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私と音楽 第25回 オズワルド・畠中悠が語る中島みゆき

2年以上前2022年01月18日 10:02

各界の著名人に愛してやまないアーティストについて話を聞くこの連載。第25回に登場するのは、昨年末の「M-1グランプリ」で準優勝に輝いたオズワルドのボケ担当・畠中悠だ。

公式プロフィールの趣味欄で「素敵なシンガーソングライターを探すこと」を挙げ、バラエティ番組でたびたび自作のオリジナルソングを披露するなど、音楽好きとして知られる畠中。今回はその中でももっとも好きだという中島みゆきについて、思いの丈を語ってもらった。

取材・文 / 石井佑来 撮影 / 吉場正和

中島みゆきの曲は常に生活の中にある

もともとお母さんが中島みゆきさんの曲が好きで、子供の頃から車の中でよくかかっていたんです。お母さんが運転するときは中島みゆき、お父さんが運転するときは長渕剛、みたいな感じで。なので、子供の頃から中島みゆきさんの曲は日常的に聴いていたし、子供ながらにカラオケで「あばよ」を歌ったりしていました。歌詞の意味とかはあまりわかっていなかったですけどね(笑)。そのあと、高校生になってから聴き直してみたら、「すごいな、この人」と改めて実感して。お母さんが持っていたCDはあったんですけど、それだけでは聴き足りなかったので、TSUTAYAでCDを大量に借りて、MDにダビングしてずっと聴いていました。それから今まで、中島みゆきさんの曲は常に生活の中にありますね。

「時代」は“全人類のテーマソング”

中島みゆきさんの曲を聴いていると、「この人には世の中のすべてが見えているんじゃないか?」という気持ちになるんです。例えば手塚治虫さんとかもそうだと思うんですけど、「この人はいったいどうやって生きてきて、何を考えていたらこんな作品を作れるんだろう」というとんでもない天才が、その時代ごとに産み落とされているような気がしていて。中島みゆきさんもそのうちの1人なんだと思います。「時代」とか本当にすごいですよね。もう“全人類のテーマソング”だと思います。しかもあの曲を18歳のときに作ったというのが本当に衝撃で。自分が18歳の頃なんて、高校のホームルームが終わってから、いかに早く帰りのバスに乗れるかということしか考えていなかったので(笑)。そんなことをしているときに中島みゆきさんは「時代」を作っていたと考えると、ゾッとします(笑)。

中島みゆきさんはこういうとき、どう考えるんだろう

僕は決して明るい人間ではないんですけど、中島みゆきさんは自分みたいな陰の人間に寄り添ってくれている気がするんです。暗いところで1人で過ごしている人間に対して、そっと毛布をかけてくれるような感覚というか。「無理して明るい人間に合わせなくていいんだよ。あなたはあなたで大丈夫だよ」と言ってくれている気がして。そういう意味では、心の支えになっていますね。今となっては、中島みゆきさんのいろんな曲を聴いてきたおかげで、考え方自体がどんどん中島みゆきさんに寄ってきていて(笑)。だからもう、どうしようもなく落ち込んだり苦しくなったりすること自体がないんですよね。落ち込んだときに聴いて勇気付けられてきた曲は中島みゆきさんの作品以外にもあるんですけど、それはあくまで一瞬だけ前向きになれるような感覚だったんです。マッサージに行って、その直後だけ肩こりが治るのと似ているというか。でも、中島みゆきさんの曲をたくさん聴いて生きてきたら、そもそも肩こりが起こらない体になってしまった(笑)。「中島みゆきさんはこういうとき、どう考えるんだろう」と、しょっちゅうイメージを膨らませています。

芸人を目指すきっかけになった「重き荷を負いて」

そもそもお笑い芸人になったのにも、中島みゆきさんの影響があるんです。自分はもともと配達の仕事をしていたんですけど、運転中に「重き荷を負いて」という曲を聴いていたら泣いてしまって。「がんばってから死にたいな」という歌詞がすごく胸に刺さって、「このままなんとなくこの仕事を続けていいのだろうか」「本当に自分のやりたいことに一生を捧げて死にたい」と思うようになったんです。それがきっかけで芸人を目指すようになったので、中島みゆきさんと出会っていなければオズワルドは存在しなかったかもしれない。

芸人にも、中島みゆきさん好きの人はけっこういるんですよ。ダイヤモンドの野澤さん(野澤輸出)も中島みゆきさんの大ファンで。ダイヤモンドの前に組んでいたコンビの名前がエレーンと言うんですけど、それも中島みゆきさんの曲のタイトルから取っているんですよ。出囃子で「エレーン」をかけていたと聞いて、「この人、狂ってるな」と思って(笑)。あんな暗い曲で「どーも」って出てきてもウケるわけがない(笑)。ほかにも芸人に何人かいるので、一緒に中島みゆき縛りでカラオケに行ったりしています。

ストーリー仕立ての歌詞の中に差し込まれた何気ない一文

好きな曲は「誕生」「おまえの家」とか「タクシードライバー」とかたくさんあるので絞るのが難しいんですけど、「蕎麦屋」の歌詞が特に大好きです。「世界じゅうがだれもかも偉い奴に思えてきて まるで自分ひとりだけがいらないような気がする時」というすごく暗いフレーズから始まるんですけど、そんな主人公のもとに、友達から「そばでも食わないか」という電話が来るんですね。あまり気が乗らなかったけど、断る理由もないし、そばを食べに行って、いつも通り馬鹿話をしていたら、その友達が「あのね、わかんない奴もいるさ」と突然言うんです。その言葉がとても好きで。当たり前のことっちゃ当たり前のことなんですけど、そうやって言葉にしてもらえたことで、「世の中にはいろんな人がいるし、自分と違う考えの人がいて当然だ」と改めて思えたんです。それから、誰かに対して怒りを抱くことが本当になくなりました。中島みゆきさんの曲は、ストーリー仕立ての歌詞の中に差し込まれた何気ない一文が心に響くことがたくさんあって。自分にとって、その最たる例が「蕎麦屋」なんです。

女心はすべて中島みゆきに教わった

中島みゆきさんは「失恋ソングの女王」と言われることもあって、女性目線の失恋ソングが多いんですけど、男でも共感できる部分があるんですよ。僕は今まで彼女ができたことがないので、女心はすべて中島みゆきさんに教えてもらいました(笑)。

昔、仲よくなった女の子がいて、自分はその子のことが大好きだったんです。でも、その子は僕以外にも仲よくしている人がいて、自分は何人かいるうちの1人だった、ということがあって。そういう目にあうたびに、「自分が情けない男だからそういう経験ばっかりしているんだろうな」と思っていたんです。でも、中島みゆきさんの「ひとり上手」や「わかれうた」を聴いて、「自分以外にも、こういうつらい思いをしている人はたくさんいるんだ」と気付くことができたんですよね。と同時に、「自分はこんなに苦しい思いをしているのに」という独りよがりな考えた方から解放された。あっちにはあっちの事情があったのかもしれないし、別の角度から見たら自分が悪く見えることもあるかもしれない。そういうふうに、物事を俯瞰で見られるようになったのは、間違いなく中島みゆきさんの影響の1つだと思います。

自作曲やネタに表れる中島みゆきへの愛

僕自身もステイホーム期間中にギターを始めて、最近は自分でも曲を作っているんです。なんだかんだ10曲以上はできたんですけど、やっぱり曲調や歌詞の内容は中島みゆきさんの影響がかなり出ていると思います(笑)。つらい思いをしている人や苦しい環境に置かれている人に、少しでも寄り添えるような曲を作れるようになりたいと思っていて。人生を変えるとまではいかなくても、自分の曲を聴いた人が少しでも安らぎを感じてくれればいいなって。

実はネタ作りにも中島みゆきさんの影響が出ることがあるんです。僕らの漫才で「僕は今日から1日を36時間とします」というネタがあって。「1日が24時間の人より12時間も長い。だから1.5倍ゆとりを持って生活できる。カップラーメンも君は3分待って食べるでしょ? 僕は4分半待って食べるから」「麺が伸びるだけだろ」みたいなネタなんですけど、これは中島みゆきさんの「36時間」という曲からアイデアを得て作ったんです。あと「結婚式の余興」というネタでは、中島みゆきさんの「糸」をがっつり歌っていて。あのネタは、広い会場で「糸」を歌うのがただただ気持ちいいんですよ(笑)。半分職権乱用ですけど、人前で「糸」を歌いたいがために営業でやっているみたいなところもあります(笑)。

「ネタパレ」で空気階段と一緒にやったユニットコントでは「アザミ嬢のララバイ」を歌ったり、ハロウィンの日に行われたライブでは「空と君のあいだに」のミュージックビデオのときの中島みゆきさんのコスプレをしたり……隙さえあれば中島みゆきさんへの愛を挟み込んでいます(笑)。

これからも生き方の指標として

最近は中島みゆきさん以外にも好きなシンガーソングライターが増えてきて。ヒグチアイさんやカネコアヤノさん、竹原ピストルさんなどが特に好きですね。あとは、2人組ですけどラッキーオールドサンとか。でもやっぱり、中島みゆきさんの影響からか、フォーキーな音楽を好きになることが多くて。僕の根本には常に中島みゆきさんがいるんだと思います。音楽以外にも、さくらももこ先生が大好きで、芸人になったきっかけとして「ひとりずもう」というエッセイマンガの影響もあったんですけど、さくらももこさんも中島みゆきさんのことが大好きだったらしいんですよ。あとは、学生の頃に谷川俊太郎さんの詩が好きだったんですけど、中島みゆきさんの大学の卒論のテーマが谷川俊太郎だったりして。それを知ったときはなんだかうれしかったですね。やっぱり自分が好きなものは、根っこの部分でつながっているんだなって。これからも中島みゆきさんの曲が自分の生き方の指標になるんだろうなと思います。

畠中悠

1987年12月7日生まれ、北海道出身のお笑い芸人。2014年に、NSC東京校で同期だった伊藤俊介とオズワルドを結成する。オズワルドは2019年に初めて「M-1グランプリ」決勝へ駒を進め、一躍注目のコンビに。2021年の「ABCお笑いグランプリ」で優勝を果たし、3年連続の決勝進出となった同年の「M-1グランプリ」では準優勝に輝いた。

動画提供:オズワルドのおずWORLD/OmO

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