YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで11月3日から11月9日にかけて集計されたミュージックビデオランキングのトップ100の中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、トップ100に29本ものMVが初登場した。6位にランクインしたのはJUNG KOOK(BTS)の初ソロアルバム「GOLDEN」に収録されている「Standing Next to You」。同曲は45位にライブ映像、64位にコレオグラフィバージョンも初登場を飾った。
8位のSnow Man「タペストリー」は、メンバーの目黒蓮が主演を務める映画「わたしの幸せな結婚」の主題歌。切なくも艶やかなメロディに、各メンバーの澄んだ歌声が見事にハマっている。サビの「恋慕う 願い 風に揺れて」など、日本語特有の奥ゆかしい歌詞にも注目してほしい。BE:FIRSTの「Glorious」は18位にMV、19位にライブ映像が連続でランクイン。「第102回全国高校サッカー選手権大会」の応援歌として書き下ろされた楽曲で、作曲にMANATOとサッカー経験者のJUNON、作詞にLEOが参加している。
24位には、今年1月から4月にかけて行われたSixTONESの全国ツアー「慣声の法則」の集大成で、グループとして初の単独ドーム公演となった「慣声の法則 in DOME」より、4月23日に東京・東京ドームで披露された「Waves Crash」のライブ映像が登場した。25位はPerfumeと映画「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」がコラボした、たぴゅーむによる「すみっコディスコ」のPV。心が温かくなるアニメーションに対して、ミディアムテンポの心地いいディスコナンバーという対比が魅力的だ。
43位はコムドットのメンバー、あむぎりによるAMUGIRI名義のメジャーデビュー曲「すいません」。うまく自分を出せない人たちの背中を押すファイトソングとなっている。そんな幅広いジャンルやタイプのダンスナンバーが目立つ中、今回は下記の3曲をピックアップ。
Adoと初音ミク「カルチャ」
※YouTubeミュージックビデオランキング46位
初音ミクの生誕16周年を祝して、クリプトン・フューチャー・メディアは10月より「#MikuChallenge」というハッシュタグを付けて踊ってみた・歌ってみたにチャレンジしてもらう、ユーザー参加型投稿企画を開催。課題曲には、昨年10月に初音ミクYouTube公式チャンネルのリニューアル時にツミキが書き下ろした「カルチャ」が選ばれた。Adoはこの企画に「コラボクリエイター」の1人として参加し、曲名にかけて文化の日に歌ってみた動画を投稿した。
しかし投稿されたのは単なるカバーではなく、Adoと初音ミクが掛け合いを繰り広げるデュエットアレンジになっていた。この動画のコメント欄は「次元の違う歌姫同士が手を組んで歌い合うの最高かよ」「初音ミクに引けを取らないAdoも Adoに歌声で負けてない初音ミクも どっちもスゴすぎる」などの絶賛の声でいっぱいに。「こんなに有名になって名が広まってもミクチャレとかに参加するところが本当にネット文化が好きなんだなぁって感じられる」とAdoの真摯な姿勢についてのコメントも寄せられた。
tuki.×優里「晩餐歌 acoustic ver.」
※YouTubeミュージックビデオランキング47位
「15歳の天才と歌えた」。優里が自身のX(Twitter)アカウントに投稿した動画には、優里と向かい合って歌うセーラー服の少女がいた。
少女は“tuki.”という名前で活動する、15歳の中学3年生。昨年4月からTikTokでギターの弾き語り動画を投稿するようになった彼女は、今年7月に自身のオリジナル曲「晩餐歌」の制作過程を投稿し始め、「オリジナル曲の1番です」「オリジナルのCメロです」と新しい動画を公開するたびに、圧倒的な歌声とあまりに完成された歌詞とメロディが多くの人に注目された。
9月13日、YouTubeに「晩餐歌」弾き語りバージョンの動画が公開されると、わずか数日で100万回再生を突破。この動画は現在までYouTubeのミュージックビデオランキングにランクインし続けている。
そして10月23日に、優里がYouTubeで同曲をカバーした動画を投稿。優里いわく、最初はInstagramで自分の曲のカバーをしている動画を見て、歌っている人のことが気になり、アカウントを覗いたらそれがtuki.だったという。そして「晩餐歌」を聴き、気付けばしょっちゅう、口ずさむほど惹かれていたそうだ。
このYouTube内で優里が「(tuki.と)コラボできないのは分かってるよ、顔出しもしてないしさ。ただその……一緒に歌えるように、原曲キーも練習した(笑)」とラブコールを送った結果、両者のコラボが実現。11月6日に公開されたこのコラボ動画では、抜群の安定感を見せるtuki.と、曲の世界観を忠実に表現した優里の歌声に賞賛の声が続出した。
なおtuki.は11月15日に、新たなオリジナル曲「一輪花」のピアノ弾き語り動画を公開しており、こちらの再生数も現在上昇している。
角巻わため「What an amazing swing」
※YouTubeミュージックビデオチャート95位
2024年1月10日にリリースされる、ホロライブ所属のVtuber・角巻わため初の全国流通フルアルバム「Hop Step Sheep」には、ポルノグラフィティによる楽曲提供が話題を集めた「Fins」に加え、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、佐藤純一(fhána)など、豪華作家陣が書き下ろした新曲を含む全10曲が収録される。その中からFAKE TYPE.が提供した、先行配信曲「What an amazing swing」がチャートにランクイン。
終始目を離せない、きらびやかな世界観のアニメーションが話題になったこのMV。FAKE TYPE.らしいエレクトロスウィングのアップテンポなサウンドと、ゴージャスな夜へ誘うバーレスクを想起させるリリック、そしてそれを見事に歌い上げる角巻わため。すべての要素が見事にマッチし、聴く者の心を鷲づかみにした。YouTubeのコメント欄で、角巻自身は「まさにこんな感じのエレクトロスウィング曲が欲しかったので最&高です!」と喜びを伝えている。