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STUTSが武道館を経てバンドの新たな魅力見せた東名阪ツアー、自身のルーツやジャズ曲のカバーも披露

フリースタイルセッションの様子。(Photo by Daiki Miura)
約1年前2023年11月21日 12:02

STUTSが11月に東名阪ツアー「“90 Degrees” TOUR 2023」を開催した。

武道館とは異なる表現に挑戦

6月に自身初となる東京・日本武道館での単独公演を成功させたSTUTS。武道館公演にも出演した岩見継吾(B)、仰木亮彦(G / 在日ファンク)、TAIHEI(Key / Suchmos、賽)、高橋佑成(Key)、吉良創太(Dr)、武嶋聡(Sax, Flute)を迎えたバンド編成でツアーを開催し、11月7日に愛知・DIAMOND HALL、8日に大阪・なんばHatch、15日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でライブを行った。この記事では事前にアナウンスされていたJJJ、KID FRESINO、BIMに加えて、多数のサプライズゲストが出演し、ABEMAで生中継も行われた東京・Zepp DiverCity(TOKYO)公演の模様をレポートする。

チケットはソールドアウトとなり、観客で埋め尽くされた約2000人キャパのZepp DiverCity。開演時刻の19:00を迎え、波の音とともにステージの幕が左右にゆっくり開くと、薄暗いステージにスタンバイしたバンドメンバーが現れ、歓声を受けながらSTUTSも姿を見せる。ライブの幕開けを告げる穏やかで心地いいセッションを経て、その静けさを打ち破るようにストリングスのループが響けば「One」がスタート。STUTSはMPCを叩きながら歌い、マイクを握るとステージの前方に歩み出てフロアを波打たせた。

STUTSは最初の挨拶でこの「90 Degrees」がバンドセットをテーマにしたライブであることを説明し、バンドメンバーを1人ひとり紹介。今回は武道館で表現しきれなかったことを見せたいと語ると「Back & Forth」「Pursuit」のインスト2曲でバンドとのグルーヴィなセッションをじっくりと聴かせ、「Summer Situation」では今回出演しないSIKK-Oのヴァースをラップしてみせた。

中3の頃に聞いていた思い出の曲

このライブで1人目のゲストとして登場したのは、事前に発表されていなかった新鋭ラッパーのKaneee。オーディション番組「ラップスタア誕生」で脱落するも、STUTSにフックアップされて武道館のステージにも立った彼は、STUTSプロデュースのデビュー曲「Canvas」でメロディアスなフロウを聴かせた。インスト曲「Conflicted」に続けて披露された「Mirrors」では歓声を浴びながら鎮座DOPENESSが登場し、「Sticky Step」でCampanellaも合流。巧みなスキルで知られるサプライズゲスト2人がフリーキーなラップで火花を散らす中、仰木のギターも唸りを上げた。

ここでSTUTSは自身がヒップホップにハマった中学3年生の頃に試聴機で聴いた思い出のナンバーだというA Tribe Called Questのカバーを披露。岩見が演奏するウッドベースにSTUTSがMPCでドラムを重ね、鎮座DOPENESSとCampanellaが即興のラップを繰り広げる中、武嶋もアドリブでサックスを吹き鳴らした。

ジャズのスタンダードナンバーをカバー

自身の楽曲「Indigo」のフロウをバンドセットで届けたCampanellaに代わって、ステージに現れたのはKID FRESINO。「Above the Clouds」「アンバー」の2曲を飛び跳ねるようなリズミカルなフロウで乗りこなし、オーディエンスを魅了した。

次々に客演を迎えるブロックがここで終わると、STUTSが演奏したのは「Vapor」。この曲はSTUTSが初めて自身でボーカルを務めた楽曲で、2020年開催の「90 Degrees」初回では、インストを流す形でライブ初披露された。今回STUTSはバンドメンバーとの生演奏にチャレンジ。難易度の高いパフォーマンスに緊張した様子を見せつつも、観客の温かい声援を受けながら、MPCを懸命に叩いて歌い、最後までしっかりとやり遂げた。

またバンドメンバーのバックグラウンドにジャズがあることに触れたSTUTSは、ジャズのエモーショナルでダンサブルなグルーヴをこのバンドにも取り入れていきたいと語ると、ジャズのスタンダードナンバーであるジョン・コルトレーン「Giant Steps」をカバー。手数の多いドラムを得意とする吉良をはじめ、各メンバーが迫力のある演奏を繰り広げる中、STUTSもエネルギッシュにMPCを叩き、観客を惹き付けた。

怒涛の客演ラッシュ

ジャズの名曲カバーに続けて「Orbit」「Never Been」「Wisteria」のインスト3曲がシームレスに演奏され、ライブも後半に差しかかると、メロウな「PRISM」で現れたJJJを皮切りに、再び客演陣が代わる代わる登場。フィナーレに向けた盛り上がりを生み出していく。「Voyage」では畳みかけるようにラップするJJJと、気だるげにラップするBIMが掛け合いを繰り広げ、「Storm」で飛び出してきたKMCは、その勢いのまま激しくスピット。シンガーソングライターの北里彰久は、サックスとフルートで武嶋も参加した資生堂「マキアージュ」のCMソング「パノラマ」をフル尺で初披露し、Alfred Beach Sandal名義でSTUTSと制作した初期曲「Sail Away」もバンドセットで伸びやかに歌い上げる。「マジックアワー」でステージに戻ってきたBIMは、自身の楽曲「ひとつのいのち」とAwichの楽曲「Twinkle Stars」でSTUTSとコラボ。ユーモアあふれるトークでも観客を楽しませた。

客演ラッシュは続き、「Expressions」の軽快なイントロが鳴り出すと、Campanella、北里、鎮座DOPENESSの3人がステージへ。疾走感あふれるマイクリレーでフロアを熱狂に導く。ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌「Presence」は、意外にもこれがライブ初披露となるKID FRESINOを迎えたバージョン「Presence I」をベースとしつつ、彼がアウトロでラップする「Presence Remix」のヴァースも加えた形で届けられた。さらに人気曲「夜を使いはたして」や、JJJとサプライズゲストのOMSBを迎えた「心」でフロアを沸かせ続けたSTUTSは、JJJをフィーチャーした代表曲「Changes」を最後の曲として披露。晴れやかなムードで会場を満たし、ステージをあとにした。

恒例のフリースタイルセッション

その後、観客の拍手に呼び戻されると、「アンコールがあるのに『最後の曲です』と言って申し訳ないです」と人柄がにじみ出た挨拶で笑いを起こすSTUTS。バンドメンバーを改めて呼び込んだ彼は、武嶋に「娘さんが今日誕生日ということでおめでとうございます」と言葉をかけ、ほかのメンバーも即興の演奏で祝福する。そんなハッピーなムードの中、STUTSはインストナンバー「Landscapes」に続けて、自身がMPCを叩きながら歌う「Seasons Pass」をパフォーマンス。観客もクラップで参加し、フロアには一体感が生まれていく。

そしてライブのラストを飾ったのは、普段は序盤で披露されることの多い定番曲「Renaissance Beat」。この曲でバンドメンバーそれぞれの鮮やかなソロプレイがフィーチャーされたかと思えば、鎮座DOPENESSが颯爽と現れ、STUTSのワンマンライブではお馴染みとなったフリースタイルセッションが始まる。Campanella、OMSB、JJJ、BIMと出演ラッパーが順にマイクを握り、出演予定のなかったSANTAWORLDVIEWまでも飛び入り参加。Kaneeeに続いて、JJJにMPCを委ねたSTUTSも気迫みなぎるラップでフロアを沸かせた。

こうして東名阪ツアーを終えたSTUTSは、2024年3月4日に東京・Billboard Live TOKYO、3月5日に大阪・Billboard Live OSAKAでもバンドセットでライブを開催。ツアーに参加したメンバーに加えて、佐瀬悠輔(Tp)をバンドメンバーとして迎える。

なおツアー東京公演の模様はABEMAで有料配信されているので、会場に足を運べなかったファンはABEMAをチェックしよう。

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