビの<blockquote>お願い きみが欲しいの 慰めさせてシェイクシェイク 愛の才能で 泣いてくれなきゃ 涸かれてしまう 濡れていたい ねえいいでしょう？ 舐め取って 飲み干したいんだってば</blockquote>という歌詞は、リミックスで<blockquote>お願い きみが欲しいの 慰めさせてベストフレンド 愛の才能で 泣いてくれるかい きみのツライ 抱き締めたい ねえいいでしょう？ 分け合って 乗り越えたいんだってば</blockquote>に変更されており、聴感をほとんど変えないまま、原曲の性的なニュアンスを感じさせる歌詞が友情の歌へとシフトしている。歌詞の世界観が踏襲されたMVは優しい色調や友情の温かさを感じるシーンが印象的で、その点からも親友からの励まし・見守りが物語のテーマになっていると感じた。不安に揺れる主人公の視点と、そこに寄り添う親友の視点、その2つの視点が重なり合うことで「モニタリング」の真実が見えてくるのかもしれない。<h2 id="NA_article_main_h2_3">CUTIE STREET「かわいいさがしてくれますか？」</h2>※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場9位CUTIE STREETの新曲「かわいいさがしてくれますか？」が9位に登場した。8月27日の配信リリース日に行われたグループ初の全国ツアー「CUTIE STREET 1st ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2025『CAN’T STOP CUTIE』」初日公演で初披露されたことでも話題になった曲だ。TikTok総再生回数が68億回を突破した「かわいいだけじゃだめですか？」の続編として制作されたこの曲。人は誰しも見えにくい長所や、自分では短所に思える部分にも“かわいい”が存在していて「それを認め合えることができれば、きっと最強の武器になる」という思いを込めて書かれたそうだ。彼女たちが歌う自己肯定感について、筆者がメンバーの増田彩乃にインタビューをしたとき、こんなことを話してくれた。<blockquote>「『かわいいだけじゃだめですか？』にしても、歌詞だけを読むと『かわいいだけでいいでしょ？』みたいにも受け取れますけど、歌の中身を見てみると可愛くないところがあっても、それを私たちが『可愛くないところも可愛いし、みんなも大丈夫だよ』という気持ちを届ける楽曲になっていて。『みんな良いところも悪いところも肯定したうえで、ちゃんと自分を大切にしようね』と訴えているのがめっちゃいい」</blockquote>（出典：<a href="https://cutiestreet.asobisystem.com/blog/detail/65122/" target="_blank">CUTIE STREET ソロインタビュー Vol.2：増田彩乃「やっと恩返しができる」――全ての経験を糧に届ける感謝</a>）今年発表されたユニセフの報告書によると、先進36カ国の中で日本の子供の精神的幸福度は32位と低い。だからこそ、自分自身のいい面も悪い面もポジティブに認めて前向きに生きようと訴えているCUTIE STREETの音楽は、今の日本に求められているように思う。<h2 id="NA_article_main_h2_4">SKY-HI「At The Last」from THE LAST PIECE</h2>※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場58位「At The Last」は6月27日にリリースされたSKY-HIの配信シングルであり、BMSGが主催するボーイズグループオーディション「THE LAST PIECE」のテーマソング。今作のプロデュースにはBE:FIRST、ちゃんみな、中島美嘉など有名アーティストを手がけているRyosuke "Dr.R" Sakaiを迎え、作曲はBE:FIRST、King & Prince、SixTONESなどに楽曲提供をしている中村泰輔、作詞はSKY-HI本人が担当している。筆者はこの曲から“夢を追う者たちへのエール”を感じた。ただ背中を押すだけでなく、夢を追いかけるその道が決して華やかではないことも描いている。だからこそ、説得力があるのだ。夢に向かって走り出すとき、「無謀だ」「無駄だ」と言われることがある。その声は周囲の人間だけでなく、もう1人の自分の声かもしれない。それでも夢や希望に向かって走り続けていくからこそ、見える景色がある。そんな前進力のある楽曲をSKY-HIと６次審査メンバー14名で披露したのが、今週58位にランクインしたこのパフォーマンス映像だ。SKY-HIはもちろんのこと、応募者たちの覚悟や勢いが歌声や表情からも感じられる。

YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで9月5日から9月11日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。

#増田彩乃

「モニタリング（Best Friend Remix）」が明かす真実 / CUTIE STREETを今の日本が求めている