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大トリ細野晴臣のベースに熱狂、出演者の“細野愛”満ちあふれた「CIRCLE」2日目

5年近く前2019年05月26日 12:07

5月18、19日に福岡・海の中道海浜公園 野外劇場でライブイベント「CIRCLE '19」が開催された。ここでは19日公演の様子をレポートする。

厚い雲が福岡の空を覆い、涼しい風が吹き抜ける中でスタートした19日の公演。KOAGARI STAGEのトップバッターを務めた青葉市子は、1曲目に「レースのむこう」を届けて来場者を迎え入れた。静かなたたずまいでギターを抱え、空に柔らかく溶けていくような繊細な歌声を響かせる彼女のパフォーマンスを、観客も穏やかな雰囲気の中で見つめる。「太陽さん」「Moon River」「月の丘」など8曲を歌った青葉は最後にピースサイン。「最後まで楽しんでいきましょう」と微笑みを浮かべ、CIRCLE STAGEのトップバッターへとバトンをつないだ。CIRCLE STAGEの1組目として登場したnever young beachは「みんなおはよー!」という安部勇磨(Vo, G)のはつらつとした挨拶と共にライブをスタートさせ、「どうでもいいけど」「Motel」といったナンバーを次々と届けていく。4人が紡ぎ出す軽快なサウンドに聴衆も自然と体を揺らし、会場はあっと言う間に彼らの作るさわやかなムードで満たされていった。中盤にはリリースされたばかりのアルバム「STORY」から「STORY」「春らんまん」といった新曲が届けられるシーンも。また阿南智史(G)のギターの弦が切れるというハプニングを彼らいわく「Queenばりのチームワーク」で乗り切る場面もあり、ステージ上も観覧エリアも終始にぎやかに時間が過ぎていった。アコースティックギターやバンジョーを手に、ブルージーなボーカルで聴き手を魅了したのは中村まり。KOAGARI STAGEの2番手として登場した彼女は「Black-Eyed Susan」「Into the Clouds」など7曲を演奏。郷愁を誘うサウンドで、ステージ前に座って聴き入る観客に優しい時間を提供した。

「CIRCLE」初登場となった清水ミチコは、熟練と言える芸の数々で昼下がりの会場に笑い声を響かせた。自らのことを「カニカマ専門店」と称した彼女は中島みゆき、研ナオコ、森山良子、松任谷由実といった面々が登場する「降臨メドレー」や美輪明宏の「愛の讃歌」でオーディエンスを大いに楽しませる。実弟・清水イチロウをステージに迎え入れた場面では、矢野顕子と細野晴臣のモノマネで「恋は桃色」を歌うサービスも。歌い終えた2人は「あとで本物が来るっていうのに……」と言いながら笑い合っていた。一方「CIRCLE」常連のceroからは、高城晶平のソロプロジェクト・Shohei Takagi Parallela BotanicaがKOAGARI STAGEに登場。高城、光永渉(Dr)、秋田ゴールドマン(B)、伴瀬朝彦(Key)、ハラナツコ(Sax)、中山うり(Accordion, Tp, Cho)という布陣で濃密なセッションを繰り広げていく。ミュートトランペットの音がムーディな世界観を浮き出たせる「Short Vacation」、甘美なサックスの音色が印象的な「Twilight Scene」と続けたのち、高城は「ここでカバーを」と、細野の「Pleocene」をプレイ。「これからも一生懸命音楽を作ったり、子供を育てたりしていきたいと思います」と挨拶し、優しいスローナンバー「Midnight Rendezvous」でパフォーマンスを結んだ。そして大貫妙子は小倉博和(G)、鈴木正人(B)、沼澤尚(Dr)、林立夫(Dr)、フェビアン・レザ・バネ(Apf)、森俊之(Key)と共にCIRCLE STAGEへ。バンドメンバーと共に織り成す極上のポップサウンドで会場を満たしていく。細野が今年活動50周年イヤーであることに触れた彼女は「40周年はとうに過ぎていますが、先輩たちの背中を追いかけながらできるところまでやるか、という感じです」という挨拶でもファンを喜ばせる。中盤には“背中を追いかけている人”細野の「ファム・ファタール」を「尊敬を込めて」というメッセージを乗せて豊かに歌い上げた。晴れ間がのぞき始めた空に美しいスキャットが溶けていった「BERIMBAU DO BEM」、ミドルバラード「虹」と続き、ラストの「WONDERLAND」ではオーディエンスもクラップの音を響かせながら体を揺らす。大貫がライブを終えた頃には温かな日差しがステージに差し込み、東の空にはうっすらと虹がかかっていた。

KOAGARI STAGEのキセルは「大貫さんのライブで鳥肌がまだ……」と言ってファンを和ませながらも、独自の魅力を存分に発揮。ピアニカの音色が優しい「春」から代表曲「ベガ」と続けてドラマティックなムードを作り出すと、新曲の「草葉の陰まで」も披露する。「CIRCLEへの感謝を込めて」この日のライブを展開したという彼らは、ラストに「ひとつだけ変えた」を選び、温かな口笛の音色を昼下がりの会場に響かせた。続いてCIRCLE STAGEに上がったのは、高橋ユキヒロ名義での出演となった高橋幸宏。彼はこの野外のステージで、1978年にリリースした「Saravah!」の再現ライブを行った。「VOLARE」でライブがスタートすると、 佐橋佳幸(G)、Dr.kyOn(key)、林立夫(Dr)、ゴンドウトモヒコ(Ehpho, Computer)ら11人の大編成で紡がれるゴージャスなサウンドに、聴衆も大きな歓声を上げる。シャツにタイ、ハットをかぶった高橋は「まさかフェスでやるとはね。正装して……暑いし」と笑いつつ、その後も「Saravah!」収録順に「SARAVAH!」「C'EST SI BON」と名曲の数々をパフォーマンス。高橋がドラムセットに座り、ツインドラムで届けられた「ELASTIC DUMMY」ではその疾走感と息の合ったバンド演奏に喝采が送られ、「SUNSET」ではステージをオレンジ色に染め上げる演出も一層の郷愁を誘った。ラストソングを前に、高橋は「26歳の僕が書いたので、歌うのちょっと恥ずかしいんですけど……勘弁していただいて。まあ、いい曲だなとは思っています」と笑い「PRESENT」をタイトルコールする。イントロから手拍子が起きたこの曲で高橋は暮れ行く空にさわやかな歌声を響かせ、全9曲の再現を終えてステージをあとにした。

KOAGARI STAGEのトリを務めた砂原良徳は1曲目に細野の「薔薇と野獣」をスピンすると、細野作品オンリーのセットでDJプレイを展開。「風をあつめて」「THE MADMEN」といったナンバーをつないでジャンルや形にとらわれない細野の多彩なキャリアを横断し、リスペクトにあふれたパフォーマンスで大トリとして登場を控える細野のライブへ向けたムードを存分に高めてみせた。出演アーティストがさまざまな形で細野への愛情を伝えた「CIRCLE」2日目のクライマックス。人々の強い期待感が充満する中でCIRCLE STAGEに姿を見せた細野は「北京ダック」で軽やかにライブをスタートさせる。演奏を終えるなり「ホントはトリの順番が違うんだよ。幸宏が最後だった」と言って観客を笑わせつつ、「雨降ったらおしまいにします」と宣言して「Roo Choo Gumbo」へ。続く「薔薇と野獣」ではイントロで「わあっ」と歓声が上がり、高田漣(G)、伊賀航(B)、伊藤大地(Dr)、野村卓史(Key)といったおなじみのメンバーが奏でる豊かなサウンドに観客はじっくりと耳を傾ける。その後も「CHOO CHOO ガタゴト」「住所不定無職低収入」と「HOCHONO HOUSE」収録曲が続き、細野は深みのある歌声で名曲の数々を届けていった。

MCで「昔は『坊や』と言われていたけれど、もう71歳ですよ」と言った細野は、この“71歳の坊や”の話題で観客とも他愛ない会話を交わしつつ、ステージと観覧エリアの境界を感じさせない大きな包容力で一体感を高めていった。「SPORTS MEN」の心地よいサウンドが夜風と共に届けられるとライブも終盤。「Body Snachers」では伊藤や高田による熱を帯びたセッションが繰り広げられる。「最後まで観てくれて、ありがとうしかないですね」と聴衆に感謝を伝えた細野は「最後の曲は雨が降らないうちに」といって「The House Of Blue Lights」へ。演奏に合わせて楽しげなステップを踏みながらこの曲を歌い、ステージをあとにした。

“「CIRCLE」の顔”による充実のパフォーマンスが終わっても観客の熱狂は冷めることなく、細野のライブはそのままアンコールへ。ステージに戻った細野はステージセンターではなく伊賀の隣に歩みを進め、そのままエレキベースを構えた。思わぬ光景に観客のざわめきが広がる中、彼らが届けたのはYMOの「ABSOLUTE EGO DANCE」。細野からの思わぬギフトに、会場はこの日一番の熱狂に包まれる。細野の心配していた雨も最後まで降ることのないままイベントは終幕。数々のミラクルを目の当たりにした来場者たちはそれぞれに抱いた興奮を引きずったまま、会場をあとにした。

写真提供:CIRCLE

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