折坂悠太が11月22日に東京・ヒューリックホール東京で全国ツアー「折坂悠太のツーと言えばカー2019」の最終公演を行った。
「ツーと言えばカー2019」は10月から11月にかけて行われた折坂の弾き語りライブツアー。10月3日の京都・磔磔から27日の沖縄・桜坂劇場 ホールAまで青葉市子、イ・ラン、butajiが各公演に1人ずつゲスト出演し、折坂とのツーマンライブを行った。そしてツアーの最終公演では、青葉、イ・ラン、butajiのほか、のろしレコードの夜久一と松井文の計6人がゲストとして登場し、それぞれ濃厚なセッションを繰り広げた。
定刻を過ぎた頃、淡いスモークが立ち込める舞台に折坂が登場。椅子に腰かけておもむろにアコースティックギターを手にした彼は「こんばんは。わたくしが折坂です。めくるめく歌の旅をお楽しみください」と観客に語りかけ、「抱擁」でライブをスタートさせた。ステージに立てられた4灯のスポットライトに照らされた折坂は、ボサノバ調の軽快なリズムでギターを奏でながら伸びやかに歌唱。続けて「櫂」「あけぼの」の2曲を、ひと言ずつ言葉をなぞるように丁寧に歌った。その後ゲストの青葉を舞台に招き入れ、今回のツアーで初披露された「百合の巣」をパフォーマンス。青葉が街中で見かけた折坂の姿を歌詞にしたというこの楽曲で、鮮やかな緑色の照明の中2人は柔らかなハミングを交えみずみずしい歌声を響かせた。
ライブ中盤に、2組目のゲストの夜久と松井が合流。折坂がマンドリン、松井と夜久がギターをそれぞれ演奏してボビー・チャールズのカバー曲「Tennessee Blues」と、10月にリリースされたのろしレコードのアルバム「OOPTH」の収録曲「コールドスリープ」をパフォーマンスし、3人が奏でるフォークサウンドと力強いハーモニーが会場を包み込んだ。また3組目のゲスト・butajiを迎えた場面では、2人はツアーに向けて共作したという「トーチ」を情感豊かに熱唱。作詞を担当した折坂は、台風が東京を通過した翌日にbutajiからメロディが送られてきたことを語り「そのとき、曲に『台風が過ぎ去って、新しい1ページが開かれた気がします』というような言葉が添えられていて」と明かすと、butajiが「台風一過の朝に圧倒されたというか。人間の力ではどうしようもない力で、グッと気持ちが開かれた印象がありました」と制作の経緯を振り返った。
後半に差しかかると、折坂は自身の楽曲に込めた思いや、岡山公演の際に青葉と共に国立ハンセン病療養所の長島愛生園を訪れ、そこで触れた盲目のハーモニカバンド・青い鳥楽団の楽曲に感銘を受けたことなどを、観客に静かに語りかけた。そして今回のツアーについて、「すごくいい時間だった。3人と別れるのは大変寂しい。歌い手っていうものは、何年も会わなくなることもありますから」「だから“また会いましょう、美しい人よ”という歌を歌います」と沖縄民謡の「安里屋ユンタ」を歌唱。続けて8月に発表した「朝顔」を、力強くまっすぐに歌い上げた。その後最後のゲストであるイ・ランが登場し、2人でツアー開始前に韓国で練習したという韓国の歌手ハン・ヨンエの「調律」を韓国語で披露した。ギターを鳴らす折坂とスタンドマイクの前に直立するイ・ランを濃厚なスモークが包み込み、2人の朗らかで芯のある歌声が混ざり合い幻想的なステージが作り上げられた。そしてイ・ランが舞台袖に捌けたあと、折坂は改めてゲストや観客への感謝の思いを語り「さびしさ」でライブ本編を締めくくった。
アンコールで再び舞台に現れた折坂は、「ありがとうございます……皆さん体調はどうですか」と観客に唐突に問い笑いを誘ったあと、大きく声を張り上げ「皆様のますますの発展とご健康を祈願いたしまして、威勢のいい歌で終わりにします!」という言葉と共に、雄叫びを上げてラストナンバー「きゅびずむ」をパフォーマンス。カントリー調の軽快なリズムでギターを演奏し、ホーミーを取り入れたボーカルを披露した折坂に、オーディエンスからは割れんばかりの拍手が贈られた。そして最後にゲストの5人を呼び込み全員で深く礼をしたのち、喝采の中折坂は笑顔でステージをあとにした。
折坂悠太「折坂悠太のツーと言えばカー2019」2019年11月22日 ヒューリックホール東京 セットリスト
01. 抱擁
02. 櫂
03. あけぼの
04. 百合の巣(ゲスト:青葉市子)
05. 坂道
06. 丑の刻ごうごう
07. 芍薬
08. Tennessee Blues(ゲスト:のろしレコード / オリジナル:ボビー・チャールズ)
09. コールドスリープ(ゲスト:のろしレコード)
10. 茜
11. 夜学
12. 炎
13. トーチ(ゲスト:butaji)
14. 湯気ひとすじ
15. 安里屋ユンタ
16. 朝顔
17. 調律(ゲスト:イ・ラン / オリジナル:ハン・ヨンエ)
18. さびしさ
<アンコール>
19. きゅびずむ