ピアニスト壷阪健登とベーシスト / シンガーの石川紅奈によるポップユニット・sorayaが、3月29日に東京・東京キネマ倶楽部にてワンマンライブ「soraya 1st Album Release Live “ゆうとぴあは そこに”」を行った。
ジャズシーンのホープとして期待される2人がポップスを表現するユニットとして2022年に始動したsoraya。それぞれソロプレイヤーとして活躍し、石川は昨年3月にヴァーヴ・レーベルからソロシンガーとしてデビューするなど活動の場を広げながら、2人はsorayaでの楽曲制作やライブを重ね、3月13日に1stアルバム「soraya」を発表した。ワンマンライブにはアルバム楽曲のレコーディングにも参加している加納奈実(Sax, Flute)、吉野智子(Mallets, Perc)、KAN(Perc)がサポートメンバーとして参加。さらにアルバムのボーカル録音とミックスを担当したエンジニア葛西敏彦がPAを務め、バンドが生で奏でる繊細なサウンドを極上の音響で届けた。
ライブのオープニングを飾ったのは、アルバムにも収録された3rdシングル「耳を澄ませて」。壷阪が奏でる柔らかなピアノの音色と石川のささやくようなファルセットに、観客はタイトル通りじっと耳を澄ませる。そこにウッドベース、パーカッション、サックスが丁寧に重ねられ、サウンドが輪郭を帯びていく。石川のベースソロから始まる「ちいさくさよならを」ではバンド全員がセッションを楽しむような軽やかな演奏が繰り広げられた。
2曲を終えたところで石川は「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます。sorayaです」と挨拶し、バンドメンバーを紹介。「それではごゆっくりお楽しみください」と告げると、ライブのタイトルにもなったsoraya流エキゾチカ「ゆうとぴあ」を演奏した。続いて披露されたのは、Carpentersの歌唱で知られる「セサミストリート」の挿入歌「Sing」。変拍子を織り交ぜたジャズプレイヤーらしいトリッキーなアレンジが観客の耳を刺激する。アルバム曲「風の中で」では加納のフルートと吉野のマリンバがサウンドにカラフルな色を添えた。
ここでサポートメンバーは一旦ステージを離れ、壷阪と石川はsorayaの2人のみのデュオセットで、soraya結成のきっかけになったという壷阪のソロ楽曲「港にて」を披露。さらに、石川が2021年にSNSにアップし話題となったPUFFY「愛のしるし」のカバーも演奏された。デュオセットでの演奏を終えたところで、2人はアルバム「soraya」についてトーク。収録曲「ルーシー」の歌詞に悩んでいたとき、事務所をうろちょろするディレクターの娘を見て「言葉が話せない相手に贈る歌」というテーマで完成したという制作エピソードを明かすと、2人はゲストプレイヤーの閑喜弦介を呼び込み、閑喜のガットギターを加えたトリオ編成で「ルーシー」を演奏した。
再びサポートを交えた5人編成に戻り、ライブはクライマックスへ。2ndシングル「BAKU」はレコーディング音源から大きなアレンジが加えられ、中盤にはKANのアグレッシブなパーカッションに女性陣のスキャットが絡む。壷阪の不穏なピアノソロ、石川のポエトリーリーディングのようなラップを経てメインテーマに戻る組曲のような構成はライブならではだ。アルバム収録の新曲「レコード」は歌謡曲のようなムードを持つsorayaの新規軸。最後はsorayaの始まりの曲であるデビューシングル「ひとり」で締めくくられ、石川の呼びかけにより観客との合唱がキネマ倶楽部に鳴り響いた。
アンコールを受けてステージに戻ってきた壷阪と石川は、5月に劇場公開される加藤和彦のドキュメンタリー映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」の中で使用される加藤の代表曲「あの素晴しい愛をもう一度」のトリビュート音源に石川がボーカリストの1人として参加していることに触れる。石川は「sorayaでこうして『ポップスとは、本当にいい歌とはなんだろう』と壷阪くんと話しながら曲を作ってきた過程で、日本のポップスの歴史を作ってきた方々の輪に入って一緒に演奏をしたりお話を聞いたり、そういう機会をいただけて本当にうれしく思っています」と喜びを語り、アンコール曲として「あの素晴しい愛をもう一度」を歌うことに。2人は閑喜を再度呼び込み、幅広い世代に愛されるこの曲をsoraya流のアレンジで披露した。
セットリスト
「soraya 1st Album Release Live “ゆうとぴあは そこに”」2024年3月29日 東京キネマ倶楽部
01. 耳を澄ませて
02. ちいさくさよならを
03. ゆうとぴあ
04. Sing(オリジナル:ジョー・ラポソ)
05. 風の中で
06. 港にて
07. 愛のしるし(オリジナル:PUFFY)
08. ルーシー
09. BAKU
10. レコード
11. ひとり
<アンコール>
12. あの素晴らしい愛をもう一度(オリジナル:加藤和彦と北山修)