東京スカパラダイスオーケストラが12月24日に大阪・大阪城ホールにてワンマンライブ「2018 Tour『SKANKING JAPAN』ファイナル公演 “スカフェス in 城ホール”」を開催した。
4月14日の東京・新木場STUDIO COAST公演を皮切りにライブハウス編、さらにはホール編と、形と場所を変えながら全国各地を回った大規模ツアー「東京スカパラダイスオーケストラ 2018 Tour『SKANKING JAPAN』」の最終公演として行われたこの日の公演。「スカフェス」のタイトルにふさわしく、ライブにはスカパラの作品でゲストボーカルを務めたTOSHI-LOW(BRAHMAN、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、峯田和伸(銀杏BOYZ)、宮本浩次(エレファントカシマシ)がゲスト参加した。会場のど真ん中に設置されたチェッカーフラッグ柄の円型ステージを舞台に、スカパラの9人は豪華な客演陣とのこの日限りのセッションを見せるだけでなく、来春迎えるデビュー30周年に向け、ファンがバンドのこれまでの歩みに思いを巡らせるようなメモリアルなライブパフォーマンスを提示。集まった約1万2000人の観客と熱狂の空間を作り上げた。
開演を待ちきれないオーディエンスの手拍子の音と共に「スカフェス」は開幕した。オープニングSEに乗せ、円型ステージの側面に配置されたLEDビジョンにはメンバーの紹介VTRが次々と映し出されていく。場内の期待感が最高潮に達したところで、ステージの東西に伸びる花道には9人の姿が。それぞれがポジションに着き、GAMO(Tenor Sax)が「SKANKING JAPAN、大阪城ホールへようこそ! 一夜限りのお祭り、最高の夜にしようぜ!」と叫んだのを合図に、スカパラは「The Battle of Tokyo」でライブの火蓋を切って落とした。
茂木欣一(Dr)を中央に配した円形のフォーメーションで全方位に向けて攻撃的な音を放つ9人は、「ペドラーズ」「DOWN BEAT STOMP」とアッパーチューンを連発して冒頭から容赦なくファンを踊らせていく。最初のMCで「壮観だな!」と客席を見渡したのは谷中敦(Baritone Sax)。彼は2018年の多忙なバンド活動を振り返ったのち「そんな中で我々を癒してくれたのはワンマンに来てくれたお客さんでした。ありがとう!」と伝え「今日は360°東西南北、パラダイスの扉開けっ放しで行くんで、思いっきりこっちになだれ込んで来てくれよな!」とオーディエンスを大歓迎した。
谷中が熱いMCで会場の熱気を一段引き上げれば、「JON LORD」は沖祐市(Key)の独壇場に。四方の客席に向けて切れ味抜群のダンスレッスンを行った彼は、軽快なステップを踏みながら鍵盤を叩き、楽しげなムードの中で会場を1つにまとめ上げていった。川上つよし(B)の誘いからメドレーパートに突入すると、9人は「Burning Scale」「Blue Mountain」といった懐かしのナンバーをタイトなアンサンブルで連発。円型ステージのあちこちで繰り広げられる各々の卓越したソロが何度もオーディエンスの歓声を誘えば、「ルパン三世'78」ではメンバーを乗せたステージが回転を始める。次々と色を変えながら舞台を照らす照明演出も9人の演奏に美しい彩りを加え、「Come On!」まで一気に駆け抜けた隙のないショータイムに、聴衆は酔いしれるように体を揺らしていた。
大森はじめ(Per)が「拳を上げる準備はいいか? もっと高く上げろ!」と煽ると、この日最初のゲスト・TOSHI-LOWが西の花道から姿を見せた。ゆっくりとステージに上がった彼が力強く拳を振り上げると「野望なき野郎どもへ feat.TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)」のイントロが鳴る。雄々しく気迫に満ち溢れたTOSHI-LOWのボーカルに呼応するように、オーディエンスもまるで怒号のような叫び声を上げながら何度も拳を天に突き上げていた。
北原雅彦(Tb)が曲中に披露した“クリスマス謎かけ”が肩の力の抜けた笑いを誘った「恋してCha Cha Cha」、谷中の艶っぽいサックスの音色が会場をムーディに染め上げた「True Heart」がプレイされたのち、GAMOは「ここからさらに上げてくぜ!」と言って「Paradise Has No Border」へとつなげる。ホーンセクションの4人と加藤隆志(G)、川上は「どこが盛り上がってんだ?」と会場を見渡し、メンバーを呼ぶ声が大きい方角へと次々に歩みを進めて楽曲のテーマを吹き鳴らしてみせた。そんな客席全体を巻き込むパフォーマンスで温まり切った会場にギターを抱えて現れたのは斎藤。彼が「Paradise Has No Border」のフレーズを爪弾きながらステージに上がると「白と黒のモントゥーノ feat.斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」がスタートし、斎藤は情熱的なバンドアンサンブルをバックに突き抜けるような歌声を聞かせてオーディエンスを魅了した。
ライブ中盤には茂木とGAMOが語り部となり、セッションを楽しみながら平成の時代を駆け抜けてきたスカパラの歩みを振り返る場面も。脱力系の“GAMOトピックス”も語られたのち、茂木は「僕は平成15年、初めてリードボーカルを取った、あのときのことが忘れられない!」と言って「銀河と迷路」へとつなげた。熱っぽい歌声を演奏に乗せる茂木は、曲中「ずっと座ってドラム叩いてるわけにはいかないって気付いたんだよ!」とおもむろに立ち上がってドラムセットの外へ飛び出し、フリースタイルすぎるボーカルパフォーマンスで“歌うドラマー”の神髄を見せつける。すると「SKA ME CRAZY」ではNARGOがおなじみの光るピアニカに加えてジャケットも電飾で光らせ、こちらも“進化系”のパフォーマンスを提示。キラキラと光を放ちながらなぜかロボット歩行で客席を歩き回り、ファンを大いに楽しませた。
加藤が「満員のお客さんが僕らにとっての最高のクリスマスプレゼント。本当にありがとうございます」とファンに伝えると、本編も佳境へ。加藤と谷中が東西の花道に分かれ「This Challenger」を歌って会場中のシンガロングを誘えば、メンバーもファンもモンキーを踊りまくる「スキャラバン」では会場が一瞬にしてダンスフロアと化す。そして「ちえのわ feat.峯田和伸」のイントロが鳴り、西の花道に躍り出たのは峯田。ボトルの水を頭からかぶりながらステージに駆け込んだ彼はマイクを握るや「イエーー!!」と思い切りシャウトする。その熱量に一瞬にして聴衆がヒートアップし歓喜の叫び声を上げると、峯田は全身全霊で言葉に思いを乗せる渾身のボーカルでオーディエンスと向き合い、エモーショナルに会場を揺らした。
ゲスト陣の熱演と聴衆の熱狂を受けたバンドの演奏は曲を増すごとに熱を帯びていき、「White Light」では高揚感あふれるムードが大阪城ホールを包み込んだ。盛り上がりが最高潮に達した「スカフェス」のステージに招かれた最後のゲストボーカルは宮本で、大歓声に迎えられた彼は投げキッスをしながら東の花道に立つ。そしてまっすぐに前を見据え歌い出した「明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次」で、宮本の圧倒的なボーカルが空間いっぱいに響き渡ると、彼はスカパラメンバーの周りを自由に動き回り、オーディエンスに向けて「みんないい顔してるぜ!」とひと言。その唯一無二の歌声と振る舞いでステージ上も客席も笑顔にして、さっそうと舞台上をあとにした。
本編のクライマックスに届けられた「メモリー・バンド」の冒頭、ビジョンには30年間のスカパラメンバーの姿を捉えた何枚もの写真が映し出された。その写真の中にはバンドを去って行ったメンバーたちの姿もあり、観客は熱い眼差しでバンドのこれまでの歩みを静かに目に焼き付けた。沖が優しく口笛を吹き、メンバーがそこに音を重ねて演奏が始まれば、ボーカルを取る茂木と沖はまっすぐな歌声で“バンドの強い絆”を歌うこの曲に思いを込める。円の内側を向き、お互いの存在を確かめながらアンサンブルを紡ぐメンバーの周りを囲むファンはクラップで“バンドの一員”となり、ホール全体が大きな一体感に包まれていった。曲を終えると谷中は「バンドって不思議なもので」と切り出す。「家族じゃなければ兄弟でもないし、仕事仲間でもない。だけど辛いこと大変なことを共に乗り越えてきたから、絆は強い。だから誰かが離れていってしまうときは信じられないくらい辛くて。スカパラには正式に脱退していないのに行っちゃったメンバーもいるし。だけど次第に、こうやって大きいステージに立つとき、『一緒に立っていてくれるのかな』って思うようになりました」と続けた彼は「今日はクリスマスだから言ってもいいかな。お前ら全員、メモリー・バンドのメンバーなんだよ! 楽しんでくれてありがとう!」と抱く思いを力の限りに叫んだ。
スカパラのクリスマスの風物詩「クリスマスカ」で幕を開けたアンコールではゲストの4人が再び登場し、それぞれにもう1曲ずつスカパラとコラボセッションをして贅沢な時間を観客に届けた。「俺たちの明日」を歌った宮本、「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」でセッションした斎藤の次に登場したTOSHI-LOWはスキンヘッドのカツラにサングラス、マラボーでクリーンヘッド・ギムラになりきった姿でメンバーとファンを沸かせ「ギムロウです」と言って「ジャングルブギ」を届ける。そして峯田は感激の面持ちを浮かべながら「めくれたオレンジ」を歌い「10代の頃音楽が好きになって。でも音楽が好きだから寂しいのか、寂しいから音楽が好きなのか、ずっと1人で。でもバンド作って大人になって、スカパラの皆さんと一緒に曲作って。あの頃は1人だったけど、俺本当に幸せだなって。この空間の中で感じました」と思いを伝えた。
最後のMCではNARGOが「最初にスカパラがライブをしたのは1988年のクリスマス。今日でちょうど30年なんです。『ここまで続けてこれてうれしいな』って噛みしめながら、1音1音演奏しました。何よりうれしいのは一度も活動休止をしなかったこと」と笑顔で喜びを明かした。3時間45分にわたった「スカフェス」を締めくくったのは「Are You Ready To Ska?」。30年間刻み続けてきた裏打ちのリズムで最後までオーディエンスを躍らせた9人は「またこのパラダイスに遊びに来てくれよな!」と晴れやかな笑顔を浮かべながら、熱狂の余韻を引きずる会場をあとにした。
なお本公演を生中継したWOWOWでは、2月20日(水)にこのライブのリピート放送が実施する。
東京スカパラダイスオーケストラ「2018 Tour『SKANKING JAPAN』ファイナル公演 “スカフェス in 城ホール”」2018年12月24日 大阪城ホール セットリスト
01. The Battle of Tokyo
02. ペドラーズ
03. DOWN BEAT STOMP
04. Routine Melodies Reprise
05. JON LORD
トーキョースカメドレー SKANKING JAPAN 2018
06. The Movin' Dub
07. Burning Scale
08. Blue Mountain
09. ルパン三世'78
10. FINAL FANTASY Opening Theme
11. Break into the Light
12. Come On!
13. 野望なき野郎どもへ feat.TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)
14. 恋してCha Cha Cha
15. True Heart
16. Paradise Has No Border
17. 白と黒のモントゥーノ feat.斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
18. 銀河と迷路
19. SKA ME CRAZY
20. 砂の丘~Shadow on the Hill~
21. 星降る夜に
22. This Challenger
23. スキャラバン
24. ちえのわ feat.峯田和伸
25. White Light
26. 明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次
27. メモリー・バンド
28. Glorious
<アンコール>
29. クリスマスカ
30. 俺たちの明日 w / 宮本浩次(エレファントカシマシ)
31. 徹頭徹尾夜な夜なドライブ w / 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
32. ジャングルブギ w / TOSHI-LOW(BRAHMAN / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)
33. めくれたオレンジ w / 峯田和伸(銀杏BOYZ)
34. Are You Ready To Ska?
WOWOW「東京スカパラダイスオーケストラ 2018 Tour 『SKANKING JAPAN』ファイナル公演“スカフェス in 城ホール”」
2019年2月20日(水)17:15~