4月9日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にてカクバリズムが主催するライブイベント「カクバリズム20周年記念SPECIAL VOL.01」が開催された。
2002年3月にYOUR SONG IS GOODの1st 7inchシングル「BIG STOMCH,BIG MOUTH / LOVE GENERATION」をリリースして、音楽レーベルとしてスタートを切ったカクバリズム。以降も同レーベルはSAKEROCKをはじめ個性豊かなアーティストを次々と輩出してきた。本公演はそんなカクバリズムの20周年記念公演のキックオフイベントとして企画されたもので、当日はYOUR SONG IS GOOD、在日ファンク、キセル、スカート、mei ehara、思い出野郎Aチームといったカクバリズム所属のアーティストがライブを行った。なお当初ラインナップされていたceroは、高城晶平(Vo, Flute, G)に新型コロナウイルスの陽性反応が出たため残念ながら出演キャンセルとなった。
好天に恵まれたこの日の野音。開演に先駆けてレーベルオーナーの角張渉がステージに登場すると大きな拍手が沸き起こる。角張は、会場に詰めかけたオーディエンスに感謝の気持ちと観覧時の注意事項を伝えたのち、「カクバリズム20周年、このバンドのおかげでここまでやって来られたと思います!」と、この日のトップバッターを務めるYOUR SONG IS GOODをステージに呼び込んだ。
ユアソンはオープニングナンバーとして「The Love Song」のインストバージョンを演奏。昼下がりのまどろむような空気に乗ってピースフルなサウンドが野音に広がっていく。ロックステディのリズムが心地よい「We're Not To Blame」を経て、「Double Sider」が届けられるとルーディなクンビアのリズムに場内の熱気が上昇する。続けてバンドは「Mood Mood」をプレイ。サポートドラマーの恒岡章(Hi-STANDARD)が繰り出すタイトな四つ打ちのビートを中心に据えたダンサブルなサウンドでオーディエンスをぐいぐいと引き込んでいく。間奏のブレイクから次曲の「On」にシームレスになだれ込むと、ユアソンは軽快な演奏でひとしきりフロアを盛り上げて、ライブ巧者ぶりをいかんなく発揮してステージをあとにした。
在日ファンクは「爆弾こわい」でライブをスタートする。浜野謙太(Vo)はジェームス・ブラウンばりのキレキレなステップを踏みながら「今、これだけは確実に伝えたい!」とシャウトし、「爆弾こわい」というフレーズを連呼。続く「環八ファンク」では声を出せないオーディエンスとともにハンドルを握る手ぶりで“ジェスチャー&レスポンス”を楽しんだ。メロウなミディアムチューン「なみ」、アフロファンク風の新曲「いけしゃあしゃあ」に続けて届けられたのは「京都」。間奏では仰木亮彦(G)がアドリブで瞬時に考えたフレーズをメンバーが追いかけて歌うというライブでの定番パフォーマンスが繰り広げられ客席に笑顔が広がる。最後はカクバリズム所属後に初めて作った曲だという「足元」が力強く届けられた。
うっすらと西日が差し込む中ステージに登場したキセル。おもむろに椅子に腰かけると2人は「絵の中で」を演奏し、郷愁漂うアコースティックギターの調べに乗せて朴訥な歌声を場内に響かせた。「ベガ」で幻想的な雰囲気を作り上げると、キセルは石川啄木の詩にメロディを付けた「卯月の夜半」と原田知世に提供した「真昼のたそがれ」のセルフカバーを続けて披露する。最後は新作音源から新曲「寝言の時間」と、寂寥感漂うミュージカルソーの音色をフィーチャーした高田渡「鮪に鰯」のカバーを演奏。“わびさび”すら感じさせるような味わい深いパフォーマンスでオーディエンスを魅了した。
スカートのステージは「CALL」で幕開け。センチメンタルなメロディに乗せて、澤部渡(Vo, G)がまっすぐな歌声を会場いっぱいに響かせる。その後スカートは、セツナ混じりのミドルチューン「トワイライト」、ファンキーなカッティングギターが印象的な「回想」、エモーショナルで疾走感あふれる「さよなら!さよなら!」など多彩なナンバーを次々繰り出していく。ステージ終盤では最新シングルの表題曲「海岸線再訪」から、間髪入れず「静かな夜がいい」をプレイ。短い時間ながらもオーディエンスはスカートの持ち味である美メロの数々を時にじっくりと、時に体を揺らしながら堪能していた。
次に登場したのはmei ehara。彼女は「不確か」でライブをスタートすると、メランコリックな雰囲気の「ピクチャー」、ラヴァーズロック調の「昼間から夜」といったナンバーで、ゆったりとしたサウンドに乗せて1つひとつの言葉を丁寧に歌い届けていった。バンドも彼女のボーカルにそっと寄り添うようにしてシンプルながらも的確な演奏で楽曲の世界をさりげなく彩る。夜へと向かう薄暮れの野音の雰囲気に、mei eharaの透明感のある落ち着いた歌声が絶妙にマッチしていた。
トリを務めた思い出野郎Aチームが「楽しく暮らそう」でライブの口火を切ると、ミラーボールのきらびやかな光がステージを照らし出す。「独りの夜は」では、高橋一(Trumpet, Vo)の「俺たちは耐えるためにこの街にいるんじゃない 絶えず鳴り続ける音楽で踊るためにここにいるんだ」というシャウトにオーディエンスが手を挙げて応える。その後、バンドは「無許可のパーティー」「フラットなフロア」といったダンスチューンを畳みかけるようにプレイ。最後は「繋がったミュージック」をソウルフルに歌い上げて堂々トリを務めた。なお、この日のライブでも、昨年11月に行った東京・USEN STUDIO COASTでのワンマン同様、手話通訳者がステージに立ち、思い出野郎Aチームのメッセージ性の強いリリックを踊るようにして客席に伝えていた。
アンコールで再びステージに登場した思い出野郎Aチームは代表曲である「週末はソウルバンド」を演奏。続く「ダンスに間に合う」には、この日の出演者たちに加え、カクバリズムになじみの深いサイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野)も飛び入りで参加し、祝祭ムードあふれる中、20周年イベントは賑々しく終演を迎えた。
なおカクバリズムはこの日のイベントを皮切りに年末まで各地で20周年記念イベントを開催。詳細は今後順次発表される。
「カクバリズム20周年記念SPECIAL VOL.01」2022年4月9日 日比谷公園大音楽堂 セットリスト
YOUR SONG IS GOOD
01. The Love Song(Short ver.)
02. We're not to blame
03. Double Sider
04. Mood Mood(Short ver.)
05. On
在日ファンク
01. イントロの才能
02. 爆弾こわい
03. 環八ファンク
04. なみ
05. いけしゃあしゃあ
06. 京都
07. 足元
キセル
01. 絵の中で
02. ベガ
03. 卯月の夜半
04. 真昼のたそがれ
05. 寝言の時間
06. 鮪に鰯
スカート
01. CALL
02. 視界良好
03. トワイライト
04. 君がいるなら
05. 回想
06. 駆ける
07. さよなら!さよなら!
08. 海岸線再訪
09. 静かな夜がいい
mei ehara
01. 不確か
02. 午後には残って
03. ピクチャー
04. 昼間から夜
05. 最初の日は
06. 群れになって
思い出野郎Aチーム
01. 楽しく暮らそう
02. 独りの夜は
03. 朝やけのニュータウン
04. 無許可のパーティー
05. フラットなフロア
06. 君と生きてく
07. 繋がったミュージック
<アンコール>
08. 週末はソウルバンド
09. ダンスに間に合う
※高城晶平の「高」ははしご高が正式表記。
撮影:三浦知也 / 廣田達也