各界の著名人に“愛してやまないアーティスト”について話を聞くこの連載。今回は女優の入山法子に、中学生時代から一途に追いかけ続けてきたGLAYについて語ってもらった。
自分の部屋でMVの世界を再現
GLAYは私が小学生くらいのときからすでに大人気だったので、テレビでもたくさん曲が流れていたのを自然に聴いてましたし、CDも借りたりして、ファンになる前からずっと聴いてたなあ、という印象です。初めて自分でCDを買ったのは、14歳のとき。「HAPPINESS -WINTER MIX-」をテレビで歌っていらしたのを観て、何か雷に打たれたような衝撃があったんです。それまでも好きではあったんですが、このCDを買った頃からどっぷりハマッていきました。
この曲のミュージックビデオでは、白い世界でメンバーみんなが白い衣装を着ているんですが、それが好き過ぎて。親にお願いしてカーテンを真っ白のものに変えて、ベッドカバーも白にして……自分の部屋を白い世界にしちゃいました(笑)。そこからは親を説得してファンクラブに入り、お金を貯めてライブに行き、それ以前の作品も集め出して。
どんどんGLAYが好きになってしまい、あまりに好き過ぎて引かれるんじゃないかと思って、学校の友達の前ではファンだということはあまり言ってなかったです。でも、同じくらいマニアックな友達とGLAYについて話をしたい気持ちはあって、中学生のファンクラブ会員専用のチャットルームに入り浸っていました。そこでメッセージ交換をしていた子たちとライブのときに集まって、オフ会みたいな感じでごはんを食べたりしたこともあります。
全財産のほとんどをGLAYにつぎ込んだ
初めて行ったライブは2000年のツアー「GLAY ARENA TOUR 2000 “HEAVY GAUGE”」で、さいたまスーパーアリーナ公演でした。「地元で開催されるというのに、これを観ないでいつ観に行くんだ!」と。当時は中学3年生だったかな、その頃は東京にもまだ怖いイメージがあったし、両親もライブ=夜遊びみたいな捉え方だったのでなかなか行けなかったんですけど、もうこれは行くしかないと。チケットが取れなかったので、ファンクラブ会員の掲示板で探して。そこで譲っていただいたチケットで、家族と一緒に観に行くことができました。
最初は恥ずかしく小声で「イエーイ……」みたいな(笑)。でもファンのみんなが一緒の振りをする曲はテレビで観て知ってるじゃないですか。なので、その曲が始まったら“おー、キターッ!”という感じで完璧に合わせてました。本当に楽しかったですね。それまでの人生で一番楽しかった。あの爆音と照明と……もっとこういう時間がほしい! もっと聴きたい! 私ってこんなに騒げるんだ……自分の内側からこんなに楽しいって感情が出るんだ!って。
高校生になると、アルバイトができるようになったり、お年玉を賢く貯められるようになって、それからは全財産のほとんどをGLAYにつぎ込んでました(笑)。ツアーが決まったら事前にグッズを調べてこれを買いたいなと計算して、いくら貯めるか目標を立ててバイトをがんばったり。CDも初回限定盤と通常盤とかいろんな形態で出ていたんですけど、「ファンとしては全部買わねば」みたいな謎の使命感で全部そろえてたんですよ。ライブに行く回数もだんだんと増えて、東京4公演全部行くようになり、地方公演も行くようになり……なので、常に“GLAY貯金”をしていました。自分でもどっぷり浸かっていたのを感じますね(笑)。
自分が映っていて、一瞬止まった
今日の取材のためにグッズを持ってきたんですけど、まずこれはベストアルバム「DRIVE」の初回限定で、“NOT FOR SALE”と書かれたライナーノーツ付きのものです。1曲ずつ曲の説明が載っているんです。
こっちのカードはファンクラブ10周年のときのメッセージカード的なものですね。こういうのをニヤニヤ眺めています(笑)。
この「I LOVE N.M +3」のカセットテープは、GLAYではなく、NEVER MIND名義で3万本限定で販売したもの。予約して地元のCDショップで買いました。2000年発売なので、20万人ライブ(「GLAY EXPO 99 SURVIVAL」)をやった次の年ですね。すごく遊びの多い作品で、歌詞カードも付いてなくて。HISASHI(G)さんが歌ってたりとか、かわいくてカッコいい。A面が7曲、終了後早送りして裏返すんですよ。で、B面に8曲入ってます。これは確か3曲追加されて2年後くらいにCDになってたんですけど、それももちろん持ってます(笑)。
特に思い入れのあるライブというと、やっぱり「GLAY DOME TOUR 2001-2002 ONE LOVE」になります。ライブビデオにデビュー前の私が映っているんですよ! 人生に残る記念品なので、今日持ってきました(笑)。観た瞬間にすぐに自分が映ってるってわかって、一瞬「えっ?」って。全然知らなかったからすごくビックリしましたね。チャットルームで出会った友達もみんなすぐに気付いてくれて、発売日にたくさん連絡がきました。「ONE LOVE」のアルバム自体も大好きなので、うれしかったです。
MVの見どころを解説しながら歌う
「ひとひらの自由」とか、好きな曲はそれこそたくさんあり過ぎて、どれが一番とかは選べないくらいで。「彼女の“Modern…”」、「I’m in Love」、「ACID HEAD」……そういうライブで終盤に演奏される定番曲は、CDを聴いてもそのときの楽しさと終わっちゃう切なさみたいなものを思い出して、なんとも言えない気持ちになります。
カラオケでも、酔うとよくGLAYの曲を歌いますよ。酔う前はちょっとかわいい女の子っぽい曲を歌っていても、楽しくなってきちゃうと“本物”が出てくる(笑)。本人映像をリクエストして、MVの観どころをめっちゃ熱く解説しながら歌ってますよ。むしろみんなにMVを観てほしいがために曲を入れるという(笑)。
中でも、「誘惑」と「SOUL LOVE」のMVは鉄板です。セクシーな外国人のお姉さんが出てくることでおなじみの「誘惑」のMVですが、私的にはHISASHIさんの絶対領域に注目してほしいです(笑)。「SOUL LOVE」はオフショットが満載で、素っぽい笑顔とかメンバー同士で楽器交換をしているところが見られて、プライベートを垣間見ているような感じでキュンとしちゃいます。
あとオススメなのは、「いつか」のMVですね。左上から時計回りでJIRO(B)さん、TERU(Vo)さん、HISASHIさん、TAKURO(G)さんって画面が4分割になっていて、4人がまったく違う場所で演奏しているんです。かと思ったら右の画面から左の別の世界の画面にメンバーが移動したり、下の画面から消えたと思ったら上の画面から出てきたり……という感じでつながっていくんですよ。初めて観たとき「こんな面白いことをするなんて、すごい!」って思ったので、観たことのない方はきっと楽しめると思います。
TAKUROさんの詞が好き
GLAYの魅力って、すごくまっすぐで、寄り添ってくれる温かさみたいなところだと思っていて。楽しいだけじゃなく、不安だったりもどかしさだったり、 その“時代”みたいなものを大事にしていらっしゃる気がするんです。平成の時代に学生だった私たちが感じていた社会へのモヤモヤ感とか、そういうものがしっかり歌詞に込められている曲もあって。聴いて「楽しい!」とか「好き!」っていう気持ちにさせてくれるところも、恋愛ソングでキュンとするところももちろん魅力なんですが、GLAYはそれだけじゃない。社会的なアーティストなんですよ。
例えば「ひとひらの自由」を聴いたことで世界で何が起きているのか、もっと勉強しなきゃって思うようになったり、TAKUROさんみたいに社会のことを考えられる大人になれたらいいなと思うようになったり……大人になる過程で、そうやって人として大切なことを教えてくれた存在でもあるんです。
もちろん、「生きてく強さ」のようなストレートな歌詞に背中を押されることもあります。恋愛ソングは男性目線の歌詞が多いので、そこで力をもらうというよりは、「こういうふうに思ってもらえたらいいよなあ」って思っていた感じだったかな。あとは、TAKUROさんが書く、「恋した日の胸騒ぎを 何気ない週末を 幼さの残るその声を 気の強い眼差しを」みたいに、“~を~を”という歌詞が好きです。“~や”とか“~と”でも通じるのに、“~を”と繰り返す歌詞が「HOWEVER」のほかにも「SPECIAL THANKS」のサビとか、「Fighting Spirit」の最後のところとかにあるんですけど。なぜかはわからないんですが、聴くと心臓がキューンとなっちゃいます。
今のGLAYは面白い
「SPECIAL THANKS」といえば、タイトルだけ聞くとピンと来ないっていう人が多いんですけど、そのたび私は“「HOWEVER」を超える最強ラブソングだ”って言っています。「HOWEVER」は両思いでこれからも……っていう歌だと思うんですけど、「SPECIAL THANKS」は終わってしまう恋の歌で、その切なさと、ちょっと暗いところがいいんですよ。
今のGLAYを知ってほしいという意味では「シン・ゾンビ」を聴いてもらいたいです。HISASHIさんが作った曲で、2017年リリースのアルバム「SUMMERDELICS」の1曲目に収録されています。このアルバムには、HISASHIさんの曲が全部で4曲も入っているんですけど、これを聴いて14枚目のアルバムでも、新しさがあるなと思ったんです。「昔は聴いてたけど今はそんなに……」みたいな人に、「面白いことしてるから聴いてみてよ!」って実際にオススメしている曲です。
あとは「I’m in Love」を聴いていただきたいですね。メンバーのお友達がコーラスを歌っていて最後メンバー全員で「I’m just in Love」の部分を歌っているんですが、温かい一体感みたいなものを感じる楽曲です。ライブではその「I’m just in Love」のところはファンも一緒に歌うんですよ。TERUさんの「ラストー!」が4万回くらい続くんですけど(笑)。私たちもずーっと続いてほしいなって思いながら歌っています。楽しさと、これが終わったらライブも終わっちゃうんだなという切なさと……でも、「明日からもまたがんばろう!」みたいな、いろんな気持ちになるんです。ライブの一体感を楽しめる楽曲になっていると思います。
きっと死ぬまで聴いている
GLAYの皆さんには、2009年のライブを観に行ったときに1度お会いすることができました。もともと仲よしだったカメラマンさんが、「最近GLAYを撮らせてもらってて……」みたいな話をしてたから「えっ! 知ってた? 私、GLAYのすごいファンなんだよ!」ってどれだけファンかを話したら、面白がってライブに連れて行ってくれて。ライブのあと、ステージ裏でご挨拶させていただきました。目の前にいらしたんですが実在しているように思えなくて「フィギュアか?」って思いましたね(笑)。こんなに固まって頭が真っ白になることなんてあるんだなと思うくらい、まったく会話はできなかったです。目も見られないし、蚊みたいな声で「あ……入山法子って言います……女優とかやらせてもらってます……」とか言ったかな。あとは微妙な距離を取ってGLAYの気配を横目で感じるみたいな(笑)。お会いするのは恐れ多すぎました。もういいです(笑)。
私の平成のすべてを捧げたGLAYも、もう25周年なんですよね。でも「どんなことがあっても解散しない」というのをずっと公言してくださっているので、安心して応援できるなと思いますし、きっと私は死ぬまで聴いているんだろうな、という感じがします。いつも「ファンのみんながGLAYだ、ファンと一緒にGLAYを作っていきたい」ということを言ってくださるんですよ。GLAYは世界中の、全人類に優しい人たちで、もちろんファンに対してもすごく優しい。
これからもずっとファンを大事にしながら活動をされていくと思うので、今後もGLAYを応援するのがすごく楽しみですね。それこそ、自分が親になったときに「お母さん聴いてたんだよ」って子供にいろいろ曲を聴かせてあげたいし、私が母と行っていたみたいに、子供を連れてライブに行けたら楽しいだろうなと思うし。そうやって、GLAYを好きでい続けていたいなと思っています。
入山法子
1985年8月1日生まれ、埼玉県出身。A型。2004年に「週刊朝日」(朝日新聞社)の表紙を務めモデルデビュー。2006年に日本テレビ「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」で女優デビューし、2011年にフジテレビ「霧に棲む悪魔」で初主演を務めた。2017年フジテレビ「きみはペット」で主人公・巌谷澄麗(スミレ)役を演じ話題となった。
取材・文 / 高橋裕美 撮影 / 斎木恵太