“アイドル戦国時代”が本格化した2010年以降、多くのグループの誕生によりアイドル人口は増加。しかし、シーンが盛り上がりを見せる一方で、長い期間活躍し続けることができるアイドルはひと握りだということも事実だ。アイドル引退後、セカンドキャリアの形成を目指すも10~20代という年齢で芸能の世界に飛び込んだことで一般社会と距離が生まれることも多く、“アイドル以外の人生”を想像できずに悩むアイドルも多い。
この連載では2018年10月に解散した元バニラビーンズのレナをナビゲーターに迎え、引退後は異なる仕事に就いて新たな人生を送る “元アイドル”たちに、セカンドキャリアをどう形成したのか、現在の仕事のやりがいなどについて話を聞いていく。記念すべき第1回目には、2016年8月にSKE48を卒業し(参照:SKE48柴田阿弥が卒業発表「もう全てやり尽くした」)、現在はフリーアナウンサー / キャスターとして活躍する柴田阿弥が登場。現役時代のエピソードはもちろん、現在の仕事との向き合い方について語ってもらった。
取材 / レナ 文 / 下原研二 撮影 / 小財美香子
ミニモニ。になりたい
レナ はじめまして。今日はよろしくお願いします。
柴田阿弥 よろしくお願いします!
レナ 私も、もともとアイドルをやっておりまして……。
柴田 存じ上げております(笑)。
レナ 今回は柴田さんのセカンドキャリアについてお話をお伺いしたいと思います。私はずっと以前からテレビで柴田さんがご活躍する姿を観ていたんですけど、ここからトップアイドルとして駆け上がっていくんだろうなという時期にSKE48をお辞めになったじゃないですか。
柴田 そうですかね(笑)。
レナ はい。私の中では、これからアイドルを5年、10年と続けていくのかなと思っていたので。柴田さんは2010年から6年間、SKE48のメンバーとして活躍されましたが、もともとアイドルを目指されていたんですか?
柴田 小学校低学年の頃にモーニング娘。さんが流行っていて、私も大好きだったんですよ。だからアイドルを目指していたというより、当時の女の子あるあるで「ミニモニ。になりたい!」みたいな感じだったと思います(笑)。
レナ なるほど。
柴田 モーニング娘。さんは1回コンサートを観に行ったこともあります。最初はミニモニ。が大好きで、そのあとに松浦亜弥さんも好きになって。
レナ 世代ですね。「ASAYAN」(1995年から2002年まで放送されたテレビ東京系のバラエティ番組)から追いかけていってモー娘。、あややに憧れるっていう。
柴田 そう! かわいくて、ずっとテレビを観てましたね。
ノリで受けたSKE48オーディション
レナ モー娘。きっかけでアイドルを志したわけではないんですか?
柴田 当時は友達もいなかったし、性格も超暗くてアイドルになりたいとか言える感じでもなかったんですよ(笑)。
レナ 以前、「今夜くらべてみました」(日本テレビ系のバラエティ番組)に幼少期の写真を提供されていましたよね。
柴田 あれは中学受験をしている頃で、一番友達がいなかった時期ですね。ガリ勉で暗くて眼鏡でちょっと太っていて(笑)。そうした人生の暗黒期を支えてくれたのがアイドルで、そこからAKB48さんとかも好きになりました。
レナ どういうきっかけでアイドルを志すことになったんですか?
柴田 高校3年生のときにAKB48のオーディションがあって、ノリで応募してみたんです。でも、切手が足りなかったみたいで書類が戻ってきて(笑)。受かるとは思ってなかったけど、参加すらもできなかったという不完全燃焼の気持ちでいたんです。そしたらSKE48の4期生の募集があると聞いて、「じゃあそのまま送ろう」と思ってAKB48のオーディション用に撮った写真ですぐに応募しました(笑)。それでオーディションに受かった感じですね。
レナ AKBに入りたい、東京に行きたいというこだわりはなかった?
柴田 全然なかったですね。本当に受かるとは思っていなかったし、AKBに入ったら地元の学校を辞めないといけないから現実的ではないなって。具体的なことは何も考えてなくて、ただただノリで応募しました(笑)。
レナ ノリで応募してSKEの4期生に受かった。
柴田 なんだか嫌な感じですよね?(笑)
レナ いやいや、ノリでも柴田さん自身の力でチャンスをつかんだわけですから。
柴田 ありがとうございます。でも、オーディションで何か特別なことができたわけでもないんですよ。
レナ 幼少期に歌やダンスのレッスンは受けていなかった?
柴田 そうですね。SKEの最終オーディションがダンスと歌唱だったんです。ダンスの課題曲は「会いたかった」だったんですけど、「yes!」の部分までしか踊れなくて、あとはずっと立ちっぱなしみたいな。
レナ それで受かったんですか?
柴田 そう。変なんですよ。
レナ 完璧じゃないところがよかったんですかね。
柴田 全然踊れなくてヘラヘラしていたんです(笑)。受かると思ってなかったから、「あー、覚えられなかった」と立ってたのが逆に度胸があると思われたのかもしれない。
レナ オーディションを受けたのはおいくつのときですか?
柴田 高3の夏休みなので17歳です。
レナ アイドルになる適齢期として、17歳でオーディションを受けるってどうでした?
柴田 特に年齢は気にしてなかったですけど、ラストチャンスかなとは思ってましたね。
レナ 小学生でアイドルになる子も多いですもんね。
柴田 そうそう。だから私の場合は、アイドルになりたいという夢はあったし、AKBも大好きだったんですけど、まさか自分がなれるとは思ってなかったから本当に勢いだけだったんです。
大所帯グループならではの苦労
レナ 大所帯のグループに所属して大変だったことはありますか?
柴田 うーん、よかったことのほうが多いかもしれないです。今、こうしてお話できているのもSKEにいたからだと思いますし。確実に人生のターニングポイントになったなと。
レナ なるほど。私はモーニング娘。さんやAKB48さんのオーディションを受けて落ちた側なんですよ。落ちたから仕方なくって言い方は悪いですけど、紆余曲折あって2人組のアイドルユニットに参加することになったんです。でも今思い返すと、学歴社会じゃないですけど、メジャーグループにいたほうがセカンドキャリアは積みやすいんじゃないかなと思っていて。
柴田 確かに「元SKE48の〇〇が~」みたいに扱っていただけますよね。
レナ すごく大きいネームバリューだと思います。柴田さんの場合、そのメジャーグループで6年間も揉まれたわけですから。
柴田 2人組もすごいと思います! 2人でお客さんを楽しませるなんて私にはできないと思うから、本当にすごいですよ。
レナ ありがとうございます(笑)。でも私は、セカンドキャリアに関してはけっこう苦労しました。やっぱり48グループにいた人って肝が据わってるんですよね。最近かおたん(松村香織 / 元SKE48)と一緒にお仕事をさせていただいて「今度、柴田さんとご一緒するんです」と言ったら、「あの子はキレてるからヤバいよ」って(笑)。あ、頭がキレる人って意味で。
柴田 よかった、ブチギレるほうじゃなくて(笑)。
レナ そっちじゃなかったです(笑)。「後輩に頭のキレる子がやってきた」みたいな。かおたんのように柴田さんのことを理解してくれる先輩もいて、すごくいいグループにいたんですね。
柴田 そうですね。当時は大変なこともあったけど、よかったことのほうが多いし感謝しています。
レナ 話せる範囲で苦労の部分を教えていただけますか?
柴田 大所帯グループの場合、みんな一番になりたいけど、自分1人だけが目立つことを考えていたらグループとしてのバランスが保てないじゃないですか。周りは仲間でもあるけど当然ライバルでもあるわけで、当時は誰かが落ちれば自分が上がると思っていました。ということはほかのメンバーから見たら自分も同じ立場で、けっこうプレッシャーというか、後輩が入ってくるたびに「追い越されたらどうしよう」と考えたりして。今思うとメンタル面はかなりギリギリだったと思いますね。
レナ 協調性を持ちつつ、自分を出さなきゃいけない。
柴田 私は協調性なかったですけどね(笑)。パフォーマンス面で言うと、現役時代はダンスに苦労しました。
レナ そうなんですか?
柴田 全然踊れなくて、たぶん同期で一番下手だったと思います。名指しで怒られたこともありましたし。
レナ そういうときはメンバー同士、助け合ったりするんですか?
柴田 いえ、当時はそんなに仲よくなったので(笑)。最初のほうはけっこうバチバチしていたんです。
レナ あー、そうか。当時は大阪にも支部(NMB48)ができたりしていた時期でしたもんね。やっぱり殺伐としていたんですか?
柴田 そうそう。同期ですぐに選抜に入った子もいたので、けっこう殺伐としてましたよ。
レナ そういう状況で協調性を持たなきゃいけないのは大所帯グループならではの難しさですね。ちなみに卒業後の未来について、メンバー同士で話したりしたことはありますか?
柴田 メンバー同士ではなかったかも。辞めるとか言うとすぐに噂になるし、みんなセカンドキャリアなんて考えてもなかったと思うんですよ。あれだけ人数が多いと歳の差も大きいし、やりたいことも違うから。当時相談したのはマネージャーくらいですかね。「進路を決めて辞めようと思います」って伝えていたと思います。
レナ なるほど。
柴田 SKEに入った当初は卒業したら一般人として働こうと思ったんですよ。芸能界にはあまり興味がなかったし、好きだったアイドルにもなれたから未練はないかなって。
レナ 柴田さんはアイドル活動と学業を両立しながらハードなスケジュールをこなしていたと思うんですけど、芸能活動をしながら大学に通おうと思ったのは将来を見据えてのことだったんですか?
柴田 もともと中学から付属校に通っていて、大学の推薦をもらっていたんです。結局推薦は取り消しになっちゃって一般入試で入ったんですけど、中学から入れてもらってるから、親に申し訳なくて大学に行かないという選択肢はなかったですね。だから全然将来を見据えてのことではなかったけど、今となってはよかったのかなと思います。
悩んだときは面白そうな方へ
レナ 柴田さんの過去のインタビューを読んでいると、SKE在籍時からリポーターのお仕事をやりたいと話されていて。当時から辞めたあとのことも考えていたんですか?
柴田 そういうふうに将来のことを考え始めたのは、SKEに入って5年目の頃ですね。
レナ それまでは将来のことは考えていなかった?
柴田 全然です。というか4年目までは選抜にも入っていなかったので、先のことを考えられる身分でもないと思っていて。
レナ なるほど。5年という期間は節目でもあるんですかね。だいたいどのアーティストも、デビューから5年目くらいに最初のベストアルバムが出るようなイメージがあって。私がいたユニットの規模だと「これはレコード会社に切られるタイミングなのかな」みたいな(笑)。たぶん5年というのは、周りのスタッフさんたちとしてもアイドル寿命の区切りを付けるか付けないかっていう期間というか。
柴田 確かに、人生においても5年、10年と考えるとひと区切りかもしれないですね。
レナ 柴田さんは5年目に将来のことを考え始めたんですね。
柴田 ちょうどその頃に大学の子たちの就職活動が始まったんです。その様子を近くで見ていたから、自然と卒業後のことを考えるようになったのかも。あと、自分の中で一番いいときにアイドルを辞めたいっていうのはあったんですよ。“一番いいとき”というのは人それぞれだと思うんですけど、私の場合は23歳のタイミングだったんです。
レナ もともとアナウンサー学校に通っていたりしたんですか?
柴田 いえ、通ってないんです(笑)。辞めることを決めてから知り合いの方にいくつか事務所を紹介していただいて、その中で一番雰囲気がいいなと思ったのが今所属しているセント・フォースの社長だったんですよ。
レナ それは会社の雰囲気ということですか?
柴田 いえ、完全に社長の雰囲気が一番よかったんです。芸能事務所の社長さんはイケイケ系の方とかさまざまなんですけど、一番信頼できると思えたのが今の事務所の社長なんです。
レナ セント・フォースを紹介してもらえたのは柴田さんの人脈もあるんですか?
柴田 人脈というのもあれですけど、運よく知り合いの方がいたという感じですね。
レナ そういう人脈作りはとても大事ですよね。私はずっと自分が所属するグループを卒業するまでは外部の方と一切やり取りしちゃダメだと思っていて。
柴田 わかります、わかります。
レナ でも自分の将来のことを考えると、すごい方々とお仕事させていただいてるわけだから人脈を広げないとみたいな。卒業後に所属する事務所選びも大切ですもんね。柴田さんが現在所属しているセント・フォースは、フリーアナウンサーが多く所属する芸能事務所です。
柴田 そう、「私、アナウンサーになるんだ」と思いました(笑)。
レナ アナウンサー、キャスター志望でセント・フォースに入ったんじゃないんですか?
柴田 全然、後付けなんですよ(笑)。セント・フォースじゃなかったら、たぶんフリーアナウンサーにはなってないですね。
レナ そんなノリでできるものなんですか?
柴田 はい。そこもノリというか、運がいいんだと思います。私は悩んだときは自分が面白そうだなと思った方向に進んだほうがいいと思っているので。
レナ なるほど。それはSKEのオーディションを受けた17歳の頃から一貫してますね。
柴田 ある意味、人生はノリです(笑)。とは言いつつ、その選択をする手前まですごく悩むんですけどね。考え抜いて決めた道なら、自分がこれだって思うところに行ったほうが後悔しない気がするんです。例えばセント・フォースに入って今のようなお仕事ができていなくても、あのとき「一番いい事務所は絶対にここだ」と思ったわけだから後悔してないと思う。
レナ いい事務所に出会いましたね。やっぱり自分が腐っていなければいい事務所、スタッフと巡り合えるんですかね。
柴田 こればっかりは縁ですよね。やっぱり信頼できる人に紹介していただくのが一番だと思います。芸能界には変な人もたくさんいるので(笑)。ただ、ちゃんとした人を見極めるのは難しいから、少しでも「ん?」と思ったら着いて行かないほうがいいし、そのためにもいろんな人に会ったほうがいいと思います。
生まれ変わってもアイドルになりたい
レナ 世の中的に、アイドルは一生の仕事じゃないというか、刹那的な存在だというイメージを持たれていると思うんです。そのあたりはどうお考えですか?
柴田 私は生まれ変わってもアイドルになりたいし、SKE48に入りたいんですよ。アイドルのおかげで学校に行けたし、たくさん元気をもらったから、刹那的な存在であったとしても、とても尊敬しています。今は柏木由紀さんみたいに30歳になっても続けている方がいるので、アイドルの在り方も少しずつ変わってきているのかなって。
レナ おっしゃる通り、柏木さんのように30歳になっても現役で活躍する方が増えてきていて。アイドルの活動期間が延びている印象はあります。
柴田 柏木さんはファンの方からしたらうれしいんじゃないんですか。アイドルに自分の青春を重ねているファンもいるから、変わらず活躍してくれるっていうのはいいですよね。
レナ そうですね。アイドルの活動期間が延びてきているからこそ、ファンの方々も意識を変えていかなきゃいけない時代でもありますよね。アイドルの結婚、出産にヘイトを向けるんじゃなくて、向き合わなきゃいけないというか。
柴田 そうですね。それでも無理だというファンの方は批判するんじゃなくて、推せるアイドルを別に見つけるのがいいかもしれませんね。
アイドル時代に得たもの
レナ フリーアナウンサー、キャスターというお仕事に就いて、アイドル時代に培った能力が生かされる部分はありますか?
柴田 今のお仕事だと歌やダンスは当然しないですけど、緊張したりビビったりが全然ないんですよ。ビビったほうがいい場面もあるとは思うんですけど(笑)。
レナ アイドル時代に大きなステージに立ってますもんね。
柴田 あの頃は大人数の中の1人として出てたから、ほかのメンバーに助けてもらうこともありましたけど、やっぱり度胸は付いたのかなって思います。
レナ 現役時代、一番緊張したステージは?
柴田 SKEのコンサートでピアノを弾かないといけないときがあって、稽古場にカンヅメになって徹夜で練習したのであれは緊張しましたね。でも、SKEのときは大勢の中の1人なので、正直そんなに緊張しないんですよ。どちらからと言うと「がんばって目立たなきゃ」という気持ちが強かったので。でも、さすがに初めてセンターを務めたときは緊張しました(笑)。
レナ 大勢の中で自分の前には誰もいないってことですもんね。
柴田 それまで周りのメンバーを見て振りを覚えたりしていたので、前に誰もいないのかと思うとそれだけで緊張してきて。常にセンターに立つ子はこんなに大変なのかと身を持って感じました。当時はうらやましいとしか思ってなかったけど、毎回これかと考えたら大変だなって。
好きを仕事にするのか、得意を仕事にするのか
レナ SKE48はキャスターやリポーターになられる卒業生が多いですけど、同時期に活動していたほかのメンバーはどういったセカンドキャリアを歩まれていますか?
柴田 結婚した子もいるし、普通に一般企業で働いてる子もいますね。あとは女優や音楽活動とか、現役で残ってる子もいますけど、半分くらいは芸能界を引退していると思います。
レナ 私と同時期に活動していたアイドルも半分くらいは引退しました。これからの時代、女性が結婚しても仕事を続けられる職場環境が整っていくと思うんですよ。だから私は今の現役アイドルの子たちに、しっかりとしたセカンドキャリアを歩んでほしいと思っていて。アイドル時代にやっておいたほうがいいと思うことは何かありますか?
柴田 アイドル時代は目の前のことを一生懸命やったほうがいいと思います。もちろん不安だと思うんですけど、先のことは誰にもわからないわけじゃないですか。だからこそ、まずは一生懸命にアイドルをやる。あとはアイドルを卒業した子はみんな言うんですけど、辞めるタイミングは絶対に降ってきますから(笑)。
レナ 降ってくる!
柴田 うん、一生懸命やってたら降ってくると思います。確かにアイドルは不安なことやしんどいことも多いけど、やるからには全力じゃないと後悔が残ると思うんです。全力でやったのなら自分が望む結果が出なくても納得できるというか。私、アイドルに戻りたいと思ったことないんですよ。
レナ それは全力でアイドルをやり切ったということですよね。私はアイドルとして10年間活動して後悔はないんですけど、もう少し大人たちと会話ができたらよかったなって思うんです。20歳でデビューしてがむしゃらに活動してきたんですけど、20代中盤くらいにその後の人生というか、セカンドキャリアについてなんとなく考えるようになっても、そういう話をできる空気じゃなくて。
柴田 辞めないほうが事務所はうれしいですもんね。
レナ 最終的に解散する半年前に会社を畳みますって言われて(笑)。
柴田 え、大変でしたね!?
レナ もう少しなんとかしてほしいなとは思いました(笑)。貯蓄がないままグループを卒業するアイドルも少なくないと思うんですよ。セカンドキャリアを歩むにあたって、大学に通い直すのにも資金面ですごく苦労してしまう。だから運営の方々にはアイドルの子たちを1人の人間として扱ってほしいなと思っていて。
柴田 うんうん。
レナ その中でも柴田さんは理想の形でセカンドキャリアを切り開いているイメージがあって。今、将来について悩んでいるアイドルたちに何かアドバイスなどいただけたらと思います。
柴田 好きを仕事にするのか、得意を仕事にするのかっていう二択があると思うんですけど、アイドルは好きを仕事にしてる人が多いと思うんですね。でも“アイドルが得意な人”ってひと握りなんですよ。だから現役アイドルの子たちには全力で活動に取り組みつつ、「もしかしたらアイドル以外に自分には人よりも努力せずに多くの結果を残せる仕事があるかもしれない」っていうのを頭の片隅に入れてほしいんです。
レナ なるほど。
柴田 私の場合、アイドルは好きだった仕事で、アナウンサーはたぶん向いてる仕事だと思うんです。人生で大切なのはどれだけ選択肢を増やせるかだと思うから、アイドル活動が忙しいのはわかるけど学校にはちゃんと行ったほうがいい。アイドルを辞めたあとの人生のほうが長いので、アイドルだけで燃え尽きないようにしてほしいです。しんどいことも多いけどちゃんと学校に通ったり、親御さんと将来のことを話し合ったりするのが大事かなと。
レナ 家族が一番身近で自分の得意不得意を見極めてくれる存在ですもんね。柴田さんもご両親と話し合いはしたんですか?
柴田 向き不向きみたいなのは自分で働いてみて感じたことですね。親からは「アイドルを辞めたあとの人生のほうが長いんだから」と大学に行くようには言われていました。もちろん大学に入ることがすべてだとは思わないですけど、中学、高校くらいまでは行ったほうがいいのかなと思います。アイドル活動をしていると、どうしても社会との距離が生まれてしまうんですよ。学校に行って友達と話したり、コミュニケーションを取るのはアイドル活動にも生きてくると思うので。
レナ アイドルとして働きつつ大学という外の世界に触れる中で、何かそれぞれの違いみたいなものを感じたことはありますか?
柴田 うーん、なんでそんなにすぐ泣くんだろうとは思ったことがあります。
レナ それはアイドルのほうが?
柴田 そう。泣いてても何も変わらないのにって。今思うと逃げ場がない状況でメンタル的にギリギリだったのかなと理解できるんですけどね。精神的に不安定な年齢の子も多いので、なおさら親御さんや周囲との話し合いは大切なのかなと。
レナ そうですね。ちなみに柴田さんは社会に出て難しさを感じたことはありますか?
柴田 あります、あります。最初はミスをすることも多かったですし、「私、こんな漢字も読めなかったんだ」みたいな。あと、アイドルで集まるとどうしても狭い会話になるので、だからこそ一般の友達や家族と話したり、外の世界に触れる機会は多いほうがいいと思いますね。
1人だからこそ感じられる充実感
レナ 最後に、今のお仕事をしていてどんなときに充実感を感じますか?
柴田 今日もレナさんにお会いして、こうやってじっくり話ができて充実しています。昔は大勢の中の1人だったから、自分で何かを成し遂げた感は総選挙(「AKB48選抜総選挙」)のときくらいしかなかったんですよ。今は1人で仕事をしているから、その分責任感を感じることが多くて。うまくいってもいかなくても自分の責任だから、生きてるなと思えるし、すごくやりがいを感じるんです。
レナ 大所帯を知ったからこそわかるんでしょうね。働くうえで心がけていることはありますか?
柴田 なるべく楽しんで仕事したほうがうまくいく気がします。けっこう追い込まれやすくて不安症だったりするんですけどね。あとは楽しいだけじゃなくて、事前にめちゃめちゃ準備をするのは心がけてます。私は仕事は8割くらい準備で決まると思っているので。
レナの取材後記
今回は柴田阿弥さんに“アイドルのセカンドキャリア”についてお話をお聞きしました。
その中で彼女が考えるアイドルの在り方、人生との向き合い方に心を打たれました。
私はアイドル時代、自分にも厳しく、他人にも厳しい人間でした。
アイドルはこうあるべきだと真面目に、いや馬鹿正直に……。
それが正しいアイドル像だと信じていた。
アイドルグループ=自分だと思い、勝手に自分を犠牲にしていたのかもしれません。
だって自己犠牲は気持ちいいものですもんね。
当時の事務所のスタッフさんには、
「アイドルをもう少し1人の人間だと思って扱ってほしい」と思っていました。
そうではなく、まずは自分自身が自分の人生を大切にすること。
それがセカンドキャリアを考える時間を作ったり、自分と見つめ合う時間を作る第一歩なのではないのでしょうか。
今を楽しむ。
心が躍るほうへ
自分の人生を大切に。
柴田阿弥
セント・フォース所属のフリーアナウンサー / キャスター。2010年から2016年までSKE48のメンバーとして活躍し、「AKB48選抜総選挙」では選抜メンバー圏内の15位に2回ランクインした。SKE48卒業後はフリーアナウンサー / キャスターに転身。現在はテレビ朝日系「EXITのラリージャパン応援宣言」、ABEMA「ABEMAヒルズ」「ABEMA Prime」、文化放送「シャングリラ」といった番組に出演している。
柴田阿弥 | 株式会社 セント・フォース
柴田阿弥 (@_shibata_aya) | Twitter
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レナ
2007年にデビューした女性アイドルユニット・バニラビーンズの元メンバー。バニラビーンズはスウェディッシュポップを意識したサウンドとレトロなビジュアルで渋谷系ファンなどから高評価を得る一方で「ガラス張りトラック生活」などの風変わりな活動でも注目を集めた。2018年9月にラストシングル「going my way」をリリースし、10月のライブをもって解散。バニラビーンズ解散後は、トークスキルを生かしてMC・タレント業をメインに活躍しており、“多摩川のおんな”としてボートレース多摩川の選手インタビュー、生配信の番組進行を担当している。
レナ(多摩川のおんな) (@VB_Rena) | Twitter
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