古川亮(from 古川本舗)が無観客のアコースティックライブ「SINGALONG' vol.1」を4月4日に有料配信した。
昨年12月に5年ぶりの活動再開を発表し、2月に「知らない feat. 若林希望」、3月に「yol feat. 佐藤千亜妃」と配信シングルをリリースした古川本舗。これまで発表してきた音源のほとんどでさまざまなボーカリストを迎えてきた彼だが、この日のライブは“古川亮(from 古川本舗)”名義で、ゲストを迎えず1人で弾き語りのパフォーマンスを披露した。
会場は約30年前に閉館した東京・日暮里の映画館を改装した、「元映画館」という名のイベントスペース。開演時間を過ぎると、配信画面には古川の後ろ姿が映し出された。彼の前のスクリーンには、砂浜に置かれたピアノの写真が映されている。そして暗がりの張り詰めた空気の中、アコースティックギターを爪弾く柔らかな音色が響く。古川が1曲目として静かに歌い始めたのは「ピアノ・レッスン」。吐息混じりの情感のこもった声で歌う彼の表情をカメラが追う。
ライブの序盤は「スカート」「東京日和」「あいのけもの」など、2013年リリースの3rdアルバム「SOUP」の収録曲を中心に歌唱。中盤以降はこれまでに発表した4枚のアルバムからまんべんなく選曲したセットリストでライブを進行していく。革張りのソファに腰掛けた古川は、MCを挟まず淡々と楽曲を披露。周囲にランプや観葉植物、レコードなどが置かれ、机の上に空き瓶やポップコーンが散らばっているシチュエーションから、彼のプライベートな場所に招かれたかのような感覚が画面越しにも伝わってくる。
「クロエ」では揺れるロウソクの光、「グリグリメガネと月光蟲」では大きな満月、「CRAWL」では線路を歩く幼い少女の後ろ姿がスクリーンに映し出され、楽曲の描く情景をビジュアルでも演出。1つひとつの曲名とともに画面に表示された英語のサブタイトルも、この日のために特別に用意されたものだ。
終盤、リリースされたばかりの新曲「知らない」を初めて自身の声で披露した古川は、続けてまるで子守唄を歌い聞かせるように「emma brown」「ムーンサイドへようこそ」を歌唱。青い光に包まれた古川の姿を、にじり寄るようなカメラワークが捉える。切ないメロディで「スーパー・ノヴァ」を力強く歌い上げると、彼はこの日初めてのMCとして「感じたことのない気持ちになっております」と感慨深げに語った。最初はこのライブをやるつもりはなかったという彼だが、活動再開後に初めて彼のことを知った人も含め、自分の曲を聴いてくれる人とのコミュニケーションを通じて新たな思いが芽生えてきたという。
「リリースは決まってないんだけど、そう遠くないうちに」と告げて古川は、新曲「ordinaries」を初披露。活動再開後に発表した2つの曲と同じく“夜”をモチーフにしつつ、シンプルなコード進行に言葉を連ね、日常にそっと寄り添うようなタイプの曲だ。そして最後に彼が歌ったのは「サーカス」。この曲は6年前のラストライブでもアンコールに選ばれていた。歌い終えると大きく手を振った古川。エンドロールが流れる中、彼は安堵の表情でタバコをくわえ、解き放たれたかのように両手を大きく挙げ、スタッフと笑顔で談笑していた。なお、このオンラインライブのアーカイブは4月11日まで配信されている。
古川亮(from 古川本舗)「SINGALONG' vol.1」20201年4月4日 セットリスト
01. ピアノ・レッスン
02. スカート
03. 東京日和
04. あいのけもの
05. クロエ
06. KAMAKURA
07. グリグリメガネと月光蟲
08. CRAWL
09. 知らない
10. emma brown
11. ムーンサイドへようこそ
12. スーパー・ノヴァ
13. ordinaries
14. サーカス