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アンジュルム橋迫鈴とアイドルの意外性を考える(後編)

「聴くなら聞かねば!」ビジュアル
12か月前2023年12月08日 10:05

佐々木敦と南波一海よるアイドルをテーマにしたインタビュー連載「聴くなら聞かねば!」。前回に引き続き、アンジュルムの橋迫鈴をゲストに迎えてお届けする。後編では、こよなく愛する爬虫類の魅力や今後の展望についてなど語ってもらった。

構成 / 望月哲 撮影 / 曽我美芽 イラスト / ナカG

ソロでバラードを歌って度胸が付きました

佐々木敦 どんどん新しいメンバーが入って来て、先輩としてもっとちゃんとしなければ、みたいな気持ちはあったりしますか?

橋迫鈴 全然ないです(笑)。アンジュルムの中での自分の立ち位置を理解できた感覚が全然なくて。活動歴もそうですし、期で数えたときも自分はまだ下のほうだと思うので。

南波一海 橋迫さんの場合、加入後すぐコロナ禍に突入して、グループの活動形態が変わってしまったというのも大きく影響してるんじゃないですか?

橋迫 コロナの時期は本当に何も経験できなかったので。活動も制限されていたので、その分の経験がカットされているというか。

佐々木 橋迫さんに新メンバーみたいな雰囲気が残っているのは、そうした特殊な環境が影響しているのかもしれませんね。

橋迫 そうですね。

佐々木 自粛期間中はどうやって過ごしていたんですか?

橋迫 ずっと家にいました。

南波 ギターを始めましたよね?

橋迫 自粛期間中にギターをがんばろうって思ったんですけど、できなかったです(笑)。

南波 その頃のこと、めっちゃ覚えてるんですよ。笠原(桃奈)さんが「何かをやる派とやらない派がいて、私はまったく何もできないダメな人間だけど、(橋迫は)ギターを持ったからすごい!」と言っていて。

橋迫 ははは。持っただけです(笑)。

南波 その後どうなのかなと思ったけど(笑)。

橋迫 続かなかったです(笑)。

佐々木 コロナ禍では、ライブでもいろんな制約があって。例えば、お客さんが歓声を上げられなかったり。やっているほうは勝手が違いますよね。「ウケてるのかな?」って気持ちになるじゃないですか。

橋迫 なりますね。MCとか不安になりました。

南波 MCは特にそうですよね。

佐々木 笑い声を上げることも禁止されているわけだから。

橋迫 そうなんですよ。だからファンの皆さんは自分の発言を面白いと思ってくださっているのかな?とか思いました。

南波 コロナ禍では、恒例のハロコンもお客さんが歓声を上げず静かに鑑賞できるように、ハロプロメンバーがソロでバラードを歌うという構成になって。それこそ、お客さんの反応がわからない中で、1人でバラードを歌いきるというのは、すごく大変なことだろうなと思いました。

橋迫 すごい経験でした。ただ、あの経験を経たことで鍛えられて成長につながった部分もあると思うので。

南波 ステージ度胸は絶対に付きますよね。

橋迫 はい。1人というのがすごく大きかったです。私はソロの歌唱がすごく苦手なので。あの経験を通して少しは慣れたかなと思います。

佐々木 よくよく考えたら、あんな大人数の前で1人で歌うこと自体、普通の人にはない経験なのに。さらにお客さんが全員静まり返っているっていう(笑)。

橋迫 小学生の頃はクラスの何十人の前に立つのも無理なタイプだったので。そう考えたら自分でもすごいなと思いました(笑)。

佐々木 歌に関して相当鍛えられたわけですね。ちなみに橋迫さんは一時期ダンスの練習動画をたくさんアップしていましたよね。それを見て、今ダンスのスキルアップに磨きをかけているのかなと思ったんですけど。

橋迫 そうですね。もっとダンスがうまくなりたいので。私がダンスで大事にしているのは付けてもらった振りを崩さないことなんです。そこを一番大事にしています。

佐々木 自分なりにアレンジするんじゃなくて。実際、橋迫さんの振りってめちゃくちゃ正確だと言われているから自分でも意識しているんですね。

橋迫 そうですね。それは常に。

南波 困ったら橋迫さんを観るのが正解。

橋迫 だといいんですけど(笑)。

MV撮影での楽しみは?

佐々木 新体制初のシングル「RED LINE / ライフ イズ ビューティフル!」についても聞かせてください。「RED LINE」を作詞作曲したのは、この連載にもご登場いただいたシンガーソングライターの山崎あおいさんです。

橋迫 「RED LINE」は、とにかくカッコいいメロディと歌詞で、新メンバー2人(下井谷幸穂、後藤花)にとっては初めてのシングルなので、いつも明るい2人の見たことのない表情を感じられる楽曲でいいなと思います。もう1曲の「ライフ イズ ビューティフル!」は、すごく明るい曲で、全然真逆の感じで面白いです。

佐々木 ミュージックビデオの撮影は楽しいですか?

橋迫 楽しいです。一番楽しみにしているのは休憩時間のごはんですね(笑)。

佐々木 そうなんですね(笑)。

橋迫 メンバーみんな楽しみにしています。

佐々木 MV撮影ならではの特別な食事が用意されるんですか?

橋迫 はい。

南波 ケータリングの内容が普段とは違うんですね(笑)。

橋迫 全然違います(笑)。撮影時間も長いので。

南波 MV撮影で特別なケータリングが用意されることって、メンバーみんなに共通している認識なんですか?

橋迫 そうですね。

スタッフ 揚げたてのハッシュドポテトを何個食べた?

橋迫 5、6個くらい(笑)。毎回デザートまで用意してくださって。デザートは取り合いですね。たまに食べられなかったっていうメンバーもいます。

南波 人数分あるはずなのに食べれない人も出てきてしまう?

橋迫 1人で何個も食べちゃうんで(笑)。

佐々木 そこでエネルギー補給して、いいパフォーマンスをするっていう。

南波 撮影のときって、体型を気にして食事を控えたりするアイドルも多いみたいですけど、アンジュルムのメンバーは容赦なく食べるんですね(笑)。

佐々木 ガッツリ食べてもいい雰囲気が、もともとあったってことですよね?

橋迫 そうですね。

佐々木 普通なら後輩メンバーが後ろで待って、とかなりがちだけど、取り合いになれるっていうのは、グループ内の雰囲気がすごくいいってことだから。

橋迫 食べ物に関しては早いもの勝ちなんです。

南波 サバイバルなんですね。

佐々木 橋迫さんはガンガン行くタイプですか?

橋迫 はい(笑)。現場に着いたら荷物も置かずに、まずケータリングを取りに行きます。

南波 それこそお腹が出たらどうしようとかあるわけでしょう?

橋迫 ありますね。あるけれども当日なら(笑)。

佐々木 仮に影響が出るとしても翌々日くらいだから。

橋迫 はい。

南波 運動量を考えたら当然ですよね。

橋迫 そうなんです。撮影中かなり動くので。

南波 MV撮影のモチベーションがケータリングだったとは。知られざる事実ですね、これは(笑)。

もしもアイドルになっていなかったら?

佐々木 橋迫さんは今、18歳。11歳でハロプロ研修生として活動を始めているので、人生の半分近くをアイドルとして過ごされているわけですよね? 日々過ごす中で、自分のアイドル人生について考えたりすることはありますか?

橋迫 この仕事をしていなかったら何をしていたのかな?って思います。

佐々木 実際、何をしていたと思いますか?

橋迫 そうですね。たぶん勉強に追われていたと思います(笑)。

佐々木 勉強は好きなんですか?

橋迫 苦手です(笑)。でも文章を書いたりするのは好きです。今とは違う生活……あ、あとアルバイトもしてみたいですね。自分でお金を稼ぐというのはすごく憧れます。

南波 いや、仕事してるじゃないですか(笑)。

橋迫 そうなんですけど(笑)。

佐々木 むしろ同世代のほかの人たちより何倍も働いているくらいで(笑)。例えばマクドナルドのバイトとか?

橋迫 やってみたいです。

佐々木 そうですよね。マクドナルドのコマーシャルに出ることはあったとしても、今の状況でマクドナルドの店員にはなるのは難しいから。

南波 確かに。あとはコンビニの店員とか?

橋迫 やってみたいですね。

佐々木 アンジュルムに入って4年経つわけですけど、自分が入った頃のことを思い出して、子供だったなとかずいぶん変わったなとか思ったりします?

橋迫 変わったと思います。家での自分と今の私は変わってないと思うんですけど、メンバーやスタッフさんとの接し方に関して言うと人見知りしていた部分はあったので、周りから見た自分はすごく変わったと思います。

佐々木 ファンの人たちにとってもそうですよね。普段は物静かなんだけど、最後に印象的なひと言を放つタイプというか(笑)。自然とそうなってきたのかなって思いますけど。

橋迫 普段は人見知りですけど、家にいるときはうるさくて、それこそ家の中で常にバトルが起こってるんです(笑)。

爬虫類大好き!

佐々木 橋迫さんは爬虫類好きとしても知られていますね。ご家族みんなお好きなんですか?

橋迫 はい。

佐々木 物心ついたときは、もう家に爬虫類がいたんですか?

橋迫 そうですね。5歳とかそのくらいの頃から家にタランチュラがいたりヘビがいたりしていました。

佐々木 怖いってなる理由がないですよね。最初から爬虫類が家にいたのであれば。

橋迫 子供の頃は怖いという気持ちはなかったですけど、しばらく爬虫類を飼っていない時期があって。コロナ禍の時期にお父さんが再びハマって飼い始めたんですけど、最初の頃は怖かったです。でも一緒に生活しているうちに、かわいく感じるようになりました。

佐々木 でも動物の好き嫌いって人によるじゃないですか。「絶対怖い! 近寄ることもできない」って人と、「かわいい!」って最初から無理なく接することができる人と。アンジュルムのメンバーはどうですか?

橋迫 今のアンジュのメンバーは、ほとんど大丈夫だと思います。

佐々木 新しい体験に対して好奇心旺盛な人が集まっている(笑)。

橋迫 上國料(萌衣)さんもこの間、「蛇を触れる場所があるよ!」って教えてくれたり。「上國料さん、触りに行きたいんだ!」と思って(笑)。メンバーで爬虫類が一番苦手だったのは竹内さんだったので、今はみんな触れるんじゃないかと思います。

佐々木 すごくスペシャルな趣味だと思うんですけど、橋迫さんは爬虫類のどういうところに魅力を感じるんですか?

橋迫 “とわちゃん”というフトアゴヒゲトカゲが家にいるんですけど、ある日、その子がゲージから身を乗り出してテレビを観ていたんですよ。その姿を見て「かわいい!」と思って、そこから一気にハマりました。

佐々木 犬がテレビを観てる動画とか、よくYouTubeに上がっていますけど、ああいう感じですかね?

橋迫 はい。もう、すごくかわいくて。

南波 橋迫さんの魅力って、こういう意外性にあるのかなと思うんですよ。新メンバーとして入ってきた頃の妹感みたいなものをキープしつつ、みんなに慕われる姉御肌的な部分を持っていたり、実は爬虫類が好きだったり。さっき話題に上がった“橋迫軍団”もそうですけど、ファンの皆さんがギャップを楽しんでるところはありますよね。

佐々木 軍団を率いるようなイケイケなタイプじゃないからこそ。

南波 橋迫さんがボスだったらワクワクするというか(笑)。何をやっても意外性があって面白い。それって特別なことだと思いますね。

佐々木 まだまだ見せていない意外な一面があるんじゃないかと、ファンが勝手に思ってしまうという(笑)。強烈なカリスマ性とかではなくて、橋迫さんには「この人どこか気になるな……」と思っているうちに相手を惹きつけてしまうような魅力があるんでしょうね。後輩メンバーに慕われる理由もそのあたりにあるのかもしれない。

未来よりも今を大事にしたい

佐々木 こういう場だから言うわけじゃなくて、僕は常々ハロー!プロジェクトも絶対世界に出ていけると話しているんですよ。歌唱力もダンスもK-POPに負けず劣らずハイクオリティだし。アンジュルムには将来的にどんどん海外公演をしてほしいです。

橋迫 海外公演は、いつかやってみたいです。

佐々木 グループの持っているキャラクター自体も世界向きだと思うし。

南波 自由な雰囲気もありますしね。

佐々木 ちなみに海外公演以外に、今後やってみたいことはありますか?

橋迫 うーん、なんでしょう。

佐々木 例えば、グループに在籍しつつ、ソロ活動もしてみたいとか。

橋迫 ソロは一番ないです(笑)。アンジュルムでやれることが、まだまだたくさんあると思うので、未来よりも今を大事にしたいなって思います。

橋迫鈴(アンジュルム)

2005年愛知県生まれ。ハロプロ研修生を経て、2019年7月にアンジュルムに加入する。メンバーカラーはピュアレッド。大の爬虫類好きとしても知られている。

佐々木敦

1964年生まれの作家 / 音楽レーベル・HEADZ主宰。文学、音楽、演劇、映画ほか、さまざまなジャンルについて批評活動を行う。「ニッポンの音楽」「未知との遭遇」「アートートロジー」「私は小説である」「この映画を視ているのは誰か?」など著書多数。2020年4月に創刊された文学ムック「ことばと」の編集長を務める。2020年3月に「新潮 2020年4月号」にて初の小説「半睡」を発表。同年8月に78編の批評文を収録した「批評王 終わりなき思考のレッスン」(工作舎)、11月に文芸誌「群像」での連載を書籍化した「それを小説と呼ぶ」(講談社)が刊行された。近著に「映画よさようなら」(フィルムアート社)、「増補・決定版 ニッポンの音楽」(扶桑社文庫)がある。

南波一海

1978年生まれの音楽ライター。アイドル専門音楽レーベル・PENGUIN DISC主宰。近年はアイドルをはじめとするアーティストへのインタビューを多く行い、その数は年間100本を越える。タワーレコードのストリーミングメディア「タワレコTV」のアイドル紹介番組「南波一海のアイドル三十六房」でナビゲーターを務めるほか、さまざまなメディアで活躍している。「ハロー!プロジェクトの全曲から集めちゃいました! Vol.1 アイドル三十六房編」や「JAPAN IDOL FILE」シリーズなど、コンピレーションCDも監修。

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