中田裕二の11thアルバム「LITTLE CHANGES」のリリースパーティが11月9日に東京・TSUTAYA O-EASTにて開催された。
「LITTLE CHANGES」が11月17日に発売されることを記念して行われた本公演で、中田はアルバムの全10曲を収録順に披露。ライブはレコーディングにも参加した八橋義幸(G)とのデュオで行われ、この日限りの特別アレンジで楽曲の数々が届けられた。
八橋とともにステージに現れた中田はキーボードの前に腰掛け、すぐに1曲目「Little Changes」の弾き語りを開始。ピアノの音色にメリハリのある歌声を乗せ、そこへ八橋の艶っぽいギターサウンドが重なる。続いて中田は乾杯の音頭をとり、しっとりとパーティの幕を開けた。次に披露されたのは先行配信曲「Terrible Lady」。「口ほどにもない」で中田はギターを手にし、八橋が奏でる音色と見事なコンビネーションを響かせる。オーディエンスはクラップを繰り返しながら、初披露される楽曲の世界にどっぷりと浸った。
ライブ中盤では中田の椿屋四重奏時代から交流があるという「ギター・マガジン」元編集長の尾藤雅哉氏が登場し、公開インタビューのような形でトークが展開された。「2021年はどんな年だった?」という質問に対し、中田は「ベストアルバムの準備をしつつ、ソロ10周年と40歳記念のライブやって、レコーディングして。ずっと働いてましたね(笑)」と回想。アルバムの話題に移ると、場内のモニターにレコーディング風景の映像が流れ出す。レコーディングには八橋のほか千ヶ崎学(B)、sugarbeans(Key)、小寺良太(Dr / ex. 椿屋四重奏)らも参加。映像には音楽と向き合う中田の真剣な表情が捉えられていた。とあるシーンでは布がかかったドラムを叩く小寺の姿が映り込み、フロアがにわかにザワつく。中田はすかさず「音がでかすぎたので、ガンガンにミュートしてもらいました(笑)」とタネを明かし、観客の笑いを誘った。
中田はソロ5年目を迎えた頃から音楽の楽しさが変わったと語る。「技術が身に付くにつれ、コード進行が複雑になった時期もあったけど、今は極力減らしてます。そのほうが、ゲストミュージシャンと音楽で会話できるんです。だから今回もキメ部分以外のフレージングは八橋さんに完全にお任せして録りました」と制作秘話を明かした。「ソロ11年目を迎え、これからの音楽人生をどう描いている?」と聞かれた中田は「ソロ作8、9枚目くらいで独立国家を作れた手応えがあるんです。未踏の地にたどり着けたというか。だからこれからは建物やインフラ整備をする段階。職人のように突き詰めていく感覚ですね。そしてもっと多くの人に知ってもらうべきだと思う。ずっと前を見据えて地道に歩いていくだけです」と堂々と語り、その言葉に客席から大きな拍手が送られた。
貴重なエピソード満載のトークパートを終え、ライブは中田の力強いストロークで始まる「疑問」で再開。八橋は相槌を打つようにギターフレーズを差し込み、中田のソウルフルな歌声を引き立てる。さらに中田はメランコリックな「眩暈」、ジャジーな「こまりもの」、映画「夜汽車」にインスパイアされて作られた「わが身ひとつ」といったナンバーを続けて披露。「今回のアルバムは、この時代の苦しみや明日への活力が込められた、大人な作品に仕上がりました。僕的には大傑作ができたなと思ってます。ぶっちゃけ日本で一番いい音で録れたと思う」と改めて新作への自信を覗かせ、ファンの期待を増幅させた。アルバムとライブのラストを飾るのは英語詞曲「PALE STRANGER」。コロナ禍で出会った海外アーティストと形にしたというこの曲に、観客は気持ちよさそうに酔いしれた。
アンコールでプレイされたのはフランキー・ヴァリの「Can't Take My Eyes Off You」のカバー。フロアから大きな拍手を浴びながらステージを去ろうとしたものの、中田は「……もう1曲、歌っていいですか?」と再びギターを手にする。そして昨日できたばかりだという新曲を急遽ファンへプレゼント。温かいムードの中、リリースパーティの幕は閉じられた。
「ライブナタリー “中田裕二” ~LITTLE CHANGES Release Party~」2021年11月9日 TSUTAYA O-EAST セットリスト
01. Little Changes
02. Terrible Lady
03. 口ほどにもない
04. 魔性
05. けがれのなか
06. 疑問
07. 眩暈
08. こまりもの
09. わが身ひとつ
10. PALE STRANGER
<アンコール>
11. Can't Take My Eyes Off You
12. 新曲