YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで6月28日から7月4日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、当連載の6月3週目の記事から紹介してきたこっちのけんとの「はいよろこんで」が順位を上げ続け、ついにウィークリーランキングで1位を獲得した。同曲のヒットもあってか、2022年12月に公開された「死ぬな!」のMVも前週73位から大幅に順位を上げて59位に登場。
26位にはBTSのメンバー、JIMINの「Smeraldo Garden Marching Band(feat. Loco)」がランクインした 。耳の不自由な人も一緒に楽しめるように、と曲中のフレーズ「I Love You Babe」の「L」「O」「V」「E」を手話で表現していて、この振付を踊るダンスチャレンジ動画がTikTokに多数投稿されている。
28位にはマキシマム ザ ホルモンの「殺意vs殺意(共犯:生田斗真)」が登場。以前から腹ペコ(マキシマム ザ ホルモンのファンの呼称)を公言していた生田斗真がゲストボーカルで参加し、スペシャルなコラボが実現した。YouTubeのコメント欄では「生田斗真が存在してるだけで小綺麗なバンドに見える」「バンドの雰囲気に馴染んでいて全く違和感がない」など絶賛の声が上がっている。
45位には、7月26日から開催される「パリオリンピック」の中継を盛り上げる「テレビ朝日系列 2024スポーツ応援ソング」のためにMrs. GREEN APPLEが書き下ろした「アポロドロス」のリリックビデオが登場。壮大なサウンドや、努力や葛藤を乗り越えた先に手にする喜びを想起させる歌詞など、4年に一度の大きな大会にふさわしい楽曲となっている。
52位には西野カナの2015年のヒット曲「トリセツ」のフルサイズMVがランクインした。彼女は2019年2月から活動休止していたが、6月25日に活動再開することを報告し、同日から過去曲のフルサイズMVを順次公開。「トリセツ」もその中の1曲で、ほかに「Best Friend」や「Darling」のMVも公開されている。これらのYouTubeのコメント欄には「おかえりなさい」と復帰を祝う声が多く上がった。本日7月12日22時には、新曲「EYES ON YOU」のMV公開が決定している。
期待の若手からベテランアーティストまで、幅広い世代の楽曲が並んだ今週は下記3曲をピックアップ。
BE:FIRST X ATEEZ「Hush-Hush」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場10位
昨年12月に大阪・京セラドーム大阪にて開催された「D.U.N.K. Showcase in KYOCERA DOME OSAKA」で共演を果たしたBE:FIRSTとATEEZ。YouTubeにアップされた当日の映像「#7 (D.U.N.K.) SKY-HI Rap collaboration」では、RYOKI(BE:FIRST)がMINGI(ATEEZ)と友達になったことを報告するなど、メンバー間でも交流を深めてきた。
そんな日韓の実力派グループによる夢のコラボ曲が「Hush-Hush」だ。疾走感のあるビートの上で、BE:FIRSTのクールな低音ボイスとATEEZのアグレッシブなハイトーンボイスが見事に融合している。
MVの舞台は巨大な塔が並ぶ幻想都市。太陽と月のように互いに影響し合いながら、それぞれの輝きを放つBE:FIRSTとATEEZが物語を繰り広げていく。全編CGで作られたダイナミックな映像の中で両者が対峙。ラストで15人全員が一緒に踊る場面など胸が熱くなる名シーンが多い。なおMV冒頭の、列車の上にBE:FIRSTのRYOKI、LEO、JUNONがいるシーンで映り込んでいる数字は、BE:FIRSTが結成された8月13日を表す「0813」。このような細かな仕掛けが盛り込まれ、細部まで見逃せない映像になっている。
31位には「Hush-Hush」のオフィシャルオーディオもランクインしており、この曲が今いかに注目されているのかを物語っている。
LISA「Rockstar」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場12位
BLACKPINKのメンバー・LISAのニューシングル「Rockstar」のMVが12位に登場した。LISAの巧妙なラップとエネルギーあふれるボーカルが魅力のこの曲。ユニークな歌詞も話題を呼んでおり、サビの「Lisa, can you teach me Japanese?(リサ、日本語を教えてくれる?)」「I said, “Hai hai”(私は言ったの“はい はい”)」というフレーズを聴いた日本のリスナーの間で、「LISAがジャパニーズと歌ってる!」「はいはい、と返事をしているように聴こえた」と驚きの声が上がっている。
プロデュースは、OneRepublicのフロントマンであり、グラミー受賞の敏腕ポップスプロデューサーとしても知られるライアン・テダーと、ジャスティン・ビーバーやセレーナ・ゴメスの楽曲制作にも携わったサム・ホメイが担当。2人でトラックを共同制作し、中毒性の高いダンスポップを完成させた。
MV監督を務めたのは、ビリー・アイリッシュやデュア・リパのMVも手がけているヘンリー・ショーフィールド。撮影はタイのバンコクで行われ、彼女のルーツにあるタイの文化とストリートカルチャーを体現した映像となっている。バンコクの公立大学・スアンドゥシット大学が実施したアンケート調査により、タイで最も影響力のある人物の1位に選ばれているLISA。彼女の影響は大きく、MVのロケ地であるバンコクのヤワラート通りに現在大勢のファンが訪れていることから、現地の複数のメディアによるとタイ国政府観光庁は観光客を誘致するためにヤワラート通りや近隣地域のプロモーション活動を拡大する計画を立てているそうだ。
BLACKPINKの所属事務所であるYG ENTERTAINMENTは、去年12月にグループ活動に関する再契約を締結。しかしソロ活動に関しては全員が契約を終了し、現在は全員が別々のレーベルに所属している。それぞれ別の拠点に移った4人の中で、ソロでの音楽活動を行うのはLISAが初めて。今後、彼女を含めほかのメンバーもどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。
てにをは「修羅薔薇」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場76位
去年4月に公開された「ザムザ」のMVが1280万回再生を突破し、「こんな曲はこの人にしか書けない」「センスに圧倒される」と、その高い作曲力が話題を呼んだボカロPのてにをは。そんな彼が6月25日に新曲「修羅薔薇」を発表した。
こちらはスマホゲームアプリ「#コンパス 戦闘摂理解析システム」のキャラクター、鬼ヶ式うらのテーマソングとして書き下ろされた楽曲。「鬼を使役し怨霊を滅する“株式会社陰陽師”の社員」である彼の設定に合わせて、冒頭の笛の音など雅楽を想起させる和テイストのサウンドデザインが施されている。歌詞は「誰が問ぅ 問ぅTrue」や「修羅場 阿修羅 薔薇薔薇」など、リズミカルで心地いい言葉遊びが光る。
てにをははこの曲について、X(Twitter)で「鬼ヶ式うらというヒーローのために修羅薔薇という曲を作りました 修羅と薔薇 陰と陽 犬と猫 なんでも半々フィフティフィフティ」とポスト。その「なんでも半々フィフティフィフティ」という言葉や、MVのイラストでうらに立派な八重歯が生えていることなどを踏まえて「もしかして鬼ヶ式うらは鬼と人間のハーフなのでは?」という考察が視聴者の間で盛り上がっている。