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“道産子バンド”GLAY×怒髪天が箭内道彦60歳を対バンでお祝い、まさかのカバーに大盛り上がり

法被をまとい「長い夜」を熱唱する出演者たち。(撮影:石井麻木)
6か月前2024年04月07日 1:07

箭内道彦の還暦を記念したライブイベント「箭内道彦60年記念企画 風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ“FURUSATO”kazetorocksuperarena.com」が、3月30日と31日に埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催された。

このイベントは4月10日に還暦を迎える箭内が、「還暦を前に、無茶なことをしなきゃ」「できっこないを、やらなくちゃ」という思いで企画。乃木坂46とサンボマスターによる「ひとりひとりに、ひとりひとりのふるさとがある。」、MAN WITH A MISSION、 BRAHMAN、ACIDMANが三つ巴の対バンを繰り広げた「ふくしまに寄り添い続ける“スリーマン”」、さだまさしがグレープとソロ曲の両方を披露した「singer,born in“FURUSATO”」、そしてGLAYと怒髪天による初対バン「北の大地の心優しき漢たち」の計4公演が行われた。この記事では、イベントの最終公演「北の大地の心優しき漢たち」の模様をレポートする。

“前座の前座”石川さゆり、観客と津軽海峡越え

「あと10日で60になる箭内道彦と申します。今から前座の前座をやります」と、還暦にちなんで6本の線が入った真っ赤なジャージ姿で登場したのは箭内。続いて、イベントの公式応援隊長である石川さゆりが呼び込まれ、開場中のさいたまスーパーアリーナ内がにわかにざわつき出す。“前座の前座”とは何をするのか? そんな疑問を観客が抱いているのを察した彼女は、「全員で津軽海峡を越えたいと思います。皆さん歌ってくださいますか?」とこれから始まるGLAYと怒髪天という北海道出身2組の競演に向けて、自身の代表曲「津軽海峡・冬景色」を歌うことを宣言。箭内のアコースティックギターの演奏に乗せて、津軽海峡の景色を情感たっぷりに歌い上げて郷愁を誘った。

「よし、みんな無事越えられましたね」。そう石川が笑顔で頷き、今度は前座のパフォーマンスへ。イベントの公式応援隊のメンバーでもある亀田誠治、高橋優がステージに合流する。さらに箭内は「本当に今日、GLAYは来てることをチラ見せ」とGLAYのTAKURO(G)を呼び込み、イベントのテーマ曲である「永遠じゃない」のセッションへとつなげた。TAKUROが作曲を手がけ、箭内が詞をつづったこの曲は、永遠ではない命や時間の儚さと尊さを歌った温かなバラード。箭内、石川、高橋、亀田、TAKUROは、ジャンルや年代の垣根を超えて、言葉1つひとつに思いを重ねながら力強い声を響かせた。

男臭さ全開、怒髪天流の「Winter,again」

まるでイベントのフィナーレのような温かな雰囲気が漂うが、本編はまだ1秒も始まってもいない。箭内へのリスペクトと愛にあふれた石原さとみによる影アナ、「道民からしたら事件ですよ」「冠婚葬祭みたいな……結婚式みたいなもの」「対(たい)バンと書いて、対(つい)バンですよ」といった名言が飛び出したイベントの応援隊員たちによるトークVTRを挟み、北国の冬を思わせる青白い光にステージが包まれる。

「箭内さん、還暦おめでとーう!」。おなじみの出囃子「男祭」とともに、勢いよく現れた怒髪天の増子直純(Vo)。寺岡信芳(B / 亜無亜危異)という強力な助っ人の力を得ながらステージに上がった怒髪天の面々が最初に届けたのは、ライブの定番曲「酒燃料爆進曲」だ。上原子友康(G)と坂詰克彦(Dr)が「おめでとう箭内!」と箭内をコールで祝福すると、それに呼応するように客席のあちこちから温かな空気が立ち上った。

関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)に提供した「あおっぱな」のセルフカバーで青臭い感情を爆発させ、緩急がありすぎる展開が特徴の「令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~」では「明るい明日を歌わせろ 楽しい仲間と踊らせろ」と叫び歌う。齢57にして血管が切れんばかりのパフォーマンスを展開する怒髪天のメンバーに、骨太なベースプレイでバンドを支える64歳の寺岡。この日のために怒髪天を予習してきたという多くのGLAYファンは、次々と繰り出されるキラーチューンを拳を突き上げながら楽しんだ。

「ひともしごろ」がしみじみとした余韻を残しつつ、ホール内がしばし水を打ったように静まり返る。そして、坂詰の刻むリズムから次の曲へ。と思われたが、出だしがそろわず、「一番いいところで! メシばっか食ってんじゃねえ! 夕メシ抜きだ!」と増子の檄が坂詰に飛ぶ。仕切り直して始まったのは、GLAYの大ヒット曲「Winter,again」。上原子が弾く流麗なギターが聞こえた瞬間、「おおーっ!」と驚きをにじませた歓声が上がる。「お互いの曲をカバーしようなんて言わなきゃよかった」と直前までボヤいていた増子だったが、凍えるような北海道の冬景色や恋人たちの切々とした感情を、むせび泣くような声で表現してみせる。本家GLAYが描く世界とは異なる、怒髪天ならではの「Winter,again」にオーディエンスは喝采した。

「本当に温かい雰囲気で……」と目の前の観客の反応に感激しつつ、増子は「GLAYとの対バンは象がアリと戦うような、足軽と戦国武将が戦うようなもの。GLAYはめちゃくちゃ(機材)持ち込んでるの! ハンパないですから。我々が持ち込んだのはこの麦茶くらい」と自虐する。そして、「同じ北海道出身者として『Winter,again』は歌いたいじゃん。絶対あの歌詞は自分で書けないから。でも、(カバーは)難しいってなんで言ってくれなかったの! 1回目のリハーサルはマネージャーも真っ青の出来栄えだった」「『Winter,again』って空間系の曲なんですよ。その空間を何が埋めているかと言ったらTERUの歌のうまさ」と試行錯誤の末、オリジナルに寄せた歌い方ではなく持ち前のダミ声でカバーするに至った経緯を熱弁。「次(GLAYのカバーを)やるときは、勢いでやれる曲にします」と明言した。

その後、怒髪天は還暦を目前に控えた箭内にエールを送るように、大人の悲喜交交を泥臭く歌い上げた最新曲「ザ・リローデッド」、観客とともに「オトナはサイコー!」と連呼する「オトナノススメ」の2曲を続けて披露。「人生は後半戦から」と言わんばかりの選曲には、30年にわたって「夢を見ることの大切さ」を伝え続けるGLAYのスタンスとどこかリンクしていた。

GLAYが先輩へのリスペクトを込めた「雪割り桜」

TAKUROがインタビューなどで「怒髪天とだけはやりたくない」「このバンドに勝てるバンドはいるのか」とかねてから公言していた通り、同郷でありながらもこれまでステージで相まみえることがなかったGLAYと怒髪天。しかし、旧知の仲である箭内の提案とあって、メンバーは完全武装とも言えるヒット曲満載のセットリストを用意し、この日の怒髪天との対バンに挑んだ。

「OK! 楽しんでいきましょう! 箭内さん、60歳おめでとうございます!」とTERU(Vo)が叫び、GLAYのターンが始まる。オープニングナンバーに選ばれたのは、リリースから28年経つ今も歌い継がれている人間讃歌「生きてく強さ」。怒髪天が作り出したポジティブなムードを加速させていく1曲が会場の一体感を生み出していく。続く「SOUL LOVE」では、普段は一歩引いた立ち位置でメンバーを支えることが多いJIRO(B)もステージの前方へ。敬愛する先輩バンドの熱演に応えるように、躍動感あるプレイを展開する。以降も「サバイバル」「HOWEVER」と問答無用のヒット曲を繰り出し、オーディエンスを興奮させるGLAY。さらにTERUの「生きることは人を愛すること、愛されること」という言葉から「春を愛する人」を届け、みずみずしい春の息吹を会場にもたらした。

「GLAYが好きな曲をやります。冬に咲く花なんですけど、季節関係なく咲いてほしいという思いを込めて……」。そんなTERUの言葉から続いたのは、怒髪天「雪割り桜」のカバー。怒髪天が真冬の景色を歌った「Winter,again」をカバーしたのに対して、GLAYは春を前に咲く椿寒桜をモチーフにした1曲をセレクトして、道産子バンドのつながりをちらりとのぞかせる。大サビではTERU、TAKURO、HISASHI(G)、JIROが声を重ね、優しくも雄々しいハーモニーを紡ぐ。その姿にオーディエンスが拳を突き上げ大合唱するという、胸を打つような景色がステージ前に広がった。

「More than Love」「彼女の“Modern…”」という初期のナンバーを経て、TERUは「(デビューから)30年経っても心からこれを伝えたい……みんな一緒に夢を見ていきましょう。みんなが夢を見てくれる限り、GLAYでいます!」と「BEAUTIFUL DREAMER」を熱く歌い上げる。その後TERUは「こんな素晴らしい対バンをさせていただきありがとうございます。大好きな怒髪天さんと同じステージに立ってるのがすごくうれしかった」と喜びを噛み締めつつ、「TAKUROは元気がなくなると怒髪天のライブを観に行くんだよね」と横に視線を送る。話の水を向けられたTAKUROが「怒髪天とthe pillowsな」と同じ北海道出身のthe pillowsの名も加えると、JIROがすかさず「俺のほうが好きだから!」と対抗意識を燃やし始め、観客をほっこりさせる一幕もあった。ヒット曲三昧のライブにとどめを刺したのは、GLAY史上2番目のセールスを記録した「誘惑」。幾度となく披露してきた1曲をGLAYは全身全霊でパフォーマンスして、熱狂のうちにライブ本編を締めくくった。

アンコールでは箭内と怒髪天が合流することになっていたが、増子だけが姿を見せず演者たちが慌てるハプニングも。小走りでステージに駆け込んできた増子は、GLAYのライブを客席で鑑賞していたところ戻る動線を見失ったことを告白しつつ、「俺らじゃなかったら(『雪割り桜』は)売れてたよ! すげえよかった。なんかのアルバムに入れてよ!」と絶賛。箭内も「それでいろいろ生活できますよ」と援護射撃して観客の笑いを誘った。2日間4公演におよんだイベントのフィナーレを飾ったのは、増子、TERU、箭内が代わる代わるリードボーカルを取る松山千春「長い夜」の大セッション。GLAYと怒髪天にとって同郷の大先輩の名曲という心憎い選曲に会場は盛り上がるが、松山千春の歌い方を意識しまくった増子とTERUの熱唱に、感動と笑いが混在する味わい深いクライマックスとなった。

セットリスト

「北の大地の心優しき漢たち」2024年3月31日 さいたまスーパーアリーナ

怒髪天

01. 酒燃料爆進曲
02. あおっぱな
03. 令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~
04. ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!
05. HONKAI
06. 歩きつづけるかぎり
07. ひともしごろ
08. Winter,again
09. 孤独のエール
10. そのともしびをてがかりに
11. ザ・リローデッド
12. オトナノススメ

GLAY

01. 生きてく強さ
02. SOUL LOVE
03. サバイバル
04. HOWEVER
05. 春を愛する人
06. 雪割り桜
07. More than Love
08. 彼女の“Modern…”
09. BEAUTIFUL DREAMER
10. 誘惑
<アンコール>
11. 長い夜

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